真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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な、難産だった……。

タイトルはマニアクスのパッケージにも書いてあった言葉になります。






悪魔は二度生まれる

 

メタトロンと戦った広間を抜けると、そこは水の溜まった通路だった。

 

そこにオレは見覚えがあった。あの車椅子の老紳士に、力試しをされた通路だ。

 

…………あの時は、右も左も分からない。そして何も分かっていない若輩者だったな。

 

オレは内心でククッと笑った。

 

もちろんその時から何年も経っている訳じゃない。時が死んでいるから正確な時間は分からないが……恐らく1ヶ月は経っているだろう。

 

その1ヶ月。オレにとっては一生分の不幸があった。そして人間の一生分の人生を台無しにされた。

 

最初は氷川を憎んだ。だがこのアマラ深界を進み、真実を知っていくにつれてその憎しみは全てを手の上で踊らせることができる大いなる意思に向けられた。

 

ズキリ、と胸が痛む。何十人という混沌王達の憎しみをオレの心に現そうとするといつもこれだ。

 

だがそれも仕方ない。心は強くはなっても広くはならない。本来、一人分の感情を発現するだけの大きさしかないはずだ。

 

オレが、それを受け入れてなお廃人にならないのかは分からないが……今はどうでも良い。これがオレの最大の力なのだから。

 

オレは膝の下辺りまで溜まった水をザブザブいわせながら奥へ奥へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通路の奥地、前はそこで車椅子の老紳士と喪服の淑女によってシンジュク衛生病院に戻されたため、その先へはいけなかった。

 

先へ進むには、どうやらリフト……まぁ上下に動くブロックなんだが……に乗らなければいけないようだ。

 

オレは息を呑み、思考に耽った。

 

これに乗れば、もう戻れない。オレは復讐の道を延々と歩き続けることになるだろう。

 

人間として、コトワリを啓いて創世すれば良かったのかもしれない。そう思える時が来るのだろうか。復讐の道を選んだことに後悔する日が来るのだろうか?

 

…………それでも、いいじゃないか。

 

オレはそう心で呟き、タンとリフトに乗った。

 

悔やむ時があって当然。今戻って全てを諦めて創世の道へ進んだところできっとそれも後悔する。大いなる意思に復讐しとけば良かったと。

 

どうせ後悔するのなら………この狂おしいほどの憎しみのまま、復讐の道を突き進もう。

 

それが、歪んだオレの人生(みち)だ。

 

リフトを調べてみると特定の悪魔……つまりオレしか降りられないことが分かった。

 

仲魔もダンテも、ここで待たせることにし、オレはリフトを起動させようとした。

 

そこで、ピクシーが止めた。

 

「行ったら、もう戻れないわよ。覚悟はできてる?」

 

オレは口をひん曲げて笑い、当然とだけ答えた。

 

ピクシーは悲しげに、しかしどこか期待した表情で笑い返した。

 

「次に会えたら、私を最初に召喚しなさいよ!」

 

「はいはい。分かったよ相棒」

 

オレはピクシーに向かって苦笑しながら、リフトをとんと叩いた。

 

すると音もなく下に下がるリフト。視線が地面にまで下がり、そして仲魔達の姿も見えなくなる。

 

さぁ。行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リフトの降りた先。そこは覗き穴で何度も見ていたあの舞台だった。肉眼で見るそれは、とても鮮やかで美しかった。

 

そして舞台の回りにあるいくつもの穴。そこから何千何万もの悪魔がこちらを覗きこんでいた。

 

舞台に立つ老紳士と淑女はオレをひたと見据え、言葉を紡ぎ始めた。

 

「よくここまで辿り着きましたね。永劫のアマラの流れを越え、待ち続けた甲斐がありました。全てのメノラーを配し、最強の光の刺客すら退けたあなたはまさに我等が待ち望んだ悪魔です」

 

その言葉を合図に淑女と紳士を取り囲む穴から見える悪魔達が一斉に歓声をあげる。

 

しばらく続く歓声の嵐を老紳士が手をかざし、止めると淑女は言葉を再び紡ぎ始めた。

 

「聞こえましたか、零時。全ての悪魔達が、新たな闇の悪魔の誕生を祝っています。あなたこそが、長い連環を打ち破り、暗黒の天使とともに、大いなる存在をも打ち破ってくれるだろう、と期待して。

……もはや引き返す事はできません。光から堕ちた我等と、光を支配する者達。その相容れぬ両者の最終決戦が、間も無く始まろうとしています。

あなたは、その戦いが始まる前に、地上に戻りなさい。そして、創世を目論む人間達や、その源たるカグツチを討ち、その身に更なる力を宿すのです」

 

淑女はそういうとオレが殺すべき標的達をを述べ始めた。

 

「静寂なる世界を望みし者…それに力を貸すは、虚無の魔王アーリマン。

力による淘汰を望みし娘…身に降りたるは、魔神バアル・アバター。

孤独を好み、己の殻に隠れた少年…流され着きし力は、彷徨える古の邪神ノア。

そして、創世とボルテクス界を見守りつづける光、カグツチ…

それらの敵を討ち果たした時、私たちは全ての悪魔と共にあなたを迎え入れましょう」

 

淑女はそしてとオレをひたと見た。

 

「この先のあなたの戦いの手助けになるよう、我が主が力の一部をあなたに与えようとおっしゃられておられます。これで、あなたが初めに与えられたマガタマの最後の力が解放されましょう………

かつて人の衣を脱ぎ捨て悪魔となり、今、全ての死を乗り越えここに来た魔人よ。

あの御方の力によって悪魔の身体を得…今我が主の手によってその心も悪魔へと生まれ変わるのです

混沌の新たな悪魔…終の決戦の始まりを告げる者として!」

 

淑女が高らかにそういうと老紳士がオレに指を向けた。

 

そのとたんオレに向かって流れるおぞましいまでの闇の力。それがオレの模様を血のような赤に染めてゆく。

 

ドクン……ドクン…。力が注がれる度、オレの暖かな部分が消えてゆく。人間としての自分が、脆くもかけがえのない心が消えてゆく。

 

さよなら、人間のオレ。

 

始めまして、化け物の俺。

 

どちらも夜藤 零時。だが、何も知らない。愚かで無垢な人間だった夜藤 零時は確かに死んだ。

 

今ここにいるのは。憎しみのまま走り続ける俺という化け物。

 

目を見開くと、視界が赤く染まっていた。俺の目がギラリした紅色の光を放っていた。

 

淑女はそれを見届けると最後に俺に告げた。

 

「さあ、お行きなさい、我等の希望となる新たな悪魔よ…」

 

その声を合図に再びリフトが下がり始める。マガツヒの湖に俺を誘うように。

 

最後に見えた風景は、老紳士が口を僅かに動かしてニヤリと笑ったところだった。

 

何と言ったか。読心術で俺はそれを理解した。

 

『すばらしい』

 

老紳士は確かにそう言った。

 

俺は凄絶に笑い返し、か細い声で言い返した。

 

『当たり前だ』、と

 

きっとあの老紳士の耳には届いたろう。そうでなければ笑みを深くはしない。

 

俺の身がついにマガツヒの湖に沈んだ。それと同時に俺の意識も暗闇に沈む。

 

俺は老紳士の意図を悟り、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。ぼんやりとした意識で辺りを見渡すとそこは記憶にある部屋だった。

 

そこはシンジュク衛生病院の地下にある部屋だった。そう、受胎が起きた時に俺が目覚めた際にいたあの場所……

 

俺にとっての始まりはここだ。あの老紳士は二度目の始まりすらもここにしたのだろう。

 

きっとあの老紳士は良い小説家になれる。こんな、こんな皮肉げなプロローグを用意できるとは。

 

俺はククッと笑うとブンと腕を振り、とある悪魔を呼び出した。約束は守らなければ。

 

紫電とともに現れた小さい相棒。ピクシーはニコリと俺に笑いかけた。

 

「約束。守ってくれたみたいね」

 

「契約事と約束事は守る主義でね。それよりもピクシー。ここまで来たんだ。最後まで付き合ってもらうぜ?」

 

挑戦的にニヤッと笑うとピクシーは肩をすくめた。

 

「やれやれ、最初はヨヨギ公園までって話だったのに……とんでもないところまで来ちゃったわね……」

 

「おっ、なんだ。やめるのか?」

 

「そんなわけないじゃない。先生として、教え子の行く先くらいちゃんと見てあげないとね」

 

パチリとウィンクしながらそう宣う先生殿。そういえばこのシンジュク衛生病院で俺はピクシーを先生呼ばわりしたっけ?

 

あの頃を懐かしく思いながら俺はこの先どうするかをピクシーに話した。

 

要するに、創世を目指す三勢力の守護を潰し、最後にカグツチを討つことを。

 

それを伝え終えるとピクシーは俺にこう問うた。

 

「……良いの?シジマのアーリマンやカグツチはともかく、ムスビのノアとヨスガのバアル・アバターは…」

 

その言葉を俺はピクシーの唇に指を突きつけることによって止めた。

 

「言ってくれるなピクシー。あの三人は俺を切り捨てて創世の道を選んだ。友を切り捨て、創世の覇を唱えんと孤独の道を進んだんだ。俺もその強さを手に入れた。それだけだ。それに……」

 

「それに?」

 

訪ね返すピクシーに向けて口をひん曲げて、俺は答えた。

 

「勇も、千晶も。この世界で死んだ。少なくとも俺の知るわがままで、それでも優しかった、二人はこのボルテクス界で死んだのさ。今いるのはそれぞれの勢力の頭領としての二人だ。少なくともそれは、俺の味方じゃない。殺すべき、敵だ」

 

そう言い切った俺にピクシーはフッと息を吐いた。

 

「あなたの悪魔としての心意気。確かに感じたわ」

 

そういうとピクシーはキラリと光を撒き散らしながら飛び上がった。

 

「いいわ。あなたがそういうのなら私も容赦はしない。全力であなたの『敵』を倒しにかかるわ」

 

「そうしてくれ」

 

俺はピクシーのその言葉に満足するともう一人、いつの間にかストックにいたあの男を召喚した。

 

俺はその男に言い放った。

 

「話は聞いていたんだろ?お前にも全力で手伝ってもらうからな?」

 

「へいへい。ま、オレは言われなくともいつでも全力でやるがな」

 

ダンテは銃を抜き、俺に向けて撃つ素振りを見せながらそう答えた。

 

これだけ聞ければ満足だ。

 

「さぁて、行こうか」

 

俺はピクシーとダンテにそう言って立ち上がった。

 

向かうはアマラ神殿。創世の最終決戦の始まりを、告げなければならない。

 

オレはトランペッターではないが、まぁ喇叭の代わりにそれで告げよう。

 

 

 

 

戦いの始まりと、神の滅びを、な。

 

 

 

 





悪魔になり、零時君の一人称をオレから俺に変えました。零時君にあった軽い部分が無くなった。そう考えてください。

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