真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
マントラ軍本営は阿鼻叫喚という言葉でしか表現出来ないだろう。
あちこちでマガツヒを失いつつある悪魔が助けを求めて呻いている。まさしく地獄絵図。
地下牢では逃げ出したマネカタがキョロキョロとしていた。なにが起きたのか理解できていないのだろう。
そしてそのなかに、勇がいた。
勇は頭を抑えていたが、トールに殴られた場所が痛むだけのようだ。命に別状はないだろう。
勇は暗い目でオレを見ると暗い声でオレに言った。
「……帰ってきたんだな、零時…先生……連れて帰れなかったか……」
「すまない、勇……」
そういうしか、なかった。勇の目に失望の目がありありと浮かんだ。
「オマエでもダメか……その悪魔の力に結構、期待してたんだけどな……
マントラは崩壊して、これからはニヒロは力を伸ばして行く一方……先生はどこに居るかも分からないまま……
こんな世界でウロウロと……何やってるんだろうな、オレたち……」
「あぁ、なにやってんだろうな……生きることしか出来ねぇよ。それぐらいしか出来ねぇ自分が情けないよ……マジで
泣きそうな声でそういうと勇はキッとこっちを見た。
「……こうなったら、アイツに賭けてみるしかねぇかな」
「アイツ?」
問い返すと勇は説明した。
噂で聞いたんだ。すげえマネカタがいるんだよ。
そいつは、先のことがなんでも分かるヤツで……マントラ軍の崩壊も予言してたらしい。
そいつに聞けば……先生のコトとかこれからのコトとかつかめるかも……」
「なるほど」
すがる対象がない今、それに頼るしかなさそうだ。
「マントラはそいつを捕まえて捕囚所にブチ込んだって話が最後だから…今もそこにいるんだと思う。
オレ、そいつを探しにカブキチョウへ行くよ。
どこに居たって危険には違いないんだ……オレは可能性のあるほうへ行くぜ。じゃあな」
「え?ちょ⁉勇‼」
勝手に一人で行ってしまった勇。その時、マガツヒの欠乏で狂乱状態に陥った悪魔が襲いかかってきた。
しかもそいつらは大集団であり、逃げながらの戦闘を余儀なくされた。
「ちぃ!ハイピクシー!」
「分かったわ。“トラフーリ”!」
ハイピクシーがその魔法を唱えると凄まじい光と音が悪魔たちを襲った。
トラフーリは虚仮威しである。そのため逃走用にしか使えないが、いつ襲われてもおかしくない今の状況ではかなり重宝する。
オレたちは逃げだし、エレベーターに乗って屋上まで進んだ。
屋上に行くとゴズテンノウの叫びが聞こえた。慌ててそこに向かうとゴズテンノウの変わり果てた姿があった。
ゴズテンノウの体から膨大なマガツヒが抜けている。それでもなお、その存在感は圧倒された。
ゴズテンノウは覇気を減衰させた声をあげた。
「……戻ってきたか、猛き悪魔よ」
「そなたもしかと見たはず……ニヒロの根城が、我が軍勢によって朽ちたるさまを……それが……それが、何故……」
嘆くゴズテンノウの声。それに対し哀れみは浮かばないが、胸に来る何かがあった。
「見るがいい、我が体を。
この身に満ちたるマガツヒが、次々と抜け出てゆく……
しかも、力奪われゆくは我のみにあらず!
我が軍勢すべてのマガツヒが、いずこかへ抜き取られておる……!」
その時、ダンと床を叩きつける音がした。ゴズテンノウの前にいたマネカタがゴズテンノウの怒りを表すように床を叩き、体を揺らした。
「おのれ、憎しやニヒロ!……いかなるカラクリを使いおったのか!たばかられたわ……見える……
マガツヒ集まりゆく中心にニンゲンの巫女が見える……
されど、今となって/あらがうことも叶わじ……
もはや滅びを待つのみなるか……
ああ、おいたわしや我らが盟主よ!……ゴズテンノウよ!!」
「……いや!我は滅びぬ!
この体は滅するとも、我が精は死なず!いつか、我が力を得るにふさわしき者が現れる。その者をして、必ずや復活しようぞ!!静寂の世界なぞ、創らせはせぬ!!力無き世に、何の価値があろうか!!我は忘れぬ!身を焦がしたるこの憤怒!
必ずや……必ずや、力の国を再興せん……!!
…グ……オォ…………」
ニヒロ機構の怨嗟の声を吐き、自分の国の再興の誓いを叫ぶとゴズテンノウの体にヒビが入った。
そしてヒビが広がると地響きをならし、ゴズテンノウはマネカタを道連れにして崩れ去った。
「やはり、そこにいたのか……」
ゴズテンノウの凄絶な最期を見届けるとその声が聞こえた。
その方を向くとマントラ軍No.2。トールがいた。
「ゴズテンノウは……いや、マントラ軍はニヒロ機構のナイトメア・システムで……崩壊した。
……ニヒロ機構には、ただトウキョウの支配を目指す以上の、強い思想があった。
我々は、暴力で統制を図る、恐怖政治の枠を超えられなかった……だから、敗れたのだよ」
トールは冷静だった。自分が仕えていたゴズテンノウが死んだというのに。冷酷なまでに冷静だった。
「故にゴズテンノウの威光が失われた今、同胞と信じた者たちも、あっけなくここを見捨て…出ていった。そう…以前捕らえたキサマの友人がいたな。
ヤツともども、キサマも好きにするがいい……
もはや、こんな場所に未練はない。
牢も、大門も、防衛する意味はなくなったのだから。
……ではさらばだ。
『真の強者のみが生きる世界』を求め、私は旅立つ。
キサマが真の強者であれば、いずれまた会おう……」
トールはそういうと去っていった。
その背中に、悔いも未練も無かった。
ゴズテンノウが死んで数時間後、オレはイケブクロ近くの高速道路を走っていた。
理由は2つ。1、勇を追うためにカブキチョウへ向かうこと。そして2、魔人の気配がしたため。
メノラー集めは情報を集めるための手段になった。アマラ深界のあの二人は受胎について間違いなく1から10まで知っている。
受胎を引き起こした氷川も同様だが氷川は行方知れず、なら関係を正式に繋いでいるアマラ深界の二人から聞いた方が手っ取り早い。
なにより大いなる意思という言葉だ。それが受胎と大きく関連している。
全ての答えを見つけ出す。そして世界を戻す手段を見つける。
創世ができるなら、再生ならぬ再世もできるはずだ。
そう思いながら高速道路を自動車以上に走るオレの索敵に魔人の気配が引っ掛かった。
とたん王国のメノラーの炎に着き、激しく揺れる。
瞬間、オレの足元にシミが現れ、飲み込んでいった。
三度めとなる魔人の結界。見慣れた荒野に久しぶりに聞いたバイクの音が聞こえた。
見ると炎のタイヤが高速回転するバイクに乗った骸骨ライダーがこちらに向かって爆走していた。
「感じる……感じるぜ!メノラーを持つヤツが近くにいる!お前か⁉お前が持っているんだな‼」
そうライダーが叫ぶとライダーはさらにけたたましくエンジンを噴かせた。
「メノラーをよこしな!そうすりゃ、連れてってやるぜ……スピードの向こう側へ‼」
ライダーは……魔人 ヘルズエンジェルは前輪を持ち上げ、オレに体当たりしてきた。
すかさず剣でガードするとギャリギャリギャリ!という音とともに火花が散った。
「さぁこい!俺とこいつの怒りを止められるかな!」
「止めてやるさ!それで勝てるなら!それで失わないなら!それで得れるのなら‼それで生き残れるなら‼」
オレはそう叫ぶとバイクを蹴りあげる。
ヘルズエンジェルはバランスを崩さず、オレから離れる。大したバイクさばきだ。
しかし激情でオレに勝負するのなら、ヘルズエンジェル。お前は運が悪い。今のオレは機嫌が悪いからだ。
オレは怒り狂えば狂うほど強くなるんだぜ!
剣がオレの感情の高ぶりを示すように、煌々と輝く。ヘルズエンジェルもエンジンを噴かせ、タイヤの炎を一際燃やす。
そしてどちらも合図したわけでもなく、互いに技を放った。
「“ヒートウェーブ”‼」
「“ヘルブースター”‼」
爆音。そして波の衝突。そしてオレの嘲笑が響いた
「バーカ」
オレはヘルズエンジェルに向けて足を振るう。マタドール戦でも使った足でのヒートウェーブ。
二段目の“ヒートウェーブ”がヤツのバイクに衝突した。
「うおっ!」
ヘルズエンジェルのバイクが悲鳴をあげる。
ヘルズエンジェルはぐらりとバイクの車体を揺らすがなんとか持ち直した。
「オレのこの走りについてくるやつは始めてだぜ」
「そりゃどうも。賞賛のついでに死ね!」
オレは駆ける。剣に感情を乗せて。
ヘルズエンジェルも走る。彼なりの怒りを乗せて。
オレとヤツが空中で交差し、そして着地した。
一瞬の沈黙、そして。
ゴトリという音とともにオレの腕が落ち、ヘルズエンジェルの首が落ちた。
オレは剣を振るうと首を失ったヘルズエンジェルの体に狙いを定めた。
「悪いな。オレは怒りだけじゃなく。様々な感情で暴走してるんだよ。例えば勝利への執着とか、な!」
オレはそう言い残すとヘルズエンジェルに向けて剣を投げつけ、突き刺し、爆破させた。