真・女神転生3 Beginning King of the chaos (休載中) 作:ブラック・レイン
それとお気にいり登録が二桁になりました。お気にいりの上昇が東方よりも早いだと……
千晶と再会したあとショップに寄っていって傷薬や状態異常解除アイテムを買った。なんとまぁいくつかマガタマも売っていたのでそれも買った。やたらと高値だったが。
ショップの店員はなんでも『サイキョー』になる旅に出るため、お店を開いてお金を稼いでいるようだ。
買ったマガタマを試し、新しい技をいくつか覚えた。
あとは噂の邪教の館。そこは悪魔合体を行う施設だった。
館の主の説明では、悪魔同士を合体させ、別の悪魔にするとのこと。
試しにコダマとシキガミを合体させた。その結果ショップの店員と同じ悪魔であるジャックフロストが生まれた。
ちなみに合体で生み出す悪魔は合体させた悪魔のスキルをいくつか受け継ぐそうだ。
結果、通常では覚えないという“ディア”“タルカジャ”“ジオ”を受け継いだジャックフロストを仲魔にできた。
合体した悪魔がどうなるのか?館の主に聞いてみたが教えてくれなかった。悪魔についての謎は深まるばかりだ。
悶々と考えながら地上に戻ると人のような悪魔から地下街に人間の男がいるとの情報が入った。
向かって捜索するとある部屋にその男はいた。
その部屋はシンジュク衛生病院の地下にあったあの部屋に似ていた。中央には見覚えのある筒状のオブジェ。
そしてそれをいじる、ヒジリ記者がいた。
「おまえ……驚いたな。自力でこの街まで歩いて来たのか。どうやら、大変な力を得たらしいな」
「オレを悪魔にした誰かさんのおかげでね。ま、何度か死にかけているがな……で?まさかアンタもここまで歩いてきたのか?」
オレの問いはもっともだろう。悪魔がひしめくこの世界を歩けないとヒジリ本人が言ってたではないか。
ヒジリはコンとオブジェを叩いた
「こいつを使ってな、少し前に来たのさ」
「……それを?」
どう見ても怪しさ満点のオブジェにしか見えない。
「覚えてるか……?同じ物が病院にもあっただろ。こいつはただのオブジェじゃねえ。トンデモねえ機能を秘めた装置だ」
「装置?まさかテレポート装置なのか、これ」
あてずっぽうで言ってみたが、
「ご名答」
まさかの正解だった。
「まぁ、正しくいえば転送装置だ。1つ1つが回路のような不思議な空間でつながってるんだ。その回廊……「アマラ経絡」を使えば、何でも一瞬で離れた場所へ飛ばせる。その転送機能で、オレはここまで来たのさ」
「へぇ!そんな機能が」
このオブジェにそんな機能があるとは思えないが、もはや常識の通用しないこの世界………なんでもありだろう。
ヒジリの話は続く。どうやらここからが本題のようだ。
「……恐らくこの装置はまだ幾つもあって、巨大なネットワークになってる。
あの男…氷川の所にも必ずつながってるはずだ」
氷川。この東京受胎を起こした男。何もかもを知っているはずの男。
「よう、手を組まないか」
「…………どうせオレが走ることになるんだろ?」
図星のようでヒジリが苦々しげな表情を作る
「申し訳ないが、今の状況を変えるには氷川の影を追うしかない。現状、物理的にそれができるのはお前だけだ。ウワサじゃ『創世』とやらを掲げる組織がギンザにあるそうじゃねえか。
しかも率いてるのは人間だってな。オレは……氷川の事だとにらんでる。そこで、だ」
「あぁ、もう良い、その後言いたいことは分かった。
ようするにオレにその組織について調べてもらいたいんだろ?そしてあわよくば氷川に接触する。
で、そのためにオレをその組織が存在するギンザまでそのオブジェで転送するって訳だろ?」
「正解」
「ちっとも嬉しくねぇよ。何もかもが圧倒的に足りねえよ、相手は組織だぞ」
「……確かに危険だが、やみくもに歩き回るよりだいぶマシな提案だと思うぜ?」
ヒジリの言うことは正しい、正しいんだが……リスクが高すぎる。
オレは1つ聞いてみることにした。
「なぁ、つまりオレをギンザに送るんだろ?ギンザの状況は分かるのかよ?」
オレの質問にヒジリは肩をすくめることで答えた。なるほどまったく分からないと。
オレは考え込んだ。ヒジリの案はリスクが高い、が状況を打開するためにはそれしかない。
それに危険なのは今でも変わらない。ならば賭けに乗るのも良いかもしれない。
「……分かった、行くよ」
「そうか、行ってくれるか。すまねぇな子供にこんな重荷を背負わせて」
「いいさ。そのかわり働ける分は働けよ?」
「あぁ、分かってる………それじゃ転送するぜ?……死ぬなよ」
「了解」
一言そういうとヒジリはグルンとオブジェを回した。
オブジェはそのまま回り続け、やがて青く発光しはじめた。
青い光りが強くなるにつれてオレはそのオブジェに引き込まれる感覚に包まれた。否、これは本当に引き込まれて……!
瞬きをするとオレは高速でどこかの回廊を移動していた。おそらくこれがヒジリの言っていたアマラ経絡という回路なのだろう。
しかし自分はなにもしていないのに移動するというのはかなり気持ち悪いものだ。
そのまま進み続けるかと思った。だが、いきなり異変が起きた。
視界にスパークが走る。騒音が耳を叩き視界が光りに包まれ………⁉
「うおわっ⁉」
高速移動が急停止し、オレは前につんのめる。
危うく転倒しそうになる体を起こし、オレは辺りを見渡す。状況の網羅は生死を分ける行動だと学んでいるからだ。
まず目に入ったのは黄色い壁。これは通路を形作っていた。
そして何より目を引くのは床や天井に流れている大量のマガツヒだった。
しかしどうしたというのだろうか?まさかここがギンザなのか?
疑問の言葉を浮かべるといきなり男の声が聞こえた。
「……おい、聞こえるか?」
「ウオゥ⁉なんだヒジリかよ……おどかすなよな」
オレの文句にヒジリは安堵の声をあげる。
「よかった…なんとか無事なようだな」
「無事なんだけどさ。ここどこ?まさかここがギンザ?」
「違う。どうやら転送に失敗し、アマラ経絡内に転落したらしい」
「おいおいこんな時にマジかよ……!」
オレは怒りと焦燥に身を任せて壁を蹴り飛ばした。悪魔になってからはるかに上昇した脚力で放たれた蹴りは、壁を砕くことはなかった。
「だが……アマラ経絡は転送路だ。
『路』である以上、入り口があれば出口も必ずある。とにかく、俺がバックアップする。ギンザを目指して進んでくれ……」
「それしかねぇか……!」
オレはボサボサの頭を掻きながら前進した。
アマラ経絡内にも初見の悪魔は存在した。
中でも厄介なのが精霊 エアロスという悪魔。緑色の風のようなもので作られた人の上半身のような悪魔だ。
その厄介なのは支援の手厚さ。“ディア”で味方を回復させたり、“マリンカリン”でこちらを惑わせようとするのは厄介の一言に尽きる。
他にも精霊 アーシーズ。動く岩の悪魔であるこの悪魔も支援タイプの悪魔で“ラクカジャ”という防御力上昇魔法を使うのだ。
その反対魔法である“ラクンダ”をピクシーが修得していたが、そのピクシーに変化……いや、進化があった。
ピクシーはなんとハイピクシーという悪魔に進化したのだ。
ピクシー、もといハイピクシーの話では一部悪魔はある程度強くなると上位存在に昇格するらしい。
妖精 ピクシーはその進化する悪魔。他にどんな悪魔が進化するのかはハイピクシーにも分からないらしい。
さて、アマラ経絡を進んでいくとやはりこういったダンジョンというものはなんの障害がないということはないらしい。
通路を進むと先にある階段が壁に閉ざされたのだ。
「おぉ⁉なんだ!」
驚きの声をあげるとバックアップ役に徹するというヒジリの声が聞こえた。
「何かあったようだな。先に進めなくなったか?」
「あぁ、いきなり階段が壁になっちまって……」
そういうとヒジリは、よしと言った。
「試したいことがあるんだ。ちょっと待っててくれ」
そういってしばらく待っていると壁が再び元の階段に戻った。
なるほど……どうやらアマラ経絡ってのは、常に形が安定してるとは限らんようだな。
こいつは悪魔のおまえをもってしても、移動は一苦労ってわけか…
「うわ、マジかよ…」
それでは襲いかかってくる悪魔以上にこのアマラ経絡そのものを警戒しなければいけないということになる。
「…まあ、何かあったら呼んでくれ。こっちで出来ることはするぜ」
「頼む」
そういうとオレは元に戻った階段を登りはじめた。
階段を登り、しばらく進むとまた階段が壁になってしまう現象に遭遇した。
「…やれやれまたか。
さっきと同じ様に、こっちで上手くやって……!
その途端ヒジリの声にノイズが混じりはじめた。
「なんだ⁉」
「…お…い……聞こ……える…か?返…事…しろ……く…そっ!通…信も…不安定…に……」
狼狽したヒジリの声はそれを境に聞こえなくなった。
「もしもしヒジリ⁉……ダメか…」
「ちょっとどうしたの?あのオジサンの声が聞こえなくなったんだけど?」
「ヒホ?どうしたんだホ?」
この状況にハイピクシーとジャックフロストも眉をひそめる。
「分からん。これもまたアマラ経絡の特徴なのかねぇ…」
軽い口調だが内心は焦燥にまみれていた
はっきり言って状況は最悪だ。進むこともできない。戻ることもできない。どうすればいいのだろうか?
見渡すと横道が存在した。そこになにかあれば良いのだが。
オレはひとまずそっちの方向に向かった。
横道の方を進むと思念体がいくつか存在した。
しかし話しかけるなという思念体が多く、まともに会話してくれる思念体は少しだけで、手にいれられる情報は少なかった。
だがその中で有力な情報を見つけた。
なんでもアマラ経絡には下界と…つまり外と通信できる場所がちらほらとあるらしい。
もしかしてと思い、さっそくそれを探してみると嫌な情報も手に入れた。
このアマラ経絡はマガツヒが大量に流れている。それを目当てにした強力な悪魔がいるという情報だ。
なるべく会わないようにしたいがどのような姿をとっているのか分からず、警戒するしか手はなかった。
さて、下界との通信に使える部屋を迷いながらも進むとその部屋にたどり着いた。
その部屋はマガツヒが濃く存在する部屋であり、オレはごくりと喉をならした。仲魔達に至っては飛びついていたが。
オレがその姿にため息をつくとザザ…というノイズが聞こえはじめた。
「…い、お……い……俺…だ、ヒジリだ。…聞こえるか?返事してくれ。」
「あぁ聞こえるよ」
オレが安堵のため息混じりにそういうとヒジリもホッと息をつく気配がした。
「よかった……通信の安定する場所に出れたようだな」
ヒジリはそういうと思案に耽っているのか少し黙りこみ、こういった。
「よし……こうしよう。これから先何かあった場合も、今お前のいる場所のように通信の安定する所で落ち合おう」
「分かった。あぁ、そうだ。先に進めるようにしてくれ」
「おっとそうだった。ちょっと待ってて…くれ…」
再びノイズが混じりはじめるがどうにもできない。先ほどのようにしばらく待つ。
「よし通れるようになったぞ……やれやれ、どうやらそこも…通信が…不安定に……なって…きた…よ…う…だな。
ま…た別の……、通…信…の…安定した…場所…で
………
……会おう」
それを最後にヒジリの声は聞こえなくなった。
オレは不安を押し込め、未だマガツヒを食べている仲魔達をつまみ食いしながら引きずり、部屋を出ていった。
そこから先も階段が閉ざされては通信ができる部屋を探し、閉ざされては探しを繰り返した。
おかげさまでオレも仲間も悪魔倒したい放題であり、どんどん強くなっていった。
オレはなんとマロガレとワダツミとシラヌイというマガタマから新しいスキルを手に入れた。
“暴れまくり”と“ファイアブレス”、“アイスブレス”というこのスキルはオレがもう悪魔だという証になった。
“暴れまくり”は敵の群れに突っ込んで超高速でとにかく殴る蹴るを繰り返すスキルとはいえないスキルだが、まぁ敵の群れに切り込むには役にたつ。
“アイスブレス”と“ファイアブレス”は名前の通り、怪獣よろしく口から冷気や炎の息吹を吐き出す技だ。
もう、なんというか、うん。今更だけどもう、人間やめたわ、オレ。
強くなってはいるのに気は沈むばかりのオレはギンザの出口らしきところに着いた。だがその出口は壁に塞がれていて通れなかった。
近くにいた思念体曰く『アマラ経絡はご機嫌斜めでギンザへの出口は塞がってしまっている』とのこと。
これが最後と己を奮起させ、道中表れた悪魔、外道 モウリョウを魔石で仲魔にしつつも。通信できる部屋を見つけ出した。
礼によってしばらく待っているとヒジリの声が聞こえはじめた。
「やっと来たか……どうやら出口は近いようだな。例によって俺が出口を……!」
その途端いきなりザザ…という音が妨害しはじめた。
「⁉……くそっ!何者かが通信に割り込んできた……
……お…い。大…丈…夫…………か?」
「ヒジリ⁉」
あまりの通信時間の短さに驚愕の声をあげると【ソレ】は現れた。
その悪魔は金色のウィルオウィスプだった。だが気配から鑑みるに強さもウィルオウィスプとは違うようだ。
「…ウォ、ウォイ。ウォマエ、ナニモノ、ダァ~?サッキカラ、コソコソ、スル、スルゥ……ジャ、ジャ、ジャマ、ダ」
総じてこういったタイプの悪魔は耳障りな声を発するが、こいつの声は一際耳障りだった。
それに顔をしかめているとなぜか金色ウィルオウィスプが声を荒げた。
「ウォ、ウォマエェェェ!/ワカッタ、ワカッタゾ。
ココノ、マガツヒ、ヲ。ヒトリジメ、スルキダロ?ウォ、ウォレヲ、ヤルキナンダロ!?」
「はぁ⁉違うって!オレはただ……」
否定の声をあげるが金色ウィルオウィスプはとりあわなかった。
「……チガウ。ウォマエ、ウーソ、イッテル。ダマサレ、ナイゾ!ココ、ウォマエニ、ツゥカワセナイ。ヘンナコト、サァセナイ。キ、キ、キ……キエロ! ウォマエ!!」
金色ウィルオウィスプはそういうとオレに襲いかかってきた。
その途端能力が発動し、この金色の名前が分かった。
外道 スペクター。それがこいつの名だ。
「散れ!」
仲魔に号令すると全員回避行動をとる
そしてスペクターを囲む形になるとスペクターは耳障りな声で吠えた。
「ウォ、ウォマエ、ナカマ、タクサン!ウォレモ、タクサン、イルゾ!!」
そういうとスペクターはオォ…!と唸ると悪魔が現れる時になる雷の音が何度か轟いた。
「ゲッ!マジかよ‼」
オレはギョッとした。スペクターが六体に増えてしまったのだ。
「ウォォォォ!!ウォレ、クウ!ウォレ、ウォマエヲ、クウ!!」
スペクター達は全員そういうと魔法を唱えはじめた。
「「「「「ア、“アギ”ィィィ‼」」」」」
「うおわ!あっちい⁉」
「きゃあ⁉」
「ひゃ⁉」
「ヒホー⁉熱いのは嫌なんだホー‼」
飛び交う火の球に戦いはさっそく混乱した。
「ちぃ‼」
オレはシラヌイのマガタマを飲み、マロガレを吐き出した。これがマガタマの変換方法なのだ。
これによりオレの耐性は火炎無効 衝撃に弱いに変わった。
吐き出したマロガレを物置き空間に放り込み、オレはスペクターの群れに飛び込んでスキル、“暴れまくり”を使用した。
「オラオラオラァ‼」
「「「グオオオ⁉」」」
三体をオレの拳打に巻き込み、そのまま殴り続けた。
「私たちも行くわよ‼“ジオ”!」
「分かっているわよ!“アギ”!」
「オイラもやるホー!“マハブフ”!」
仲魔達も残ったスペクターに魔法を放つ、が。
「「ヌゥンン!」」
突進するだけでそれを払ってしまった。
「「「ウォレ、マホウ、キカナイ。キカナイゾオオオ‼」
スペクターはそういうと仲魔達に襲いかかった。
「ちっ!全員魔法攻撃は止め!物理、および支援魔法しか使わないで‼」
ハイピクシーはカハクとジャックフロストにそういうと小さな手でスペクターを殴り飛ばした。
他の仲魔も負けじと支援魔法を唱えたり殴ったりして戦いはじめる。
ことにジャックフロストが使う“タルカジャ”は役にたつ。攻撃力を高めるその魔法は物理主体のオレを強くする!
「オラァ!」
「グオォ……!」
暴れまくりで弱っていた三体をたて続けに屠るとオレはスペクターの一体を再び殴る。
「オォン!」
しかしそれをヒラリとかわし、スペクターはオレにむけて怒りの声をあげた。
「ウォレ、ウォマエ、クウ!ウォマエ、ヲ、クウゥゥ!!」
そういうと戦っていたスペクターが全てが一体のもとに集まり、押しくらまんじゅうのごとくぎっちりかさなった
何をする気だと訝しげにそれを見ていると、なんとスペクターたちはそのまま一体に纏まってしまった!
「キ○グスライムかお前は⁉」
そう突っ込みをいれるのをよそに巨体スペクターはオォンと不満げな声をあげた。
「ウォ、ウォレ、スコシ、タリナイ……デ、デモ、ウォマエ、ヲ、クウ!!」
そういうとスペクターはオォン!と吠えた。
“邪霊蜂起”
スペクターはその技を完成させると自分の体をいくつか分裂させ、それを小さなスペクターにして……飛ばしてきた⁉
「ドオオッ⁉」
驚きの攻撃に対処できず、オレは小さなスペクターに直撃した。
「グウッ…!」
「零時!大丈夫⁉」
「あぁ……ってハイピクシー!」
「へっ?きゃあ⁉」
邪霊蜂起の残りがハイピクシーに迫ろうするのを見て、オレは咄嗟にハイピクシーを突き飛ばして庇った。
「グハッ‼」
至近距離で爆発し、オレはあまりの痛みに膝を着いた。
体に走る刺青のような模様が赤黒く光る。命が危険になるとこうなるようだ。
だが、まだ生きてる。死ねない。死ぬわけには……!
追撃してくる巨体スペクターをきっとにらむとオレにあの感覚が現れた。
フォルネウスと戦った時にもあったあの感覚。
敵が小さく見える…あの感覚。
未だこの感覚は分からない。だが、この感覚はオレの悪魔としての一面を強くする。
死の恐怖で凍りついた精神が溶け、変わりに浮かんだのは。
【怒り】だった。
「シッ!」
怒り狂った蛇のような気勢にのせてオレは身を低くしてスペクターに迫った。
オレが死にかけで動けないと油断していたのだろう。スペクターは反応できなかった。
オレは低い体勢から懐に飛び込み、拳を振り上げてスペクターをかちあげた。
ドオン!
「ゴオオッ⁉」
打ち上げられたスペクターを追って、オレは飛びあがり今度は両拳を合わせて降り下ろす。
ガァン!という音が響き、スペクターは地面に叩きつけられた。
だがオレの攻撃は終わらない。まだ、終わらせない。オレの敵になったものは死ね。全て死ね。死ね死ね死ね死ね。あいつのように………存在する意味を一切見出だせずに………!
「死ねよぉぉおおおおッ‼‼‼‼」
オレは指を揃えて両の手を突き入れ、肘までスペクターに埋め込むとそのまま左右に引き裂き、さらに裂いて裂いて裂いて裂いて裂いて………!
気がつけばオレはスペクターをマガツヒレベルにまでバラバラにしていた。
オレは興奮が冷めきらない息をしながら、魔石や仲魔達の“ディア”を使って傷を治療しはじめる。
するととヒジリの声が聞こえはじめた。
「……………よ…し。通信は…回復したようだな。
おい、大丈夫か?」
「あぁ、なんとか……」
疲れた声でそう返事するとヒジリが逡巡する気配がした。
「……そうか。随分と悪魔らしさが板についてきたようだな」
「嬉しくねぇ……」
そういうとヒジリから苦笑する気配がした。
「先に進めるようにしてやる。待ってな。」
そういってしばらくすると遠くで何かが動く音が響いた。
「今開いた通路をぬければ、無事ギンザに脱出できるだろう。
まあ遠回りしたが、これで目的達成、ってわけだ。
ご苦労だったな。先を急ごう」
「そうしますか……」
疲れた体に鞭打って立ち上がるとハイピクシーが何か言いたげな様子を見せた。
「あ、あの零時……?」
「あぁ…?どうしたん?」
疲れた声で問い返すとハイピクシーがもじもじとこういった。
「あ、あのさっきは……ありがと」
なんの礼をしているのか一瞬考えたがすぐに思い出す。
先ほどスペクターの攻撃からハイピクシーを救ったことをいっているのだろう。
「どういたしまして」
微笑みながらそういうとハイピクシーは「……ん」と恥ずかしげにいった。礼を言い慣れていないのだろうか?
悪魔について謎は増えるばかりだ。それも知りたいなと思いつつ、オレは仲魔達を引き連れて部屋を抜け出した。
スペクター殺っちまった……まぁいいか。スペクターはいっぱいいるだろうし。
べ、別にスペクターに嫌な思い出がある訳じゃないんだからね!