真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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このサマエルという存在はなんなんでしょうね?

悪魔?堕天使?少なくとも良い存在ではないでしょうが……




消えた希望

 

サマエル。一見天使のような名前だが、その存在は堕天使に近い。

 

名の意味は『神の悪意』。天使のカマエルと同一視されることも、また大魔王サタンとも同一視されることもある存在。

 

どちらにしても嫌な存在だ。カマエルは光の存在でありながら悪魔に例えられてしまうほど残虐だし、サタンは言わずもがな、である。

 

その天使だか堕天使だが分からない半端者のサマエルは力だけは半端じゃなかった。

 

「【メギドラ】」

 

「ちぃ……!」

 

飛んできた万能魔法をオレは紙一重でかわした。カウンター気味に【破邪の光弾】を放つがサマエルはそれをかわす。

 

蛇のようにスルスルと宙を飛ぶサマエル。こんな奴に苦戦するほどオレは弱かったか?

 

「否だ!お前よりも……!」

 

神への復讐を夢見た魔人やアマラ深界の悪魔達の方が怖かった。

 

あの圧倒的な存在感を振り撒く、ダンテのほうが怖かった。

 

その存在と戦い、生き残ってきたオレにとってはお前なんか……

 

「ゴミなんだよ!邪魔するなァアアアアア‼」

 

オレは叫びながら飛びあがり、足を突きだした。

 

「甘い!」

 

サマエルは好機と見たのだろう、メギドラを放ち、オレを撃たんとする。

 

オレは向かってくるその魔法を、

 

【地獄の業火】で相殺させた。

 

魔力だけでなく、生命力をも燃やして放った【地獄の業火】はメギドラを消しとばし、その威力を散らした。

 

体が悲鳴をあげるが、気にしてられない。オレは散った威力で怯んだサマエルの頭に飛び付いた。

 

「なっ、何をする!離せ!離せぇ!!」

 

サマエルが混乱して頭を振る。オレはしがみつくために手足を使った攻撃を封じられたというわけだ。

 

しかし攻撃は手足の振りだけで行うものか?

 

さぁ、死ねよ?

 

「【マグマ・アクシス】!」

 

オレはしがみついたその腕でマグマ・アクシスを放った。

 

オレの腕が消し飛び、サマエルの頭がそれと同時に吹き飛んだ。

 

地獄のような激痛が体を襲うがオレは首を無くしたサマエルに笑った。

 

「腕二本で命一個か。いい買い物をしたぜ」

 

それが合図だったかのように、爆音を轟かせ、サマエルは吹き飛んだ。

 

オレの方は地面に叩きつけられる前に、何者かに受け止められた。

 

クイーンメイブだった。

 

「もう!また一人で無茶をして‼なんで私を使わないのよ!」

 

「あぁ……悪い……」

 

どうも憎しみのまま暴れると一人で突っ走ってしまう癖があるようだ。危ないと知ってはいても……昔からそういうのは一人でやっていたからか誰かを使うという概念が未だにない。

 

だが、止まってはいられない。このままでは祐子先生が虚無の空間とやらに落とされてしまう。その時がシジマの守護の降臨だ。

 

そしてその時こそ、オレの希望が完全に潰える時だ。

 

オレは回復してもらうとすぐ、震える足で立ちあがり、氷川を睨んだ。

 

激戦のなか、結界という安全圏で傍観していた氷川は、おぞましい物を見るような目でオレを見ていた。

 

「サマエルもただの時間かせぎか。大した化け物だよ、君は。だが、もう遅い。我が守護の降臨は止められん」

 

「何?」

 

オレは眉をひそめるとある物を見つけた。

 

氷川のそばには巨大な箱がある。そこからは、大量のマガツヒの気配を感じられた。

 

まさか、あれが……!

 

オレは結界に攻撃し、なんとかして氷川のもとへ向かおうとした。

 

だが結界は予想以上に硬く、ヒビすら入らない。

 

そうしている間に、氷川はマガツヒが詰められた箱を開けた。

 

大量に放たれるマガツヒはまるで導かれるように上へ上へと流れ、氷川もそれに導かれるように浮かび上がった。

 

そしてマガツヒがたどり着いた先に、巨大な悪魔が現れ、氷川はそれと融合していった。

 

そしてそれが降臨すると、結界内部にあるものが全て虚無の海に沈んだ。

 

トウキョウの中心となった議事堂。その威を示した物の数々が、虚無に沈む。

 

そして祐子先生も……

 

「祐子先生ッ!」

 

オレが叫びながら手を伸ばすがそれも無慈悲に結界は阻んだ。

 

祐子先生は受胎が起きたあの時のように、眠るような表情のまま、消えていった。

 

「あ……あぁ……!」

 

希望が、消えていった。

 

そして降り立った守護。氷川は、その頭部に埋め込まれていた。

 

上半身のみを覗かせた氷川は、大仰に両手を広げ、告げた。

 

「見よ、我は得た……偉大なる虚無の神、アーリマンの力を。神の導きにて、我は創らん。新たなる世界を。 静寂なる王国を。

永遠なる繁栄を成すは我が力のみと知れい……」

 

その言葉をオレのみになった空間に残すと、守護……アーリマンは消え去った。

 

オレは、その姿が失せるとともに。事実を認めるしかなかった。

 

もう、あの世界には戻れない。戻れないのだと。

 

あぁ、死んだ。希望が、死んだ。

 

「─────────────────ッ!」

 

声にならない叫び声を挙げた。胸中に弾けた絶望に体をかきむしり、血を流した。

 

そして目の前が真っ赤になり、オレは一際激しく体を抉り、血を吐いて意識を捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにも見えない視界の中、その中で祐子先生の声が響いてきた。

 

「………零時君……零時君………もうここでは、可能性の芽はつまれてしまったわ……けれど、ここではないどこかに…きっと自由の世界はあるはず……

私にはできなかったけれど…零時君、あなたなら……自分の意志で進めると思う…

これを使って…あなたの意志で…世界を…創るのよ……

アマラ神殿……アマラ神殿に急いで………これがきっと…カグツチへの道を拓いてくれるはず……

創世のための……最後の場所へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたが望むなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…あなたの望む姿の…自由な世界も……出来るはずよ……」

 

そして自分の手に、何かを握らされる気配がして。オレは再び意識を失い、なにも分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………いじ………零時………零時ッ!」

 

「ッ!」

 

体を揺すられる感覚とともに、オレの意識は覚醒した。

 

場所はターミナルのある部屋のようだ。オレはそれをぼやけた意識でそれを確認するとゆっくりと上体を起こした。

 

体には、一切の傷はなかった。きっとクイーンメイブやティターニアが回復してくれたのだろう。

 

だが、礼を言う気力はなかった。オレは先程あったことを思いだし、再び涙した。

 

その時、体に違和感を感じた。この鈍い感覚は、物置き空間に何か入れた時の感覚だった。

 

だがオレは何かを入れたわけではない。オレは重く沈んだ意識の中、それを確認しようと思い、物置き空間を覗いた。

 

雑多に並んだ物の数々、その中に、微かに光る石があった。

 

それを拾い上げると、オレはその正体を知ることが出来た。

 

ヤヒロノヒモロギ。祐子先生の創世のためになると信じた代物。だが決して役には立たなかった石。

 

そして、彼女が夢の中で渡した。創世のための石。

 

だが、そんな……そんな物を渡されたところで、もはやあの世界に戻るコトワリは存在しない。

 

こんな物を渡されたところで………ッ!

 

「何になるんだよぉ………!」

 

その石を握りしめながら、オレは嘆き、泣き叫んだ。

 

「零時……」

 

クイーンメイブは、そんなオレを抱き締めてくれた。オレは年甲斐もなく、それにすがった。

 

暖かい。とても悪魔とは思えないほど暖かい。

 

だが、それが何になるわけでもなく、ただただ虚しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、零時君崩壊。
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