真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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現実世界編。終了です。

次回から本番となります。戦闘描写の自信ありませんがね……


東京受胎

 

実を言えば、この時のオレには恐怖以上に歓喜が体を走り抜けた。

 

オレは自分を秀才だと自負している。どんなことでも練習したり勉強したりすれば平均以上の成果をだせる才能があるし、見よう見まねで真似すればある程度の事は可能となると自覚できるぐらいに。

 

だがオレには、人生をかけて叶えたい夢がなかった。どんな事を極めようとも過去に誰かが遂げたことの繰り返しになるようでとても魅力的には思えなかった。

 

オレは特別になりたい。その他大勢のように平凡に生きて死ぬのは嫌だと。ただそう思うだけだった。

 

どういった存在になりたいのか。明確な答えを示さぬまま。

 

だからだろう。

 

この悪魔に惹かれる思いがあったのは。

 

それを使役する氷川という特別な存在に嫉妬のような思いが生まれたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔はオレを殺そうとジリジリ近づく。オレは悪魔に一矢報いようと拳を構える。

 

隙をついて、逃げる。出来なければ、死だ。

 

自分に言い聞かせるように心の中で呟く。オレは悪魔の一挙一動を見ようと目を見開く。

 

ついに悪魔が動く。そう思った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめなさいッ‼」

 

女性の切り裂くような声が響いた。

 

その瞬間、黒い影が……悪魔が消え去った。

 

呆然としたオレはその声を出した張本人の方を見て、驚愕した。

 

「祐子先生……⁉」

 

そう、ここに入院しているはずの高尾 祐子が私服姿でそこにいたのだ。

 

驚愕するオレの方を見ようとせず、祐子先生は氷川を睨んだ。

 

「ほんの彼一人を、なぜ見逃してあげられないの?

この程度の事で計画は揺るがないはずよ」

 

「事の大小ではありませんよ。私は計画に例外を許すつもりはない」

 

氷川は一切動じることなく、淡々と述べた。

 

しかしそう言われるのは承知していたのか、先生は凛としてこう言いはなった。

 

「彼を助けてくれないなら私は……もう貴方に協力しません」

 

祐子先生がそういうと氷川の顔に初めて表情が表れた。

 

苦々しい表情で祐子先生を一睨みすると渋々といった調子でいう。

 

「………………困った巫女だ。まあ……教え子の面倒は教師に任せるとしましょう。

今すぐ部屋を出て行って下さい。私はこの幸福な終わりを一人静かに迎えたいのですよ」

 

氷川はそういうと回転椅子をくるりと回し、こちらに背を向けた。

 

その姿を一睨みすると祐子先生はようやくこちらを見た。

 

「……零時君。屋上で待っているわ。あそこなら、街がよく見渡せる……その目で確かめにいらっしゃい。これから世界に起こる出来事を……」

 

「え?」

 

先生の言ったことがよく分からず、オレは間抜けな声をあげるしかなかった。

 

先生はそれ以上はなにも語らず、部屋を出ていった。

 

本来なら、何かをしようとしている氷川を止めるべきかもしれない。

 

だが、せっかく助けてくれた祐子先生の行動を無駄にはできない。それに加えて先生のことが気になる。

 

オレはしばし逡巡し先生の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下を出てみれば、もう先生の姿はなかった。

 

小走りでエレベーターのある方へ向かう。するとそこには………

 

 

誰かが…………否、【何か】がいた。

 

それはどこかのお金持ちのお坊っちゃまと、その面倒を見る老婆の姿をしていた。

 

二人とも葬式にでも行くような真っ黒な出で立ちをしており、老婆にいたっては布で顔を隠していた。

 

オレが二人を人ではないと感じたのは、奇抜な出で立ちではなく、その雰囲気。

 

それは先程の悪魔よりも恐ろしい雰囲気を漂わせていたのだ。そんな存在が人であるはずがない。

 

冷や汗が止まらない。呼吸が浅くなる。どう動いても、死ぬ運命しか見えない。

 

思考が白くなりつつあるなかで、ふと気づいた。

 

お坊っちゃまのほうがオレを見て、驚愕するように目を見開いていたのだ。

 

その姿に喪服の老婆も不思議に思ったのか子供に問うた。

 

「どうかなさいましたか坊っちゃま?あの者が気になるんでございますか?」

 

すると子供はヒソヒソと、老婆に何かを言う仕草をした。

 

老婆は納得した様子になった。

 

「…そうでございますか。それはそれは……でも今は、忙しゅうございます。あとにいたしましょう」

 

そう言ったのを最後に音もなく二人は【消え去った】。

 

零時「ブハッ!」

 

二人が消えたことにより、重たい雰囲気は消え、呼吸が正常になった。

 

「いったい……なんなんだ、さっきから……!」

 

オレは震える体でそういうとエレベーターへ転がり込むように入り、Rのボタンを押して、扉を閉ざすボタンを乱打した。

 

今はとにかく明るいところへ向かいたかった。

 

エレベーターが扉を閉ざし、上に上り始めるとオレは深く息を吐く。

 

が、不安と恐怖はいつまでも消えなかった。これから恐ろしいことが起こる。そんな気がしてならない。

 

とにかく祐子先生の話を聞こう。それしか出来ることは、ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年移動中……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新宿衛生病院の屋上。降り注ぐ太陽の光に安心感が沸き上がる。

 

祐子先生は、街並みを眺めていた。その瞳は不思議な光を湛えていた。

 

「…来たのね、零時君」

 

「……………」

 

本来ならここで軽口の一つでも言うところだが、さっきから立て続けに起こった出来事のせいでそんなことをいう元気は失せていた。

 

「………さっきは間に合ってよかった……君が、悪魔にやられなくて」

 

「先生………一体、何が……【起こるんですか】?」

 

ようやく言えた言葉。間違いなく起こる今後のことを問うしか、オレに出来ることはなかった。

 

「……あの人の……氷川の話を君も聞いたでしょう?間もなく、この世界は混沌に沈むの。それが「受胎」……」

 

混沌……その言葉はヒジリからもらった雑誌にもあった単語だった。

 

「人がかつて経験したことのない、世界の転生よ。今この病院に居ない人間は、みんな命の灯を落としてしまうわ」

 

オレは絶句した。そんな大虐殺がこれから起きるというのか。

 

信じられない。到底信じられることではなかった。

 

先生は顔を俯かせ、悲痛な面持ちをした。

 

「こんなやり方……きっと誰も許しはしないでしょうね。

でも、今のまま老いた世界を生き永らえさせても、いずれ力を失ってしまう。

世界は、また生まれるため、死んでいかなければならない…………その罪を背負うのは私」

 

そう言い切ると先生は毅然と顔を上げた。

 

「だけど……後悔はしていないわ。最後に決まった運命で……君はここにたどり着いた。これで君は「受胎」を生き残るわ。

でも、もしかしたらそれは死よりずっと辛い事かも知れない」

 

「何を言って………?」

 

問いかけるオレの言葉には答えず、祐子先生は言葉を続ける。

 

「だけど……私は君を信じてる。

零時君……

私に…………会いに来て」

 

「………?」

 

首をかしげるオレに祐子先生は言葉を続けるのみだった。

 

まるで話せる時間が、今しかないように

 

「…たとえ世界がどんな姿に変わっても……私が力になってあげる。

これから訪れる世界で、私は「巫女」として創世の中心を成す……

きっと君に、道を示してあげられるわ。

 

「ちゃんと説明してください!いったい何が起こるんです!いったい……」

 

我慢できなくなって叫ぶも、先生は哀しそうに目を背けた。

 

「……分かってる。理解できない事だらけよね。でも、今はもう時間が無いの。

 

零時君……

 

もし君が自分の力で私の元へたどり着いたなら…その時には教えてあげる。……全ての疑問の答を。そして、私の本当の心の内を……」

 

先生がそういった瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京の風景。連なるビル群に黒いスパークのようなものが走った。

 

「なんだ……?」

 

疑問の声をあげた瞬間、

 

 

 

 

ガシャーンという音とともに漆黒の雷が何本も東京のあちこちに落ちた。

 

雷が落ちたところは焦げた訳ではなく、ただ漆黒に染まり、そして音もなく崩れ落ちた。

 

それが合図だったかのように、遥か先にある土地が隆起し、空へ登りはじめた。

 

「……………」

 

それを呆然と眺めていると空中に太陽とは別の輝きが生まれた。

 

それと同時にオレの意識が薄れ始める。まるで意識を意図的に失わされているかのように。

 

崩れ落ちるオレの体。視界の隅で、祐子先生が目を瞑っているのが見えたところで。

 

 

オレは、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、世界が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえる。

 

「…我が世界へ入りたる者よ。おまえの心を見せよ……

 

おお、おまえの心には何もない。コトワリの芽生えすら無い。

 

それでは出来ない。世界を創造する者とは成りえない。

 

行け! そして探すがよい!

 

おまえは何者かにならねばならぬ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレは不意に覚醒した。しかし起きたばかりのように、オレの意識は朦朧としていた。

 

そして老婆がオレに一切の感情を含まない声で言葉を吐き出した。

 

「…恐れ多くも、坊ちゃまは貴方に大層興味をもたれています。

ヒトに過ぎない哀れな貴方に、特別に贈り物をあげようと申しております。

貴方はこの贈り物を受け取らなくてはなりません」

 

その言葉を混濁する意識の中で聞いた瞬間、オレは仰向けに寝かされていた。

 

上に向けられたオレの顔の上で、二人がオレの顔を覗きこんだ。

 

「…動いてはいけません。……痛いのは一瞬だけです……」

 

何をする気だと問う暇もなく、子どもがそれを取り出した。それは虫のようななにかだった。

 

子どもはそれをオレの顔の上まで持っていき、オレの顔の上に落とした。

 

するとその虫は、オレの皮膚を食い破って中に入りこんだ。

 

激痛が全身に回る。悲鳴をあげたいが声がなぜか出せない。

 

再び意識がなくなってきた。消えゆく意識の中で、子どもの声が聞こえた。

 

「これでキミは悪魔になるんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 





彼の性格が、後々の展開に重要な意味を持ちます。
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