真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
今回、千晶様悪魔化……
はっきりいってかなりあの姿は衝撃的だった………。
ヨヨギ公園の一角に展開された魔人の空間。
その中でオレは倒れ伏したマザーハーロットを見下ろした。
髑髏の頭はひびだらけ。もはや傷が無いところを探すのが無理な話になっていた。
しかしそれでもバビロンの大淫婦はオレに笑いかけ、オレをやはりこう評した。
「おぞましき……ものよの……」
オレはその言葉をマザーハーロットの遺言にした。すなわち、さっさと頭を踏み潰して息の根を止める。
グシャ!
あっけなくマザーハーロットの頭は砕けた。
そして残された体と、マザーハーロットが騎乗していた7つ首の獣がマガツヒとなって消えた。
そしてドロップしたメノラー……【美のメノラー】を拾い上げると同時に魔人の結界から抜けた。
オレはふぅとため息をつくと壁に寄りかかった。
強かった、マザーハーロットは。物理は跳ね返すし電撃も通用しないしで行えることが少なすぎた。
しかし足りない。オレを恐怖させる要素がマザーハーロットには少なすぎた。
ダンテのような傲慢さ。そしてそれに裏付けされた強さも。
そしてアマラ経絡のいずこでオレにキスしたあの黒い影のような存在のような死の気配も。
そういった存在が、オレの神経を鈍らせてしまったのだろうか?特に、あの黒い影の存在はオレの恐怖という感情を壊してしまったような気がする。
頭のネジがぶっとぶほど、あの黒い影は恐ろしかった。
一体、あれはなんだったんだろうな……
憂鬱な顔をしているとクイーンメイブが回復魔法による治療を終えたのか、オレの顔を見据えていた。
「………どうした、メイブ?」
「いや、あなたのその顔、結構絵になるなって思ってたわ」
なんだそりゃ。
「オレの不気味な顔を見て絵になるな、なんて感想出したのはお前が初めてだよ」
「そう?結構あなたの顔は、イケてる顔だと思うんだけど」
「………悪魔と人間の価値観の相違と考えるべきか、クラスの女子達の目を疑うべきか」
冗談めかしてそう言う。
まぁ今のオレをアニメのような絵に変えたら悪役の幹部役に登場するような絵にはなるか?
不気味な白い肌、その上に這うように走る刺青のような模様。そして首の後ろに生えた角に金目。おや、かなり良い役になりそう。
……ってなにやってるんだ、オレ。
オレは頭をクシャクシャと掻いた。どうも小説家の卵としての癖が抜けてないらしい。
今は、キャラクターなんて考える余裕も無いくせに。
オレはふぅとまたため息をつくと歩き出した。
目指す先はイケブクロ。アラディアはそこで新たな力が生まれると言った。
それが何者であるか。見定めなければ。
イケブクロは生き残った僅かな元マントラ軍の残党が住むスラムと化していた。
しかし雰囲気がおかしい。悪魔も、それを感じて戸惑いの言葉を吐露した。
オレはその雰囲気を放っているマントラ軍の本営ビルに向かった。
マントラ軍本営ビルの最上階。かつてゴズテンノウというマントラ軍の首領が座していた広間。
そこにはゴズテンノウの残骸と、その上に座る片腕のない人間の姿があった。
ボロボロになり、痛々しい姿のその人間は……
「千晶……⁉」
その顔を見て、オレは駆けようとした。
しかしそれをクイーンメイブと止めた。
なぜ⁉と目で問うとクイーンメイブは様子がおかしいと目で訴えてきた。
オレは千晶を凝視し、眉を寄せた。
千晶の残った片腕。そこにかなりの量のマガツヒを含んだ霊石を嵌め込んだ指輪を指に嵌めていたのだ。
千晶はそれをゴズテンノウの残骸に触れさせた。
すると……
『女よ。如何なる理由でこの地を訪れたるや?その身の怒りはいかなる故ぞ?』
広間に響く重々しい声。かつてのこの広間の主、ゴズテンノウの声がどこからともなく聞こえた。
千晶はその声に問うた
「私が感じていた力はあなたなの?………そう、滅びていなかったのね……あなたが呼んでいたのかしら?ゴズテンノウ……」
その野望に満ちた声は、本当に千晶かと疑った。千晶は傲慢なところがあったが、こんな冷たさを感じる声は出さなかった。
オレが戦慄していると姿なきゴズテンノウは静かに、しかし怒りに満ちた声をあげた。
「ニヒロの計略に落ちて後、我が身はただ虚空を浪々とするのみ。だが、一時たりともこの身の怒りを忘れたことはない」
その怒りに合わせるよう、千晶は暗い声で言葉を紡いだ。
「私は力を求めた。けれど、それは手に入らずじまいどんな試練を受けようとも。どんな傷を負おうとも。私のコトワリは変わらないわ」
後半は毅然とそう言うものの千晶は悔しそうに目を細めながら上を見上げた。
「けれど、このままでは私が戴くのは力もなく、なんの意味もなさないコトワリ……」
その言葉を待っていたかのように再び響き渡りはじめたゴズテンノウの声。
「女よ、その身に我が精を得よ。かつて我はこの世界を静寂の輩から守っていた。しかし我らが真に成すべきだったのは力の国を興すことだったのだ。とはいえ偶像たるこの身に出来るはずもなかった。しかし、我が人の身であったなら……コトワリを持てる身であったのなら答えは違っていたであろう」
その言葉で、オレは千晶とゴズテンノウの運命に似たものを感じた。
千晶はコトワリを持てる身であっても力がなかった。
ゴズテンノウは力があってもコトワリを持てる身でなかった。
一人ではどうしようもならない縛り。それによって二人は創世者になれなかった。
オレはその考えに行き着いたとたん、千晶の狙いが分かった。
オレは千晶を止めようと衝撃の魔法を放った。しかしそれは不可視の壁に止められた。
「ゴズテンノウ……!」
不可視の壁を作り、オレの攻撃を防いだ犯人の名を忌々しげに呟くとオレはがむしゃらに壁を殴り続けた。
しかし壁は壊れない。その中で、千晶とゴズテンノウの会話は続く。
「あなたの力で私が強くなるのなら……世界が創れるのなら……」
羨望するようにゆらりと立ちあがり、姿なきゴズテンノウの姿が見えてるかのように虚空を見上げるとゴズテンノウはそれに応えるように言葉を紡ぐ。
「お前の説くコトワリも、我が力の国の一つの姿。我が最後の力、お前に託そう‼」
「女よ、我が精を得よ!悪魔を導く者、魔丞たれ‼」
その言葉が合図になったかのように、千晶の身に莫大な量の力が注がれる。
千晶は激痛に身を歪めた。当たり前だ。人の身であれだけの量の力が一気に注がれてはどれだけの痛みが走るか。
呆然と苦しむ千晶の姿を見ていると。
千晶の失った片腕が生えてきた。
それは人の腕の形ではあったが、ドス黒い肌であり、決して人の腕ではなかった。
そしてまともな形をしていた腕も力の奔流に押されるが如くどんどん肥大していく。
形も悪魔がもつそれになり、千晶は声なき絶叫をあげる。
「ぐわっ⁉」
瞬間、力の奔流がこちらにも流れ、オレは吹き飛んだ。
「零時!」
クイーンメイブが吹き飛んだオレを受け止めてくれるが礼を言うほどオレに余裕はなかった。
力の奔流が光輝き、目を細めているとすさまじい音とともに爆音と衝撃が広間に走った。
思わず目を瞑り、それに耐えると。
広間の姿が一変した。
赤い松明で熱さしか感じていなかった広間が、蒼く染まっていたのだ。
そして変化の中心、千晶は……
姿が見えない。
しかしその気配はあった。崩れたゴズテンノウの最大の欠片、頭部の後ろに。
「熱い……手が燃えるよう……」
あれだけの痛みに晒されたにも関わらず、その声に弱さはなかった。
そしてゴズテンノウの頭部をドンと叩くような衝撃が走り、オレは嫌な予感がして腕で頭部をガードした。
その瞬間、ゴズテンノウの頭部が飛び散り、破片がこちらまで飛んでくるのをしのぐとオレは土煙の中に立つ千晶の全貌を見た。
それは勇よりも顕著な変化だった。綺麗な茶髪は白く染まり、目はまるで猛禽類のような鈍い金色。
そして再生した腕は、巨大で歪な形をしていた。
千晶は、残酷な笑みを浮かべながら腕を掲げた。
「見て、零時。美しいでしょう?力有るものは美しいわ……」
恍惚といった様子でそういう千晶の姿は美しいという言葉からかけ離れていた。
千晶は自分の腕を見ていると喜びに震えた声をあげた。
「私は自分で自分の道を切り開く力を手にいれた。あぁ、見えるわ!ヨスガを求める強き悪魔たちが集って来るのが!」
千晶はオレに向けて変化した腕を向けた。
「この手なら掴めるはずよ。理想の国が……!私の理想とする世界が……!」
ウフフ………アーハッハッハッハッハッハッ……!
哄笑する千晶の威を表すかの如く松明の蒼い火がゴゥと燃え上がった。
オレはただ、その姿を見続けていた。
その時から、だろうか。
オレが壊れはじめたのは。