デスペラードM ✕ G 終焉へ導く5人の風 作:BroBro
今回はBGMとして『secret base~君がくれたもの』を流しながら読んだら雰囲気が出るかもです。(私はこの曲の詳細をあまり知らないので誰か詳細求みます…)
朝が来た。また何時もの1日が始まる。
時刻は6:30。私の朝は少し早いものだろう。
私、モンスーンは最近そんな時刻から自分の体を分解する練習が始まっている。
「うにゃぁ〜……」
理由を述べよう。私の体の上には何故か毎朝白音が眠っている。さっきの寝言っぽい声も白音のものだ。
私は後が面倒なので出来るだけ起こさない様に体を分解させながら白音を地面に寝かせる。
これをいかに白音に感ずかれずに出来るかが朝の私の課題だ。白音が起きたらまだまだと言う事になる。
今回はなんとか成功した。白音も起きる事は無かった。
「くぅ……くぅ‥…」
隣で黒歌もぐっすりと眠っている。起こすのは酷だろう。
私は今やキッチンと化している工場に移動した。
「さて、今日は何があるんだ?」
私は工場(今後はキッチンと呼ぶ)の端に置いてある棚に手を掛ける。
中には味噌と野菜、肉類等の食材が入っている。
何故私がこんな棚を開けたかは勘のいい者ならば分かるだろう。
「今日は味噌汁と白米、それと私が昨日取ってきた川魚の焼き魚と行こうか」
私は数ヶ月前に手に入れた簡易型コンロに火をつける。最近になり、私は朝食を作るのが日課になっていた。
理由は何故か最近起きるのが遅い黒歌と白音に頼み込まれたからだ。それから黒歌に食事の作り方について様々な事を教えこまれた。
今の私は食事に関してのスキルは人一倍あると思ってもらっていい。蒸す、焼く、干す、煮る、等食材問わず創作物は様々だ。
今回は白米と焼き魚と味噌汁と言う日本の伝統的な朝食にする予定だ。なんと言ってもこれしか食材がない。
「さて、やるか」
食材を整えた私は、小型コンロで調理を開始する。
その間、私はこれからの事と堕天使の事について考える事にした。
最近では堕天使達の行動も活発化し、私は少し不眠不休じみた生活をしている。
奴らはなにか急いでいる様だったが、話を聞く前に殺してしまうから事情は分からない。
黒歌達と出会ってから既に1年が経っている。黒歌は小学2年生位の年齢になり、白音は小学1年生位の年齢になった。
予想以上に1年が経つのは早く、その間は本当に平和と呼べる生活だった。堕天使も現れず、私が彼女達から離れる事はまず無かった。
だからこそ何故このタイミングで襲撃が多くなったかが気になる。恐らく今日か明日にはまた堕天使が襲撃に来るだろう。その時は生け捕りにでもして事情聴取をするとしよう。
私に出来る事と言ったらこんな事ぐらいだ。
妹達を守れるのは、私だけだからな。
「良し、魚は良いだろう」
無意識に進んだ魚の開きの調理が終わる。辺には魚が焼けるいい臭いが立ち込めた。
「モンスーン君おはよう……」
「おはよう、黒歌」
その臭いで起きたのか、黒歌が眠たそうに目を擦りながら寝室(製図室)からやって来る。
後ろには白音が寝癖を付けながら歩いて来た。
「…………」
白音は目を開けていない。恐らく立ちながら寝ているのだろう。完璧に意識が夢の世界に行っている。
「……お魚……」
ボソッと一言呟いた。どうやら食い意地だけは張っているようだな。寝ていながらも魚の臭いを嗅ぎつけ体が勝手にここに来たとでも言うのか?
白音の考察をしている中、黒歌が紙皿に乗っている焼き魚を見て目の色を変えた。
「おぉ!今日は焼き魚にゃ!?」
「そうだ。確か黒歌は魚は大好物だったな。通りで7時なんて早朝に起きる訳だ。猫は嗅覚もいいらしいからな」
「ちょっと臭いに釣られちゃったにゃ…」
「将来が心配だな。焼き魚の臭いに誘われて虫のように堕天使に捕らえられても私は知らないからな」
「そ、そんな事は絶対に無いにゃん!」
「どうだかな」
私は黒歌と会話しながら料理を作っていく。
「良し、出来たぞ」
just30分。調理時間に余裕が出てきたな。これならもう少し手間取る奴も作れそうだ。
「そこで夢の国に行っている白音を現実に戻してきてくれ。食事はその後だ」
「は〜い」
黒歌が白音の後頭部をぶっ叩く。白音は後頭部に軽い衝撃を受け驚くも、自分が何処に居るのかを理解したようだ。
「…あれ、姉さま?モンスーンさん?」
「おはよう白音、朝食食べるにゃん♪」
黒歌が白音を連れてくる。私は壊れかけのソファに座り、黒歌と白音もそれぞれの椅子に座る。これも毎日同じ事だ。
「……なぜ私の席にいるんだ?」
だが、今日は何故か黒歌と白音が私の隣にいる。1年間こんな事は無かった。一体どうしたと言うんだ?
「いやー、偶には同じ席で食べるのもいいかな〜って思ったにゃん♪」
黒歌の言葉に白音も味噌汁を飲みながら頷く。
この2人が同意見だと私の意見は必ず通らない。こうなれば私には諦めるしか道は残されていない。
「……狭いから今日だけだぞ」
「分かってるにゃん。今日が最初で最後にするから……」
この言葉に私は少し違和感を覚えた。いつもおかしい程活発な黒歌の言葉が、徐々に抑揚が無くなって来たからだ。
なにかあったのだろうか?
恐らくここで私が問いただしても喋りはしないだろう。黒歌は秘密事項等の事は白音の前では話さないし、何より食事の時に飯以外の事を話さない。
聞き出すとしたら食事の後にした方が良いだろう。
そうして、私は自分の皿にある焼き魚に箸をかけた。
カスッ
ん?魚の手応えがない?
違和感に私は自らの皿に視線を落とす。
そこには、ある筈の魚が骨を残して綺麗さっぱり無くなっていた。
魚が出ると偶に起きる現象だ。何故か骨と言う邪魔者と言える存在だけ残して私の前から姿を消す魚の身。
その魚を奪い去るこそ泥は大体目星はついている。
「欲しかったら言えばいいんだぞ白音」
「えっ……」
バレるとは思っていなかったのか、白音は食事の手を止める。白音が今まで食べていた筈の皿には私が白音に作った分の2倍はあろうかと言う程の質量を持った魚の身が散らばっていた。
いや、だがどうも少ない気がする。私の分と白音の分を合わせたのならもう少しあってもいい筈だ。
「うっ…ゲホッ、ガホッ……!!」
私の隣から喉に詰まった何かを吐き出すような咳が聞こえた。
私は咳の犯人である黒歌に視線を向ける。
すると、黒歌の焼き魚は少しも手をつけられていない。味噌汁と白米も少ししか減っていない。にも関わらず黒歌はむせている。
「お前も共犯か」
黒歌は私が魚が減っている事実に気付いた事に慌ててスピードを上げて私の魚をかっ込んだのだろう。
だからむせる結果になったのだ。
「うぅ…モンスーン君気付くの速すぎるにゃ……」
「私も食欲が無かったら気付かなかっただろう。今回は運が無かったな」
「うぅ〜……」
黒歌は涙目になりながら悔しそうに唸った。
こうして、私は自ら作った焼き魚を一口も食べられないまま朝食を終えてしまった。
まあ何時もの事だからいいのだが。
◇
時は経ち現在午後の5時。
朝は明日の朝食を買いに出かけ、昼は何もせずにこんな時刻になってしまった。最近妙に時が経つのが早い気がする。
人間と言うのは脳を1部に集中したり、楽しい事をしていると時間の感覚が早くなると言う。逆に嫌なことがあると時間が遅くなっている様に感じる様だ。
私は人間では無いが、今の私は明らかに前者だ。私はこの生活を少なからず楽しんでいると言う事だろう。
このまま1日の終わりまで時間を進めてもいいが、今日はやる事が1つある。
そう、今朝の違和感の正体を黒歌に聞き出さねばならないのだ。
黒歌と白音が最近よく出掛ける事に関係があるのかも知れない。なにやら良からぬ事がある可能性も拭い切れない。
私のこの違和感を解消するために、何としてでも黒歌に話をしなければならないのだ。
私は決意を胸にし、黒歌がいると思われる執務室へと向かった。
「モンスーン君…」
だがその時、私の行動を遮る様に1つの声が私を呼ぶ。
その声は私が今現在ターゲットにしている者の声だ。
「黒歌か、丁度良かった。お前に話したい事があったのだ」
「うん、私も話したい事があるにゃん。出来ることなら外で話したいにゃ」
「分かった」
黒歌の声は少し元気が無いように感じた。やはり黒歌が元気で無いと違和感がある。私の妹である黒歌は、私より元気であり白音を引っ張っている様な存在だ。
そんな奴がこんなにも声に抑揚が無いのは珍しい。いや、寧ろ有り得ない程だ。昼とは大違いでもある。
嫌な予感がする。何故か、私の頭が危険信号を発していた。
黒歌の後に続き、工場から外へと出る。
日が山に隠れ、色鮮やかな夕焼けを作り出している。私達の家が山の麓と言う事もあり、町を一望できるこの場からの景色はとても神秘的に見えた。
夏終わり頃の特有の冷たい爽やかな風がふく。その風が黒歌の黒く伸びた髪をたなびかせた。
「モンスーン君、実はね……私、隠していた事があるんだ」
今まで夕焼けを見ていた黒歌が急に話し始める。
黒歌が標準語を使うと言う事は、黒歌が嘘をついていない事を示すと同時に、とても重要な話をしようとしている事を表している。
黒歌が言った隠していた事と言う言葉…それは恐らく私が聞き出そうとしていた事と合致するだろう。
「隠していた事とは?」
私が黒歌に問う。
黒歌は未だにこちらに顔を向けず、赤く染まった空を眺めながら私の問に答えた。
「私達ね……もうここには居られないんだ……」
いなくなる?
黒歌と白音が?
「……どういう事だ?」
「私達は悪魔の契約の元に、悪魔の元で生きていくと言うこと…」
悪魔?
何故悪魔の元に?
「悪魔は堕天使と古くから膠着状態にあるの。だから私達が悪魔の配下に付いたら堕天使達は私達を狙わなくなる。だから私達は悪魔の元に行く……」
黒歌の言葉。私はその意味を全て理解した。
未だ幼い白音を完全に守る。それは私1人では正直難かった。
多勢に無勢。堕天使が頭を使って攻め込んできたら私は白音達を守れるだろうか。
否、 無理だ。
私は数多くの不安定要素を抱えている。
もし私が殺戮のモンスーンになったら?
もし私が捕らわれたら?
もし私が負けたら?
様々な不安が私にはある。私が今までこうして普通に生きてこれたのも奇跡かも知れない。
それを理解した黒歌は、白音を連れてより安全な場へと行く事を決意したのだ。
「私達を受け入れてくれた悪魔の人は私達の安全を保証してくれた……でも、今受け入れる事が出来る人数は2人だけだって……」
黒歌の声が徐々に小さくなっていく。
紡いだ言葉の間には、僅かながら嗚咽が混じっている様にも聞こえた。
「だから……モンスーン君は私達と一緒にいけないって………だからっ………」
黒歌の足元に一滴の水滴が落ちる。
その水滴は、乾いた地面をゆっくりと湿らせて行った。
「……黒歌」
私は黒歌の名を呼ぶ。恐らくこの名を呼ぶのもあと数回だろう。だからこそ、私は力強く彼女の名を呼ぶ。
自分の名を呼ばれた瞬間、黒歌は肩をビクッと震わせた。私が怒っていると思っているのだろう。
「黒歌、私は兄としてお前達の旅路を見守る。だから安心して行け。私は大丈夫だ」
私は出来るだけ優しく黒歌に言う。
昔は優しいと言う言葉だけで虫酸が走ったが、今日は何故か水が流れる様に自然に言葉が出た。
「でもっ!モンスーン君は今まで私達を守ってくれたのに…それなのに私達何も出来ずに別れる何て……!」
「私はもう十分だ。目的である戦闘も終えた。確かに記憶は帰っては来なかったが、私は昔の記憶はなくてもいいと思っている」
そう、私は記憶なんて必要無かったのだ。
殺戮のモンスーンは私から消え、黒歌と白音の兄としてのモンスーンが今存在している。
それが、今の私には重要なのだ。
「記憶の事は気にするな。私には必要ない。だからお前達は自分の事だけを考えて生きろ。悪魔だろうが妖怪だろうが、私はお前達が生きられるのならば笑って見送ってやる」
「モンスーン君……」
黒歌が私に振り向く。私のセンサーから見えた黒歌の顔は、瞳から零れた涙が夕日に光っている様に見えた。
「モンスーン君……いいの?私達の事、怒ってない…?」
「私が怒る理由が何処にある?寧ろ私はお前達に感謝している」
恐らく私は記憶を失う前は人殺しだったのだろう。
何らかの理由で記憶を失い、何もかもを失ったが、私はそのおかげで手に入れた物もある。
正直、私は失った物より手に入れた物の方が多い気がする。
兄という立場、白音と黒歌と言う妹、そして普通の生活。
なんて充実した1年だっただろうか。
だから、私は黒歌、そして木陰に隠れている白音に向かって言う。
「白音、黒歌。お前達には、私は最後まで心から感謝の気持ちを伝えよう。
ありがとう。
恐らく最後だろうが、お前達は最高の妹達だった」
瞬間、私の胸と背に弱い衝撃が来る。目の前にいた黒歌と、背後の木陰に隠れていた白音に体当たりを食らった。
いや、抱きつかれたのか。
私の風で冷え切った体に2人は顔を埋める。
全く、やはり少し目が離せない所も多々あるな。
「みゃあ………」
「うっ……くぅ………」
未だ泣き止まぬ2人の頭に私は分解した手を優し目に置く。
そして、私は大事な妹達に呟いた。
「では……最後の晩餐にしようか」
センサーに映っている赤く染まった空が、一瞬だけ揺らいだ気がした。
*
朝。
2人の旅たちの時だ。
私は最後になるであろう朝食を3人で食べ終え、既に町へと下りる一本道にいた。
勿論、黒歌と白音と共にだ。
「荷物はそれで全部なのか?向こうは何があるか分からないから準備は念入りにするべきだ」
「分かってるにゃん」
「水は持ったのか?それと薬草も必要だと思うのだが……」
「……モンスーンさん母さまみたいです」
「そうか?私は忘れ物がどうしても気になるっているだけなのだがな…」
忘れ物と言うのは戦場では致命的な行為だ。生命を維持するのに必要な食品や水、そしてbattlewheponなどは必需品となる。
一応悪魔も戦闘はするらしいからどうしても確認を取っておきたかった。
「全ての準備はいいな?」
「「うん!」」
2人同時に返事をする。元気が良いようで何よりだ。戦場はモチベーションも重要になってくるからな。
「それでは行ってこい!お前達の生きれる場所へな」
「「はい!」」
2人は私に背を向け、町へ向けて歩き出す。
だが、黒歌と白音は同時に振り返って来た。
その目は不安の色は無いにしても、何処か寂しげな目をしている。
そして、黒歌がゆっくりと口を開いた。
「また…何時でも会いに来て良い…?」
「ああ、嫌な事があったら何時でもここに来ると良い。私はずっとここにいよう」
「本当かにゃ?嘘じゃ無い?」
「私は嘘は付かない。私はこの生涯をかけて、君達を守ると誓った。私が護られた様に、今度は私が君達を守る。だから私は必ず君達の近くにいよう」
「…うん、ありがとうモンスーン君…またね」
「ああ、また会おう」
さよならは言わない。私達が別れる時は必ずまた会うと信じて別れの言葉を交わす。
それから白音と黒歌は、もう振り返る事は無かった。
私は妹達が見えなくなるまで、手を振り続けた。
◇
廃工場の裏山。
私はそこでまた山菜を採取していた。
白音と黒歌が居なくなろうとも私の習慣は変わる事は無い。
白音達が行った日の昼頃。日が眩しく、辺りも良く見えているので、山菜を取るには丁度良い天気だ。
私はムラサキシメジと言われるキノコ類の山菜を採取する。
「…にしても、流石に暑すぎるな。夏の終わりにも関わらずこの暑さとは…これが噂に聞く地球温暖化と言う奴か?」
私の体が妙に暑い。去年はこれ程までに暑く無かった。それに私のセンサーでは今日の気温は25度と言う標準並みな気温を表している。
だが25度にしては暑すぎる。
「いや、これは……私の体が熱暴走を起こしているのか?」
私の体に手を触れる。私の体の表面温度は恐ろしい程の温度になっていた。
流石にこれはマズイな。川にでも浸かって涼むか?
そんな事を考えている時だった。
『義体温度が危険値に達しました。再起不能機能が多数検知。分解能力再起動不能。体温調節機能停止。自己修復機能が前面停止。その他機能再起動不能。緊急事態につき、外部リンク通信機能に予備電力を回します』
頭に補助機能の声が響く。
瞬間、私の体から力が消える。
何が起こっている?どうなっているんだ?
遂には私の視界さえも暗くなってくる。
『……リンク成功。半径1km以内に活動中のtrialpot(repairtype)4機に救援要請を送りました。全機能起動不可能な状態に近づいたため、緊急強制シャットダウンを実行します』
補助機能の声が途切れる。
それと同時に私の視界が闇に消えた。
monsoon編、いかがでしたでしょうか?
今回でmonsoon編は終了になります。
え?話の構成がくさいって?まぁ私もそう思うのですが、この小説では少数となるストーリー性を持たせるキャラとしてはこれくらいやらないと……
あと壮大にモンスーンさんのキャラをぶち壊してしまい、申し訳ありませんでした……。いやね、どうしてもモンスーンさんには普通の生活を送って貰いたかったんですよ……。