真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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ノア第2形態戦になります。






孤独と死は… 後編

「アアアアアアアアァァァァァァ………!!」

 

ノアに現れた顔がおぞましい声で叫んだ。

 

ノアは再び【夜のオーロラ】を使用し、防御相性を変える。俺は次のノアの動きに注目した。ノアの使う魔法の反対属性がノアに通じる攻撃になるからだ。

 

だが……

 

【ウソブキ】

 

「んなっ……!」

 

ノアは四属性魔法を使わず、防ぎようのない、相手から生命力と魔力を奪う魔法を使ってきたのだ。

 

奪われる力の量は多くはない。だがこれではノアの弱点が分からない。

 

「ヘイ、零時!どうやらヒントはもうもらえないようだぜ?」

 

「みたいだな……」

 

ダンテの軽口に苦々しく応じる。確かにこれではノーヒントだ。

 

だが使っている技は【夜のオーロラ】のままだ。変わったのはヒントを渡さない。これだけだろう。つまり四属性魔法のどれかが通用するということは変わらないはず。

 

やたらめったらに魔法を撃つしかない。

 

「ハッ‼」

 

【地獄の業火】

 

【絶対零度】

 

【真空刃】

 

【ショックウェーブ】

 

軽い掛け声とともに四属性すべての魔法を使う。

 

結果、【地獄の業火】以外は反射されたが俺には効かない。これで炎が通ることは分かった。

 

すぐさま仲魔に号令をかける。

 

「ウリエル!」

 

「分かっております!」

 

【プロミネンス】

 

青白い炎なノアの体を焼き、傷つける。

 

「アアアアアァァァァァァ…!」

 

痛みに叫ぶノア。あるいはそれは勇の痛みを代行して現しているのか。

 

マガツヒの繭に閉じ籠っている勇の顔は窺えない。体を丸めてしまっている上、ノアの体の中心部分に引き込もってしまったようだ。

 

だが俺は忘れない。あいつの嘆きの言葉を。

 

『なんで……なんでお前はオレの邪魔ばかり……!』

 

…………なんでかって?

 

その問いの答えをあいつに攻撃とともにぶつける。それが、俺があいつに行う復讐だ。

 

そのためにはノアが道を塞ぐ落石のごとく邪魔だ!さっさと【夜のオーロラ】の仕掛けを完全に解かないと、持久戦に持ち込まれる。それだけは避けなければ。

 

再び【夜のオーロラ】を使用するノア。今度はただの攻撃を俺に加えてくる。どうやら完全に俺を目の敵にしたようだ。

 

ただの攻撃といっても、ノアが攻撃の時に生やす角からビームが飛んでくるのだが、スキルではない攻撃はボルテクス界では通常攻撃になる。よってこのビームは通常攻撃。

 

物理攻撃なら俺に防げないものはない。

 

「ふん!」

 

腕の一振りでかき消すと、ノアに【真空刃】をぶつける。

 

キィン!

 

「違う」

 

跳ね返されたのを見てすぐさま違う魔法を放つ。今度は【ショックウェーブ】。

 

バァーン!

 

当たった。

 

「ダンテ!ピクシー!」

 

すぐさま電撃攻撃が使える仲魔に号令。自分もそれに合わせて【ショックウェーブ】を放つ。

 

「オオオォォォォォォ……!」

 

【夜のオーロラ】

 

「またかチクショウ……」

 

ダンテが舌打ちする。ダンテの技は強力だが属性のレパートリーが少ない。暴れられないのが気に食わないのか、イライラと剣を振り回す。

 

しかしその気持ちは俺にもある。こうも相手の出方を見て手探りで相手に通じる技を見つけないといけないチマチマとした戦いかたをしては、持久戦にどうしても持ち込まれてしまう。

 

なにかないのか……他に見逃している点は……!

 

………

 

「そういえば……」

 

俺の頭に何かが引っ掛かった。

 

ノアは【夜のオーロラ】を使う度に、反射出来ない属性を変える。それになぜかバラツキを感じないのだ。

 

なんというか……規則性があるように思える。

 

俺は第1形態も含めたノアの耐性を思い出した。

 

最初は氷結属性が通じた。そして次は火炎属性。その次は電撃。そのまた次は衝撃。

 

そして次は氷結……第2形態になってからは……火炎……次に電撃……!

 

「はは……!」

 

俺は分かってしまった。【夜のオーロラ】の規則を。

 

なら、今、あいつに通じる属性は……!

 

「【真空刃】ァ‼」

 

衝撃!

 

「グアアアアアッ⁉」

 

ビンゴ(当たり)のようだ。

 

俺はノアが怯んでいる間に仲魔達に【夜のオーロラ】の規則性を教えた。

 

【夜のオーロラ】。一つの属性以外通用しなくなる最強の防御技。その弱点は2つ。

 

一つは技に制限がかかること。ノア自身の力は膨大なのに技に制限がかかってしまうのは明らかに致命的な弱点である。

 

そしてもう一つ、こちらが本命だ。

 

【夜のオーロラ】の穴は規則性がある。最初は氷結属性、次に【夜のオーロラ】を使った時は火炎属性。次は電撃、次は衝撃。

 

そして最後に氷結属性に戻り、火炎、電撃、衝撃……。この繰り返しなのである。

 

衝撃が通じたノアは再び【夜のオーロラ】を使うがもはや無意味。

 

「氷結魔法だ!やれぇ‼」

 

「はいはーい!」

 

戦場には合わない明るい声で答えるピクシー。ピクシーは俺に合わせて氷結魔法をノアにぶつける。

 

「オアアアアァァァァァァ!!」

 

【夜のオーロラ】

 

「無駄だっつうのが分からねえのかよ‼」

 

【気合い】

 

怒号とともに俺はスキルを使う。生命力を使うを技を一度だけ強化する技。

 

生命力を消費する技のほとんどは物理攻撃。だが今から使う技は火炎属性である。これならば、今のノアなら通用する。

 

両手に炎を灯す。それに生命力を注ぎ、さらに猛らせる。

 

俺は最大限に炎を巨大にするとノアに向かって飛び上がった。

 

俺の挙動に気づいたノアは絶叫しながら魔法を放つ。【マハブフダイン】

 

氷結属性広範囲攻撃魔法である。どうやら第1形体同様、一つの属性魔法は使えたようだ。

 

だが無駄だ。氷結属性は俺の前には何の意味も成さない。全て俺に当たる寸前で消えてしまう。

 

ノアは狂ったように俺に氷弾を浴びせるが、全て消える。

 

俺は凄絶に嗤うとゴウゴウと燃え上がる両手をグンと後ろに引き絞り、ノアの体目掛けてそれを振り抜いた。

 

そこに、一切の容赦を乗せず。

 

【マグマ・アクシス】

 

「この…………チート野郎がァァァァ‼」

 

ノアの怒号。だがその言葉が意味を為すことはなかった。

 

その言葉が引き金になったかのように獄炎の掌底はノアに直撃、刹那、爆発した。火柱がノアを貫いた。

 

ノアの胴体に大穴が開けられる。そしてノアの体内にいた勇がその穴から落ちてきた。

 

勇の姿は悲惨だった。自らを守っていた繭はすでに四散し、勇自身も体のあちこちから火と煙を噴かせていた。

 

だが勇は戦意を失ってなかった。その証拠に勇は憎悪に燃えた目をこちらに向けていたのだ。

 

勇は血と煙と火を空中に散らしながらこちらにむかって飛んできた。歯を剥き出し、俺に向かっておぞましいまでに絶叫した。

 

「レイジィィィィィィイイイイイイイイイイ‼」

 

言葉として放たれたのは俺の名前。だがそれに勇の全ての憎悪が込められていた。

 

迎え撃つために俺は拳を振り上げる。【マグマ・アクシス】の反動で体勢は崩れているが、殴るぐらいなら……勇の心臓を素手で撃ち抜くぐらいなら可能だ。

 

だが俺はあるものを見てしまった。それが俺の体を氷漬けにしたかのように縛った。

 

こちらに向かってくる、勇の瞳。

 

その眼から、血の涙が線を引いて流れていた。

 

それは、かつて俺の眼からも流れていた。理不尽を嘆く涙。

 

それが、人の心を捨てたはずの俺に哀れみという感情を呼び起こした。

 

勇も、創世の野望に目覚める前はただの人間。温い日常を生き、そしてそれを奪われた。地獄を見せられ、味わった哀れな被害者

 

彼は孤独だった。なにも自分を助けてくれないと諦め、アマラ経絡で生き抜いて内に……歪まざるをえなかった。そのまま、歩まざるをえなかった。

 

たった一人でそこまでの境地に至った者を、復讐の糧として殺すことにためらいを覚えてしまった。それが、俺の攻撃を鈍らせた。

 

「勇……ッ!」

 

それでも俺が勇に向けて致死に至る攻撃を繰り出せたのは、悪魔の冷徹さを引き継いだ故か。それとも俺の敵として立ったことへの憎悪故か。

 

拳での攻撃ではもう間に合わない。ダメージは負わないだろうが確実に吹き飛ばされる。この打ち合いで俺の勝利以外の結末は絶対に認められない。

 

勇はなんどもその心から絶望で血しぶきをあげただろう。その痛みの辛さは俺も知っている。加えてあの傷だ。

 

もはや勇の生は地獄であろう。だからこそ……かつてだいそうじょうが俺に説いたように。

 

死で救う!

 

「ジャアッ!」

 

鋭い気迫とともに俺が繰り出したのは拳ではなかった。

 

手を広げ、指を揃え、揃えた指で相手を穿つ攻撃。

 

『貫手』だ。

 

グシャ!という音とともに勇の紫色に変色した胸に俺の指が突き刺さった。

 

勇の攻撃は拳による殴りかかり。しかしそれは俺の目先数センチで止まっていた。

 

指によってリーチが増えたことによる攻防の勝利。俺はそれを確信した瞬間、指を伝って勇に死の力を流し込んだ。

 

「あぐ……!」

 

死による生命力の喪失を感じたのか勇が呻き、身を捩った。

 

俺は、そんな勇の身を手繰り寄せ、抱き締めた。

 

理由は2つ。1つは地面に衝突する衝撃をショックに強い背中で完全に受けるためには、勇に突き刺さった手を勇ごと引き寄せなければならず、その形になった。

 

もう1つは……それが親友にくれてやる。最後の情けだった。

 

死は冷たい。その概念に自らの命を喰われている勇は今、身を切り裂くような冷たさに襲われているはずだ。

 

少しでも暖かくしてやりたかった。男同士とかそんなことは一切思い浮かばなかった。それぐらい死は冷たい。特に、孤独の中での死は想像を絶する寒さだろう。

 

あの一瞬の攻防から長く感じたがようやく地面に衝突した。衝撃が全身を襲うがなんてことはない。

 

今、勇は俺の上に乗っている。攻撃するなら絶好のチャンスだが、もはや勇にそんな力はないだろう。

 

俺は勇の胸から指を引き抜くと、万が一に備えて拳を握った。少しでも勇が不審なことをすれば頭を撃ち抜けるように。

 

だが勇はそのかわりに俺に向かって何かを訴えるように口を動かしていた。

 

「なんだ、勇?」

 

かつてトウキョウが東京であった頃のように聞き返すと、勇は先程よりもほんの少し、はっきりとこう言った。

 

「お前の……勝ちだ……好きに……するが……いい……さ…」

 

そして最後に、今にも消えようとしている細い声で勇はこう言った。

 

それは、俺の記憶の中で、永遠に残る言葉だろう。

 

「あと……お前の……小説……クッソ……面白……かった……ぜ……」

 

そしてブルリと勇はその身を痙攣させると、ぐったりと全身の力を抜いた。

 

すると俺の横に、勇はあるものを出現させた。

 

横目に見ると、それが【タカラ】だということに気づいた。

 

勇はそれっきり動くことも、目を開くことも無く、そのままマガツヒとなって消えてしまった。

 

勇には、たくさん言いたいことがあったのに、それも永遠に出来なくなってしまった。

 

その死に様は、悲しすぎた。勇はその存在証明を何も残せていなかった。骨の一片だって残ってない。

 

不幸すぎる。そうとしか言えない勇の生き様と死に様は、俺にありえないことをさせた。

 

『泣いた』

 

身も心も悪魔と化した俺が、泣いていた。

 

泣かないはずの存在が、泣いていた。

 

心が痛みだす。過去に同じことがあったかつての混沌王たちから引き継いだ力も、俺の中で慟哭するように震えていた。

 

心が痛い。もはや傷つくまいと思っていた心が再び血しぶきをあげた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




な、難産だった……!

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