真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
ドガァン!という音とともにオレはアサクサターミナルの扉を蹴り飛ばした。
辺りに響く轟音と悲鳴。悲鳴のほとんどは仲魔のものであるが、そんなことに構っていられる心の余裕はない。
「戻ってこい!お前たち!」
オレが怒鳴るとクイーンメイブを筆頭とした仲魔達は戸惑いながらもオレに近づいてきた。
「どうしたのよ零時……って何よその傷⁉」
クイーンメイブはオレの今の姿を見てギョッとしたような声で叫ぶと回復魔法を唱えた。
傷が治り始めるがいつもよりそのスピードが遅い。当然だろうか。破滅そのものになった混沌王達の心の傷を現実になるくらいに受け続けたのだ。むしろ治ったことに驚くぐらいだ。
そもそも肉体の傷など痛くない。混沌王達の、あの心の闇に比べれば肉体の傷など如何な意味があろうか。
オレは治りつつある自分の体を見てそう鼻を鳴らしながら思うと、仲魔に向き直った。
「全員、一度しか言わないからよく聞け。オレはあの車椅子の老紳士の計画に乗る」
そう言うと仲魔達はピクリと体を揺らし、しかしそれも当然かと思えたのかすぐに平常心を保った真剣な顔をきた。
「今からオレはアマラ深界の第5カルパに行き、大いなる意思のクソカミサマをぶっ潰す約束をしにいく」
オレはそう言いつつ仲魔達を見つめた。
「お前らは、どうする?それをした瞬間、ついてきたお前らも運命に逆らった反逆の証をつけられる。永いの戦いと苦しみを背負わされることになるだろう。
どうする?それが嫌なら契約を解除し、自由にしてやるが」
オレは仲魔達に向かってなんのためらいもなくそう言い切った。
仲魔達はオレを主と認める契約を仲魔との交渉に、あるいは悪魔合体で生み出されたときから結んでいる。それをオレが解除しようとしない限り、仲魔はオレのそばを離れられない。永遠にオレの味方をしないといけない。
一緒に戦ってくれるなら心強い。だがこの反逆は他の混沌王の意思を継いでいるとはいえ復讐という自己中心的行動。
仲魔達を強制的に巻き込むなんて、したくなかった。
仲魔達は瞠目したり、他の仲魔達と目配せするとクスリと笑った。
「何言ってるのよ。私、あなたと供にここまで来たのよ?着いていってあげるわよ。地獄までも、ね」
クイーンメイブが堂々とそういうと仲魔達も同調するようにうなずいた。
「お前もか?ソロネ」
オレは仲魔の一人、炎を灯した車輪にしがみつく黒衣の天使 ソロネを見た。
天使の階級の中で三番目となる【座天使】という意味の名をもつソロネは当然神の忠実なる駒。オレはその存在に声をかけるとソロネは微笑みながら答えた。
「私の主はあなたです。それに………私は天使という種族の悪魔ですよ?」
その言葉にソロネの言わんとすることを察しながらオレはフッと笑った。
「決意は硬いか?」
今一度そう言うと仲魔達は頷く。その目に、恐怖はなかった。
オレはありがとうと内心で呟くとターミナルに向かって歩いた。
行こうか。神に反逆せんとする。堕ちた天使が統べる地獄に。
オレは憎悪と怨念の炎を猛らせながら、ターミナルを回した。
アマラ深界第5カルパ。今の今まで大事に持っていた【王国のメノラー】を台座に配置してその道を開いた。
さて、どんな悪魔が潜んでいるのやらとオレは膨大な魔力をたぎらせて進むと、
意外な先客がいた。
「…………またオレを狩りに来たのか?ダンテさんよぉ」
目を細め、弱い悪魔ならそれだけで死ぬ気を放つと赤いコートを着た男が両手を大仰に広げながら暗がりから現れた。
「そうおっかない声をだすなよ。ただ話をしにきたんだ。戦いに来たわけじゃない」
「……………」
その言葉を全く信じられない猜疑心とこれほどの気をぶつけてけろっとしている様子に沸き上がる怒りを抑えながらオレは無言で息を吐いた。
その様を『話しても良い』と受け取ったのか、ダンテは話を始めた。
「その様子じゃ目的はこの下にいるクソジジイに会うため、だろう?ここまで来るとはなかなかガッツある奴だ、とは思えるが………ここから先は火遊びじゃすまねぇ。下手すれば火傷じゃすまねぇぞ?」
「ご心配なく。そんな柔な生活を送ってるつもりもない。それに……力も手に入れたしな」
オレはニヤリと笑いながら全身に走る刺青から黒い影を少し出した。
それは過去の混沌王達を魔人たらしめていた死の概念の塊。それを身に取り込んだ今、オレの力・技・スピードは格段に上昇した。
もちろん、混沌王達から受け継いだのはそれだけではないがな。
「ふむ、なるほど確かに」
ダンテはその様を見て頷く。
「だが、戦力は持ちすぎても悪い、なんてことは無いだろう?」
「………何が言いたい?」
「分からねえか?」
ダンテはニヤリと笑いながら自分を指さした。
「オレを雇わないか、少年」
その言葉にオレは吹き出した。
「冗談だろう?魔人に……悪魔にデビルハンターを雇わせる気かい、アンタは」
「あぁ。最高のジョークだろう?」
そういってダンテはさらに深く笑みを浮かべる。
オレはダンテをまじまじと見つめた。
戦力として、ならダンテの力は信頼できる。何しろその力を目の前にしているのだから。そもそもダンテの底しれない力は今も同じくなのだ。
どんなに気を尖らせてもダンテが小さく見えない。どれだけの実力を秘めているのかと恐怖すら覚える。
それにダンテは純悪魔ではない。契約を守りはするだろうが自分の意にそぐわないのならあっという間に寝返るだろう。
はてさてそのリスクを考えるか、その力を欲するか……どうするか。
「いくらだ?」
取り敢えずダンテを雇うにあたっての金額を問う。金額を考えてからでも良いだろう。
ダンテはフムと考え込んだ。
「そうだな……目玉が飛び出るほどの料金を請求してやってもいいが……お前は特別だ」
ダンテはニイッと笑いながらポケットから何かを取り出した。
それはマッカではない、コインだった。
オレはそれを見てダンテの意図を察した。
「コイントスで決めるってか」
「Yes。お前が勝てば1ドル……いやここではマッカだったか?1マッカでいい」
「………負けたら?」
聞いてみるとダンテの笑みが意地悪くひん曲がった。
「お前の持つ所持金を山分けといこうか」
「…いい性格してるぜ」
オレはヒクリとこめかみを動かしながらそう言った。
オレは自らの強化のためとか腹いせとかそう言った理由でかなりの量のマッカを溜め込んでいる。
山分けでも良いが………こいつに負け続けるのも嫌になる。
「分かった。それでいこうか」
オレがそういうとダンテはコインを指に乗せた。
「なら選びな。表か裏か…さて、どっちを選ぶ?」
オレは瞑目し、考え、パッと決めた。
「表だ」
そういうとダンテはキィンという音をたててコインを指で弾いた。
コインはクルクルと回りながら空中に飛ぶと、重力に従って落ちる。そしてそれがダンテの目の前にまで落ちるとパッとダンテがそれを掴んだ。
そしてゆっくりとそれを開くと、ダンテは面白そうに鼻を鳴らした。
「表だな。ツイてるな少年。なら、特別価格の1マッカにまけてやろう」
オレは幸先の良い運の良さにいくらか胸を踊らせながら物置き空間から1マッカを取りだし、ダンテに放った。
ダンテは1マッカコインをパッと取ると、さぁ、と手を叩いた。
「これからお前がオレの依頼主だ。お前の名は?」
「………依頼主のプライバシーは守るポリシーはあるか?」
「フム、善処しよう」
なんともアバウトな答えにハァとため息をつくとオレは素直に答えた。
「魔人 夜藤零時だ。コンゴトモヨロシク……」
「零時か。良い名だ」
「……そうかぁ?」
ハッキリ言ってオレはこの名前が好きではない。オレが生まれたのが夜の零時だからその名前がつけられたと聞いているからだ。なんとも安直な名前だ。
オレはその時、過去の嫌な思い出も、今では懐かしく、だがもはや戻ることはないかけがえのないものだと理解した。
痛い。胸が、悲しみで痛い。
オレはその感情を一旦押し込んだ。
ダンテはギラリと目を光らせながら奥に向かって歩き出した。
「オーケイ零時。地獄の魔王様に会いにいこうぜ。土産に手下の首でもぶら下げてな」
ダンテはそういうとこれまでと違う、獰猛な笑みを浮かべた。
「見せてもらおうか。神と悪魔の最終決戦とやらを……」
オレはその言葉に答えるように、歩き出した。
「見せてあげよう。血塗れの舞台でいいのなら、な」
きっとそう言うオレの顔は、ダンテに負けず劣らず獰猛だったろう。
そしてオレ達は歩き始めた。
地獄を、深く深く。
ダンテ、もっとカッコイイ感じに書きたい……。