デスペラードM ✕ G 終焉へ導く5人の風   作:BroBro

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短時間の昼飯時間で投稿しました。今回は少し長いです。


熱風と季節風

 

 

一誠が悪魔となり、本格的に悪魔の活動を開始してから既に数日が経過した。

 

そして今、このオカルト研究部部室は重い雰囲気に包まれていた。

 

 

「2度と教会に近づいては駄目よ」

 

 

オカルト研究部の部室にリアスの声が響く。

 

そのリアス言葉に「はい…」と低く、不満そうに返事をする一誠。

 

事の発端は一誠の行動にある。悪魔と教会の連中は決して相容れぬ存在であるにも関わらず、一誠はその教会シスターであろう娘と接触し、更に教会までその娘を送ったと言う。

 

一歩間違えれば袋叩きにあっていただろう。それほどまでに危険な事をしたのだ。怒られるのは当然だろう。

 

教会は堕天使と結託し光を駆使して悪魔を倒そうと目論み、悪魔は教会に近づかない。膠着状態と言う奴だ。

 

そんな中で一誠と言う悪魔が討ち入りと言わんばかりに堂々と堕天使と教会の悪魔祓いと言う連中が犇めく教会に行ったとしよう。

 

ソイツらは自分達の拠点を悪魔が潰しに来たと思い込む。その思い込みは組織全体に影響を及ぼす。

 

結果的に堕天使悪魔祓い連合軍と悪魔の合戦の始まりだ。

 

だからこの手の話はしっかりと注意しなくてはならない。だからリアスは一誠に厳し目の言葉を含みながら注意を促す。

 

 

「……つまらんな…」

 

 

悪魔と教会について一誠に説明しているリアスを前に、俺ことサムエルは誰にも聞こえないように一言呟く。

 

正直つまらない。俺の横にいる業務員(笑)のおっさん何か自分の腕を硬化させたり戻したりしている。

 

俺たちは悪魔ではない。だからこの手の話は本当につまらない。

 

俺達には光何てのは全くと言っていいほど効かないし、もしもの時以外はコイツらの戦いに首を突っ込むき気もない。

 

ドカッと足を机に投げ出し、腕を頭の後ろで組む。この格好が最近妙に落ち着く。色々な事を考える時にはこの格好が一番だ。

 

 

「とにかく、今後は気をつけてちょうだい」

 

 

ん、どうやら説教は終わったようだ。いやー長かった長かった。

 

すると、説教タイム終了のお知らせを見計らうかのように朱乃がリアスの背後に立つ。

 

 

「あらあら、お説教は終わりました?」

 

「朱乃、どうしたの?」

 

 

リアスの問に、朱乃は少し顔を曇らせた。

 

 

「討伐の依頼が大公から届きました」

 

「「討伐?」」

 

 

俺と業務員(笑)のおっさんは朱乃の『討伐』と言う単語に強く反応した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔と言う者達がいる。

 

はぐれ悪魔とは、破壊や殺戮に快楽を覚えた者の事だ。

 

主の元を離れた悪魔は、自分が求めた快楽に従って行動する。その者は人間界で生き、人間を殺す事を生きがいとしながらのうのうと生活していると言う。

 

つまり言えば野良犬の厄介なバージョン、野良虎って所か。

 

その者の討伐を悪魔界の大公と言う者達から依頼された。

 

 

「だからって貴方達もついてくる必要はなかったのよ?」

 

「暇なんだ。それにそろそろ生活に刺激が欲しい」

 

 

俺がそんないい話を聞き逃す訳が無く、俺とおっさんはリアス達についてきた。

 

 

「あの、大丈夫なんですか?」

 

 

未だに俺達のことを一般教師か、少し色々知っている先生と見ている一誠は、俺達の事を心配している様だ。

 

 

「俺はスポーツマンだ。そこらにいる連中とは鍛え方が違う!」

 

 

アームストロングが返す。絶対納得しないぞそんな理由…。

 

 

「へぇ、なるほど、スポーツマンなら大丈夫ですね……って大丈夫な訳あるか!」

 

 

案の定納得する訳がなく、一誠の鋭いノリツッコミが炸裂する。

 

だが一誠、安心しろ。そのおっさんは大丈夫だ。

 

ここで、俺は異変を感じた。背まで伸びた高さの草花草原の中、俺達が歩いている方向に大きな建物が姿を現す。

 

俺にはオーグメントモードが無い為、暗闇では俺の目は少しばかり弱くなるが、それでもくっきりと分かる程の殺気がその建物から出ていた。

 

 

「……血の臭い」

 

 

子猫が呟く。ここから建物まではまだ距離がある。それでも臭いを感じたと言うのだからどうやら子猫は相当鼻が利く様だ。

 

隣で一誠がガタガタと震えている。おい、さっきのツッコミの勢いはどこに飛んでったんだ?

 

 

「確かに感じるな。怒気と狂気の臭いだ」

 

 

アームストロングのおっさんがなにやら中二病的な発言をする。俺が恥ずかしくなるから止めてくれないか?

 

 

「アンタも何か感じるか?」

 

「ああ、血の臭いではないが、明確な殺意をこちらに向けている。こんな殺気を出せる奴もなかなかいないだろうな」

 

 

ニヤニヤと笑いながら葉巻を吸う。肺炎になってそのまま死ねば良いものを…。

 

 

「何か言ったか?」

 

「いや、なんでもない」

 

 

どうやら少し声に出てた見たいだ。危なかった…本当に聞こえてたら間違いなく殺されていた。

 

もうこんな業務員(爆)とは話したくないため、俺は一誠を落ち着かそうと話しかけようとする。

 

だが一誠はイーヴィル・ピースについてリアスから説明を受けていた。

 

どうやらどうあっても俺はおっさんから逃れられないらしい。正直死んだ方がマシだ。

 

そんな負の感情に囚われている俺に、アームストロングから話し掛けてくる。

 

 

「おいサム。お前、最近の街の噂を知っているか?」

 

「街の噂?いや、知らんな」

 

「夜中、牧場もない駒王町から牛の鳴き声が聞こえるらしい。そして後に続くように響く地揺れ。その一連の動作が終わった時には、既にその鳴き声も消えていると言う」

 

「牛の鳴き声?おいおい、そりゃまさか…」

 

 

牛の鳴き声を持つ兵器。それは俺のいた世界で、一時期俺の敵となり、最終的に味方になった存在。

 

 

「ああ、恐らくソイツは」

 

 

アームストロングが言葉を切らす。

 

 

「どうやら本丸のお出ましの様だな」

 

 

理由は簡単だ。さっきまで薄かった殺意が、一段と濃くなった。

 

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもするぞ?甘いのかな?苦いのかな?」

 

 

予想に反した女の声、そして場違いな言葉の数々。コイツはケーキ屋でも連れてった方がいいのか?

 

 

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しに来たわ」

 

 

リアスが臆せず声の主に言い渡す。

 

聞こえてくる笑い声。この声は人間のものでは無い。なんで分かるかって?戦士の勘って奴だな。

 

ぬぅっとソイツが姿を現す。暗闇から現れたソイツは上半身裸の女だった。ソイツが宙に浮かんでいる。

 

まあ多分あれが本体では無いだろうな。

 

ズシンッ!

 

そら見ろ、獣見たいな巨体が出てきやがった。先ほど見た女の下半身は毛がフサフサの獣。いかにも悪魔と言う感じの容姿だった。

 

 

極太足の四足歩行、尻尾は蛇、大きい爪。どれをとっても化け物の言葉が綺麗に当てはまる。

 

体長は5mくらいだろうか。いくら上半身が女でもこんなん出てきたら誰もが冷めるだろう。現に究極の女好きの一誠さえ後ずさりしている。

 

当然だがな。

 

 

「主の元を逃げ、自分の欲求の為だけに暴れ回るのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「小賢しいぃぃぃぃぃ!小娘如きがぁぁぁぁぁ!!その紅の髪のように、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

闇夜に響く断末魔。もっと小声で話せんのかコイツは。

 

そんな五月蝿い獣女の咆哮に、リアスは鼻で笑う。

 

 

「雑魚ほど洒落たセリフを吐くものね。祐斗!」

 

「はい!」

 

 

リアスの命令を聞いた木場が飛び出す。

 

速いな。普通の奴では反応すら出来ないスピードだろう。このスピードは木場が持つ『騎士』の駒の影響だ。

 

木場は即座に化け物の足元に移動する。そして西洋の剣を取り出し、一光させる。

 

 

「ぎゃあァぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」

 

 

化け物の更なる断末魔。木場が斬ったのは化け物の両腕。その両腕が奴の持っていた槍とともに落下する。

 

今だ悲鳴を上げ続ける化け物の足元に今度は子猫が立つ。

 

 

「小虫めええぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

もううるせぇ!分かったから一々大声を上げるな鬱陶しい!

 

ズドンと言う音を立て、子猫が化け物に踏み潰される。それくらいで死ぬとは思えんがな。

 

ぐぐぐぐ……

 

子猫を踏み潰した化け物の足が少しづつ地面から離れる。子猫が化け物の足を持ち上げている様だ。これも子猫の駒『戦車』の特徴だろう。

 

 

「……吹っ飛べ」

 

 

子猫の呟きと共に化け物が上空に吹き飛ばされる。

 

その光景に、隣のおっさんが「ほう」と感心した様な声を上げる。

 

 

「……私が勝つ」

 

 

子猫がジャンプし、化け物の腹に鉄拳を放つ。一瞬どこかで聞いた様な言葉が聞こえたが恐らく気のせいだろう。

 

その力は怪力と呼ぶに相応しいが、隣のおっさんに比べたら可愛いものだろう。恐らく雷電にも劣るな。

 

 

「ぐぅぅぅぅ…」

 

 

地に膝をつけ倒れ込む化け物。ソイツの目の前に朱乃が立つ。

 

 

「あらあら、まだ元気みたいですね。それなら、これはどうでしょうか?」

 

 

朱乃が化け物に手をかざす。

 

すると、闇夜の空から光り輝く雷が化け物に落ちた。

 

 

「ガガガッガガガガガッガガッッ!!」

 

 

バチバチと化け物が痙攣する。その光景を朱乃はいつも以上ににこやかな笑顔を作る。恐らく心の底から楽しんでいる。

 

コイツはあまり怒らせない方がいいな…。

 

朱乃が3撃目の雷撃を化け物に食らわせる。まだ続く雷撃。流石に俺も見ていて可哀想に思えて来た。

 

その数分間に渡って続いた雷撃に、化け物は完全に戦意を失った。可哀想に…。

 

それを見計らい、リアスが化け物の所に近づく。そして化け物に手をかざした。

 

 

「最後に言い残す事は?」

 

「…殺せ」

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

 

リアスが化け物に言い放つ。そして、かざした手から黒い何かを生み出し、それが化け物を飲み込んで行く。

 

そして、その黒い物が無くなった時、化け物の姿もそこにはなかった。

 

 

「終わりね。みんなご苦労さま」

 

 

リアスがこの場の全員に向けて告げる。その声によって、この場の空気が柔らかくなる。

 

そして、リアスが俺達に顔を向けた。

 

 

「私達の戦いはどうだった?」

 

「いいセンスだ。これじゃあ当分の間俺達は暇だな。なあ、アームストロングさんよ」

 

「そうでもないぞ?」

 

「どういう事?」

 

 

リアスの問に、アームストロングは吸い終えた葉巻を捨てる。

 

 

「戦いはこれからだと言う事だ」

 

「何を言って」

 

 

 

モォォォォオ……

 

 

リアスの声を遮る様に聞こえた何かの鳴き声。牛の様な、それでもどこか機械的な鳴き声を俺とおっさんは知っている。

 

瞬間、建物の壁が吹き飛んだ。そしてその壁の穴からリアスに向かって突進してくる何か。

 

 

「部長危ない!」

 

 

その何かへの反応が遅れてしまったリアスを、一誠がリアスに抱きつきながら突進を回避させた。

 

反対側の壁に激突する何か。

 

 

「よお、久しぶりだな。月光…」

 

 

ソイツの名は『月光』。又の名を『アーヴィング』と言い、よく俺に攻撃してきていた無人機だ。

 

俺の世界では戦車よりも実働数が多く、月光は世界中で重宝されている。そのため、毎年100を超える行方不明機が出たりしている。

 

この1機も恐らくその中の一体だろう。

 

月光の突撃を回避したリアスが驚愕に目を見開く。

 

 

「なんなのよこれ!?」

 

「コイツは未来の兵器だ。まさかコイツまでこっちに来ているとは思わなかったが、アームストロング、何時から気づいていた?」

 

「この廃屋に入ってからだ。入口に緑色の液体が水溜りを形成していた。あの液体は奴らがマーキングに使う物だ。と言う事はこの場に月光がいてもおかしく無い、そう思っただけだ」

 

「せめて最初に言って欲しかったものだがなぁ」

 

 

モォォォォオオオ!!

 

奴は俺達全員敵勢力と見なした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殲滅目標を確認した月光は内蔵式のブローニングM2重機関銃を木場達に向けて放つ。

 

ブローニングM2重機関銃、通称『スリーメン・ウェポン』は機関銃でありながら大口径の狙撃銃として扱える様に威力が調整されている。

 

つまりは、スナイパーライフルの威力の弾を連続して発射するのだ。鉛の弾なら人間なんて簡単に消し飛ぶ威力を誇る。

 

だが、そこから放たれたのは鉛の弾では無く、光で形成された光弾だった。

 

 

「なっ!?」

 

「みんな避けなさい!」

 

 

ブローニングから撃ち出された光弾がリアス達を襲う。2300mまで届く威力を誇るブローニングから撃ち出された光弾はリアス達を掠めていく。

 

それぞれが壁の裏に張り付き、攻撃を凌ぐ。

 

そして止む月光の銃撃。

 

それを見計らい、木場と子猫が接近戦を仕掛ける。あの体格上、接近戦では有利だと考えたんだろう。

 

だが、その考えは甘かった。

 

カーボンナノチューム筋繊維による高出力の燃料電池一体型人工筋肉によって柔軟な動きが出来る月光の足は、ちょこまかと動く木場達に回し蹴りを食らわせた。

 

まさか機械が回し蹴りをしてくるとは思いもよらなかった木場は、その蹴りに当たり壁まで吹き飛ばされる。

 

だが、なんとかその攻撃に反応した子猫は飛び上がる事によって攻撃を回避した。

 

 

「……これで…!」

 

 

子猫が力を溜め、月光に渾身の重い打撃を食らわす。

 

バキッと言う機械ならざる音を立てる月光。手応えはあった。

 

 

「モオオオオォォォオオ!」

 

 

だが、RPG-7さえも凌ぐその装甲は子猫の拳を通さなかった。

 

ドガンッ!と蹴り上げられる子猫。子猫も木場と同じく、壁と一体化する形に終わってしまった。

 

 

「子猫!祐斗!クッ、よくもっ!!」

 

 

怒りを露にしたリアスは右手に魔力を溜める。恐らくあの攻撃が当たったらRPG-7さえも耐えうる装甲でもただでは済まないだろう。

 

 

「モオオオオォォォ!」

 

 

だが、リアスが攻撃するよりも先に月光の背部にマウントされていた対戦車ミサイルがリアスに向けて放たれた。

 

 

「チッ!!」

 

 

間一髪でリアスは攻撃を躱す。

 

対戦車ミサイルから放たれた大型の光弾は、反対側の壁に激突する。

 

すると、光弾は爆発ではなく、閃光弾の様に光を発した。

 

 

「熱っ!!」

 

 

光弾による閃光は悪魔のリアス達を焼くには十分な効果を発揮した。

 

隠れ損ねた一誠達は軽いヤケドを負う。直撃したら恐らく一瞬で消滅する程の光。それはリアス達を戦慄させた。

 

 

「なら、これでどうですか?」

 

 

朱乃が月光に雷を落とす。雷は直撃し、眩いばかりの光があたりを照らす。

 

そして遂に、月光が倒れた。

 

勝った。この時、誰もがそう思っただろう。

 

 

「ンモオォォォオ!」

 

 

だが自己修復ユニットを搭載した月光は、雷撃何てものは簡単に治せる代物であった。

 

再び大きな雄叫びの様なものを上げる月光。

 

体制を整え、対悪魔ミサイルをリロードする。

 

 

 

手も足も出ない。近づけば蹴られる。だが近づく前にガトリングに撃たれる。離れればあのミサイル。

 

 

逃げることも、有効な手段も見つからない。

 

 

 

今のリアス達には、月光への対抗策が見つからなかった。

 

 

 

そう、『リアス達』には……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無視は困るな」

 

 

 

ズルッ……ズシーン…

 

いきなり月光の足が斬れ、月光は2つに分断された。そして、独立した2本の足が倒れる事で、月光を斬った人物が姿を表した。

 

 

「さ、サム…」

 

 

そこには、サムがいつもの様に馬鹿にした様な笑でリアス達の方を見ていた。右手には刀身が紅く輝いているサムの相棒の日本刀、高周波ムラサマブレードを持っている。

 

 

「おいおい、相手の事を見極める事も重要だと思うぜ?こんな簡単にやられちゃっていいものかねぇ?」

 

 

両手を広げ、小さく分からないと言う様なポーズを取る。そのいつも通りの姿に、この場にいる皆に妙な安心感が生まれる。

 

 

「「「モオオオオォォォォォォオォォォ!」」」

 

 

安心したのもつかの間、今度は上空から月光が3体降って来た。

 

その様子を呆れながら見るサム。

 

 

「あぁあぁ…またゾロゾロと落っこちて来たな」

 

「「「モオオオオォォォ!」」」

 

「なんでここまで大量にいるのかは知らんが、ここで駆除させてもらうぞ」

 

 

サムがムラサマを構える。

 

 

「おい浪人、ここは一旦引いてもらおうか」

 

 

だが、完全な臨戦態勢に入ったサムを止める者がいた。

 

そう、スティーブン・アームストロングその人だ。

 

アームストロングはサムを押しのけ、1人で3体の月光の前に立つ。

 

 

「さあ、来るがいい!」

 

 

アームストロングの挑発。その挑発に乗るように、月光がアームストロングに突進してくる。

 

 

「ふうぅぅぅ……」

 

 

だが、アームストロングは構えるどころか、相撲の四股を踏んでいる。

 

未だに迫る月光。

 

 

「アストロ先生逃げてぇええぇぇぇ!!」

 

 

一誠の声が響く。

 

だがアームストロングは逃げない。

 

そして、アームストロングの周りに小さいながらも風が吹き始める。

 

瞬間、アームストロングの目が見開いた。

 

 

「ハァァァァァァァァァ!!」

 

 

月光が直撃する直前、アームストロングが叫ぶ。

 

アームストロングが右手を大きく振り回した。ただそれだけのはず……なのに月光は吹き飛び、体を凹ませた。

 

 

「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

驚きの声を上げる一誠。このおっさんを最初に見た者は誰でもこう言う反応をするだろう。

 

 

「軟弱者め!」

 

 

吹き飛んだ月光にアームストロングが罵声を浴びせる。

 

こうして、リアス達が苦戦した敵を、ものの2分で殲滅した。

 

 

「す、凄い……」

 

 

誰かからそんな声が聞こえる。子猫の一撃でも身じろぎせず、さらに朱乃の雷撃でも修復した月光が、1つの剣と2人の男によって一瞬で倒された。

 

その中の1人のアームストロングは、吹っ飛んだ月光を後目に周囲を見渡す。

 

 

「さて、本丸を探すか」

 

 

アームストロングが一言呟く。

 

 

「まだ何か来るの?」

 

「月光と言うのは創作者の命令しか聞かん。つまり、創作者が何らかの目的でここに月光を配備した」

 

「何でそんな事を?」

 

「月光がマーキングをする理由は大きく分けて2つある。1つか敵への抑止力として月光の存在を知らしめるため。2つ目は簡易的に守備すべきエリアを作るため。この世界は月光の抑止力の対象は恐らく存在しない。つまり、ここに奴らが守備していた何らかの物があると言うことだ」

 

 

守備すべき物。それがどんな物かはアームストロングも分かってないが、光の攻撃をしてきたと言う事は堕天使か悪魔祓いに関係があるだろう。

 

それをいち早く感じ取ったリアス達は周囲を警戒する。

 

その時だった。

 

 

 

 

 

『ロー………レ………力……!!』

 

 

 

『たの…………ぁ………ーン……』

 

 

 

 

壁の向こうから聞こえた2つの声。それに続く様に聞こえてくる爆音。そして低い悲鳴の様な声。

 

 

「おいおい、今の声は……」

 

 

その声は、サムにはとても聞き覚えのある声だった。

 

 

「待ちなさい子猫!」

 

 

リアスの声が響く。見ると、子猫が猛スピードで声の聞こえた方向へと走っていた。

 

追いかけるリアスとその眷属達。

 

 

「なんだ?どういう事なんだ?」

 

「面白そうじゃないか。追うぞ、サム!」

 

「言われなんでも追うさ」

 

 

サムとアームストロングも、恐ろしいスピードで走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いない。

 

確実にあの人だ。

 

あの声が聞こえた瞬間、私、塔城子猫は廊下を走っていた。

 

10年も聞かなかったあの声。お姉様と一緒に私を助けてくれた人。

 

記憶が無くて、自分に正直で、なかなか自分の事を伝えられない。

 

でも、いつも私達の事を考えてくれていた優しい人。

 

その人が今戦っている。

 

 

「私が勝つ!」

 

 

少しづつしっかりと聞こえてくる声。その声は少し弱々しい。

 

次いで聞こえてくる爆発音。そして何かが切れる音。

 

 

想像したくない光景が私の頭の中をよぎる。

 

 

早く行かなきゃ…!私に戦い方と希望をくれたあの人の所に……!

 

 

妙に長く感じた廊下を抜けた。抜けた先は体育館の様に大きな所。

 

五感を全ての駆使してあの人を探す。いつの間にか消えている爆音と声。

 

不安が募る。

 

そして、部屋の奥を見た時だった。

 

 

『グッ……ゴァ……!』

 

「無駄だ。その能力の使い方を忘れたお前なぞでは、俺を倒すことは出来ない」

 

 

聞こえてくる2人の男の人の声。あの人の声は既に声という物になっていなくて、とても苦しそうな機械的な音を上げていた。

 

闇に私の慣れた視界が、ようやく真価を発揮する。

 

 

「モンスーンさん!!」

 

 

それによって見えたものは

 

至るところから白い血を出しているモンスーンさんと

 

そのモンスーンさんの首に大きい鋏の様な刃を突き立てる男の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モンスーンさん!」

 

 

廊下の奥の部屋から聞こえた子猫の声。それと同時に聞こえてきた床を割る様な音。

 

その声が余計にリアス達の不安を掻き立てたのか、走るスピードが少しあがる。

 

それに合わせてサムである俺とアームストロングのおっさんもスピードを上げる。

 

その音の数秒後、ようやく俺達もその部屋にたどり着く。

 

そこで見えたものは、地に伏したモンスーンと、男に首を掴まれた子猫の姿だった。

 

子猫はピクリとも動かない。だがまだ息をしている所から、気絶しているだけだと確信できた。

 

 

「子猫ッ!!」

 

 

リアスが声を上げる。一誠は驚きに目を見開き、木場と朱乃は臨戦態勢に入る。

 

子猫を掴んでいた者はこちらに気付く、子猫を放り出し腹の立つニヤケ面でこちらに振り返る。

 

 

「ほう、お前がリアスか……ほう、お前達もいるのか、サム、元クライアント…」

 

 

そいつは俺達にとてもゆかりのある奴だった。

 

 

「久しぶりだな、『サンダウナー』」

 

 

その者、サンダウナーは持っていた『人斬り鋏(ブラッドラスト)』をマチェーテ型に分解し、腰の鞘に収める。

 

 

「お前は堕天使側か。何故だ?そっちはお前に利益をもたらすのか?」

 

「環境だよ、サム。お前は悪魔の近くに召喚され、俺はグレゴリの本部に召喚された。俺はそこの奴らと約束を交わし、お前は悪魔と約束を交わした。それだけの事だぞ?」

 

「なるほどねぇ、お前にはもう譲れない物があると?」

 

「そうだ。俺はグレゴリの幹部ととある契約を結んだ。だから俺はそれを果たさなくてはならない」

 

 

俺達が悪魔側にいるからと言って他の奴らが悪魔に着くとは限らない。

 

最初に出てきた場所。それが問題なのだ。

 

だが、少し気になることが出てくる。

 

 

「なあ、お前はさっきから俺達が『召喚された』と言っているが、俺達がここにいる理由をお前は知っているのか?」

 

 

俺の言葉にサンダウナーはさっきよりも腹の立つ笑みを作る。

 

 

「確かに俺は知っている。だが、今はそれを言うタイミングではなくてな」

 

「タイミングだぁ?」

 

 

意味深な事を言うサンダウナー。こいつは一体何を言ってやがる?

 

 

「おいハゲ野郎!子猫ちゃんを返せ!」

 

 

そこに一誠がサンダウナーに向かって叫ぶ。右手には奴の本当の力、『セイクリッド・ギア』と呼ばれる篭手型の物を装備している。

 

リアス達は全員やる気。当のリアスに至っては殺気が凄まじい。変に刺激しない方が得策だろう。

 

 

「流石にこの手勢は不利だな。だが、目標は破壊した。リアスとその眷属達、そしてサムと元クライアント。俺はここで撤退させてもらう!」

 

 

バッと屋根を突き破り、サンダウナーは天へと飛び上がる。

 

逃がすまいとサンダウナーの元へ走るリアス達。追う俺達。

 

奴が開けた穴から屋根の上へと飛び、サンダウナーの姿を追う。

 

だが、サンダウナーは既に闇の中へと消え、姿は気配と共に完全に消えていた。

 

後に残ったのは、ボロボロの子猫と、ホワイトブラッドをで全身を白く染めているモンスーンだけだった。

 

 




サンダウナーさんが堕天使側として降臨されました。
悪い者側になってしまったのは悪いと思います。でもあの人が一時的にでも敵として出なきゃ無人機が敵として現れないんですもん!

次回はモンスーンの過去編です。でもMGRより前の話はしないのでそこは抑えておいて下さい。
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