真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
今回は少し短めかな?
シンジュク衛生病院を抜けたオレ達はとりあえず南下することにした。
この変貌したトウキョウはボルテクス界というらしいが、ボールの内側のようになってしまった現状、南というのもおかしいが便宜上そういうしかない。
病院の外にも悪魔は存在した。ウィルオウィスプを含め、他にも新たに妖鳥 チンという悪魔を見かけた。
この悪魔の相手はカハクが役にたった。こいつは火炎に弱く、カハクは火炎攻撃を得てとするからだ。
なお、悪魔を倒すとたまに宝石を落とすのだが悪魔にとっては単なる綺麗な石でしか価値がないという。つまり売れないということだ。
しかし捨てるのももったいないため、悪魔になって役にたつスキルの1つ。【物置き空間】に収納しておくことにした。
さて、悪魔を蹴散らしながらオレはピクシーの目的地にあるヨヨギ公園にたどり着いた。
記憶にあるヨヨギ公園と変わらない。しかしあちこちにピクシーの姿が見える………ん?つまりそれはピクシーが何人もいるってことで……おぉ?
よく考えてみるとピクシーというのは妖精を指す種族の名前だ。個人名というのはないのだろうか?
考え込んでいるとピクシーが嬉しそうに飛び回った。
「わーい!!やっとついたー!」
はしゃぐピクシーだがふとオレの方を見て、こう言った。
「あなたとは、ここでお別れよね?」
「あ、あぁ………そうだな」
歯切れが悪いのは理由がある。
不安なのだ。こいつは一時とはいえ世話になり、いろいろ教えてもらった。
右も左もわからないこの世界を彼女なしでやっていけるか不安だった。
「…………ひょっとして…ずっと一緒にいたいとか思ってる?」
「ぶっ⁉な、何を言って……あー……」
オレは反論の声を間抜けな声でかき消すと覚悟をきめ、膝をついてこう言った。
「すみません。もう少し付き合ってくださいませんでしょうか……?」
オレがそういうとピクシーはきょとんと目を丸くし、やがてクスクスと笑いはじめた。
「やっぱり、あたしがいなくちゃ不安なんでしょ?しょうがないなぁ…もう少しだけ付き合ってやるか!」
「恩に着るッ!」
オレはそういうと立ちあがり、右手を差し出した。
「……?なにこれ?」
「いや、契約更新って訳だからその形として握手をって思ったんだけど……」
オレがそういうとピクシーはまたクスリと笑った。
「ほんっと人間くさいわね、あなた。あ、元人間か」
そう言いながらピクシーはオレの人差し指を小さな手でつかんだ。
「妖精 ピクシーよ。改めて、コンゴトモヨロシク……」
「魔人 夜藤零時だ。こんな奴で悪いが、コンゴトモヨロシク」
オレは悪魔としての自分の名を名乗り、そういった。
公園の友達とやらに挨拶するといってピクシーは少しの間、いなくなっていた。
オレは公園内を捜索し、なんか妖精じゃない悪魔を見かけた。
なんでもその悪魔は公園の隅にいる泉の聖女とやらのファンであり、そいつからその泉の聖女の魅力を延々と聞かされた。
ピクシーが戻ってくるころになってやっと話が終わり、オレ達は再び外に出た。
さて、ここでの問題はどこに行こうかだった。ピクシーはヨヨギ公園に行くという目的があったが、オレにはその目的地がない。
探したい人間は何人もいるが、どこにいるか皆目見当がつかないのだ。
そこでオレはピクシーの案を採用した。
なんでもさらに南下したところにシブヤの街があるらしく、そこは比較的平和であるとのことだ。
もしかしたら生存者がいるかもしれない。というわけでオレ達は南下することにした。
少年移動中……
シブヤの街並みは残っていた。信号も動いているし、電気の類いは生きていた。
だが、やはり人の姿が見当たらない。いるのは思念体とちらほら見える悪魔だけ。
暗い感情を押し込め、オレはまず聞き込みをした。
結果、ここには悪魔も嬉しい様々な施設があると分かった。
まずはヨヨギ公園にもあった【回復の泉】。これはお金さえ払えばどんな状態からもたちまち傷を癒してくれる優れものとのこと。(泉の聖女ファンの悪魔からの情報)
あとは【ジャンクショップ】。ボルテクス界を歩き回るのに役にたつ物を売っている場所であり、なんでもジャックフロストという悪魔が開いているとのこと。
他には【邪教の館】。ここはなんでもヤバい儀式が見られるそうで。(なんの役に立つんだ)
最後にディスコ。地下街にあるそれは思念体や悪魔が楽しむ娯楽の場であるらしい。
様々な情報が手に入るなか、一番待ち望んでいた情報が入った。
『ディスコの方に人間の女がいた』
その言葉を聞いた瞬間、オレは散策途中の仲魔を集合させ、地下街に向かった。
地下街ではならず者の悪魔が存在した。それどころか思念体ですら不良がいた。
そいつはストリートファイトでボコボコだ‼とか言ってたが逆にボコボコにして大人しくさせた。
地下街の悪魔はシンジュク衛生病院の悪魔より強い。なかでも外道 モウリョウ。魔獣 ネコマタは強敵だった。
モウリョウはウィルオウィスプの色違いのような悪魔で色は血の色のようだった。
だが、違うのは外見だけじゃない。強さも段違いだった。
コダマの使う魔法“ザン”の全体攻撃版、“マハザン”を使うのだが、それ以上に怖いのは“ブリンパ”という魔法。
これこそ精神魔法。これは混乱状態にする魔法のようだ。
これを喰らってしまったところ、記憶はないがピクシー曰く、『スッゴい面白いことになってた……プフフ…!』らしい。
要するに正気を失うのだろう、混乱状態というのは。
その対策は『喰らわない』こと。絶対混乱状態にはならないとオレは誓った。もう喰らうもんか、絶対。
ネコマタの使う技も恐怖だった。“マリンカリン”というその魔法は魅惑状態という状態異常にする魔法。これはコダマが喰らってどんなもんか実演してくれた。
これは対象を魅了し、裏切らせる魔法。これはかなり不味い。
治れば正気に戻るが、それまでコダマの相手をするのが大変だった。何せ容赦なく味方に攻撃してくるのだから。
幸いネコマタは電撃に弱いことが判明し、そこからはやっと楽に倒せた。
そんなふうに初めて遭遇する悪魔に苦戦しながらもオレはディスコにたどり着いた。
そこには、居た。
見慣れた茶色のロングヘアー、悲しげに歪みながらもその顔には見覚えがある。
橘 千晶だ。
「…どんな顔したらいいのかな。こんな時。……喜べばいいのかな。『お互い無事でよかったね』……とか
……分かるわ零時君でしょ」
「おぅ。こんな特徴的な男忘れるもんか?」
軽口をいうと千晶はそうねと力なく笑った。
「私、分かったの。泣いても……大声を出しても……この悪夢は覚めないって」
「残念ながら、現実のようだな……」
オレも千晶のように力なく笑った。
「少しだけ……疲れちゃった。零時くんは……知ってるの?世界に、いったい何が起こったのか」
千晶のその言葉にオレは先生の言葉を思いだし、その言葉を伝えることにした。
「……どうやら受胎という現象が起きたらしい」
「……受胎?それって、東京……受胎?零時くんの雑誌に載ってたあれが……現実になったってこと?…………
……そっか…嫌になるわね」
千晶はそういうと上を向いた。
「街の外がどうなってるか……もう見たでしょ?
わたしの家なんて、何処に建ってたかも分からなくなっちゃった……」
「そうだろうな……あれじゃあな…」
砂漠化した街を思い出しながら無理もないとオレは呟く。
「もしかしたら人間は世界中でわたし1人なのかもって、本気で考えてたわ。……零時くんに会えて良かった」
千晶はそういうとオレに向き直った。
「ちょっとだけ……希望が見えた気がする。無事だった人、他にもきっといるわよね。祐子先生だって、勇くんだって、何処かにいるかも知れない」
「あぁ、居るさ。絶対居るさ」
オレが千晶を励ますようにいう。否、あるいは自分を励ますために自分から無意識に出た言葉かもしれなかった。
「……わたし、探してみるわ。……このままじゃ、気が済まないもの。みんな………きっと生きてる。運命は、そんなに残酷じゃない。そうでなきゃ……あんまりだわ」
「……そうだな。そこまで運命作ったカミサマが残酷でないことを望もうか」
オレがそういうと瞑目した。こんなセリフ、まるで物語の悲劇の主人公が言いそうな言葉だ。だが、もし本当にカミサマが居るのなら、ぶん殴ってやりたいもんだ。
ここまで思考してオレは千晶の言葉に、ん?と思った。『探してみるわ?』
「おい千晶⁉」
オレが呼び掛けようとしたがもう千晶の姿はなかった。
「あぁ、もうまったく勝手きままなお嬢様なんだからぁ、っとに!」
文句をいうがどうにも追う気になれなかった。
「…良いの?行かせて」
「仕方ない。千晶は自分が決めたことは絶対曲げない奴さ」
千晶はおそらく人間のままだ。だがなぜだろうか?オレの勘が言うのだ。彼女は死なないと。
それにボルテクスも広い。複数で、バラバラに探し回った方が生存者を探すには適しているだろう。
オレはディスコから出ると地上に戻っていった。
このシーンの千晶は好きです。