デスペラードM ✕ G 終焉へ導く5人の風 作:BroBro
アームストロングが連れて来られた場所はとても広い高校だった。既に夜と言う事もあり高校の門は閉まっており、中に人の気配も無い。夜の学校特有の不気味な雰囲気を醸し出していた。
学校の門を開け、中に入るアームストロングとリアス。リアスは本校と思わしき部分と少し離れている部室棟と思わしき所の1つの扉の前で足を止める。
「それでは私はこれで失礼するわ」
「お前が直接話を聞くのではないのか?」
「本当ならそうしたい所だけど、残念ながら私はこれからさっきの男の子の様子を見に行かなきゃいけないのよ」
「あれほどの出血量なのにあの男はまだ生きていると言うのか?」
「ええ、それについてもこの中にいる子達が説明するから早く中に入りなさい」
とても見た目歳上のおじさんへの口の利き方では無いが、大人のアームストロングはその事はあえて触れず、引き戸式の扉を開ける。
部屋の中はとても生活感が溢れていた。サイズは一部屋と呼ぶには大き過ぎる程の広さであり、部屋の真ん中に長方形の大きい木製のテーブルがあり、テレビや高級そうなソファなどが部屋の端に置いてある。とても学校の中の施設には見えない光景だ。
そしてそのソファや椅子に座る人間が4人。まあここにいる時点で人間と言えるかは分からないが、人の形をしているので相手の正体がわかるまで人間と言っておこう。
その4人の人間は丁度アームストロングの死角になっている所にいる以外の人物はよく見えていた。1人は本当に高校生?と思ってしまう程に背が小さい純白の髪をした少女。もう1人は黒いロングヘアで大人の女性と言える様に凛々しい女。そしてもう1人は美青年と言う言葉がとても当てはまる青年。もちろん全員この学園の物であろう制服を着ている。
そしてアームストロングの姿を確認した青年がアームストロングに話しかける。
「こんばんは、僕の名前は『木場祐斗』と言います。部長の急な頼みで貴方に事情聴取をしろと頼まれました」
「…塔城子猫です」
「姫島朱乃と申します」
祐斗、子猫、朱乃、と順に自己紹介を終えて行く。そして影にいる最後の1人が一歩前に出た。だが、どうしても顔が見えない。
「なんだ?俺も自己紹介しなくちゃいけないのか?」
「一応この場にいる者として自己紹介ぐらいはしておいた方が良いと思いますよ」
「・・・はぁ、面倒だな」
妙に威厳の感じる声の男がまた一歩前に出る。最後の一歩を踏み出した時、今まで分からなかった男の顔がようやく伺えた。
その男の姿を、アームストロングは知っていた。
「俺は『ジェットストリーム・サム』だ。長いからサムと呼んでくれればい・・・い・・・?」
その男、ジェットストリーム・サムはアームストロングの姿を見た途端驚愕に目を見開く。
「まさかまた会えるとはな、浪人者め・・・」
「まさかあんたもこっちに来ていたとはな。と言う事はなんだ?雷電に殺られたのか?」
「敗因の半分は貴様のせいだがな」
「て事は雷電の奴、俺の『ムラサマ』で勝ちやがったのか・・・やっぱりワンコに託しておいて正解だったな」
先に自己紹介をした3人を蚊帳の外にし、勝手にどんどんと話が進んでいく。
いまいち状況が理解出来ない木場が状況把握のためサムにどういう事かと説明を求める。
「サムさん、知り合いなんですか?」
「知り合い・・・と言うか上司みたいな人だ。ただのおっさんと思って甘く見ない方が良い」
ここで完璧にサム以外の3人の事を忘れていたアームストロングは、念のため3人に自己紹介をする。
「紹介が遅れたな。俺はスティーブン・アームストロングと言う者だ」
アームストロングはワイシャツの胸ポケットにしまってあった名刺を木場に差し出す。
「これはどうもご丁寧に・・・アームストロングさんはアメリカの政治家なんですか?」
名刺に目を通した木場がアームストロングに向き直り、アームストロングに質問する。
「元政治家の上院議員だ。とある奴に負けてしまってな」
「なるほど、それで日本に来られたと?」
「日本?ここはジャパンなのか?」
「そうですよ」
「今は何年だ?」
「今年で20××年になりますね」
木場の答えにアームストロングは目を見開く。この時代はアームストロングがいた時代の約10年前なのだ。つまりタイムスリップしたと言う事になる。
どこかでライトニングボルトと言われた者がタイムスリップし、過去と未来を行き来したと言う噂は聞いた事はあるが、まさか自分がタイムスリップしてしまうとは思いもよらなかった。
それに加え、今回タイムスリップしたのはアームストロングだけでなくサムもいる。同じ組織にいた者が同じ時代に飛ばされる。偶然とは思えない様な事に、アームストロングは難しい顔をする。
「・・・・・・サム!」
耐えかねたアームストロングは、同じ体験をしたであろうサムを呼び、木場達には聞こえない様な声でサムと話す。
「なんだ?」
「お前は雷電に殺られてここに来たのか?」
「そうだな。まあ俺がこの時代に来たのは昨日だったんだがな」
「昨日?俺は今日だったぞ?」
「ほう、なら他の奴等がここに来ている可能性が高まった訳か」
「少なくとも俺達は時間枠こそズレていたが同じ時代に存在している。もしかしたらモンスーンやサンダウナー達もこの時代に来ているかも分からん」
「モンスーンは昨日見たぞ。俺が夜の街を歩いている時にアイツは屋根を伝って何処かに消えて行った。とても急いでいるようだったから呼び止める事が出来なかったが、あれは間違いなくモンスーンの野郎だ」
「・・・余計に可能性が出てきたな」
サムとの話に一段落がついたアームストロングは、不審に思われているであろう木場達に改めて向き直り自身の状況を説明した。
「信じるも信じぬのもお前らの次第だが、恐らく俺とこの浪人は未来から来たようだ」
「未来?」
アームストロングの言葉に木場達は余計に不信感が増す。そして朱乃が更にアームストロングに説明を求める。
「どう言う事か詳しく説明してもらえますか?」
「良いだろう。その代わりにお前らの情報も全て教えてもらうぞ」
「良いでしょう。私達で分かる範囲の事は全て話す事を約束しましょう」
それからアームストロングはここまでの経歴を説明した。
サイボーグ技術が発展した世界。ホワイトブラッドによって生きる機器的生命体が世界各地に広まり、技術産業が飛躍的に向上した世界。
その世界の一時の平和に業を煮やした『デスペラード社』と言うサイボーグによって統一された会社は、大統領を殺害し戦争の火種を生み出そうとする。
その企みを阻止するべく、1人のサイボーグ、『雷電』が立ち上がる。雷電はデスペラード社の四大強者『ウィンズ・オブ・デストラクション』を苦戦しながらも次々と倒して行き、黒幕であるアームストロングを殺した。
アームストロングの最新のナノマシンによって強化された肉体が雷電に敗れ、殺された。筈だった。
だが、何が起きたのか…気が付いたら街の中に居て、更に堕天使と1人の男との修羅場に出くわし、その堕天使を撃退。そして男に話を聞こうとしたら男が消えており、変わりにリアスがいた。
それから今に至る。
「・・・と言う事だ。難しく非現実的な話だが、これが俺が体験した事の真実だ」
アームストロングの説明を聞いた高校組の3人は黙って考え込んでいるようだ。
そして数秒の時間がたった時、木場がアームストロングに確認する様に話した。
「仮に未来から来たと言う話が本当だったとします。その場合、貴方達はまた人類に戦争をする様に仕向けるんですか?」
「それはないな。俺は腐ったアメリカを正し、弱肉強食の世を実現する事だ。ここはアメリカでは無いし、それにあの政権を実現しようとしていたのは俺が殴りたい奴を殴りたかったからだ。この時代にはそんな奴等はまだ確認出来ないからな」
「・・・サムさんはどうですか?」
「俺は無益な殺生は好まん。戦争なぞ起こしても俺に何の利益も無いしな」
サムとアームストロングの言葉に更に頭を悩ませる3人。
「やはり信用ならんか?」
「・・・正直信用出来ません。何か証拠は無いんですか?」
「・・・この時代にサイボーグ技術はあるのか?」
「いえ、無いです」
「では俺の姿を見れば話は早いだろう」
そう言い、アームストロングは急にワイシャツを脱ぎ出す。その行動に女子である朱乃や子猫は驚愕した。
その姿を尻目にアームストロングは最後のボタンを外し、上半身裸になる。ワイシャツ上からでも十分分かるが、ワイシャツを脱ぐとその肉体美が露になる。その姿に部屋の隅の子猫が「…何か悔しい」と呟いた気がするが気のせいだろう。
アームストロングの姿を見た木場は、とある箇所に違和感を覚えた。
「アームストロングさん・・・その胸はいったい?・・・」
アームストロングの胸の一部の傷みたいなおかしな形に盛り上がっており、途中から体の内部に入っているが、その傷の様な部分を中心に管の様な物が体中に張り巡らされている。初めて見る者にとってはとてもエグい姿だった。
「これが俺が体内に埋め込んだものだ」
瞬間、その傷から右腕に向かって黒い何かが侵食していく。アームストロングはその侵食を止める事なく、指先まで完全に黒は侵食した。
「あらゆる衝撃に対し、一瞬で硬化するナノマシン。便利なものだろう?」
そのアームストロングの姿に3人は今回何度目かの驚愕をする。こんな技術は今の時代では出来ないし、ましてやアームストロングは人間であり悪魔でも堕天使でも無い。だがこの能力は人間には到底出来る訳が無い。
つまりアームストロングのサイボーグの話が、本当だと決定づけるに十分過ぎる程の証拠になったのだ。
そして黒い色を自分の胸に戻したアームストロングは、またワイシャツを着て木場に話しかける。
「これで理解出来たか?」
「・・・十分です」
「さて、次はお前達の事について話して貰おう。俺はお前らの存在を全く知らないのでな」
「その前に1つ確認させて下さい」
「・・・なんだ?」
「貴方方は我々の敵では無いと見て良いですか?」
「お前達が情報を提供すると言うのなら俺達はお前達に手を出さん。同盟関係になった者を裏切ると言う事は死んでもしない」
アームストロングのどこか説得力のある言葉に木場達はふぅっと一息つく。そりゃあこんなサイヤ人みたいな肉体をして、更に体を固める事が出来る様な奴が敵対なんてしたら絶望感は半端では無いだろう。
そんな木場達にアームストロングは次はお前の番だと話しかける。
「そろそろいいか?」
「はい、約束しましたからこちらが知っている限りの情報を提供します」
そして今度は朱乃がアームストロングに自分達の存在や、人外の生物の事について語る。
人間界に潜む悪魔や堕天使と言う存在。悪魔は契約した人物を悪魔に変え、堕天使は人間をどう言う訳か殺す。今回の男の襲撃事件も堕天使の仕業の様だ。堕天使が人間を襲う目的は未だに分からず、こうしている内にも堕天使は人を殺している可能性があると言う。
それに対して悪魔は人間を襲わない。悪魔社会では最上級に魔王、上級悪魔や下級悪魔などが存在しており、リアス達は最上級の魔王から人間界の駒王街を任されている。リアスは駒王町にいる人の命を奪う堕天使や、悪魔の管轄を外れた『はぐれ悪魔』と言う人間に被害を加える悪魔に制裁を加える。
リアス達はこの駒王町の中心に位置する駒王学園を拠点にし、『オカルト研究部』と言う名前で部活を設立。その名前は表向きの名前であり、本当はリアス達悪魔の拠点となっている。もちろん部活のため一般の人間でも入部届けを出せる。だが、駒王学園の生徒会長がリアスの仲間の悪魔であるが為、入部届けが受理される事は無い。
つまりはオカルト研究部と言うのは関係者以外絶対に入れない場所のため、リアス達の拠点としては最適な環境なのだ。
昼は普通の高校生であり、夜は人を殺す者を殺害する悪魔となる。こうして人間に悪魔と言う存在を知られない様に適応しながら生きていく。その為、この部室も悪魔の集会所とする事が出来るのだ。
だがそれは堕天使も同じ事で、今回の男を襲った者もそうして男に近づいたのだろうと推測した。
ここまでの話の中、アームストロングから1つの質問が飛んだ。
「リアスと言う娘の事は分かったが、お前らはどう言う存在なんだ?ただの娘の付き添いと言う訳でもあるまい?」
「私達は部長の下僕です」
「下僕?悪魔には奴隷制度があるとは驚きだな」
「いえ、下僕と言うのもある意味表向きの仮名の様なもので、私達は人道的な生活をしています」
「ほう・・・ならもう1つ聞くが、お前達は悪魔の世界からの仲間なのか?」
「それも違います。私達は元々人間であり、リアスに悪魔にしてもらった者です」
「悪魔にしてもらった?」
「これもしっかりとお話した方がいいですわね」
悪魔の世界には『レーティングゲーム』なるものが存在する。
レーティングルールとは、純血の悪魔のみが所持する悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と言うものを使い、悪魔をチェスの駒に見立て、悪魔同士で決闘をし合うと言うリアルファイトである。
駒にはそれぞれの役割や特出すべき点があり、少数戦闘をするために1人1人が重要な役割を果たす。
このゲームでは王の駒は存在せず、王のみが本当の実力を発揮出来る。
『兵士』の駒は通常状態では特出すべき点は無いものの、王が敵陣と認めた場所に行く時のみに王以外の者に昇格出来る。因みにこの駒の持ち主リアス眷属の中にははまだいない。
『僧侶』の駒は主に味方の援護や魔力の上昇などの支援を得意とする。これもリアス眷属の中でこの駒の持ち主はまだいない。
『戦車』の駒は攻撃力や防御力が上昇される。そして1番特殊な部分は王が危機的状況の時、王と自分の位置を入れ替える事が出来ると言う点だ。この駒は塔城子猫が持つ。
『騎士』の駒は主に速度の向上。主な主力武器は剣全般である。この駒は木場祐斗が持つ。
『女王』の駒は王以外の特性を全て兼ね備えた最強の駒と言えるだろう。この駒は姫島朱乃が持つ。
イーヴィル・ピースは悪魔同士の決闘をするために必要なものだが、そのピースは王以外は全て元人間で適応される。つまりは、人間が悪魔になる為に必要な物であり、そのピースを使われた者は否応なしに悪魔になる。そんな魔法のピースなのだ。
そして、純血の悪魔であるリアスが所持していたイーヴィル・ピースを今所持する元人間が朱乃や木場や子猫なのだ。
その事実は体をサイボーグにされ、既に人間を辞めているアームストロング達には驚く程の事では無いが、どうしても確認しておきたい事があった。
「お前達は自分の意思で悪魔になったのか?」
アームストロングは自分の意思を曲げ、何かに屈すると言う事が嫌いだ。自分の理想や意思を一生貫き、自分の嫌と感じたものは否定し、自分を見失う事なく最後まで自分と言う存在を貫く。
だから自分が人間と言う存在でいたかったにも関わらず、勝手に悪魔にされたと言う事実がもし確認出来たら、アームストロングは必ずリアスを殴りに行く。だからこの事だけは確認したかった。
だが、アームストロングの考えは杞憂に終わる。
「いえ、私達はリアスを守りたいがため、自分の意思で悪魔になりました。私達は皆リアスに色々な形で救ってもらいました。だから、私達はリアスの力になる為に悪魔になったんです」
「・・・その話を強制されているのではないな?」
「いえ、これは私の意思です」
「お前らもいいのか?」
朱乃の言葉を聞いたアームストロングは、木場と塔城にも確認する。
「僕も同じ気持ちです」
「…右に同じです」
どうやら全員の意思は同じの様だ。その真意を聞き、アームストロングは同盟にする意思を固めた。
「俺からはこれだけだ。それでだが、俺達未来人への待遇はどうなるんだ?」
「その事はサムさんにも話しましたが、寝床が無いのならお2人にはここで寝泊りされてはいかがですか?」
「それは嬉しい申し出だな。俺も寝床の事は考えてなかった。だがいいのか?ここは公共の場のはずだ。下手したら俺達の事を誰かが見るんじゃ無いか?」
「それなら問題無いと思いますよ。サムさんも昨日ここで寝て何も起きませんでしたから」
「どうも虫が良過ぎるな。何か裏があるのか?」
「裏とは言いませんが、貴方を私達の目の届く所に置くためと思って頂ければ良いです」
「それは俺がお前らの管轄下であるこの町にいるからか?」
「それで間違っていません」
「・・・・・・良いだろう。俺がお前らの足元にいるだけで安定した生活が提供されると言うならば安いものだ」
「ご理解が早くて助かりますわ」
これで今日の全ての話が終結した。朱乃達がサムとアームストロングに挨拶をしながら部屋から出ていく。
部屋の中にはサムとアームストロングの2人だけになった。最初からあまり仲良く無かった2人のため、どちらも話をしない。
「・・・あっ」
だがその静寂をサムの一文字がぶっ壊す。
「どうした?」
「あいつら・・・このおっさんに説明して行かなかったのは俺に説明させるためか・・・」
「説明?一体なんの話だ?」
「アームストロングよ、明日俺達は仕事をするぞ」
「仕事?仕事ってなんだ?」
「・・・きょうし」
「は?」
「教師だ!明日から俺達はこの駒王学園の教師をやるんだよ!」
「・・・・・・なんだとぉ!」
人類史上最強の上院議員が、人類史上最強の教師へと変わる瞬間だった。
ハイD側のキャラが途中で分からなくなった・・・。何か違和感があったと思いますがまあ、なんとかなるのかな・・・?なんとかなっているのかな?