真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
ハッピーニューイヤー‼明けましておめでとうございます!
今回は勇戦を延期してマサカドの所に行きます。なぜかって?
私が延々とノアを見つけられずに、先に坂東宮に行ってしまったからですよ……なんで横道にいるんだよ、勇。
俺は氷川と自分の血を地面に撒き散らしながら着地した。
自分の体は、もはや満身創痍。だが全人類、そして祐子先生の仇が取れた。そのことが嬉しく、体が震えた。
俺はフラフラと立ちあがり、前を見た。受胎を起こした張本人、氷川の最期を見届けるために。
氷川はまだその存在を残していた。爆発したアーリマンの死体のなかで残った頭部にまだ埋め込まれていたのだ。
とはいえ、氷川自身の心臓を撃ち抜いたのだ。いずれその生命活動も終わってしまうだろう。まだ息があるのは、アーリマンの残された生命力を使ってやっとのはず。
俺は氷川に近づいた。こいつが持っているはずの『タカラ』とやらを奪うために。
しかしそのために氷川に近づこうとしたとたん、氷川が弱々しく唇を震わせ、声を絞り出した。
「……静かだ……静かすぎる……そうか虚無が……私を迎えに来たか……」
氷川は目を開かない。あるいはもうそんな力もないのか。
だが氷川は俺に言った。己の、あらゆる負の感情を籠めて。
「……力を持つ者……欲望の覇者よ……お前の望む世界を……築くがよい………もう……私には…関わりのない事……だ………」
その言葉が最後だった。
氷川の体が糸の切れた操り人形のようにぐったりとなるとマガツヒになって散っていった。
それに続いていくようにアーリマンの体もマガツヒとなって消えた。
そしてその巨体があった場所に、一つの宝石のような物が落ちていた。
マガタマのように、丸まったフォルムをしたそれを見て、俺は名前を知った。
『ツチノタカラ』
これがカグツチが創世者の中で勝者を決めるために設けたタカラ。
これが3つあるとカグツチは言っていた。つまり、俺は後二つ手に入れなければならないということだ。
ノア。そしてバアル・アバター。その二人が持っているタカラを。
俺は『ツチノタカラ』を物置き空間に放り込むと仲魔とダンテに号令し、行くぞと身ぶりで伝えた。
そしてその場を去る前に俺は氷川のいた場所に言った。
「氷川……お前も結局火だったんだよ。お前の言う、全てを焼き尽くす破壊の炎だったんだ。だから、俺という存在に、憎しみに焼かれたんだよ。結局、お前も欲望の覇者の一人でしかなかった………」
その言葉を、俺は嘲りのつもりで言ったわけではない。ただ事実を伝えるように、淡々と言った。
それが一番、残酷だろうから。
「その範疇を越えてなかった。それがお前の敗因だ」
そして足音を立てずに、ただひっそりと俺はその場から去った。
シジマの墓場に、ふさわしいよう。
敗者の墓場に、ふさわしいよう。
アーリマンとの戦いを終えた後、俺たちは休みを入れずにカグツチ塔を登り続けた。
登るにつれて強力になる悪魔。だが俺達の敵ではない。死の力を使わずとも自分の力でその身をバラバラにするか、仲魔の力を借りて殲滅するかで乗り越えられる。
だが俺の首を傾げさせる事態が起こった。
守護が近いと感じる。のにも関わらず、その守護の姿が見つからないのだ。
この気配は分かる。勇と、勇が呼んだ守護のノアの気配だ。
だが気配を消す魔法……【エストマ】を使っているのか、その姿を掴める事が出来ずにカグツチ塔の402階で足踏みしてしまったのだ。
土台になってしまったオベリスクを含めて402階の現時点を拠点にしている理由は、ここにはシブヤやギンザにあるような施設がなぜかあったのだ。
アマラ経絡に繋がっている【ターミナル】
泉の聖女が治療してくれる【回復の泉】
オカママネカタが経営している【ジャンクショップ】
悪魔合体の儀式が出来る【邪教の館】
ここでは最終決着前の安楽の場所としてマネカタ達にも使われていた。もちろん俺達も使わせてもらった。
そこで俺はとあるマガタマを買った。オカママネカタにおぞましい視線を浴びながら。
【カイラース】。俺の持つマガタマの中でも最強クラスの力を秘めているマガタマ。
これを飲むと俺の耐性は久々にあるものになる。
『ノーマル耐性』
お分かりいただけただろうか?俺を悪魔にしたあの【マロガレ】と同じなのである。
長所なし、欠点なしのノーマル耐性。だが覚えるスキルはマロガレの比ではなかった。まぁあの車椅子の老紳士がマロガレにある仕掛けを施してとあるスキルを覚えさせてくれたが。
まぁ、とにかく俺はそのスキルを覚え、そしてスキルを覚えておくうちに集まったマッカでアイテムを補充。そして悪魔合体でパーティの強化に勤しんだ。
すると邪教の館の主が俺にあるものを寄越したのだ。
【公の御剣】とよばれる物で邪教の館の主が『あの御方』と呼ぶ謎の存在に導く物……らしい。
そしてその存在が俺の助けになってくれる……と。
正直に言おう。気になる。
その存在のヒントは二つ。
『かつて東京を守護していた存在』。そして『公』
その二つが結びつく場所は一つだった。
チヨダ・マルノウチエリア。俺はカグツチ塔を抜け、ある場所を探していた。
仲魔達の意見の中には、そんな得体の知れない者を探す時間はないだろうというのもあったが別に時間制限はないに等しい。
なぜならタカラの一つが俺にあるからだ。そうなればそれが今カグツチ塔から欠けている以上カグツチの謁見は不可能ということになる。
勇が隠れている理由はなんとなく察しがつく。恐らく漁夫の利を狙っているのだろう。……というよりは、狙わないと勝利を得られないというのが正しいか。
この創世戦争。一番不利なのはムスビである。理由は言わずもがな。ムスビが超個人主義であり、軍隊行動ができないからである。
……と、なればムスビは正面から戦争はできない。戦力が揃ったヨスガ・シジマの両方と戦うことはできないからだ。
そしてそれが可能とできるのがタカラのルール。タカラが3つ揃うまではカグツチと謁見できないという決まり事。
勇は間違いなくタカラを一つ持っている。だからこそ敵が戦い、疲弊するのを待てる。
俺はそれと同じことをしただけ。だがまぁ、シジマを潰してしまった今、漁夫の利は望めないだろうがな。ムスビは動かないだろうし。
だが今は時間があれば良い。その時間で俺は好き勝手動ける。
そして……見つけた。
「将門塚……」
俺はそれを見て呟いた。
「ヘイ、零時。これは一体何だ?」
すると見かけ通りの外国人、ダンテが問うてきた。まぁ、日本人でもマイナーな平 将門をダンテが知る由もないが。
俺は簡単に説明した。
「この塚にさ。平 将門っていう……まぁ、昔の偉い人が奉られている。多分これに関係している」
俺はダンテに【公の御剣】を掲げて見せた。
「へぇ、なるほど……おっ、当たりのようだぜ?その考え」
ダンテがそういうと【公の御剣】が光輝き始めていた。そしてそれにつられるよう将門塚も輝くと俺の体が引っ張られた。
【坂東宮】。そう呼ばれる場所に迷いこんだ俺達はあることを目指していた。
将門公。その存在が邪教の館の主が『あの方』と呼んでいた存在の招待であることは疑いようがない。だがそれに会うためには試練をクリアしなければならないという面倒臭い仕様だった。
試練の内容は実にシンプル。日本が誇るある四天王を倒し、坂東宮本体を空中に支えている巨大な柱四本を降ろす。
別に空中にあるぐらいなら悪魔の脚力でジャンプしていけるが、内部が厳重にロックされていた。試練を正直に行わなければどのみち中には入れない、ということだ。
……というわけで試煉のために坂東宮を駆け回って柱を降ろしているのだが……。
「ぬぇぇいッ!」
【烈風波】
「おうっ⁉」
その四天王が強い強い。恐らくパワーだけなら守護とある程度渡り合えるぐらいだ。
現在、三本目の柱を降ろそうとしたところだがそれを阻む鬼神 ジコクテン。ジコクテンを含めた四天王達は武術にしろ魔力にしろ超一流であったのだ。
一本目はゾウチョウテン。二本目はコウモクテンが守護していて三本目はジコクテン。
悪鬼から日本を守護する天部の四天王達。と、すれば残りの四天王は…。おっと……。
俺はそこで重い思考を止め、ジコクテンの懐に入っていった。
ついに四本目。俺はその柱を降ろそうと近づいた。すると。
響く雷鳴とともに人型の悪魔が現れた。
「ほぅ……。誰かと思えばそなたか」
「あぁ、俺だよ。『ビシャモンテン』」
俺はビシャモンテンの赤ら顔を見上げた。
鬼神 ビシャモンテン。トウキョウ議事堂に行く前に決闘を申し込まれて、その後マガタマをもらった経緯がある。
とはいえ、その決闘はビシャモンテン自体が手加減していたため、勝ちとは言い難いが。
「なるほど。先程、他の四天王が倒されたのもそなたのせいか……ならば、我が現れた理由も分かっておろうな?」
「あぁ、理解してるさ。だから……」
俺は半拍置き、挑発するように指を内側に折り曲げた。
「来いよ。死に、なぁ……」
ビシャモンテンは俺の死の気配に驚愕したのか、目を見開くがすぐに気を取り直し、飛びかかってきた。
だがそれは叶わなかった。
俺の人生がまっとうなバトルものの小説ならば俺は仲魔と共闘し、熱いバトルを繰り広げるのが通常だろう。
だが俺もビシャモンテンも相手をただ倒す・殺すことを極め続けた存在。魅せるということは完全に削ぎ落としている。
そんな技術の持ち主同士が戦うと、どうなるか。
答えは『実力が拮抗してない限り、一瞬で片がつく』
ビシャモンテンは神速と呼べる速度で三叉矛を突きだした。
牽制のつもりだったのだろう。どの急所も狙ってない動きだった。
それがビシャモンテンの敗因となった。
俺はビシャモンテンに向かって口を歪めてみせるとスピードをあげてその三叉矛をわざと腹に喰らった。
鋭い武器が腹から背に貫かれる感覚と痛覚に目を細めるが、俺は笑みを崩さなかった。
ビシャモンテンは『正気か⁉』とばかりに目を見開いた。それが隙になるのにも関わらず。
俺は右手を犠牲にして死の力を一極点に溜め、振るった。
バシャッ‼という音が二度響く。一回目は俺の右手が肉塊になった音。もう一つは、ビシャモンテンの首が飛んだ音だ。
これはスキルではない。ただ死の力を簡略にして振るっただけ。
だが死に愛された俺は再生可能なのに対し、あちらはもはや概念的に滅んだ。その利点をとことん利用した卑怯な方法だ。
だがビシャモンテンは驚いたことにすぐには死ななかった。首だけで俺の方を向き、ぶつぶつと何かを呟いた。
耳を澄まして聞いてみると、魔人達が俺に対して言ったことを言っていることが分かった。
即ち「その執念……おぞましきものよな……」と。
俺はビシャモンテンに向かって乾いた笑い声を挙げ、ビシャモンテンに言った。血でゴボゴボと音が潰れてしまったが、なんとか言葉に出来た。
「仕方がない。それが俺だ」
そういうとビシャモンテンはフッとなぜか笑った。
そしてなぜだろうか?それが俺を哀れむように感じたのは。
ビシャモンテンはそれっきり動かなくなり、そしてマガツヒと化した。
俺はそれをいつものように仲魔達に分けて(ダンテは除く)おこうとした。しかしこの時にまた仲魔達に叱られた。
曰く、無茶しすぎだの私たちを頼れだの。
なんでだろうか?勝てたからいいだろうに。
お前達には、何の害も無かろうに。
治療を終え、俺は柱を全て降ろした。すると坂東宮本体が地響きをたてて降りてきた。
そして灯籠に火が灯り、通行を妨げていた障壁も消えた。
俺はやっとかとばかりに息を吐くと中に入り込んでいった。
中に入り込むと驚いたことに通路にいくつもの鳥居が続いていた。
入り口たるこの小さな広場に足を踏み入れ、その神秘的な通路を通ろうとしたときだ。
「余の眠りを妨げるは何者ぞ!」
メタトロンにも勝る威を含んだ声が轟くと同時にそれが現れた。
それは歌舞伎の役者のような姿をしていた。隈取、装束姿。一見すると人間にも見える。
だがそうでないのは気配で分かる。目の前の存在は人間から昇華した人間よりももっと上の存在だ。
間違いない。マサカドだ。
「……ほう、汝、かの地より来たりし悪魔か……」
マサカドは光輝く身を振るい、名乗った。
「余は一千年の時よりトウキョウの地を守護を務めてきた平 将門である」
そういうとマサカドは俺を品定めするように睨んだ。
「汝は……夜藤 零時であるな。元は人でありながら、悪魔になり、混沌の王とならんとする者。その者がかの地より遥々ここへ来た用は何だ?」
マサカドの問い掛け。俺は一切の偽りを入れないで単刀直入に言った。
「俺は創世の戦争に唯一の勝者になり、カグツチを討ちたい。だがそのための力が俺には不足している。平 将門。あなたの力を貸してくれ」
俺がそういうとマサカドはフムゥ…と唸った。
「余の助力を求むるというか……だが悪魔が跋扈するあのトウキョウの地は我が威光の届かぬ地……汝らが余の助力を求めど、余はかのトウキョウの地に足を踏み入れることができないのだ」
俺は忌々しげに顔を歪ませた。あのボルテクス界をボルテクス界たらしめているのはカグツチだ。つまりカグツチがマサカドを追い出しているということになる。
どこまでも俺を阻みやがって。そう毒づいているとマサカドは言葉を投げ掛けた。
「零時よ。汝、トウキョウの地を平定するつもりはあるか?」
俺はその言葉に一瞬驚きながらもその言葉の意味を推測した。
今のトウキョウはマサカドの人間だったころの時代で言えば乱世である。それを平定するということはつまり、創世をせんとする者達との戦いを制すというだろうか?
俺はひとまずそう判断するとマサカドの問いに肯定の意を示した。
するとマサカドは満足そうに頷いた。
「なれば、これを汝に渡そう」
マサカドから差し出されたものはなんとマガタマだった。それも俺の持つマガタマとは一線を画する強大な力を秘めた。
マガタマはどれもこれも青や緑、水色など冷たい色をしている。だがこのマガタマは燃えるような橙色をしている。
俺はそのマガタマを受け取る。するとそのマガタマの名前を知った。
【マサカドゥス】。それがこのマガタマの名前か。
「では、さらばだ。新しき世界とはいえ、かの地はトウキョウ……汝が新たな守護者たらんことを……」
憂いの言葉とともにマサカドはその姿を消した。
俺はいなくなったマサカドに対して呟くように言った。
「守護者たることは約束できないが……まぁ、勝者にはなり続けてやるさ……」
俺は強大な力を持ったマガタマを握りしめながら坂東宮を去った。
さぁ、寄り道は終わりだ。
最終決戦の続きといこうか。勇。千晶。
2016年も私、ブラック・レインをよろしくお願いします!