真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
バアル・アバターは形態変化が無いのでこれが前編のようなものになります。
『devil never cry.』
意味は、悪魔は泣かない。
どんな悪魔も、激情のあまり泣くということはない。これは悪魔共通の意見だ。
眼の部位がある悪魔なら涙を流すことはできる。だが、それは決して感情によって流れる涙ではない。
そしてそれは、悪魔とは少し違う存在である魔人とて同じはずだ。まして魔人は死の象徴。誰かの死を悼むなんてことすらしない。
ならば、俺は自問する。
俺の両目から流れる『これ』はなんだ?そして、何よりも………この耐え難い胸の痛みはなんだ?
答えはもう知っている。それが涙と悲しみなんてことは人間だった俺には痛いほど理解できる。
だがそれが今の俺に現れる意味が分からない。俺はアマラの果てで人の心も捨て去ったはずだ。
大いなる意思を討つために、何を犠牲にしても心の痛みがないように人の心を捨てたというのに。
この心は、俺を泣かせるのだ。泣かずにはいられない衝動を、吐き出すのだ。
叫びはしない。ここは勇の墓場だ。眠らせてやったのにうるさくしたら意味がない。
勇の望みを叶える守護ノア。ノアに現れた勇の顔は、その痛みと苦しみをゾッとするほどはっきりと表していた。
今にも断末魔を叫びそうなほど口をこちらに向けて開いている。そして何より……泣いていた。
ノアの顔。その目から滝のようにマガツヒの涙を流していたのだ。その様はあまりにも……悲劇的だった。
ノアも勇も、本当は孤独の道なんて歩みたくなんかなかったのだろう。しかしノアはすがってくる者が無くなって忘れ去られ、勇は誰も自分の救いとなってくれずにその道を歩まざるをえなかった。
どの存在も……真に一人で生きていくなんてことはできないのに。そうせざるをえなかった。
それがなによりも、悲しかった。
「………………シッ!」
【死亡遊戯】
「ギャ⁉」
「へぶっ⁉」
「ぎあッ!」
生命力で作られた剣による居合い斬り。それが悪魔三体の首を寸分違わず飛ばした。
残る守護は、ヨスガのバアル・アバター。創世主は橘 千晶。
自分達の主を守るため、ヨスガの悪魔達はカグツチ塔上階で待ち構えていた。
だが脆すぎる。その程度で強者を名乗るか。そもそも群れている時点で勇より劣っていることは確定だ。
あいつは一人であそこまで行けたんだ。
「死ね」
たった一言、天使にくれてやると俺はそいつの首を極めてそのまま引きちぎった。
ふりかかる血しぶきは気にしない。もはやこの全身は血にまみれていないところはない。気にせずかぶる。
すると、ぶちまかれた血の雨の合間に、ある悪魔を見つけた。
現在いる場所はアーリマンやノアと戦ったものより少し狭い広間。
その奥にある壁の上。そこに、見知った悪魔がいた。
元マントラ軍No.2。かつて俺をその圧倒的なパワーで苦しめた巨神。
鬼神 トールだ。
トールの目は俺をひしひしと見つめていた。驚きとも敵意とも取れるその目を、俺は見据えた。
「こんな場所で会うとは……。貴様が、これほどまでの悪魔だったとはな。なるほど、私が認めた悪魔だけのことはある。私を覚えているか?忘れたとは言わせぬぞ……」
「あぁ。覚えているさ……」
ただそれだけ返すとトールはマントを翻し、壁から飛び降りた。
ドンという少し響く音しか聞こえない。全身を使った軟着陸で音を殺している。完全に強者の身のこなしだ。
「……貴様、どうやらこの塔を上る目的が、私とは異なるようだな。ならば、私はヨスガの気高き強者として、貴様を血祭りに上げねばならぬ。ヨスガの世を啓くためにも、貴様にはここで死んでもらおう」
俺は自分のこめかみが動いたのを感じた。死んでもらおう。この言葉に殺意が湧いた。
トールはそれに気付かず、ハンマーを構え、叫んだ。
「いざ…尋常に勝負せよ!」
そう言い、その巨体に見合わない速度で俺との距離を詰めたトール。
仲魔やダンテが動こうとするが、それを俺は手で制す。こんな奴俺一人で十分だ。
振るわれるハンマー。恐らくはミョルニルだろうそれを、
俺は蹴り飛ばした。
「ぬおっ⁉」
その衝撃で仰け反るトール。その頭を今度は右フックで撃ち抜く。
「グアッ‼」
俺の細腕であの巨体が吹き飛ぶのはまともな目線で見ればありえないの一言だろうが、今の俺のパワーがあいつに劣るなんてことはありえない。
そうでなければ、こいつより上位の存在と2回戦って勝っているものか。
だがトールも伊達に神の名前を持っているわけではないようだ。頭撃ち抜かれていても、まだ立ち上がる。
まぁ、もうチェックメイトだが。
「なるほど、確かに千晶様や他の守護を相手にし、この塔を登るだけはある。だがこの程度でッ………⁉」
トールは言葉を中断せざるをえなかった。当たり前だ。
奴の頭から、死の力が侵食し、脳をドロドロに溶かしているのだから。
「グアアアア⁉な、なんだ……!これはァァァァァァアアア‼」
トールは転げ回った。だがそれで免れる死ではない。どんどんトールの内部を侵食し、殺していく。
俺はそれを冷めた目で見つめていた。『気高き強者とやらの死に様』を。
だが、あぁ。残念だったなトール。
お前の命。俺にとって何一つ意味を見いだせない。無意味だ。何も残せずに死ね。これから永遠となる俺の記憶の片隅に埋もれてろ。
少なくともお前を、勇と同格とはしない。永遠に
トールはせめて一矢報いようと考えたのか、痛みに叫びながらミョルニルを投げた。
俺は重厚なその武器を、死の力をこめた手で受け止めた。
「………ッ⁉」
驚愕するトール。俺は凄絶にトールにむけて微笑むとそのハンマーを握り潰した。
トールは震えていた。恐怖か。それとも死の冷たさ故か。それともどちらもか。どうでもいいがな。
「……おのれェ…!私の力は…貴様に及ばぬというのか!貴様の力は……!おのれ、憎しや……‼だが、しかし!千晶様が必ずや……ヨスガの世を啓いてくれるはず!私はここで朽ち果てようとも、ヨスガは……ヨスガはァ……!ぐああああああああ………!!」
トールは捨て台詞を吐くと絶叫とともにマガツヒとなって爆散した。
降り注ぐ血をうっとおしそうに払う。ダンテも仲魔達も無言でそれをよけていた。
そして仲魔達に余波による被害がないことを確認すると先に進み始めた。
未だ、胸が張り裂けそうな感覚が無くならないまま。
カグツチ塔上層。最難関と思えるギミックが俺を足踏みさせた。
どこにあるか分からないワープトラップ。飛ばされた先が上層と中層を繋ぐ場所なんてことがさらにあった。
だがトラップということは配置は変わらない。飛ばされる場所も決まっているので覚えれば先に進める。
そしてその先、迷路のような通路を歩いていくと、ついに見つけた。
アーリマンやノアがいたようなあの広間が。
そして感じる圧倒的な力の波動。
間違いない、バアル・アバター……千晶がいる。
俺は意を決してその扉を開けた。
その広間は、奥に高台のような場所があり、その奥に先に進む道があった。
その高台に、絶対の強者として君臨するが如くバアル・アバターがいた。
バアル・アバターは、その石膏のような体を優雅に動かし、まともな形である右手を歓迎するかのように広げた。
「よくぞ来た。
汝もまた、戦う運命にある者なれば礼は尽くそうぞ……」
その言葉に俺は鼻を鳴らした。
「礼?いるかそんなもん。無意味なことは嫌いだ。知らない仲でもねぇのに」
「わたしたちは、もう友ではない」
俺の言葉に、バアル・アバターは淡々と反論した。
「私とお前はコトワリを違え、創世を争う、出会えば戦うしかない敵同士だ」
「なら、ますます礼なんていらない。殺意と攻撃。それ以外は不要だろう!」
俺が叫ぶとバアル・アバターはククッと笑った。
「そうだな……幸いなるか、互いに涙も流れぬ体になった。戦を交えることなど、何のためらいも無かろう…」
その言葉に俺のこめかみが動く。俺は涙を失いきってはいない……
だがそんなことは知らない(もっとも知ってたとしても変わらないだろうが)バアル・アバターは宙に浮き、戦闘体勢に入った。
「さあ、真に優れたるは汝か我か。全ての力をもってかかってくるがいい!」
そういうと凄まじいまでの力がこの広間を軋ませた。
俺は動揺を抑えると、力を猛らせ、迎撃する構えを取った。
トールワンパン……原作で俺がやっちまったことです。
クリティカル入った【至高の魔弾】で1発KO。他にやってしまった人もいるのでは?