真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
マニアクスだとあいつの生まれたわけが分かりますね。
どうしたんだ?お前」
「いや、こっちのセリフなんだが……」
ホワイトライダーとの戦いに勝った後、ターミナルのある部屋に飛びついたオレだがなんとそこにはヒジリが先に着いていたのだ。
ちなみにヒジリがオレの姿に驚いているのはホワイトライダー戦でボロボロになっているからだ。
そして、オレが驚いている理由は当然……
「なんでここにいるのさ。オレが開通するまで待つんじゃなかったのかよ」
「いやぁ、悪い悪い。長い距離を歩かせておいて本当に悪かったけどなんとか自力でここまで行けたんだ。ハッハッハ‼」
「そうか。死にたいようだな」
「ちょ、冗談だろ⁉」
手のひらに電撃をバチリを放出させながら迫ると、ヒジリはターミナルを盾にして引きこもった。
「こっちだって苦労したんだぜ⁉ニヒロの監視を掻い潜り、苦戦しながらもここまでの経絡を探したんだからな」
「ふざけんな、部屋に引きこもっている分際でぇ!こっちはいつ襲われるかも分からない暗い坑道歩いておまけに野盗悪魔どもに襲われてまでここまで歩いてきたんだぞドチクショウ!」
「いやぁ、まぁその……すまん」
感情のまま捲し立てるとヒジリはしょぼんとなった。
………やめよう。この話は。
「で?ここは理想のターミナルなのか?」
「あ、あぁ。にらんだ通り、ここのセキュリティは甘い。ここならいろいろ調べられそうだ」
ヒジリはそういうとコンとターミナルを叩いた。
「調べることは山積みだ。しかもセキュリティが甘いとはいえ全く警戒されていないわけじゃない。調べるのにどれくらい時間がかかるか分からねぇ」
「そうか。んじゃその間、アサクサで観光でもしてようかね」
「あぁ、そうしてきな」
オレはそういうとターミナルから出た。
さて、フトミミは元気かね。
アサクサではあちこちでマネカタ達が復興作業を行っていた。
マネカタ達は活気に満ちていた。ようやく自由と安住の地を手にしたんだ。それは喜ばしいだろう。
しかしオレの心は疑問にまみれて重々しかった。
この疑問は前々から思っていたことだが、ここに来てさらに疑問が大きくなった。
そのきっかけはここにいる悪魔と戦っていた時だ。
地霊 サルタヒコという悪魔がいる。このサルタヒコは個人名であり、たとえばコダマとかコッパテングのように種族名ではない。
つまりサルタヒコというのは一人の存在であり、唯一無二のはずなのだ。
ところがアサクサには複数のサルタヒコがいたのだ。
もとよりニヒロやマントラにも個人名を冠した悪魔は多数存在しているが、組織にはクローンのように同じ悪魔を複製を創る技術でもあるのかと思ったが、その考えはこのアサクサに来て否定された。
ここはさして重要な土地ではない。そんなところに組織の悪魔がいるわけがない。つまり複製技術なんてあるわけがないのだ。
サルタヒコに話を聞いたところ、彼はどの組織にも属していないし、過去にも属していないとの話だ。
つまり個人名の悪魔は自然と複数いるということだ。
これはどういうことだろう。種類が同じ悪魔は見た目にも性格的にも違いがないのだ。
また、サルタヒコに自身の武勇伝を語らせてみた。嬉々として語ってくれたサルタヒコの言葉をオレは一言一句覚えて、今度は別のサルタヒコにも武勇伝を語らせた。
すると別のサルタヒコも一番目のサルタヒコと同じ事を語った。
どのサルタヒコも全く同じサルタヒコだということが証明されてしまった。
語り終わった瞬間二人のサルタヒコは殺しあいを開始した。オレが本物のサルタヒコだと争って。
結果、最初のサルタヒコが若干マガツヒを多く保有していたこともあり勝った。
そのサルタヒコは蒼白な顔をして茫然としていた。
当たり前だ。自分以外の自分を殺したところでそれが自分であることには変わらない。自分が他の自分を殺すという矛盾、どれだけ恐ろしいことか。
その葛藤は進化間近のハイピクシーが語ってくれた。
『私達のような種族名の名前を持つ悪魔はまだマシなんだけどね。今の私と同じハイピクシーもヨヨギ公園にたくさんいるけど、それでも些細な違いさえ持てればさっきみたいな自分同士の殺しあいなんてそうそうおきなかったわ。
けど個人名を持つ悪魔は別。いかに違いを持ったところで同じ名前を持つ悪魔同士、それが自分とは違うと割りきれないのよ。それでさっきみたいに我慢できなくなって……たまに、ああなるわ』
ハイピクシーはサルタヒコの死体を指差して言った。
この言葉で確定した。
悪魔は個を持てない、ということに。
組織の悪魔が自分証明のために殺しあわないのは、組織のため。決して割りきってるわけじゃない。
だが俗にいう野良の悪魔は他の自分を殺すことを躊躇う理由がない。
悪魔、特に考える知性を持った悪魔は葛藤に苦しみ続けるだろう。これもあの喪服の女が行った『大いなる意志』とやらが創ったシステムなのだろうか。
「ふざけてやがる……」
オレは怒りの声をあげながら立ちふさがった悪魔の首を飛ばした。
その世界に生きる住人をまるっきり無視した受胎というシステム。そして受胎後に存在する自分という存在の証明が出来ない悪魔という存在。
どれだけ膨大な数の存在の意志を踏みにじれば気が済むんだ。カミサマは。
………ここで悩んでもキリがない。今はフトミミだ。
フトミミはアサクサに来る前に見かけた変な建物にいた。
名前を【ミフナシロ】というこの建物はマネカタ達の聖地であるとのこと。
確かにそこを安住の地にしたいだろう。自分達の故郷なんだから。
フトミミはオレが来るのをあらかじめ知っていたようだ。ご自慢の予知能力で知ったのだろう。
「やぁ、いらっしゃい。もうアサクサの街は見たかい?」
「あぁ。色々壊れていたけど、みんな復興に勤しんでいたねぇ」
そういうのを見るのは好きだ。ああやって元気にワイワイやってるのを見てると元気がもらえる。
そういうとフトミミはにっこりと笑った。
「君は本当に悪魔らしくないね」
「元、人間だからねぇ」
そういうとフトミミは少々驚いた素振りをした。
「そうなのかい?なるほど、だから君からは他の悪魔と違う雰囲気を感じるのか」
そういうとフトミミはオレを凝視した。
「君には色々恩がある。本当なら色々案内するべきなんだろうけど……観光はここまでにしてもらうよ」
フトミミの雰囲気が鋭くなった。
「ここは我らマネカタの聖地ミフナシロ。この奥には我々マネカタの母なる場所がある。命の恩人である君とはいえ、通すわけには行かないんだ」
「母なる場所?………気になるけど、分かった。通らないよ」
そういうとフトミミの雰囲気が緩んだ。
「すまない。でもアサクサの街は好きに見てもらって構わないから。もっとも、まだまだ復興には程遠いから見るべきところはないと思うけど」
「それは後々の楽しみにとっておくさ」
オレがそういうとフトミミは助かるよと微笑んだ。
「それじゃ僕は祈りに戻るよ。マネカタ達が平穏に過ごすために必要なこと。早く見いださないとね」
フトミミの顔は確固たる決意に染まっていた。
そのまま去るフトミミの背をオレは見つめていた。
あんな風に、ただ純粋に誰かのために動ける人間ばかりだったのなら。受胎も起こらなかっただろうに。
そう思いながら、オレはミフナシロから出ていった。
アサクサにある地下通路を通っていると血まみれのマネカタに遭遇した。
マネカタはオレを見るなり、すがりついてきた。
「た、助けて!奥でサカハギが暴れてるんだ‼」
「サカハギ?悪魔なのか?」
問うと首を横に振る。
「サカハギは、僕らを殺しまくる……悪いマネカタ…」
「マネカタ……?」
マネカタは基本弱い。だから殺戮なんてされる側と思っていたオレは驚いた。
もしかしたらフトミミのような異質なマネカタなのか?そう思い、オレは通路の奥に向かった。
奥にいくと濃密なマガツヒの匂いと、血のような液体状のマガツヒがオレの感覚を覆った。
それらに空腹感を覚えつつもこらえ、オレは奥にいる何かに目をむけた。
それはマネカタだった。しかしただのマネカタではない。フトミミ同様、ある程度の悪魔だったら屠れるぐらいに強い気配を持っている。
そしてそれは別のマネカタの顔をナイフと鉤爪が合体したような武器で剥いでいた。
「全くバカな奴だ。大人しくマガツヒよこせば殺されずに済んだのによぅ……ま、そのおかげでこうやって皮を剥げるんだがな……」
クックッと嗤うマネカタ。
オレは不快感のあまりに舌打ちをした。
「ッ⁉誰だ!」
その音にやっとオレのことに気づいたのだろう。マネカタがこちらを向く。
こいつの全体を見たとき、オレはそいつの異常さに気づいた。
他のマネカタも着ている囚人服を大量の血で汚し、しかもそれにマネカタの顔の皮をあちこち縫い付けていたのだ。
それより目を引くのは奴の目。
そいつの目は汚い目をしていた。例えるなら、イケブクロにいたオニの目。あれより汚い。
野心でギラギラと光り、誰かを蹂躙することを楽とするあの目。汚い。こっち見るな。
そう思っているとマネカタ、恐らくサカハギは息をはいた。
「脅かすなよ、あのマネカタどもが来たかと思ったぜ……」
「あのマネカタ…?」
「あぁ、弱い連中だがな。そいつらが最近ここに戻ってきてな。そいつらがちょっとばかりうざったいんだ。ったく、そのままマントラに殺されてりゃ良いものを…」
よく分かった。フトミミ達のことか。
その答えにたどり着くとサカハギはクックッと嗤った。
「ま、そいつがこのドジな連中を引き連れてくれたおかげでこうやってマガツヒを奪えるんだがな。オレはマガツヒを貯め、いずれ悪魔を支配してやるんだ。
オレはその言葉にピクッと眉を動かした。
なぜだ。なぜこいつは悪魔のような振る舞いをする。なぜ……
「お前、見ねぇツラだがお前も悪魔ならマガツヒが欲しいんじゃねぇのか?新鮮なマガツヒがよぉ」
突然の問いかけ。オレはこう答えた。
「まぁ、欲しいがな。マネカタとか弱い奴からは奪わねぇよ?」
「………悪魔とは思えねぇ言葉だな。悪魔ってのは弱者を蹂躙してなんぼなのに」
サカハギは呆れたような驚いたような声を出し、首を振った。
「まぁ良い。そろそろ去らせてもらうぜ。周りに騒がれると動きにくいからな。
………オレの名はサカハギ。いずれ悪魔を支配する者の名前だ。覚えておくんだな」
「その夢、成ったらおぼえてやるよ」
歯を剥き出しながら言うとサカハギは鼻を鳴らし、去っていった。
さて、サカハギという存在。これはどう考えるべきか……
オレは思案に耽りながら死んでいるマネカタを一瞥し、少し黙祷を捧げると去っていった。