真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
前編と比べて長くなってしまった……。
「オオオオオオオオオオオオンッ‼」
【死魔の触手】
「ちっ……!」
「おおっと……」
地面から突き出された巨大な触手に進行を阻まれ、俺は舌打ちし、ダンテは声を漏らしながら離れる。
静寂の守護アーリマン。数秒前まではその名にふさわしくドンと座し、俺達の攻撃をただ受けるだけで凌いできた。
まるでその様は秩序の如く。何があろうとも揺るがない絶対的存在と形容出来る。
だが今のアーリマンは違う。よつん這いになり、俺達という敵対者に対し、静寂という言葉をかなぐり捨てて吼えるその様は秩序というよりもまるで……
その秩序を守るための番犬だ。それもどの獣よりも凶暴な猛犬。
座していたアーリマンは俺達の行動に絶対的な制限をかけながら口からレーザーを吐くか、魔法を唱えるだけだった。
今のアーリマン……第2形態とでもいうべきフォルムになったアーリマンは攻撃的という言葉に限る。
守護足らしめる耐久性を生み出しているのであろう重厚な甲殻。それは攻撃にも転用できる。
巨大な腕を振ればこちらの攻撃ごと俺達を蹴散らせる。強大な魔力を振るえばほとんどの悪魔を塵芥に還せる万能魔法が放たれる。
そしてなによりこちらの邪魔になったのは第1形態では腰に収納してあったと思われる巨大な触手。
余りにも太いため俺達を絞め殺すだとか突き殺すということはできない。だが、一定の魔力をこめて先程のように地面から突き上げると破壊力のある攻撃になる。
そして力をこめずともその巨大な触手はこちらの動きを阻害するのにも役に立つ。そして動きが鈍ったところを魔法なりなんなりで攻撃する。
もちろんこちらもみすみすやられはしない。狭い空間で避け、あるいは防ぐ。
だがこのままではズルズルとあちらの流れになってしまう。まだ敵は残っているこの状況で長期戦はなんとしても避けたい。
だが浮かび上がるアイデアは長期戦になってしまった場合と同じくらい、俺が消耗するものばかり。
だがこれぐらいしなくては……守護なんて討てない。
その果てにある大いなる意思なんざ……討てない。
なら、やるっきゃないッ!後先の事は後だッ‼
「オオッ‼」
俺は野太い咆哮をあげながらアーリマンに突っ込んだ。
アーリマンは仲魔の方に万能魔法【メギドラオン】を放ち、牽制しながら触手を床に刺し、触手を潜らせた。
そのままグニャグニャと触手を揺らして床下に触手を伸ばす。その気配を俺は全神経を使って探知する。
そして照準を俺とその周囲に向ける気配を感じとると俺は剣を造りだし、大きく振り上げた。
さぁ、勝負だ。
「来い……!」
俺が歯のすき間から漏らすようにそう言った瞬間、
【死魔の触手】
ズドン‼
アーリマンがそれを放った。
「ッ‼」
そのタイミングを狙っていた俺は息を呑んで触手をギリギリまで引き付けると、全力である技を放った。
生命力で構成された剣を叩きつけ、俺はその技の名を叫んだ。
「【デスバウンド】ッ‼」
カッ!ドオオオンンッ‼
轟音、そして赤黒い光。それらを纏った衝撃波が俺を中心として放たれた。
俺を叩き潰そうとしていた触手はたちまちその衝撃波に叩きつけられ、あちこちに反れた。その際体のあちこちに触手が掠める。
「ッ‼」
俺は眩む視界を自らの口内を噛むことで正した。【デスバウンド】は強力だが消費する生命力が多い。そして触手が掠めたことによるダメージが俺の体を苛むがそれに構う暇はない。
「むんッ‼」
俺は跳んだ。狙いは奴の頭。あそこに氷川が閉じ籠っている。
守護はコトワリを示した者を恐らく核にしている。アーリマンにしろノアにしろバアル・アバターにしろ各勢力の創始者達が自ら守護に取り込まれている。
ならその核となる人間が死ねばどうなる?分かりはしないが守護にとって致命的になることは想像に難くない。
だからこそ、奴の頭を氷川ごと撃ち抜く。俺はありったけの力をこめ拳を振り上げた。
その時だった。バサリという音が聞こえたのは。
「舐めるなァ‼」
アーリマンのその声を認識したとたんアーリマンの巨体が浮いた……否、飛んだ。
「なっ⁉」
封鎖された空間であっても巨大なアーリマンが身動きするには問題ない広さを持つこの広間。縦の広さもそれなりにある。
だがアーリマンが飛ぶとは思ってなかった俺は攻撃を思いっきりはずし、地面に着地した。
「くっ……!」
着地と同時に来る衝撃に顔をしかめながら、俺はアーリマンを凝視した。
アーリマンの背部。腰のやや上の方に扇のような翼が生えていた。
しかし動きが制限されるこの場で飛ぶとはどういうことだろうか?天井が存在するこの場では魔法で打ち落とせない高度までは飛べない。
疑問に思いつつ、背に走る嫌な予感に従うようアーリマンを凝視していると、俺は気づいた。
アーリマンが全身の魔力を猛らせていることに。
「ちぃ!全員防御体勢‼デカイのが来るぞォ‼」
俺の叫び声に仲魔達はハッとなり、各々体をガードする。ダンテはなぜか飄飄とした顔でアーリマンを見ていたが。
それと同時にアーリマンが翼の羽ばたきを止め、地面に向かって落下しはじめた。そして全身の魔力を手足にこめ、巨体に見合う力で床に叩きつけた。
「【末世波】ッ‼」
アーリマンの地の底から響くような叫び声。
瞬間、凄まじいまでの衝撃波が広間の床を走った。
広間を構成するブロックを砕き、俺達の方へ這うその衝撃波は凄まじい閃光を放ちながら俺達を飲み込んだ。
「ぐうぅッ……!」
身を打つ衝撃の奔流。体のあちこちから血が吹き出る。
やがて奔流が収まると俺は思わず膝をついてしまった。
ダンテはアーリマンや俺から離れたところで着地していた。きっと俺の【地母の晩餐】の時のように衝撃を利用して飛び上がって難を逃れたのだろう。
しかしまずい、このままでは狙い撃たれてしまう。そう思い急いで立ち上がろうとする。
ピクシーも回復魔法を唱えようとしているのだろうが大ダメージのあまり魔力が集中出来てない。即座の回復は期待できない。
どうする……!どうすれば……!
その時だった。俺の耳に、痛みに耐えるような唸り声が聞こえたのは。
仲魔のものかと思ったが違う。あの地の底から響く声はアーリマンだ。
ハッとして見てみるとアーリマンは全身からマガツヒを垂れ流していた。見てみると全身に無数のヒビが入り、そこからマガツヒが漏れ出ている。
俺はその原因をなんとなくだが悟った。
死の力をまともに浴び、死の淵を見たアーリマンの体は死に蝕まれているのだ。
結果、アーリマンはその生命力を削られ、体はあの有様になっているのだろう。
つまり、アーリマンの体は死にかけている。それが先の大技でさらに早まった。あれでは創世の戦闘になど勝てやしないだろう。
だがアーリマンは立ち上がった。全身にヒビが広がる。マガツヒが漏れ出す量がさらに増える。
だがアーリマンはそんなこと知ったことかとでも言う風に腕をあげ、魔力をこめ、欠けた触手を向けた。
このまま放っておいても、持久戦に持ち込めば間違いなく勝てる。アーリマンは全身を死に冒され、やがて死ぬだろう。そのことはアーリマン自身が分かっているはずだ。
だがアーリマンはそんなことお構い無しに攻撃を再開した。
「………なぜだ?」
俺は避けながらそうアーリマンに呟いた。攻撃の音でたちまちその声はかき消されるが。
死に蝕まれる恐怖は魔人に相対し、そして死そのものにまで昇華した混沌王達の思念と力を見てきた俺がよく知っている。
死に蝕まれるということは肉体的な滅びだけではない。精神……それよりももっと深い魂にも影響するのだ。通常なら死から逃れたいという恐怖に呑まれ、狂い、死ぬ。あるいは恐怖に屈したところを魔人にバッサリ殺られるか。
俺は敵対心、あるいはそれよりももっと過激な憎悪でその恐怖を潰して死に相対し、生き残れた。
つまり死に打ち勝つためには死の恐怖に呑まれない強力な思念が必要なのだ。そして肉体が死ぬ前にその死に勝つ力も。
アーリマンは両方持っているというのか。一体どんな感情がアーリマンを……氷川を動かしているのか。
俺はそれを読み解こうとアーリマンの眼を見た。
光る瞳。今は死にかけてそれが点滅している。
だが俺は見た。アーリマンの瞳に宿る怒りを。
そして自らが創る世界が、絶対に正しいという強固な自信。そしてそれを為さんとする強烈な意志。
俺はそれを理解すると同時に驚き、そして内心で氷川を嗤った。
なんということだろうか。感情を不要とした氷川の原動力はなんと感情なのだ。なんて矛盾だろう。
そして同時に俺はアーリマンがもたらす世界が絶対の静寂と秩序などもたらさないという答えを出した。
当然ではないか。創世者そのものが感情で動いたのだ。それで感情無き世界が完全であるものか。シジマの世界が創られたなら、その世界は受胎前の世界より儚く、脆く滅ぶだろう。
あるいは氷川も大いなる意思の被害者とも呼べるだろう。世界の定めを遵守させるために遣わされた駒にされた、とも言えるのだから。
哀れな。氷川。
だからこそ、憎たらしい。
なぜその感情をもっと上手に使えなかったのか。なぜその怒りを人間の醜い感情にのみ向けたのか。
きっと氷川は人間の醜さにのみ視点を囚われ、広い視点で人を見てこなかったのだろう。そして己もまた醜く歪んだ。
俺は氷川の闇を全て理解した。受胎にまで至らせた原動力も。
あぁ、理解した。これで全て理解した。
だからもう、消えてくれよ。氷川。
お前のことが哀れで、憎たらしくて、訳が分からなくなりそうで、殺しても殺し足りないだろうからさぁ…。
「死ねよ」
俺は冷たい声でそう言うと仲魔達に向かって指を二本立てた手を振るった。
「………ッ‼」
いつのまにか回復が済んでいた仲魔達はその合図に即座に反応。魔法を属性問わず、アーリマンの顔に撃った。
「ぐっ……!」
アーリマンは即座に顔を巨大な手で覆った。まぁ、核となる氷川がいる顔を破壊されてはたまらないだろうからその行為は正解だ。
相手が俺達でなければ、な。
「ダンテ!奴の眼を狙え‼」
「人使いが荒いぜ、零時!」
そう愚痴りつつもダンテはエボニー&アイボリーを構え、それを何度も引き金を引いて弾丸を放った。
驚いたことに弾丸は連なるように手に当たり、そのまま手を貫いて眼を撃ち抜くではないか。
「グオオアアアアッ‼」
悲鳴をあげるアーリマン。俺は全身の生命力を練って体を前に倒した。
そして何かをかき集めるように両手をクロスさせ、そして体を仰け反らせながら生命力を全身から放つ。
【ぜロス・ビート】。本来ならそうなる技を、今回俺は死の力を練り込んで放った。
「【死天光】ッ‼」
キュイィン!という鋭い音とともに黒い光弾が何百も放たれた。
それらはしばらく空中を踊るように飛び回ると、アーリマンに向かって降り注いだ。
光弾はアーリマンの足を、手を、首を、とにかく全身を穿ち、砕いた。
「───────────ッ‼」
すでに言葉にならなくなった叫び声をあげるアーリマン。すでに四肢は使えないだろう。だがまだ死なない。
その生命力に心底驚愕しながらも俺は体を鞭打って駆けていった。
そして拳を振り上げ、先程やりかけた顔面狙いのパンチを今度はきっちり狙いをつけて放った。
寸分違わず俺の拳はアーリマンの顔面に当たり、今度こそ割れた。そしてついに合間見えた氷川の顔。
氷川は俺を見ると歯を砕かんとばかりに食い縛り、そして叫んだ。
「人修羅ァァアアアアアアアア‼」
「氷川ァアアアアアアアアアア‼」
それに負けじと叫び、俺はもう一方の手を振り上げた。
すでに自分の血や返り血でグッショリの手を俺は滑らないように食い込むほど握りしめそしてそれを氷川のに向けて叫びながら振るった。
「死ねよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼‼」
血による赤。そして死による黒を纏った拳は空を駆け、そして……
氷川の心臓を撃ち抜いた。
「カ………ッ……!」
眼を限界まで見開き、血を吐く氷川。
そしてアーリマンの体は殴った衝撃で上半身を仰け反らさせ、そして。
スドォン!という音とともにその身を爆破させた。
アーリマン戦終了となります。
ちなみにダンテの射撃シーンはDMCの4から取りました。
オリジナル技についてはこの小説完結後にまとめるつもりです。
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