真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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あれ、なんでだろ……?バアル・アバター戦の方がスラスラ書けてしまった……




絶対強者 絶対狂者 後編

 

ヨスガ。強きを正義とする弱肉強食のコトワリ。

 

立ち位置としてはシジマの対極に立つ存在であり、そのルールは至ってシンプル。

 

『勝利した強者は這い上がり、負けた弱者は蹴落とせ』

 

それが千晶が望む最も美しい世界。有能が無能によって押し潰されない世界。

 

そこに一片の慈悲はない。弱いことを罪とし、断罪する。

 

『傲慢にも』

 

俺は怒りをこめた拳をバアル・アバター向けて放ち、バアル・アバターはそれを掌で受け止めた。

 

「フッ……!」

 

「ぬっ……」

 

呼気とともに拳を強引に振り抜き、そのまま吹き飛ばす。

 

俺が最も気に入らないとしたコトワリがヨスガだ。弱者に存在価値がないなんて元弱者の俺には死ぬほど許せない話だ。

 

千晶自身、俺の幼い頃は分かっているはずなのに……。それを救ってくれたのは、他でもない勇と千晶なのに……!

 

千晶は弱者とともに俺の心をを踏みにじった。俺の前でマネカタ達を大量虐殺した。

 

今、ここでバアル・アバターに創世を行わせれば千晶の言う有能な存在のみが弱者の屍の山の上で生きることになる。

 

それの、なんとおぞましきことか。

 

そして、憎たらしいことか。

 

バアル・アバターは吹き飛ばされた体勢から変形した腕を器用に使って体勢を立て直していた。

 

サカハギによって左腕を斬り飛ばされた千晶は、魔丞になったときに無くした腕を本来の腕とはかけ離れた形で再生させた。

 

バアル・アバターと一体化した後も、その腕は歪の一言だ。肩から先が後ろに向かって伸び、手に向かえば向かうほどその形状は巨大な昆虫の羽を思わせる。

 

もはや手としての役には立たないが、相手は力を信条とする者の頂点。それがハンデなんてことは無いだろう。

 

バアル・アバターは羽のようなその腕を震わせると俺を見据え、口を開いた。

 

「我は問う。汝が創始者たる資格を持つのか」

 

バアル・アバターはそう言うとゆっくりと俺に指を向けた。

 

「我が呪い、我が魔力で、汝らの姿を映すとしよう」

 

そういうとバアル・アバターは指を振るった。

 

【バエルの呪い】

 

ズドン!という衝撃音とともに俺の体に魔力光が突き刺さる。

 

しかし……この感覚は魔力属性の攻撃のようだ。つまり俺には効かない。

 

俺はピクシーを召喚することをやめた。彼女には魔力属性の耐性はない。この技を喰らうなんてことにはしたくない。

 

魔力属性は妨害魔法に分類され、少々特殊な攻撃にカテゴライズされる。

 

主なものは魔法を封じ込める【マカジャマ】という魔法だが……過去に魔人と戦った時は問答無用で生命力を半減させる【ソウルバランス】なんてものもあった。

 

魔力属性は喰らわないに限る。特に他の悪魔が使わないような専用技は。

 

俺はかわりに魔力の効かない悪魔……それもとっておきのを出した。

 

「ベルゼブブ!」

 

そういうと巨大な蠅の悪魔が俺の背後に現れた。

 

かつて俺をアマラ深界で試した地獄のNo.2。彼(?)は悪魔合体の果てに、俺が創りだした究極の悪魔。その一つ。

 

あの暴挙とも言える耐性も、引き継ぎ、力も引き継いだ。

 

あの【バアルの呪い】とやらも、防げるだろう。

 

バアルはと言えば彼女は呪いの効果がないことに驚くこともせず、次々と攻撃を繰り出してきた。

 

【天罰】

 

【メギドラ】

 

「チッ……!」

 

【天罰】は破魔属性であり、防げるが【メギドラ】は万能属性で防げない。俺は体を振って直進するはずだった進路を歪める。

 

そしてバアルの右に回り込み、回し蹴りを放つ。

 

「ッ!」

 

しかしさすがと言うべきか、ただの悪魔ならその攻撃を見る前に絶命させられる自信があるそれをいとも簡単にバアル・アバターは防いだ。

 

しかしだからと言ってそのまま離れるのは隙になる。通常攻撃の打ち合いに持ち込む。

 

しかしそうはさせまいとバアル・アバターは数回の打ち合いで離れ、【メギドラ】を放つ。

 

「グハッ!」

 

よけようとしたが、何割かを喰らってしまった。万能属性の破壊力はマサカドゥスの防御を貫いた。

 

焼かれた素肌から血が流れ出るが……どうでも良い。

 

肉体的痛みなど………失った痛みに比べれば……!どうにもならない感情の流れに比べれば……!

 

「ジャアッ‼‼」

 

【死亡遊戯】

 

喉も裂けよとばかりに気迫を吐くと俺は剣を製造、構え、溜め、抜刀の動作を一瞬で行い、バアル・アバターに向けて剣を振り抜いた。

 

「がッ……⁉」

 

【死亡遊戯】を見たことがないのと、俺が怯むとでも持っていたのだろう。バアル・アバターはその【死亡遊戯】をまともに喰らい、膝を着いた。

 

だが巨大なノアやアーリマンと比べると劣るが、やはり守護であるバアル・アバターのその生命力を全て吹き飛ばすことは出来なかった。

 

だが腹は裂いた。俺は追撃をかけようと再び剣を構える。

 

だが、その前にバアル・アバターが口を開いた。

 

「……我、見定めたり。我が真の力を礼とし、汝との運命に身を委ねよう」

 

そういうとバアル・アバターが変形した腕が不気味に動き、そこから光が放たれた。

 

【魔王の号令】

 

そのスキルが完全に成ると雷鳴が2度響いた。

 

それはもはや聞きなれた悪魔の召喚音だった。

 

現れたのは2体の悪魔。どちらも、このボルテクス界で何度も戦った悪魔だった。

 

一体は堕天使 フラロウスという悪魔。頭が胸に存在する豹と人が混じったような悪魔。

 

もう一体は、ニヒロ機構でも戦った。堕天使 オセ。

 

だが2体から放たれる威が通常の比じゃない。体の色まで青白くなっている。

 

その2体の悪魔を睨むと、頭の中で2体の名前が浮かんだ。

 

熾天使 フラロウス・ハレル

 

熾天使 オセ・ハレル

 

明らかに通常とは別次元の個体に進化した悪魔だった。堕天使ではなく、天使の最上位である熾天使とくるか。

 

「ヘイ零時。お仲間のようだぜ?どうする?」

 

「………先にあの2体を殺るしかねぇだろ」

 

そういう俺の視線では、オセ・ハレルがバアル・アバターに【ディアラハン】をかけていた。

 

【ディアラハン】は一回の詠唱でどんな傷でも完治させ、生命力まで満タンにしてしまう。それは、守護の膨大な生命力でも変わらない。

 

【死亡遊戯】が作りだした深い裂傷も完全に塞がり、バアル・アバターは再びこちらに向き直った。

 

俺は頭の中で考えた。ベストの戦いを。

 

あの熾天使どもはバアル・アバターの力によって進化した存在。つまり王が死ねば、兵であるハレルどもも討てる。

 

今、ここで足止め喰らうわけにはいかない。俺は神を………大いなる意思をどうあっても討たなければならない。

 

だから、この胸の痛みに構う暇も、お前を殺すことに躊躇っている暇はないんだよ……!

 

そう考えた時、胸の痛みが消え去る。代わりに胸中に現れた冷たい殺意。

 

それを糧に、3体となった敵の方に向かって駆ける。腕をクロスし、力を溜めながら。

 

「………!させるか!」

 

バアル・アバターの号令でオセ・ハレルとフラロウス・ハレルがこちらに向けて魔法を撃つ。そしてバアル自体も魔法を放つ。

 

だがこちらも一人で戦っているわけじゃない。魔法を魔法で仲魔が撃ち落とす。

 

全くの無傷というわけではないが……体から血がしぶくがそれがどうした?

 

3体を射程に入れると俺はクロスした両腕を広げ、叫んだ。

 

「ぶっ飛べッ‼」

 

【地母の晩餐】

 

ゴオオオオオオン‼

 

「くっ……!」

 

「「……⁉」」

 

まさか懐に飛び込んで地面を吹っ飛ばすと思ってなかったのか、3体は綺麗にその攻撃を喰らう。

 

「………やはりな」

 

流れる血を手で振り落とすと俺は呟いた。

 

今の【地母の晩餐】。百戦錬磨の悪魔だったら俺が突っ込んだ時点で後ろに飛んでいた。

 

だがバアル・アバターの核となっている千晶はボルテクス界を【逃げて】過ごしていた。

 

結果、戦いの経験において千晶は、ボルテクス界で戦い続けた俺に劣る。よって今のように意表をついてやると反応が一歩遅れる。

 

バアル・アバターが戦いの守護であっても、核となる千晶がそれについていけないのだ。

 

俺は分断したオセ・ハレルとフラロウス・ハレルの方に指を向け、仲魔達やダンテに攻撃させた。これでもう、ハレル達はバアル・アバターの支援は出来ない。

 

俺は吹き飛んだバアル・アバターの方に向き直り、

 

「おっと……」

 

そして反撃とばかりにバアル・アバターが【メギドラ】を飛ばしてきた。

 

それをかわすと俺はその上の魔法である【メギドラオン】を放つ。

 

「ふっ……!」

 

だが小さいバアルは避けることをする。メギドラオンの爆破を避け、その余波に目を細める。

 

だがたちまちそれを見開く、俺が今までよりも圧倒的に速いスピードで突っ込んできたからだ。

 

「ダメだ。お前」

 

俺は冷たく言いはなった。

 

軍団を持てた魔丞、そしてバアル・アバターはそれ故にますます戦わなくなった。

 

驚愕するということがいかに致命的なことかを反射的に理解出来ていない。

 

バアルが戦った時、俺に問うた。『創始者たる資格があるのか』と。

 

俺がその自問する。『千晶に創始者たる資格があるのか?』と。

 

そして自答する。『無い』と。

 

力の国の創世者は、驚愕する恐怖心すら持ってはいけない。そうでなければ、その力の国は、弱さを持った不完全な世界になるだろう。

 

思えば、俺に倒されたシジマもムスビも矛盾を孕んでいたからこそ俺に倒されたのだろう。

 

シジマの長、氷川は不要とした感情を原動力して静寂の世界を創ろうとした。

 

ムスビのリーダー、勇は孤独を真理としながら結局その孤独に染まりきれず、心のどこかで誰かを求めた。

 

そして、ヨスガのリーダーも、また弱さを…

 

……俺も、人の心を持って千晶に容赦を掛けたら、きっと敗北した創世者と同じ道を辿る。

 

復讐の道を進むと決めたのなら、阻むもの全てを踏み潰すと決めたのなら………!

 

「覚悟を決めろッ‼零時!」

 

ゴウッ!という音とともに手から黒い火が吹き出る。

 

それは、憎悪と敵意に燃え上がる死の力だった。

 

腕が激痛に晒される。だがもはやそれは俺にとって苦になることはない。

 

死の力を纏った腕が目に止まらぬほどのラッシュを放つ。バアル・アバターは変異した腕を振るってそれを留めていたが、だんだんひび割れていく。

 

「おのれぇ‼」

 

だがバアル・アバターは抵抗を見せた。砕ける寸前の腕をわざと大きく振るい、砕けさせた。

 

「ちぃ……!」

 

その破片が運悪く目に入る。それによって攻撃がバアル・アバターから逸れた。

 

「ハッ!」

 

バアル・アバターは掌打で俺を突き飛ばす。距離を離して、ハレルのどちらかに回復させる気か。

 

甘い。甘いぜ、千晶。

 

こちらはもうお前のトドメ用の技は出来ているっつうのにそれを潰さず、こちらに背後をむけるなんて。

 

俺は吹き飛んだ衝撃を生かして体を大きく反らす。

 

力が顔面に溜まる。それも凄まじいまでのそれは、俺の顔面をあちこち裂いた。

 

だが今は痛みすら俺の憎悪を焚き付ける油にしかならない。黒いスパークが俺の視界を埋め尽くす。

 

狙いはその果て、かつての親友。そして今は憎む敵。

 

バアル・アバター……またの名を……橘 千晶。

 

俺はかつての親友に向かって叫んだ。敵に向かって何度も叫んだ呪詛を。

 

「死ねよォォォ‼」

 

そして全ての憎悪を乗せて、それを放った。

 

【至高の魔弾】

 

ダアァァン‼

 

【地母の晩餐】を遥かに超える轟音。そして一切の生命を殺す死の光がバアルに向けて放たれた。

 

それにより、バアル・アバターは【至高の魔弾】に気づき、避けようとするが遅い。

 

その光線は一切の慈悲を持つこともなく、バアル・アバターの体を砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砕かれたバアル・アバターは俺の目の前で浮いていた。せめて俺と同じ目線で死のうというのか?

 

バアル・アバターの頭部は形を残していた。ヒビ割れ、今にも砕け散りそうだが、それによってかろうじて生きていたのだ。

 

「あなたの……方が……優れて……いたのね……」

 

バアル・アバターは……その声を千晶のものに戻していた。その声も、もはや死に体。このまま放っておけば死ぬだろう。守護としても、橘 千晶としても。

 

千晶は、泣いていた。力の国が亡きものになったことに。ヨスガの悪魔の期待に応えられなかったことに。

 

そしてなにより。

 

「それほどの……力を持って……どうして……ヨスガに……」

 

俺が、その力の国に賛同しなかったことに、嘆いていた。

 

俺は笑った。口をひん曲げて、嘲笑うように。

 

その方が、悪魔らしい。

 

「創世なんてものよりも……やりたいことがあるんだよ……!」

 

悪魔らしくしなければ……

 

「この俺の全てを奪った……」

 

人間らしさに、心を潰されそうだから。

 

「世界のルール…その全てを創ったカミサマに復讐するというなァ‼」

 

俺は狂ったようにバアル・アバターの顔を掴んだ。

 

俺はそれを押し潰すように、あるいは抱くように握りしめた。

 

「そのためには邪魔なんだよ……!ヨスガも、シジマもムスビも!だから……だから……!」

 

その時、俺は気づいた。千晶が何かを必死に言っていることに。

 

「どうしたんだよ?何?」

 

精神的余裕のない俺は乱暴に聞き返した。

 

俺はその言葉を耳にした。否、耳にしてしまった。

 

「ごめんなさい……」

 

今にも消えそうな声で紡がれたその一言を、聞いてしまった。

 

今更、千晶は謝罪したのだ。俺が歪んだ原因が自分にもあるとでも思ったのか。

 

その一言が最後だった。千晶は目の光を失い、体を全て崩し、マガツヒとなって消え失せた。

 

そして俺の手に残されたのは、タカラのみだった。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……だと」

 

俺はそのタカラを地面に叩きつけた。それが千晶だと言うわけでもないのに、叩きつけて叫んだ。

 

「今更なんだってんだよ‼ごめんなさいだと⁉勇もお前も全く俺をイラ立たせてくれるな⁉お前らは人間の俺の心を殺した要因なのに‼今更……今更ァ……!」

 

俺の目が赤く染まる。血の涙が視界を潰した。

 

「なんだよ……俺は自分勝手でお前ら殺したのに……なんで……優しくするんだよ……!」

 

その時、トンと置かれる手があった。

 

その小さな手は見なくても分かる。ピクシーだった。

 

俺はその手にかぶせるよう自分の手を置き、顔を歪め、

 

「────────────────ッ‼‼」

 

頂点にいるカグツチに向けて泣き叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





千晶の戦闘経験については、私の個人的考えです。

しかし悪魔でもなんでもなかった千晶が戦っているとは考えづらいですし、戦闘経験なら人修羅の方が上だと考えました。

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