デスペラードM ✕ G 終焉へ導く5人の風 作:BroBro
「馬鹿か。出来ないと諦めるから出来ないんだろ。出来ると思って跳んで見ろ」
「どう足掻いても出来ないですよ!!」
駒王学園の体育館。そこに学園の生徒と作務衣の様な物を着ている男がいた。
作務衣を着ている男、その男は妙に長くてデカイ何かを巻いた布を持っている。顔には複数の傷があり、顎には生え揃われた髭が生えている。
その者を先生と言った生徒が30段はあるかと思うほどの大きさの跳び箱の前で男に怒鳴る。
「どうやったらこんな大きさの跳び箱なんて跳べるんですか!て言うかよくあったなこんなキングサイズを優に通り越した跳び箱!」
「俺は出来ると思っていたから跳べたんだ。他の奴らを見てみろ。まるで余裕と言わんばかりにこっちを見ているだろ。出来ないのはお前だけだ」
「震えてるじゃないですか!誰も30段の跳び箱なんて出来ないんですよ!出来るのはサム先生ぐらいですって!」
その男、サム先生は体育の教師である。
先日に急な転勤と言う事でブラジルの学校から駒王学園に転勤してきた体育専門の教師だ。…と言う設定だ。
サム先生は転勤初日からその人間離れした身体能力を発揮し、初日で生徒の(特に女子の)人気を集めていた。
今回は跳び箱の授業でサム先生が踏切なしで30段と言う巨大な跳び箱を跳んだ。いや、もう飛んだと言った方が正しいかも知れない。
それを俺がやれるんだからお前もやれとこの化け物教師は言っているのだ。そりゃ生徒も半ギレの状態になるだろう。
そんな状態の自分の生徒に、ハハハッと笑いながら話を続けていくサム先生。
「冗談だ。流石に高校生のお前達がこの高さを跳べる訳ないとは思ってたさ。10段にしてやるから待ってろ」
「いや大人でも飛べないでしょ・・・てか10段とはまた微妙に嫌な段数を選びましたね」
「ちょっとした嫌がらせだ」
「本音言った!今本音言ったこの先生!」
と、この様に馬鹿にしながらも最終的にはしっかりと教えてくれるので、ユーモア溢れる先生として親しまれている。
ジェットストリーム・サム、本名をサムエル・ホドリゲスは、早々にこの学園生活に馴染んでいた。
生徒をいじる事で楽しんで仕事をしていると言うのは言うまでもないだろう・・・多分。
一方その頃のアームストロングはと言うと、オカルト研究部の部室で教科書や資料集を難しい顔で読み漁っていた。
(・・・何故だ、この時代ではまだPMCが活動し、愛国者達もまだ崩壊していない筈だ。なのに愛国者達どころか、あの伝説の英雄の話さえ出ていない・・・しかも歴史的に有名な事件すらもこの教科書には載っていないとは・・・どう言う事だ?)
アームストロングの読んでいる本は主に歴史的な事が書かれている本だ。アームストロングは念のため、この時代の歴史について知っておこうと歴史の教科書を手に取ったのだが、そんな事は既にどうでも良くなっていた。
何故ならアームストロングが知っている重要な歴史が少しも載っていないからだ。いくら日本であっても愛国者達による産業革命は必ず起きていた筈。
なのにその話に触れないどころか、この時代は10年後にサイボーグを生み出すには到底足りない技術力になっている。
アームストロングは一時期時代を間違えているのでは無いかと思っていたが、その見解もハズレに終わった。
ここでアームストロングに1つの答えが生まれる。
(まさか・・・俺達は別の世界の時代に来たのか?)
アームストロング達がいた世界では存在し、こちらの世界では存在しない歴史。核による戦争の危機や、愛国者達の監視すらこの時代には無い。
つまり、アームストロング達は別の世界に来ていると言う事だ。
まあ悪魔がいる時点で気付かない方がおかしいのだが・・・。
(もし本当に別世界だとしたら俺の知識の大半は役に立たなくなる。未来で起きる出来事を予測しながら今度は安全に俺の政権を作ろうとした俺の計画も台無しだ・・・やはりここはこのまま流れに乗るのが得策か・・・)
今後の事をアームストロングは一生懸命考える。
だがその思考を中断しろと言わんばかりにオカルト研究部の扉が開いた。
「スティーヴンさん。そろそろ昼休みも終わりですよ」
「木場か・・・日本の高校の昼休みは結構早く終わるんだな」
4時間目終了のチャイムと同時に弁当を持った木場が部室に入る。
その木場を見て、アームストロングはオカルト研究部の木製の席から立つ。そして軍手をはめ、部室の外へと歩を進めた。
アームストロングが来たのは学校の花壇だった。その花壇の前でアームストロングはズレた眼鏡を直し、白い帽子を被る。
「それでは・・・駆逐を始めようか」
そう言って花壇の前にしゃがみ込み・・・
草取りを始めた。
アームストロングの仕事は用務員である。仕事と言っても何もしない時間の方が多く、昼飯も学校の昼休みの時間より早く食べる。
そして昼になると花壇の花に水をやったり生えてきた雑草などを取ったりしているのだ。
朝にはゴミ捨て、昼には花壇の手入れ、夜は校門を閉め、何か違う仕事が入ったらその仕事を優先してこなす。それがアームストロングの仕事だ。
力仕事も多いため、アームストロングには持ってこいの仕事だとリアス達は判断したのだろう。
何やってんだ上院議員・・・・・・
猛スピードで一輪車に積み上がっている雑草。一輪車が一杯になると一輪車を片腕でヒョイと持ち上げ、草捨て場に捨てに行く。
それを繰り返し、仕事である草取りを物凄いスピードでこなして行く元上院議員。そのスピードに、30〜50mはあるかと思うほどの長さの花壇はものの数十分で花だけを咲かす綺麗な花壇になっていた。
つい昨日仕事の内容を聞いた人間のスピードでは無い。人間じゃないから当然なのだが。
一応学校にいる訳だから勿論生徒とも接触する。
「あ、アストロ先生こんにちは。お疲れ様ですね」
「ああ、随分早く外にいるが昼飯は食ったのか?」
「あ〜、ちょっと早弁しちゃいまして・・・」
「フハハハッ!そうだな、今の内にやりたい事をやっておく事だ。だが、社会に出たら時間のルールを守る事だ。自分を滅ぼしかねんぞ」
「わ、分かってますよぉ・・・」
「そうか、ならもう行け。俺が担任の教師に告げ口をせん内にな」
「それはヤバイ!アストロ先生さよなら!」
「ああ、じゃあな」
女子生徒がアームストロングの事をアストロと呼ぶ。
アームストロングは名前が長いと言う事で名前をアストロと変え、この学校で生活している。
そんなアストロ先生は初日にして既に学校中で話題になっていた。外人の業務員と言う事もあるが、1番の原因は朝のゴミ捨てに10週くらいしなくてはいけないゴミ捨てを、なんと1周で終わらせてしまったのだ。
その姿を見た女子学生から直ぐに噂が広まり、学校中がサム先生の次に注目するくらい人気の業務員になろうとしていた。
ここは普通嬉しいものなのだが、アストロ先生は少し焦っていた。
(予想以上に俺と言う存在が学校中で噂になっているな・・・流石にまずいか?)
アームストロングはアストロ先生になる際にリアスに一言言われていた。
『目立たないでね』
だが今や遅し、既に目立つどころか人気者になろうとしている。今頃リアス達は頭を悩ませている事だろう。お気の毒だ。
そんなリアスの事なぞ考えもせず、アームストロングはこれからの事を考え続ける。
(俺がいた世界では無い世界。流れで悪魔に味方している様にはなってしまったが、堕天使と言う種族も面白そうだ。だが如何せん情報が少ない・・・やはり暫くはここの連中と行動を共にし、この世界のあらゆる情報を集めるしか無いか・・・)
アームストロングは最初からリアス達に味方する気は毛頭ない。
だが、今の所1番安全が保証されるのはリアス達の陣営しか無い。堕天使も悪魔もぶっ飛ばして別行動をしてもいいが、そんな事をしたら悪魔からも堕天使からも付け狙われる可能性がある。
だから戦力未知数ではあるが、いきなり攻撃してくる堕天使より安全と見たアームストロングは、渋々ここの連中に従っている。
そして、アームストロングにはもう一つ従う理由があった。
(月給が60〜70万・・・仕事の出来によって上乗せも可とは・・・たかが業務員にここまで金を出す所なぞ普通は無いが、ここは連中の罠に乗っかってやるか)
アストロ先生は金に釣られていた。
そんな金に目が眩んだ先生は、鼻歌混じりで夜までの仕事を着々と終わらせるのだった。
*
???side
夜の街を私は歩く。
これと言った目的は無い。ただ歩いているだけ。
私の隣には私を救ってくれたと思われる黒く、丸い手の生えた球体がペタペタと足音を立てながら歩いている。
私がその生物の様な物に視線を落とす。するとその生物は私の視線に気付いたのか、青い目と思わしき1つの光を点滅させる。
「アーイ?」
何かを聞いてくる様な鳴き声。言葉は分からないが、確かに問い掛けている様だ。
「過剰反応する必要は無い。私は何も君に問う気は無いからな」
私が黒い生物に向かって言葉を出す。
すると私の言葉を良しとしたのか、黒い生物はまた奇妙な鳴き声を出しながら前を向く。
その時、黒い生物とは違う鳴き声が聞こえた。
「ぐ……あぁぁぁ……」
消え入りそうな男の声。その声を聞いた私は再度黒い生物に視線を戻す。
「アァーイ」
その生物の目は青では無く、赤く輝いていた。その危険を示す色が私を急かす。
声は近い。何者かが死にかけていると見て良いだろう。
私はいつの間にか、その声の元に走っていた。
「ぐ……あぁぁぁ……」
俺、『兵藤一誠』はその場で呻いた。痛い!マジで痛い!
俺の腹に突き刺さる光の槍。それを放ったスーツを着た男はカラスの様に真っ黒な羽を広げ、コツコツと近づいてくる。
この男は俺が家に帰宅する途中、俺に何か訳の分からない事を言った後、いきなり攻撃を仕掛けて来た。
俺は何もしてないぞ!
腹部に刺さる槍から来る激痛に耐え見上げる俺に男はもう一度、手に光の槍を作り出す。
「痛かろう?光はお前ら悪魔にとって猛毒だからな。その身に受ければ大きなダメージとなる。光を弱めて作った槍でも死ぬと思ったのだが、意外と頑丈だ。だが、次は容赦はしない。これで流石に終わるだろう」
トドメを刺す気か!あんなのもう一撃食らったら流石に死ぬ!
そう感じた俺だけど、不意に昨日見た夢の続きを思い出した。
紅。
鮮やかな紅が俺を……。
助けてくれる訳も無いか。あれは夢だ。でも、これも夢?
夢なら助けてくれ。こんな状況、夢でもゴメンだ!
「マグネットパワー!」
誰かが叫ぶ声。その声の数秒後に、目の前にトラックが降ってきた。
……ん?トラックが降ってきた?
トラックが降ってきた箇所を見る。そこには今まで俺に槍を向けていた男が膝を着いていた。
「アーイ?」
その光景を見ると同時に、俺の真横から奇妙な鳴き声の様な音が聞こえる。
その声の正体は、まあなんと言うか…手の生えた丸い物体だった。
目の様な部分が黄色く光っている。一体この物体はなんなんだ?新種の生き物か?
俺がその生き物に意識を奪われている時、スーツの男に更にトラックが降り注ぐ。
絶え間なく続く爆発音。近所迷惑も良いところだろう。スーツの男はそのトラックの下でのたうち回っている。
そして今までのよりも一際大きなトラックが動けなくなったスーツの男に落下する。
壮大な爆発音。その音が止むと共に、スーツの男は跡形もなく姿を消した。
いや、本当になんなの?何でトラックが幾つも上空から降ってくるの?て言うかあの黒い生物はなに?
その生物もいつの間にか居なくなって居て、辺りに気持ち悪い程の静けさが広がる。てかマジで気持ち悪い。意識が消えてくる。
「これは……一体どういう事なの?」
消えかける意識の中、俺の前に夢で出てきたあの人が現れる。
鮮やかな紅い髪。
顔は夢では分からなかった。でもこの人だと確信出来た。
そう彼女は俺の学校の先輩。誰もが憧れる俺が通う駒王学園のお姉様。
「…いえ、今はそんな事よりもこの子の事を見なくちゃ…あら、気絶してしまうの?確かにこの傷は少しばかり危険ね。仕方ないわ。貴方の自宅は……」
その先輩が倒れ込む俺に話し掛けて来るが、既に言葉が聞き取れない。
そうしている内に、俺は意識を失った。
遭遇した殺人現場。
血塗れで倒れている青年に、スーツの男が槍を構えている。
その時体が勝手に動いた。
私の機械的な手の平を道端に停めてあるトラックにかざす。すると私の手から紫のスパークの様な物が一直線にトラックに向かい、トラックを持ち上げる。
今、黒いスーツを着た男が青年を突き刺そうと槍を振り下ろす。
「マグネットパワー!」
勝手に口が動く。その瞬間、私は持ち上げたトラックを男の頭上に落とした。だが、男は立ち上がる。
もう一つ落とす。もう一つ、もう一つ、二つ、三つ、四つ………。
数回のトラックの攻撃に、男は動かなくなった。そして最後に、私は特大のトラックを男に落とす。
男は跡形もなく消滅。この世から姿を消した。
それが先程私が体験した事。
人を1人殺した。
だがあの時、何故か私の心に罪悪感は無く、寧ろ楽しんでいた。
私の心に寝ずいていると思われる殺戮の意志。
それが私の今までの記憶を見つける1つの鍵となるのだろうか。
記憶を失って早十余年。私はこのスーツに彫ってある自分の名前しか私に関しての手がかりを得られずにいた。
だが、私は10年前に1つの誓いをとある2人に立てた。それは覚えている。彼女達との誓いを……。
『また…何時でも会いに来て良い…?』
『ああ、嫌な事があったら何時でもここに来ると良い。私はずっとここにいよう』
『本当かにゃ?嘘じゃ無い?』
『私は嘘は付かない。私はこの生涯をかけて、君達を守ると誓った。私が護られた様に、今度は私が君達を守る。だから私は必ず君達の近くにいよう』
『…うん、ありがとうモンスーン…またね』
『ああ、また会おう』
今でも鮮明に思い出される記憶。この記憶だけは手放せない。何らかの理由によって私はこの10年間、誓いを破ってしまったが、まだ取り返せる。
彼女らとの誓いを胸に私、モンスーンは夜の街を歩くのだった。
殆どのプレイヤーに『所見殺し』と言われた奴が大変な状態で登場しました。
終盤がちょっと視点がよく変わったのはすいません。どうしたらいいか途中から分からなくなっちゃって……
無理矢理感満載ですが、続きも見て頂けると嬉しいです。