望月と利根姉さんのだらだらしたお話を少し。
真面目な姉妹から逃げてきた望月と利根がサボりポイントでサボってる提督に合うお話です
「あづいー……望月ーどこまで行くのじゃ―……」
「もうちょいだからさー、もたれかかんないでよ利根さん」
私は今、利根さんと一緒に追手から逃げている。暑いのにご苦労なことだ。できればクーラーが効いた執務室にこもりたい。
「しっかし三日月のやつも休みだってのにご苦労なことだよ全く」
「筑摩も吾輩をどうにか動かしたいみたいじゃしのー」
「休みぐらいだらけさせろってのに、ねぇ?」
「全くじゃ……寛容な姉を持った加古が羨ましいのぉ……」
というわけで私達は、この糞暑い休みの日にまで規則正しい生活を要求する、クソ真面目な姉妹達から、だらけるために逃げている。だらけるためにこんな労力は要したくないが仕方がない。
「あ、ついたよここ抜けた所。この前北上さんが教えてくれたサボりポイント」
「ほー、中々良い所じゃな。風当たりもよく、直射日光もない……ん?先客がいるようじゃぞ?」
「ふぇ?おかしいな今日北上さんは大井さんに連れられて買い物行ったはずだし一体誰が?」
あまり知られていないはずの場所に誰かがいる。サボり仲間の初雪辺ならいいけど初雪は部屋に引きこもってるし、他の可能性としては三日月や筑摩さんが先回りしているかぐらいしか思いつかないけど、とりあえず先客の様子を確認しよう。
「って……司令官じゃん」
一安心だ。司令官なら準サボり仲間だし。でもなんでこの場所知ってるんだろう?
「おー、提督か―。何をしておるのじゃ?」
「どうせ司令官も皐月から逃げてサボってんでしょ?」
「モッチーに利根姉さんか、ご挨拶だな……」
「モッチー言うな」「姉さん言うな」
今日はいつものような、ダラけた感じではなくなんかちょっと暗い感じの司令官が私達を相変わらず良くわからない愛称で呼ぶ。
「今日は哨戒担当以外休みだ。俺含めてな。それに皐月なら朝早く出てったぞ」
「分かった、置いて行かれて拗ねておるのじゃな」
「いやいや、この暑さだからな―、俺はちょっと休みたかったしお土産だけ頼んで、俺の代わりに響を差し出して確か後は比叡、あきつさんあたりと出かけてったぞ。曙もいたかな?」
「おや?響は確か暑いのが苦手だったような……」
そういや響はヴェールヌイに改修されてからどうも暑いのが苦手だって言ってたような気がする。酒は強くなってたような気もする。
「あー、それなー、俺が今日は外出たくないゲージマックスだったから、響に今度何でもするから代わりに頼むって言ったら『今何でもって……了解した』てな感じで出かけてくれた。たまには俺抜きのほうがいいだろあいつらも」
「うわぁ……」
これ絶対後で皐月が荒れるやつだ。司令官はその辺の感覚がどうも鈍いらしい、結果としてあたし達がめんどくせー。
「本当、提督は皐月達にはあまいのぉ」
「そうか?」
「そうじゃよ、たまには吾輩にも甘くしてもらいたいものじゃ」
「……具体的には?」
「間宮でアイスを奢ってくれ」
「そりゃ甘い、別にいいぞ」
さすが利根さん、自分の欲望に忠実だ。私もそれにあやからせてもらおう。
「間宮行くのはいいけどさ、お前らなんでここに来たの?休みだしサボりってわけじゃないだろ?」
「私は三日月から、利根さんは筑摩さんから逃げてきたの。ったくあの二人真面目すぎるんだよー……司令官から何とか言ってやっても」
「そうじゃ、そうじゃ」
「何とかって言われてもなぁ……個性を尊重?なんかそんなんでいいよ
「こりゃだめじゃな……」
「だね……どうしよっかー……」
アイスは食べたい。でもあの二人に捕まるのはめんどくさい。多分二人の相乗効果で三日月単体よりめんどくさい。援軍に長月なんか呼ばれた日にはもうマッハでめんどくさい。
「あれ?てか司令官はなんでここにいるの?休みなら私以上にだらけてそうなのに」
「いや、自分の人間の小ささに凹んでこの場所に……ここなら誰も来ないはずだったから……」
「おう……」
「うわー……」
めんどくせえええええええええええええええ。極めてめんどくさい状態の司令官だこれ。どうしよ、ここから逃げるのも不自然だし、三日月達にみつかるのもめんどくさいし、あーもう。
「めんどくせー……」
「声でに出てんぞもっちー」
そりゃでもするさ、行っても帰ってもめんどくさい。まだ戦闘してた方がマシだ。とりあえずだらけてる利根さんに助けを求める視線を贈ろう。
「提督よ、そんなことを言ってはいかんぞ。それに、このなんか露出が多い制服のことなら許してやらんこともないぞ」
違うそうじゃない。いや、確かにあれ露出多いけど。というか利根さん履いてるの?履いてないの?
「いや、はっちゃん達のスク水も含めて俺の指定じゃないからな。アレ、大本営の指定だからな俺悪くないよ」
「本心はどいじゃ?」
「グッジョブ!大本営」
「はぁ……」
いやそこは隠せよ。本当素直だなこの司令官は。まぁそこがいいっちゃいいんだけどね。
「で、司令官は何また凹んでるわけ?ったくめんどくさいなもぅ」
「なんかなー、いろいろ考えてたらこうちっちゃいなー俺ってなって気づいたらここに」
「あーもう……あのね司令官そんなすべてを包み込めるような聖母みたいなやつそうそういないっての、気にしなくていいんだよ気にしなくて、ほらもっと肩の力抜いてさ、ね?」
いっつもなんか力入れて空回りしてる。そんなん続けてたら疲れるっての。その辺が下手な司令官はたまに見ていてハラハラする。
「いやでもモッチー、少なくともうちの鎮守府に数人その聖母みたいな娘がいるんだけど」
「え?誰?」
「雷、夕雲、浦風、後は鳳翔さんかな」
『あー』
何やらゴロゴロしている利根さんと意図せずハモった。確かにあの人たちは私達とは違うというか人を依存させる何か要素があるというか、あの長門さんすら受け入れる何かを持っている。
「いやでもほら、150人もいる鎮守府の中で4人だよ?そんなもんなんだって、ほら司令官深呼吸深呼吸」
「そうじゃぞ提督、お主はちと考え過ぎというか、悲観的に物事を見過ぎというか構え過ぎなんじゃよ。吾輩や望月のように少し力を抜くことを覚えたほうがいいぞ」
「力を抜くか―、難しいな」
「難しいことはないぞほれ」
「いや何してんの利根姉さん、暑いんだけど」
本当何してんだこの人。急に良いことっぽいこと言ったかと思ったら提督に抱きつき始めた。
「今の気温は36度。人間や我輩たち艦娘の体温はおよそ36度。つまり吾輩と提督そして望月が体温を共有することによってこの暑さから逃れられるというわけじゃ」
いや何言ってんだこの人。てかさり気なく私も含められてる。そしてその間に司令官の背中に利根さんがのっかっている。こうなったらどうにでもなれだ。
「そうだよ~司令官、なんか色々間違ってるかもしれないけどそれでいいんだって。いいいんだよ些細な間違いぐらい気にしなくたって世界は回るし何よりもめんどくさい」
「それは分かったけど流石に二人分の体重が俺の上に乗ってるこの状況は流石にどうかと……」
「いいんだって、そのままボーっとしてよ。動くとしんどいからさー」
たまにはこういのもいいんじゃね。皐月に見つかったら間違いなくヤバイけど。気にしたら負けだ。
「わかったよ。別に悪くはないしな」
「提督のスケベ」
「司令官のむっつり」
「お前らな……てかモッチーさ」
「なんだよー」
「モッチーも結構人を駄目にする感じあるよな」
心外な。私はただめんどくさいことがそれ以上めんどくさくならないよう処理をしているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「そうじゃなー、提督には皐月がおるし、吾輩は望月に養ってもらうとするか。なぁモッチー」
「ちょ、利根さんまで何言ってんの、あーもう抱きつくなって、司令官も何とか言ってよ」
「うーん、そうだな寝る」
「え?この状況で?」
自由すぎるだろこの人。私達が相手だからかもしれないけどさ。
「良いぞ提督。状況的には暑いし、良いとは言えないが悪くない。悪くない、それだけで充分じゃ。のぉ望月?」
「悪く無いか……まぁそうだねー、決して良くはないけど悪くはないねこういうのもさ」
私と利根さんが半身ずつ司令官の背中に乗っている、皐月や響に見つかったらヤバイ光景だけど時折吹く海風、司令官と利根さんの体温、ちょうどいい日陰、決して悪くはない。たまには外もいいもんだ。
「オッケー、じゃあ昼寝して起きたら間宮だな。二人共お休み」
「とか言って寝込みに我輩たちを襲う気じゃろ?英雄色を好むと言うしな」
「ねーよ、てか俺は英雄なんかじゃねえよ。クソ提督で充分だ」
確かに英雄って柄じゃないねこの人は。なんか色々裏はありそうだけど、こんな人だし……人だよね多分。私にとってはクソなんかじゃないいい司令官だ。曙も多分本心は違うと思う。アイツもめんどくせー。
「司令官Mにでも目覚めたの?」
「どうしてそうなる、ほら休むぞ」
「だからその休むのにも力入れすぎなんだって、まぁいいけど」
しばらくゴロゴロしていると司令官の寝息が伝わってくる。この状況でよく眠れるよ本当。
「望月よ、起きておるか?」
私も眠りに入るかはいらないかの所で利根さんが声をかけてきた。
「ん?まだ寝てないよ、どしたの?」
「お主、提督のことはどう思っておるのじゃ?」
どうって言われてもなぁ。どうなんだろう実際。ボーっとした頭で考えてみるけど適切な答えが出てこない。
「吾輩は、この鎮守府で、この提督の元で再び戦えて良かったと思っておるぞ。少々頼りないが、そのぐらいでちょうどいいと思っておる」
「それはそうだねー。少なくとも司令官にネガティブな感情はないなー。楽しくやらせてもらってるし」
この鎮守府の生活はめんどくさいけど楽しい。多分そのぐらいでちょうどいい。
「それにさ―」
「ん?」
「ちょっと頼りないけど、私から見たら自慢の義兄さんなんだよ。へへっ、こんなんでどう?」
「十分じゃな。さーて吾輩も少し寝るとするかの。しかしやはり姉妹じゃな。皐月とよく似ておる」
「そう?それを言ったら利根さんだって筑摩さんと似てるよ。あたしも寝よー」
間もなくして利根さんの寝息が聞こえる。
「寝てるから言うけどさ、司令官……いや義兄さんいつもありがとうね。本当少しは力抜くこと覚えてよね、毎日心配なんだからさ。じゃ、おやすみー」
言いたいことだけ伝えて私も目を閉じる。
世界規模で考えたらそりゃ状況は悪いかもしれない。でも、私の手が届く範囲の状況は多分いいものだと思う。手の届く範囲だけでも良くなれば万々歳だよね司令官?
私達三人は夕暮れ前でこの静かな場所でゆっくりと昼寝をして過ごし。最後に司令官が起きるのを待って間宮に向かった。
そこで丁度、休憩していた三日月と筑摩さんに捕まり、司令官に助けを求めようとしたけど、司令官も響に言ったことをちょうど帰ってきた皐月に問いつめられてるみたいだ。
「ったく……めんどくせー……でも悪くはないね」
こんな、めんどくさいけど悪くない日がまた明日も来ますように。
「ちょっと、望月ちゃんきいているのかしら?」
「も……望月ほれちゃんと筑摩の話を聞かんか、筑摩の顔が鬼の形相に」
「なんですって姉さん?」
「ひいいいいいいい」
「望月、大体いつもそんなにだらだらしちゃいけないって――」
「いやだから、皐月違うんだって、あれはなんていうかその――」
「司令官丁度ここに日本刀があるんっだけどさ?」
「おーぅ……」
うん、やっぱりめんどくせえええええええええええええええええええええええええええ。
―艦―