真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
マサカドゥス。まさしく究極のマガタマだ。
沸き上がる力。覚えるスキル。どれをとっても非の打ち所がないばかりだが。注目すべきはそれを飲んだ時の俺の耐性にある。
『万能属性以外の全ての攻撃を無効』
お分かりいただけただろうか?つまり俺は万能属性以外の攻撃は一切通用しなくなった、というわけだ。
死の力という最強の矛(もっとも、まだ使いこなせていないが)。ほとんどの攻撃を無効化するマサカドゥスという最強の盾。
その両方を持つ俺に敵はいなくなった……とはいえないが、これで俺の勝利が近くなった、とは言えるだろう。
さぁ、覚悟しな。まずは勇。お前だ。
カグツチ塔を徹底的に索敵しているとやっと勇の場所が分かった。カグツチ塔を昇る正規のルートから外れた場所にひっそりと身を隠してしたのだ。
やはり狙いは漁夫の利。小賢しい勇のやりそうなことだ。
俺は仲魔達を勇の姿を見かけたという広間にたどり着いた。
この広間は断崖絶壁になっており、飛べない者は広間の半分も進めない仕様になっている。無いよりはマシと考えた飛べる者の場所選びだ。
フンと俺は鼻を鳴らすと崖に向かって大声で叫んだ。
「勇!いい加減隠れてないで出てこいよ!かくれんぼする歳はもう終わっただろう⁉」
その声は反響を繰り返し、下へ下へと響いていく。すると……
見えた。奈落の底から首のない黒い巨大ジュゴンのような守護……ノアが。
ノアは俺の目線より上にある宙をフワリと泳ぐように飛ぶと頭のない首をこちらに向ける。
すると、マガツヒの繭に閉じ籠った少年の姿がノアの体内から透けて見えるようになった。
新田 勇。孤独の殻に籠った哀れな元親友の姿を見て、俺は震えた。
再会の喜びではなく、怒りに。
その心情を知らぬ勇はマガツヒの繭から出ずに少し面を上げて、俺を嘲笑した。
「ハッハッハ!わざわざ、やられに来るなんてオマエは頭が悪いなぁ」
俺はフンと鼻で笑い、言い返した。
「言葉を間違えるなよ、勇。俺は頭が悪いわけじゃねぇ。諦めが悪いのさ。おかげでここまでこれたんだ。お前を殺すという結末を見るための場をなぁ!」
凄絶に絶叫するとノアとマガツヒ越しに見える勇の顔が一瞬歪むのが見えた。俺の変貌っぷりに驚いているのか、お前が死ぬと言われたことに憤慨しているのか……。
だが、勇はなおも俺を嘲笑い、冷たい声で言った。
「やれやれ、ムスビの世界が出来るまで待てば、もしかしたらお前も死にこそすれ生まれ変われたかもしれないのに。……いくら友達だったからといっても……オレの創世を邪魔するヤツは許さないよ」
そういうと勇はマガツヒの繭を光らせ、ノアの上体を起こした。ノアの力が急激に膨れ上がるのを感じる。
それに対するよう俺も仲魔達も構えた。
「残念だけどオマエもサヨナラさ。永遠にね……」
「あぁ、永遠のサヨナラだ。そうなるだろうさ。お前とお前の望みの消滅でなァ‼」
互いの掛け合いを終えるとノアは首の部品から角を生やし、そこからレーザーを放った。
俺はそれを正面から受けた。
「………ッ⁉」
それに狼狽する様子を見せる勇。ダボが。戦闘中、敵にそんな様子を見せるなんてな。
俺はノアの体に飛び付くと足だけで体を固定、そして腕を振りかぶって思いっきり振るった。
【アイアンクロウ】
スバァン!という音とともにノアの胴が抉られた。
「くっ……離れろぉ‼」
ショックからダメージを受けて立ち直ったのか、勇がそう叫ぶ。その瞬間ノアが空中でグルングルンと旋回し始めた。
追撃をやめた俺はノアの体からジャンプで離れると仲魔達に号令した。
「やれ‼」
「任せなさい!行くわよ‼」
仲魔の筆頭、ピクシーが応えるとそれに続くようウリエルが剣を振るって火炎魔法を放ち、ピクシー自身もお得意の電撃魔法を放つ。
「さて、ショウタイムだ!」
ダンテも獰猛に笑うとエボニーとアイボリーの二つの銃を操り、ノアの体を穿つ。
「ぐあっ……!」
すると攻撃を喰らったノアではなく、勇が痛みに呻いた。ひょっとするとノアと勇の神経は繋がっているのか?
だが、ノア本体だけに攻撃することは長期戦を意味する。ノアはアマラ神殿に溜まっていたアマラ経絡のマガツヒを根こそぎ使ってノアを召喚したのだ。その生命力はアーリマンと張り合えるだろう。
どうにか勇自身に攻撃を当てて、ノアの核を殺す。それが連戦を予定する俺にとってベストなのだ。
勇のいる場所はノアの体を見れば分かる。仄かに赤く光っている部分が勇の居場所だ。
………あの技なら届くか。
俺は右手を突きだし、そこに生命力を集中させた。そして集中させた生命力によって光輝く右手を細かく動かして照準を合わせる
【破邪の光弾】という技の構えだ。この技は【螺旋の蛇】や【ゼロス・ビート】のような威力や広範囲殲滅力は無いが、手しか使わないため、使い勝手が良い。
遠距離攻撃であり、なおかつ威力が欲しいならうってつけと言うわけだ。
光る右手を左手を使って微調整し、赤い繭に照準を定め、放とうとしたとき。
ノアが動いた。
「ウオォォォン‼」
口がないはずのノアが吼え、スキルを使用してきたのだ。
【夜のオーロラ】
そのスキルを使用したとたん、ノアの全身をオーロラが包み込んだ。
「ッ⁉」
マズイ⁉瞬間的にそう思ったが【破邪の光弾】を引っ込めることは叶わず、轟音とともに右手からレーザーが放たれた。
レーザーはまっすぐ進み、ノアの内部にいる勇の方に向かって飛ぶ。このまま進めば、勇を間違いなく屠れる。この時にはオーロラはすでに消えていた。
だが………
キィィン‼
「んなッ⁉」
いきなりノアの周りに光の膜が現れ、【破邪の光弾】を俺に向けて跳ね返してしまったではないか。
ほぼ反射で体をひねり、それをかわす。【破邪の光弾】の熱に思わず顔をしかめるが問題はそんなことではない。
ノアには物理反射の耐性はなかった。それは先程の【アイアンクロウ】を当てたことによって証明できる。
カーン系による反射魔法かと思い、もう一度同じ技を放つが再び跳ね返される。
「カーンじゃない……⁉」
【破邪の光弾】は物理攻撃であり、それを魔法で跳ね返そうと思うのなら【テトラカーン】を使用すれば跳ね返せる。
だが【テトラカーン】などの反射魔法は一度効果を発揮すると、効果を無くす。故に2度攻撃を反射させたいと思うのなら2度反射魔法を使わなければならない。
だが、ノアはスキルを一度しか使っていない。【夜のオーロラ】。その技が反射させたのは間違いないはずなのだが……
「まさか……」
消去法で考えた結果、ある考えが浮かんだ。それは……!
「オオオオンッ!」
【アギダイン】
「くっ……!」
その仮説を証明するために突っ走ろうと思った矢先、ノアが吼えて火球を飛ばしてくる。俺は反射的にそれをかわしてしまい、突っ込むチャンスを失う。
ノアはそれを狙って魔法を連発した。
【アギダイン】【アギダイン】【アギダイン】【アギダイン】【アギダイン】
「ちぃ……!」
さすがにこれを避けるだけで凌ぐのは無理がある。耐性を駆使し、火球全てをその身に受ける。
ドォン!ドォン!ドォン!
命中弾、3発。ダメージ0。ほぼ無意識でそう断じると再び突っ込んだ。
「おっ………!」
さすがにノーダメージだったのが衝撃的だったのか、勇の驚愕の声が耳に響くが、構わず突っ込む。
ノア再び咆哮。火炎属性単体攻撃魔法である【アギダイン】を再び連発する。
俺は眉をひそめた。【夜のオーロラ】を使って以降、なぜ【アギダイン】しか使わないのか?
疑問が浮かぶが考えている暇は戦いにはない。再びチート耐性にモノを言わせ、【アギダイン】を突っ切る。
そして再びノアに肉薄すると今度はスキルを使わず、そのかわり思いっきり殴った。
キィン!
「っ……」
再び反射。今の俺に物理は聞かないため、その跳ね返されたことによるダメージはない。
そして俺は殴った感覚で仮説を正しいと確信できた。
再びノアは身を揺らし、俺を振り落とそうとする。俺は落とされまいとしがみつき、ノアにむかってささやくように言った。
「防御相性の変更」
「ッ⁉」
その言葉を呟いた瞬間、ノアが……といえよりはその核となる勇がピクッと揺れた。
図星か。その感慨とともに俺はノアの体から離れた。
そう、【夜のオーロラ】は防御相性、つまり耐性の変更がその効力なのだろう。
攻撃が跳ね返されるパターンはよくあることではあるが、跳ね返された時の感覚は魔法によるものと耐性によるものとで若干違うのだ。
さっき殴ったのはその確認。その時の感覚は耐性で物理を反射する敵を、誤って殴ってしまった時と同じ感覚だった。
つまり、【夜のオーロラ】は反射魔法ではなく、耐性の変更、と考えた。
そしてそれは勇の反応で当たりと確信できた。
切り札を見破られた勇は忌々しそうに俺を見るが、すぐに嘲笑めいた表情に戻る。
「フン、見破ったようだけどそれじゃあオレに勝ったのとにはならないぜ?」
「それは、後のお楽しみってヤツだ!」
俺はそう言い返すと魔法を唱えた。
【真空刃】
衝撃属性単体攻撃魔法【真空刃】。範囲は一体だけだが威力は衝撃魔法の中でも最強クラス。
物理が通らないなら魔法。そう思ってこの魔法を選択したのだが。
キィン!
「あっ⁉」
澄んだ音とともに【真空刃】が反射された。俺の方向に飛んでくる【真空刃】を素手で叩き潰すと、俺は驚きの目をノアにむけた。
その様子が滑稽に思えたのか、勇が嗤う。
「【夜のオーロラ】で作り出せる耐性が一つだと誰が決めた?」
【アギダイン】
「チッ……!」
ノアの反撃と勇の言葉に舌打ちすると俺は頭をフル回転させつつ、仲魔達に攻撃させた。
だがその悉くをノアは跳ね返す。ダンテの銃弾すら跳ね返す始末だ。
そしてノアは嘲笑うかの如く吼え、【アギダイン】で反撃する。
その間、俺は動きながらも思考を止めなかった。
【夜のオーロラ】は勇の言う通り、複数の耐性を造り出すことが出来るようだ。ピクシーの電撃、俺の物理攻撃、ダンテの銃撃。その全てを跳ね返すそれは強力である。
だからこそ分からない。そんな技を持っている勇が逃げに徹している戦いをするとは。
勇は孤独を至上とするムスビの頭領だが、その孤独至上主義のため、そのコトワリに賛同する者すら助力することがない。
そのため創世戦争ではカグツチ塔の横道にひっそりと隠れる戦法を取っていた。だが、【夜のオーロラ】というチートスキルを所持しているのになぜ逃げに徹しているのか?
答えは自ずと出てくる。あの【夜のオーロラ】。万能というわけではないといえことだろう。でなければ他の勢力を潰しているはずだ。
その弱点は一つはもう露見している。どうやらノアは現状、【アギダイン】しか放てないようだ。
【夜のオーロラ】を使用して以降、ノアの使用する攻撃は全て【アギダイン】になっていた。そんなワンパターンな攻撃がそもそも当たるわけがないのは、勇も分かっているはず。なのに、それしかやらない。
よく見てみると、ウリエルの攻撃をアギダインで振り払おうとしている。ウリエルには火炎無効の耐性がついているのにも関わらず、だ。
なら勇は俺がノアに手出しできないように、あちらも攻撃できないというわけだ。
そう考えた時、ノアが身を反らし、再びオーロラでその身を包んだ。
補助スキルの重ね掛け。能力を上下させるカジャ系魔法やンダ系魔法ではよく行うことだが、その2つとは違う【夜のオーロラ】を重ね掛けしてどうするのだろうか?
その変化はすぐに知れた。
【ブフダイン】
「おっと……」
銃で撃ちまくっていたダンテに氷塊が飛ぶ。
【ブフダイン】は【アギダイン】と違って、氷結魔法。どうやら重ね掛けでなにかしら変化したようだ。
ところがしばらく様子を見てみると今度は【ブフダイン】しか使わないことが分かる。それに首をひねっていると。
「もしかしたら……!」
ある考えが俺に浮かんだ。
俺はノアの飛ばしてきた氷塊ごと、ノアをあるスキルの照準に入れた。
両手を顔の左右に持っていき、炎を灯してその炎を生命力で猛らす。そして跳んできた氷塊にそれを叩きつけた。
【マグマ・アクシス】
スドォン!という音とともに【ブフダイン】は蒸発、そのまま俺はノアに突っ込む。
すると………
「ギャアアアアアアアァァァァ‼」
【マグマ・アクシス】は反射されることなく、ノアに直撃した。
「やはりな……」
俺はニヤリと笑い、仲魔達に【夜のオーロラ】の穴を教えた。
【夜のオーロラ】は耐性を造るのではなく、変えるのである。最初は呪殺・破魔・バッドステータス攻撃無効といった強力な悪魔なら誰しもが持ちうる耐性のところを、【夜のオーロラ】によってそれに様々な反射の耐性を持つ。
だが、それには穴がある。そしてその穴というのは、唯一使えるノアの魔法の反対属性であると予想した。
つまり、今みたいに氷結魔法しか使えないのなら火炎属性の攻撃だったら通用するということだ。
そうと分かれば話は簡単だ。
「【地獄の業火】ッ!」
俺はノアの無い頭部に火炎魔法をぶつける。それに続くよう、仲魔達も火炎魔法をノアに当てる。
「ぐっ……!」
たまらず勇が呻き、ノアに【夜のオーロラ】を使わせ、耐性を変える。そして……
【ザンダイン】
今度は衝撃魔法を連発してきた。
衝撃の反対属性は……電撃。
「ピクシー!」
「まかせなさいッ!」
小さな体に不釣合な大きな声をあげるとピクシーはパチンと指を鳴らし、電撃魔法を雨あられと降らせる。
「ぐっ……ちぃ……!」
避けようとするがノアはアーリマンと同じぐらい巨大だ。的がデカイ分、物量で押せば自然と当たってしまう。
再び【夜のオーロラ】を唱える。ノアが使用してきた技は【ジオダイン】。その反対属性は衝撃だ。
「イヤァ‼」
今度はダンテの番だ。剣を大振りに振り回し、風の刃を連続で放つ。
「オオオオン‼」
悲鳴のごとく吼えるノア。ダンテに向けて【ジオダイン】を放つが俺が防ぎ、カウンター気味に衝撃魔法をお見舞いする。
「アアアアアアァァ‼」
怒りの声をあげるのは勇かノアか。再びその声で【夜のオーロラ】を使うが、続くノアの攻撃でノアの耐性の穴が露見してしまう。次は氷結魔法だ。
【絶対零度】
【マハブフダイン】
俺と仲魔達の放った氷結魔法は全て範囲攻撃。巨大なノアはかわす術がなかった。
「ぐう……!アァァ……!」
ノアの体はズタズタ。ノアは黒いその体を不気味に蠢動させた。
だが悪魔がマガツヒと化すものとは違う。あれは死にかけているのではない。それどころか力が増している。
この感覚は知っている。アーリマンが第2形態に移行したときと同じ感覚……
「第2ラウンドのようだな」
「……そのようで」
ダンテがリベリオンを振るいながらそう言い、俺が忌々しそうに相槌を打つとノアに本格的な変化が現れた。
ノアのない頭部。そこが不気味に蠢き、そこからぐにゃんと頭部が生えてきたのだ。
それはなんと……勇の頭部の形をしていた。細かいことに勇のトレードマークである帽子まで再現されている。
だが変化は外見だけではない。力も膨れ上がっている。
それに警戒していると、ノアに張り付いた勇の顔が歪んだ表情で、ぞっとする声をあげた。
「なんで……なんでお前はオレの邪魔ばかり……!」
アアアアアアァァァァァァッ!!!!
その叫びは、なぜだろうか。とても叫び声というよりも、号哭に聞こえた。
それが俺の胸を、なぜか痛めた。
次回、少しオリジナルを入れるつもりです。