真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
勇がアマラ経絡に去っていったあと、オレは部屋を出た。
追う気にはなれない。勇は完全にオレに……というか他人全員に失望している。追って一緒に帰ってくる訳がない。
そもそもヒジリのサポートなしでアマラ経絡に入るのは無茶だ。閉じ込められたらどうする?
そう思えば勇がやったことは自殺行為だ。
だが、勘が言う。
勇は死なないと。
オレの勘は外れたことがない。嫌な予感ならなおのこと。
勇が生きることに嫌な予感の部類に入る理由は分からない。
だが、勇は間違いなくやってはいけないことをやる。そんな気がする。
悶々と考えながらカブキチョウ捕囚所から出ようとするとフトミミがたくさんのマネカタを従えて待っていた。
何事かと思っているとフトミミが口を開いた。
「君には世話になったので、あらためて礼を言いに来たよ」
「いいさ、礼なんて。ついででお前達を助けただけだし、ミズチを倒した気概も完全に自分の感情だし」
これについては嘘はない。虐められていたオレにとっては弱者を虐げる強者は憎しみしか湧かない。マネカタを助けようという気概は二の次だった。
「それでも我らを助けてくれたことには変わりないよ。本当にありがとう」
フトミミはそういうと空を見上げた。
「…我らマネカタは、これから旅立とうと思う。どうすれば、皆が苦しむことなく生きられるかを考えるために」
「………大変な道のりだぞ」
「分かっているさ」
フトミミはそういうと、『そうそう』といった。
「…お礼に、と言ってはなんだけど、君にひとつ予言をあげておくよ」
フトミミはそういうと指を頭に添えるあの動作をした。
「……どうやらギンザに、君を待ち受ける男がいるようだ。会いに行くといい」
「ギンザに?」
オレを待ち受けている男といえば一人しか思いつかない。あの長髪の、記者の男だ。
「……さて、我々マネカタはこれで失礼するよ。ほんとうに助けてくれて有難う。……では………また」
「あぁ。また会おう」
微笑みながらそういうとマネカタ達は去っていった。
安住の地を探すために彼らは旅立つ。この地獄に、弱者が安心して過ごせる場所があることを祈ろう。
さて、オレは何をしようか。
カブキチョウからオレはアマラ深界に向かった。
理由は簡単。第二カルパへの扉を開くメノラーがヘルズエンジェルを倒した時に揃ったのだ。
オレは穴に落ち、深い階層へと向かっていった。
穴に落ちるルートは岩だのなんだのが浮いていて殴って壊すなり、避けないと危険だ。
当たった瞬間どうなるかは、分かるな?
第二カルパの入り口を開けようとした瞬間、いきなり気高き声が響いた。
「…おまえが、堕天使の意を受け、混沌の闇の企みに手を貸している魔人か。
お前は知っているのか?
自分の行動が、自分自身をどのような道へ進ませようとしているのかを
我は遥か高みより、おまえの行動を常に見守りつづけていた
闇に魅入られし者、零時よ、お前は今、いと高き神の意志に逆らおうとしている。
悪魔に変わりし肉体に、人の心をもつ者よ。
残された心まで闇に染まる前に…
我が声を絶対と信じて、堕ちた天使に協力するのは、止めるのだ!』
いきなりの警告。しかも神と来たか。
答えは、決まっている。
「断る。誰だか分からないヤツの言葉になぜ従わなければいけない。しかもオレは神なんざ信じていないんでね」
オレがそう言い切ると気高き声が絶望した言葉を投げ掛けた。
「愚かな。もはや正邪を解せぬ身に落ちたか……この混沌の悪魔が巣くう地ではわずかに残った人の心もいずれ消え失せよう。願わくば地上に戻り、闇を払うがいい。
この地に神の怒りが轟く前に……」
そういうと声は聞こえなくなった。
オレは鼻を鳴らした。
正邪を解せぬ?死にさらせ。それだったら今も苦しんでいるオレ達を救いもしない神はなんだよ。
歪んでしまった千晶や勇に希望の一欠片でも渡してみせろ。でなければ神の言葉なんざ耳障り以外何物でもない。
オレは台座に向かい、奪ったメノラーを台座に置いた。
【永遠のメノラー】【威厳のメノラー】。この二つを台座に置いた瞬間、第二カルパの奥へ進む道は開いた。
さぁ、探索だ。
相変わらず強い悪魔が跋扈していて苦労したが、その分強くなれた。
あちこちにお宝があるのは嬉しいが、変な物を見つけた。
【死兆石】というアイテムなのだが使い方が全く分からない。分かることはこの石からは魔人の雰囲気がかすかにするのだ。
悪魔関連の物なら邪教の館の主に聞けば分かるだろうか?
さて、この第二カルパ。苦戦する理由は悪魔だけではない。
透明な壁で構成された迷路に苦戦した。
近づけば見えるが少し離れただけで見えなくなるこの迷路の壁は迷路の全貌を隠してしまうので解こうにも解けない。あそこに行けばゴールか⁉と思って走るといきなり壁が現れて壁ドン(独りver)してしまう。
やっと迷路を解いたと思ったら、ゴールではなくカギがあったしそのカギを使う扉は延々と見つからなかったしうんざりだ。
やっとゴールに着いたときには、オレも仲魔もかなり強くなっていた。カラステングが幻魔 クラマテングに変化してしまったぐらいだ。
さて、ここにもあった覗き穴。もちろん覗く。
今度の報酬は、如何に。
相変わらずの舞台。そしてオレが覗くと開く幕。
そして開いた舞台にいる。車椅子の老紳士と喪服の女。
喪服の女はオレを見上げると語り始めた。
「メノラーは少しずつですが、順調に集まっているようですね
…ところで、この地で多くの思念に出会いませんでしたか?」
確かにこのカルパは思念体が多かった。どいつもこいつもメシアだのガイアだのうるさかったが。
「彼等は現実世界での記憶が、死という純化で生じた者達。
それゆえに、アマラの果てに流れ着いても
まだ現実での出来事を忘れられずに漂っているのです。
そこには、あなたの知る、あの氷川という男と…深い関わりのあった者が多く居たはずです。
彼こそは、かつての世界を破びへと導いた張本人。
彼が元の世界で起こした行動があって、あなたは今ここに立っているわけです
人の身では知り得ない彼の過去、東京受胎の裏側にあった出来事を…
ここまで来ていただいた御礼にお教えいたしましょう」
「ガイア教団本部…
ここより全ての出来事は始まったのです
あらゆる思想を自らの物とし、混沌の中に見出そうとする集団…
あの者は、多くの思想を内包する教団においてすら、異端視される考えの持ち主でした
そう…あなたと世界の運命を変えた人物」
これは氷川のことだろう。
「彼は…現実の中に理想は無い、理想は己の手で作り出さねばならない。
…そう言ってはばかりませんでした。
そして、人の身の則を越え、世界の創世を目論むに至ったのです
強き意思は、運命を引き寄せると言う事でしょうか…
あの者の目論見は、現実へと転じることになります。
教団内に眠っていた書物、ミロク経典がその者の手によって開かれたのです。
あの者は、経典を手にする事で、アマラの世界の転輪鼓を元の世界に復元させました。
そして、記されたシンボルの意味を解き明かし、アマラ宇宙に通じる事で…
彼は東京受胎という審判を…かつての世界の滅ぶべき運命を知ったのです。
…その後、公園で起きた事件。
あれこそ、彼が全てを知った上で行った、受胎後の、創世への準備でした。
そう、彼の手によって呼び出された悪魔達の力によって血塗られた惨劇が幕を開けました。
彼は避けられぬ運命である、世界の滅びと再生を、自らの意の下で動かす決意をしたのでした。
己の思想に反する教団の仲間、己の行動を止めんとするメシア教徒の者たち…
彼はその両者ともを、召喚した悪魔を使い、葬り去ったのです。
邪魔者の居なくなった世界で、彼は受胎を迎えました。
ミロク予言の通り…いえ、ミロク予言を読み解いたあの者の思惑通りに、受胎は起こったのです。
あの者の創世を援護するニヒロ機構という組織もまた…その時に産まれました」
「これが、東京で起こった事です
あの者が考えた通り受胎は起こり…創世が為されんとしています。
それが、この先どうなるのか…まだ未来は定まってはいません。
繰り返される【創世の輪から解き放たれる】事もある、と…
私どもは信じて。あなたを、見守っていましょう」
オレは覗き穴から顔を離した。
今回、喪服の女がくれた情報は氷川が受胎を起こした経緯だ。
氷川は世界を変えたいと強く願った。それは受胎前の東京で氷川が言った言葉の節々からも分かる。
それでミロク経典とやらを開き、アマラの転輪鼓……つまりターミナルを手に入れ、受胎で世界を死なせた。
そして自分の考える理想の世界を創るため、ニヒロ機構という自分の思想に賛成する悪魔の集団を作った。
ここまで来るのに、あいつは何人殺した?
何十億人だ。世界を殺したのだから。
そこまで人間に、前の世界に絶望したのか。氷川。
自分の思想が正しいと本気で思っているのか、氷川。
させやしない、お前に世界を創らせやしないぞ、氷川。
オレはそう決意すると先に進んだ。
第三カルパのメノラー置き場。そこに行くと王国のメノラーが火を灯し、揺れ始めた。
そして感じる魔人の気配。しかも複数。
戦闘態勢に移行するオレと仲魔達。そして、それは現れた。
それは白い馬に乗った騎士だった。頭に王冠を被った。弓矢を手にもつ骸骨の騎士。
それはオレに言った。
「…よくぞ来たな、その身を悪魔に変えし者よ。オマエがこの地に来た事で、運命の歯車は回り始めた…」
そういうと白騎士は消え、変わりに赤い馬に乗り、大きな剣を持った騎士が現れた。
「運命とは、巡り還す物よのぅ、されど我等、その宿命を越えんとし、堕ちた天使に導かれておろうおまえとて、それは同じであろう?」
再び消失。次いで現れたのは黒い馬に乗り、手に秤を持った騎士。
「…メノラー奪還に遣わされし魔人よ。汝の求めし物は、我等四騎士が手の内にある。我らに勝てば、汝の手の内に納まろう」
三度消失。三度現れたのは青ざめた色に乗り、死神の持つような大鎌を持つ騎士だった。
『…魔人よ。いくつかの死を乗り越え、ここまで来た男零時よ。オマエか…我等か…このメノラーを賭した魔人らの戦いに、勝ち残る事があのお方の望みに沿う道だ。
そしてその望み叶いし時…あのお方は最終決戦に赴く決意をなさるだろう。
オマエに覚悟はあるか?我等魔人と戦い続ける意思が?
戦いつづければ、その身も心も、人ならざるモノになるとしても…」
オレはその問いに戸惑った。いきなり言われた企みを目の前にしたらそれは戸惑う。
が、それも良いと思う心もあった。最終決戦。堕ちた天使。拾い続けたキーワードが繋り、あの老紳士の招待が想像がついた。
この予想が確かなら、あの老紳士の正体は……そして最終決戦とは。
オレはふっと笑い、覚悟があると告げた。
「良かろう。それでこそあのお方が見込んだ魔人よ。…では、この先のオマエの働きを見せてもらおう。
四騎士、混沌の地ボルテクスにて、汝の到来を待たん」
そういうと騎士は去った。
オレはなるほどと呟いた。
白騎士。赤騎士。黒騎士。そして青白い騎士。この四人組に該当する知識をオレは持っていた。
ヨハネの黙示録の四騎士。各々が、世界に住む人間の四分の一を殺す権限と力を与えられた者。
オレが戦うのは、確かに死そのものだった。
そしてそれらを倒したその先にある、老紳士の思惑。
神に復讐する唯一の方法だった。
だがこの道を選ぶにはまだ早い。
まだオレには、あの日常に戻る可能性があるのだから。
聡明な零時ならこのへんで仮説ぐらいたてられると予測しました。
しかしオリジナル展開、どうしようかな。