真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
大いなる意志に対して人修羅君が憎しみを持つ話
ベルゼブブは広間の奥に大量の宝やマッカ、アイテムを保持していたためこれを全てオレは自分の物にした。敗者の物は勝者の物。弱肉強食なのはベルゼブブも承知の上だろう。
呪いが解け、歩きやすくなったアマラ深界第4カルパだが、非常にめんどくさい構造になっていたことが発覚した。
鍵がなければ通れないところに第5カルパへの道を開くスイッチがあり、その鍵がなんとボルテクス界にあると情報を得たのだ。
で、その鍵を持っている奴がなんとオレによって文無しになったロキが持ち主だと聞いてギンザに向かうが、なんとロキは30マッカでとあるマネカタに売ったという。
そのマネカタはあのガラクタ集めのマネカタだという。果たしてあのヨスガの一見以降、生きているかどうか。
結論、生きてました。
奴はアサクサの本当に隅に店を開いていて悪魔に目をつけられなかったようだ。
そのマネカタから鍵をもらい、アマラ深界に戻ると第5カルパの道を開いた。
そしてすぐに見つかったあの覗き穴。オレはすかさずそれに食い入るように覗いた。
オレを待っていたかのように上がる幕。見える舞台。そこにいるのは車椅子の老紳士と喪服の淑女。
淑女はオレの方に向き合うと言葉を紡ぎ始めた。
「ついに全てのメノラーを集めここに来ましたか。以前約束しましたね、あなたに全てを教えると……お話しましょう、もう気付いているかもしれませんが、メノラーは盗まれた訳ではありません。訳あって我が主が、それに見合うであろう者達に手渡した印なのです」
それは予想していたことだ。その理由については……答え合わせといこうか。
「騙していた事はお詫びしましょう。しかし、これには理由があるのです。これから話す事を聞いていただければ、その理由もわかっていただけましょう。
時の流れを越え、世界、宇宙では、光と闇の勢力が争ってきました。その戦いはあらゆるものに影響を与え…
悪魔や人間達もいずれかの勢力の支配下に組み込まれ、戦いつづけてきました。
…そしてその戦いは終わる事無く続いているのです。
しかしあの御方は、この無限の戦いを終わらせる事をその名に誓いました。
今までに無い、己が意を次ぐ新たな混沌の悪魔を創り出し…光の勢力との終の決戦に挑む決意をなされたのです。
その悪魔を生み出す為に用意されたのが死を司る魔人でした。
死に挑み、死を越えることで、悪魔の滅ぼし、滅ぶ力の結晶となることができる。それが我等に許される、初めての黒い希望になるであろう、と……。
そう、それが全て我が主とあの御方の間で定められた、新たな悪魔を創る計画でした。
多くの魔人達、そしてこのアマラ深界、全てはあなたを試す為の試練だったのです
ある魔人は何も知らず、あなたに戦いを挑み……
またある魔人は、全てを知りつつ、混沌の未来を夢見てあなたに討たれました。
そう、全ては終の決戦の刻を迎えんがために…」
「そして今、あなたは期待通り、全ての魔人を退け、ここにきました
あの御方の望んだ…混沌の希望たる悪魔として生まれ変わるに相応しい力を持って。
どうですか?零時。あなたのその力を、私たちの為に…
深淵に潜む混沌の悪魔たちのために役立ててはくれせんか?
強制はいたしません。
…あなたがボルテクスで今までどおり、人間の力の行く末を信じるのであれば、もうこの地を踏む必要もありませんしかし、世の定め、逃れられぬ運命、全てを支配する絶対的な存在…
もしそれらに疑問を持つ事があるならば…あなたは深淵の底まで訪れるべきなのです。
その心まで、悪魔として生まれ変わるために…」
ここで淑女の話が変わった
「最後に…あなたと関わりのあった一人の人間……運命に流され、生かされている者についてあなたに語りましょう。それを見て進むべき道を見定める事を…我が主は望んでおります」
淑女がそういうと、オレと淑女の間に何者かが浮かび上がるように現れた。オレはその姿を見ると息を呑んだ。
それはマガツヒの湖に、勇によって沈められたヒジリの姿だったのだ。
「その者、かつてはヒジリという名で存在した一人の人間。その者は、死してなお運命に糸引かれ…ボルテクスの地に存在していました思い出してごらんなさい。その者と初めて会った時の事、東京受胎の起きた時のことを…」
オレは淑女の言葉に、ヒジリと会ったことを思い出した。
ヒジリはシンジュク衛生病院の地下でターミナルの前にいた確か目の前が光に包まれて、気がついたらここにいたといっていた……あ?
その言葉を受け取るとするならヒジリは病院にはいないだろうと考える。病院にいたのなら、彼はこの部屋にいたというべきなのだ。
ならば彼は外にいたとなる。だが、そうなるとヒジリは死んでいるはずなのだ。あの時、シンジュク衛生病院にいない者は死ぬ。そのはずなのだ。
なら、ヒジリはなぜあそこに……?
淑女はオレの心情を悟ったかのように話し始めた。
「…そうです、この者は他の者と同じく、あの受胎でその身をうたれました。あなたたちの居た病院へと向かう途中で、受胎が始まり…命を落としたのです。理に適わぬことだと思いませんか?この者だけが変わらぬ姿でボルテクスにいるなどとは…
それはこの者の背負った業罪のため…彼は死という安息すら奪われ、運命に弄ばれる哀れな存在であったのです。決して終わる事の無い、償いの苦しみを背負わされたままに……
この者に課されたのは、世界に起こる全てを見届けねばならぬ罰。あらゆる時代の中で、世界の天秤を…その傾きを見届け、記す事を使命づけられました。その大海の水をコップで掻きだすような償いは、彼に永劫の時の中をさ迷う事を強いたのです。
人の身であれば、その霊に良いにしろ、悪いにしろ業を積み、次なる転生の先を変え得るもの。
しかし、彼からはこの権利が奪われました。ゆえに、その身が滅んでも、魂は救済される事なく、その役目を続けなくてはいけない。あたかも救われぬ魂を持つ悪魔の如く、呪われた永遠の命で過ごすしかないのです。
見よ、そして記すのだ。世界の流れを…法と混沌の終り亡き戦いを余さず記す為に…。それが許されぬ大罪を犯したオマエへの罰なのだ…。
解りますか?
彼はアマラの摂理に呼ばれ、業罪の呪いに再び不幸な生を受け…一度死した身に気づく事無くボルテクスに立ったのです。
そうして彼は、あなたと再会しました。それは、あなたがこの世界の行く末に大きな影響を与える可能性があるからでしょう。あなたと共に居る事で、彼は世界を見守りつづけていたのです。
彼の不幸は、あの者自身が、その呪われた記憶を持たない事。彼は、己は人として助かり生き延びたと信じ行動しました。
その行動の結果がどうなったかは、あなたも知っているでしょう。人ならざるマネカタという物体にされた彼は、創世を目論む者達に挑み…そして再び肉体を失ったのです……」
「あの者はまた、苦しみの地へと旅立ちました。封じられた意思と、減る事の無い業罪を抱えて…このように運命に定められたまま生きるのか…自分の行動を自分で決めるのか…
定めにそむく意思があるなら…深淵の底に生きる悪魔と共に新たな運命を切り開く意思があるなら…我が主の元を訪れてください。
この先の扉…そこはあなたに始めに渡したメノラーで開ける事が出来ます。我が主の元まで来て…いただけますよね?」
オレはしばし迷い、そして頷いた。
「では、最下層で待っています。最後の扉への道を空けておきますので。あなたに始めに渡したメノラーを使い、最後の場所を抜けてきてください。お待ちしております。それでは、またお会いしましょう」
気がつくと、オレの手は血で濡れていた。あまりにも強く手を握りしめ、いつの間にか肉を抉っていたのだ。
だがオレはそれすらどうにも思えないほど……
かつてない憎しみにその身をかきむしっていた。
受胎という転生システム。それを創った大いなる意志とやらはどこまでオレ達を虐げるつもりか?
思えばおかしいかったのだ。ヒジリはあまりにもターミナルに、アマラ経絡に詳しかった。あれは恐らく、ヒジリはその呪われた生の中でターミナルに触れていたのではないか?
もう嫌だ。なぜ、なぜ神の掌でオレ達は躍り続けなければいけないのだ。そのルールに従わなければいけない?
オレは運命などという漠然としたものに憎しみを覚えたことはない。だがその憎しみはどんな憎しみよりも黒かった。
その復讐の道は、あの二人が指し示している。
その道を、歩きたくてたまらなかった。だが……だが……!
「まだその時じゃない。祐子先生が創世を成せば、戻れるんだ。それさえ成せれば……成せれば!」
だが大いなる意志はアラディアの存在を認めていない。絶対に何かしらの妨害をしてくるだろう。
オレはそう判断するとアマラ深界を抜けた。祐子先生を探すために。
あの人を殺させるわけには…いかない。
まだ零時君は人の世界に戻る可能性を消してません。
今はまだ……ね。