真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中)   作:ブラック・レイン

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妖精 ピクシー先生

 

「なんてこった……」

 

一階に登り、病院から出ようとしたオレは絶望の声をあげた。

 

何者かに病院の出入り口を土砂で埋められていたのだ。これはいくら今のオレの力でもどかせそうにない。

 

「困ったねぇ…どうする……!」

 

歯を食いしばって考えていると、

 

『ねぇ』

 

「おう⁉」

 

いきなり思念体に話しかけられた。女性のようだ。

 

「な、なんだよ。驚かすなよ…」

 

『あら、ごめんなさいね。お困りのようだったから。ねぇ、あなたこの病院から出たいんでしょ?」

 

「あ、あぁそうだけど……」

 

『なら、隣の分院からならどうかしら?』

 

「分院……あぁ、そうか!」

 

このシンジュク衛生病院は本院と分院の2つで成り立っている。分院のほうにも当然出入口がある。

 

「サンキュー、助かった」

 

『どういたしまして。あ、そうそう。悪魔に気をつけてね』

 

「………あぁ」

 

ヒジリが言ってはいたが、やはりこの病院内でも悪魔は存在するようだ。

 

しかし慌てない。戦闘慣れしてくると悪魔が襲いかかってくるのが事前に察知出来てきたのだ。

 

こう、なんて言えばいいか……悪魔に狙われると敵意とか殺意とかを感じて背筋がゾクゾクする感じがするのだ。

 

その直感は未だに……まだ数回しか戦闘していないが……外れたことはない。

 

まぁ、とにかく慎重に進んでいこう。分院への通路は……確か受胎前に勇が分院へ行こうとしたな。たしか勇は二階から行けるとか言ってた。

 

「………またエレベーターか」

 

もしかしたらまた飛ばされるかも。オレはおそるおそるボタンを押し、一旦バッと離れて異常がないか確かめてから再びおそるおそるエレベーターに乗り、2のボタンを押して2階へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年移動中………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2階を探索し、分院へ向かう通路に行くとオレは絶句した。

 

分院への通路はガラス貼りになっており、内部から外を一望できるのだが、外の様子は予想をはるかに越えていた。

 

あんなにあった建物の多くが消失し、それどころか道を形作るアスファルトも多くが消失していた。

 

代わりにあるのは砂漠化した土地の数々。残っているビルなどの建物も人の気配がしない。

 

何より恐ろしいのは地面にインクをぶちまけたような黒い何かがあちこちに広がっていることだった。あれに落ちてはいけない気がした。

 

「……………」

 

じっと外を見つめていたがオレはそこから目をそらした。

 

見ていて分かることは少ない。直接その場に行かなければ詳しいことは分からない。今は病院を出るのが先決だ。

 

意思を固めるとオレは歩こうとして……ふと足を止めた。

 

分院には地下と同じくゲートがあった。その前に一人、否、一体の悪魔がいた。

 

それは小さな女の子の悪魔だった。しかし本当に小さい。まるで童話に出てくる妖精のようだ。

 

いや、本当に妖精かもしれない。背中には羽が生えているし、綺麗な髪からのぞく耳はとんがっている。服装はなぜか青いレオタード。

 

その悪魔もゲートを通ろうとしているのだろうか?先ほどからゲートをうろうろしている。

 

話しかけようか迷っていると悪魔がオレに気づいた。

 

「へえ、見ない顔の悪魔ね…あなたもなにか探し物?」

 

探し物……といえば探し物か。ものじゃなくて人だが。

 

「まぁ、そんなとこかな」

 

オレが答えると女の子悪魔がニイッと笑った。

 

「ねえ、その探し物だけど…

あたしが仲魔になっていっしょに探してあげようか?」

 

「え?良いのか?」

 

問い返すと、えぇ、と女の子悪魔が頷く。

 

「あたしもちょうど探してたどころなの。

この病院を出てヨヨギ公園に行くのに手を貸してくれる悪魔をね。

たいして強そうじゃないけど…あなたで我慢してあげる」

 

「ひでぇ、強そうじゃないとか言いやがった……」

 

「あら、見た感じのことを言ったまでよ。それよりもどう? あたしを仲魔にする?」

 

ふむ、とオレは女の子悪魔の問いを深く考えた。

 

こいつが提案したのはギブ&テイクだ。オレのやることを自分がやりたいことが完遂するまで手伝ってやる。損も得もうまく釣り合っていてかつシンプルな取引だ。

 

「分かった、とりあえずその仲魔?になってくれ」

 

オレの言葉ににこりと微笑む悪魔。

 

「そうと決まれば、こんなとこ早く出ましょ」

 

そういうと悪魔はピシリとゲートを指差した。

 

「なんとかパスって鍵があれば、そこのドアを開けて分院に行けるわ。

そのなんとかパスなら、ガキって悪魔たちが持ってるはずよ」

 

「分かった。えぇと……お前、名前は?」

 

「あ、そうね。仲間になったんだから名乗らなきゃね。あたしは、妖精 【ピクシー】。今後ともヨロシク、ね」

 

「夜藤 零時だ。ヨロシク」

 

オレがそう名乗るときょとんとした顔になる悪魔…もといピクシー。

 

「まるでニンゲンみたいな名前ね」

 

「元々人間だったからねぇ」

 

オレがそういうとピクシーは目を輝かせた。

 

「へぇ、人間上がりの悪魔かぁ!まれにあるって聞いことがあるけど……へぇ、こんな感じなんだぁ!」

 

そういうとペタペタとオレの体をさわり始めるピクシー。やめてほしい。

 

「なぁ、早く行かないか?時間がないんだが」

 

「あら、そうなの。それじゃいきましょ」

 

そういうとオレの肩の上に乗っかるピクシー。って。

 

「自分で歩け‼っていうか飛べ‼」

 

「良いじゃないこれくらい。あら、良い髪質ね。ボサボサだからゴワゴワかと思ったけど」

 

「だぁあ!髪の毛引っ張んな!乗ってていいから大人しくしてろ!」

 

「ハイハイ」

 

そういうと大人しくなるピクシー。まったく…頼まない方が良かっただろうか?

 

先が思いやられる感じに多少目眩を感じながらオレは本院の方へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的のガキはすぐ見つかった。病室の一室にカギをかけて立て籠っていたのだ。

 

さて、またまた困った。どうやって入りこもうか。

 

「私に任せて」

 

ピクシーはそういうと扉の前に行き、コホンと咳払いをすると声音を変えてガキに話しかけた。

 

「マガツヒ……アル……タクサン……モッテキタ……」

 

マガツヒというのがなんなのか分からないがとにかくこの方法はは上手くいった。

 

「ググ?……ガガ?……マガ…ツヒ?………………………クイテークイテー!!」

 

扉のロックが外された音がした。

 

「よし…引っかかった!行くわよ、準備はいい?」

 

「あぁ、いいぜ」

 

神妙な面持ちで頷くとオレとピクシーは病室の中に入っていった。

 

 

 

「ググ?……ガガ?……

マガ…ツヒ?……」

 

中にいたのは予想通りガキ。しかも三体。

 

仲間のガキではなくオレ達でなかったことに驚いたのかもとより醜いガキの顔が間抜けに歪み、そんな様子のガキに向けてピクシーが怒鳴った。

 

「あんた達にやるマガツヒなんてあるわけないでしょ!

痛い目にあいたくなかったら…なんとかパスを渡しなさい!!」

 

一方のガキはピクシーの怒鳴り声に堪えた様子はなかった。

 

「ググ!! ガガ!!マガツヒ!!」

 

ガキ達は奇声をあげて、オレ達に飛び掛かってきた!

 

「ま、承知の上だが!」

 

オレはガキの一匹の足をむんずとつかみ、

 

「オォリャア!」

 

そのまま二匹のガキに向けて投げた。

 

「グギャ‼」

 

「ヘギョ!」

 

「ゲフッ!」

 

三匹とも汚い声をあげて壁に衝突した。

 

「どうだ?パスを大人しく渡せば許してやるが……応じるわけないか」

 

三匹は懲りずに再び襲いかかってきた。

 

「クイテー!」

 

「マガ…ツヒ…!」

 

「クワ…セ…ロ……!」

 

ガキの爪を掻い潜り、カウンターで殴る。

 

その時、ガキの一匹がピクシーを狙って飛び掛かった。

 

「ピクシー!」

 

オレが大声をあげるが、ピクシーは余裕そうな顔をしていた。

 

ピクシーは悠々と指を向けると一言叫んだ。

 

「ジオ!」

 

そのとたんピクシーの指から電撃が迸り、ガキの頭を撃ち抜いた。

 

ガキは再び壁に衝突して、赤いオタマジャクシのようなものを出しながら息絶えた。

 

そのときの恐怖を声に出したかったが、さすがにガキ二匹の攻撃を捌くので忙しく、声が出せなかった。

 

ピクシーはパンパンと手を叩くと

 

「手伝いは必要?」

 

と宣ってくれた。

 

「い、いや。だ、大丈夫」

 

ガキ二匹の攻撃をステップ回避し、オレは反撃に出た。

 

掌底で一匹を吹き飛ばし、二匹目を足を払う。

 

そして倒れたガキの頭を踏み潰して殺し、吹き飛ばしたガキに向けて走り出す。

 

そして体を引き絞り、その技を放つ。

 

“突撃”

 

ドォンッ‼

 

「グギャ⁉」

 

再び汚い悲鳴。今度はきちんと息の根を止められた。

 

赤いオタマジャクシのようなものが撒き散らされる。オレはそれを吸い込む。

 

視界の隅ではピクシーも同じことをしていた。どうやらオレ独自の好意ではないらしい。

 

そう考察するとオレは落ちていた分院用ゲートパスを拾い上げた。

 

「…ふーん。思ったより強いんだ」

 

ピクシーがそう呟くと

 

「お前もな」

 

と、微笑みながら誉め返し、ふと真面目な顔なる

 

「それより聞きたいことがあるんだが」

 

「ん、何?」

 

首をかしげるピクシーに質問をぶつける。

 

「この赤いオタマジャクシのようなもの、何?」

 

オレが問うとピクシーは信じられないと言った顔をした。

 

「あなたマガツヒ知らないの⁉」

 

「これマガツヒって言うのか。んで?これはなんなのさ?なんでガキどもはこれを欲しがるのさ?」

 

オレが再び問うとピクシーはふぅ、とため息をついた。

 

「あなたは本当に人間から悪魔になったのね…」

 

「そうだって言ってるだろ。……やっぱり悪魔の目から見てもオレは悪魔だって判断する?」

 

「えぇ。あなたから感じる気は悪魔のものよ」

 

…と、するならあの老婆の言うことは本当のようだ。オレは、本当に悪魔になったようだ。

 

「………その様子じゃ、その他の基本的なことも知らないようね」

 

「あぁ、多分な」

 

そう答えるとピクシーは、よしと言った。

 

「仕方ないわね。私が一から十まで教えてあげる!悪魔の常識をね」

 

それはありがたい。このピクシーを仲魔にしたことを少しでも後悔したことに謝罪すべきだろうか。

 

「それじゃ、歩きながら教えてくれ。お願いしますぜ、先生」

 

オレが冗談めかしていうとピクシーがなぜか気恥ずかしげな態度を取った。

 

「先生ねぇ。ふむ、先生か。良いわねその響き!よし!丁寧に教えてあげるとしますか‼」

 

どうやら気を良くしたようでピクシーはブンブンと飛び回りはじめた。

 

どうやら見た目と同じように子供っぽい性格をしているようだ。

 

オレは苦笑しながら病院を出ていき、ピクシーが慌ててついてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはりオレは悪魔の常識とやらの多くを理解していなかった。ピクシーが教えてくれたことの大半は初耳のことばかりだった。

 

例えばマガツヒ。マガツヒとは簡単にいえば、悪魔の生命エネルギーの元、悪魔の食糧らしい。

 

ガキやその他の悪魔はマガツヒ目当てでその他悪魔を狙って病院を徘徊しているということだ。

 

生命エネルギーの元であるが故、これを多く含む悪魔は当然強い。オレがマガツヒを摂取して力が沸き上がったのはこれが原因だ。

 

他に教えてもらったことは悪魔の耐性についてだ。

 

それぞれの悪魔にはこの属性に強い。あの攻撃には弱いというのが存在するらしい。例えばウィルオウィスプは物理攻撃に強く、魔法攻撃全般に弱いとのこと。

 

オレが物理攻撃で倒せたのはウィルオウィスプが最弱の部類に入る悪魔であるだけのことであり、物理攻撃に強いという点が活かせていないだけとのこと。

 

ピクシーによれば、あらゆる攻撃には属性が伴うということだ。

 

ただ殴る蹴るにしたって【物理】という属性がつき、それが効きにくい、または全く効かない悪魔も存在するということだ。

 

ちなみにオレの【ノーマル耐性】というのも理解できた。ようするに耐性なし、弱点なしのことを指すらしい。長所がないことを悲しむべきか、短所がないことを喜ぶべきか。

 

属性は他にも火炎、氷結、衝撃、電撃、破魔、呪殺、精神、魔力、神経といった属性が存在する。だがピクシーも破魔や呪殺は見たことがないらしく、どんな属性であるのかは分からないとのこと。とりあえずピクシーが知っている属性について教えてもらった。

 

火炎、氷結、衝撃、電撃は魔法攻撃の基本となる属性らしい。先ほどピクシーが使った“ジオ”というのは電撃魔法の最も基礎にあたる魔法らしい。

 

オレが喰らったことのある攻撃ではコダマが使った“ザン”という魔法が衝撃にあたる。衝撃とは簡単にいってしまえば風による攻撃のようだ。

 

精神、魔力、神経というのははっきり言ってしまえば妨害魔法の属性であり、敵に状態異常を引き起こし、敵の戦力を削ぐ物であるとのこと。

 

当然それを回復する魔法もアイテムも存在するらしい。

 

回復する魔法といえばただの傷を回復する魔法も存在するらしい。というかピクシーが実演してくれた。

 

“ディア”というその魔法を見たときは驚いた。先ほどから続く連戦であちこち傷だらけになっていたのだが、それをあっという間に治してくれたのだ。これには感謝の一言だった。

 

他にも能力を直接的に上げ下げするカジャ・ンダという魔法も存在する。

 

どれもこれも戦況を左右する情報であり、オレは知ることの大切さを学んだ。

 

学ぶことはピクシーの言葉の他にもある。悪魔と戦うこと、観察することで悪魔について詳しく知れる。

 

たとえば戦闘中、悪魔は物を催促してくることがある。何やってるんだというツッコミを抑えて素直に応じると情報や他のアイテムをくれたり、上手くいけば仲魔になってもくれる。

 

先ほどウィルオウィスプとの戦闘中、不気味な声で『魔石……モッテ……イルカ?』と尋ねられ、素直に渡したら嬉しそうに動き回り、なんと仲魔になってくれた。

 

他にも自分から話しかけて仲魔にした悪魔もいる。小さな緑色の悪魔、【地霊】コダマ。ピクシーのような女の子の悪魔、【地霊】カハク。紙で作られたような悪魔、【妖鬼】シキガミ。

 

ただし、ただ悪魔と話しかけてフレンドリーになれば良いという訳ではなかった。話し合いで仲魔になってくれるというのは一種の契約なのだ。

 

簡単にいってしまえば物やお金などの対価を要求されるのだ。(ちなみに悪魔には悪魔専用のマッカというお金が存在する。稼ぐ方法?悪魔を倒して強奪することですが、何か?というかそれが悪魔にとって最もオーソドックスな稼ぎ方だってピクシーが言ってた)

 

また、話し合いの途中で相手悪魔が気まぐれを起こして去ってしまうというのもあったし(しかも払ったもの返してくれない)、下手をすれば話し合い中に他の悪魔に横やりを入れられることもある。

 

会話を上手く進ませるためにはなるべく仲魔にしたい悪魔を孤立させることが事前にできる唯一の契約を上手く進ませるための方法だった。

 

そして何より心に染みて理解したことがある。

 

『敵に容赦するな。』だ。

 

ウィルオウィスプ、ガキは知能が低いのか言語をあまり理解していない感じがするため、精神的に簡単に屠れる。

 

だが、コダマやカハクはまるで人間の子供みたいに話すのだ。そこに人間らしさを感じるのか精神的にくるものがある。

 

が、悪魔であることには変わりない。オレの身に存在するマガツヒ目当てに襲いかかって来るのはウィルオウィスプやガキと変わらない。まれに命乞いしてくることもあり、その際には物をぶんどって逃がすがそれ以外は容赦なく倒す。さもなければ死ぬのはこちらだ。

 

要約してしまえば出会った悪魔は敵味方はっきりさせることが重要というわけだ。倒せばお金やアイテムがもらえるし、何より自分が強くなる。

 

味方に引き込むなら会話の切り札は多めに用意する。欲しいものをあげられないと大概はその時点で会話終了。仲魔にはなってくれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……今、思ってみればオレは悪魔の道まっしぐら状態になっているのかもしれない。

 

だが、悪魔ひしめくこの世界においては人間の常識は通用しないし、何より人間は悪魔と戦うには弱い。

 

人の心を持っていればいい。人間に戻れるかは、後で考えよう。

 

襲いかかってくる悪魔を殴り倒しながらオレはとにかく、考え続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、生き残るために。

 

 

 

 

 





きっと人修羅はピクシーを心の支えにしたんだと思います。
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