モンスターハンター 【紅い双剣】   作:海藤 北

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 フルフル戦、最終話です。


第十三話 雪山に潜む影③

「よっと!」

 リンはフルフルの横殴りの尻尾を避けると、ゴーレムブレイド改をフルフル目掛けて抜刀する。刃が皮を裂き肉を断ち傷口から鮮血が飛び散る。フルフルが苦しそうにひるんだところに更に横薙ぎの攻撃を加える。

 リンが一方的に攻撃しているところでフルフルが突如体勢を低くする。

 リンは前転(ローリング)でフルフルから離れる。その直後、フルフルは全身から青白い電撃を放った。

 そしてその体勢のままの、遠距離からすれば無防備なフルフルにフローラがLV2拡散弾を撃つ。

 地に伏せたような体勢のため連鎖的に起きる爆発のほとんどがフルフルの身体に当たる。

「ゴゥァァッ!」

 爆発の一つがフルフルの頭直下で起き、衝撃でフルフルの頭が跳ね上げられた。

 そしてそこにカイトがもぐりこみ、頭の下からランポスクロウズでアッパーカットのような連続攻撃を叩き込む。

 上半身が完全に上向きになり、全体重が掛かった足にリンの大剣の薙ぎ払いがはいる。身体のバランスを完全に崩されたフルフルはその場にもつれるように転んだ。危うく下敷きになりそうになったカイトは、その巨体から転がるように逃れた。

 フルフルは足をじたばたさせて起き上がろうとするが、もともとアンバランスな身体のつくりをしているのでなかなか起き上がれない。そこへリンの溜め三段階攻撃を、カイトが鬼人斬りを繰り出す。

 攻撃しながらカイトがリンに話しかける。

「転んだタイミングに仕掛けるってのもありだったかもなっ!」

「いまさら言っても遅いってば!今は誘導に専念しよっ!」

 カイトの方を一瞬だけ見てリンが返答する。二人は会話しながらも攻撃の手を休めない。

 やっとのところでフルフルが立ち上がるとフルフルから離れる。フローラが拡散弾を撃つためだ。しかし、フローラが撃ったのは拡散弾ではなく貫通弾だった。

「どうしたフローラ!」

「さっき撃ったのが最後の拡散弾だったみたいです!ギアノスを迎撃する時に無駄に撃ってしまいましたし、そもそも長距離移動の狩りなので装備は軽量化していたんですよ!」

 当然貫通弾だけではひるまなかったフルフルがカイトに向かって飛び掛る。

 カイトはそれを横に避けると一旦武器をしまって距離をとる。

(フローラの拡散弾がないとするとやっぱり──)

 カイトカイトはチラッと後ろを見る。そこには先程仕掛けた二つの大タル爆弾があった。

(何とかしてあそこまで誘導しないとな……)

 カイトがフルフルの注意を引くように正面に立ったその時、フルフルが体勢を低くした。

「放電攻撃か!」

 カイトが真後ろに下がる。

 しかしフルフルの狩りに慣れているフローラが『それ』に気が付く。

「カイトさん違います!“後ろに避けてはいけません”っ!」

 「は……?」と言いかけたところでカイトも気が付く。フルフルは全身から青白い電撃を放つのではなく口元にのみ、白い電気を帯びている。

「──電気ブレスです!」

 フローラが叫ぶと同時にフルフルの口から地面を這うように『三方向に』電気の球体が放たれる。

「っな!?お、おおおおっ!?」

 カイトは身体を無理矢理ひねってブレスの射線の間に倒れこむ。そしてカイトは思い出す。彼の後ろには大タル爆弾があったのだ。

 うつぶせに倒れていたカイトがガバッと顔を上げる。カイトが避けた電気ブレスは──大タル爆弾の横スレスレを通過した。

「あ、危ねえ~!」

 カイトは立ち上がると、フルフルと大タル爆弾のラインから避ける。

(“タル爆弾の方を向かないようにタル爆弾の方へ誘導しなければならない”ってか……)

「こっちこっち!」

 リンがフルフルの頭に攻撃しては後退、攻撃しては後退を繰り返しながらフルフルを誘導している。フルフルはリンを追いかけながら徐々にタル爆弾へと近付いていた。

 この調子ならいける、そう思ったときだった。

「ピギィィアァァ!」

 フルフルが咆哮(バインドボイス)をあげた。

「うっ……!」

「つあ……!?」

「耳がっ……!」

 突如の爆音に三人は耳を塞ぎ身動きが取れなくなってしまう。更に悪いことにそれはただの咆哮ではなかった。

「怒り……状態!」

 フルフルの口からは白い息が漏れており、体中の血管が浮かび上がっている。

 フルフルは全身に電撃を纏うと──無防備なフローラに飛び掛った。

「「フローラ!」」

 カイトとリンが叫ぶ。しかし二人とも咆哮の影響で肝心の身体が動かない。

 飛び掛るフルフルに対してフローラは何とか身体を動かし、地に伏せて避けようとする。

しかしフルフルの身体の一部がフローラの背中に当たり、電撃のはじける音と共にフローラは吹き飛ばされる。

「くそっ!リンはフローラの方へ行ってくれ!フルフルは俺がひきつける!」

「うん、わかった!」

 カイトとリンは二手に分かれて走り出す。カイトはそのままの勢いでフルフルに斬り込む。何度も攻撃を受けてダメージが蓄積しているであろう足を中心に斬り付ける。

「うおおぉっ!」

 これで決着をつけんとカイトカイトは鬼人化する。完全に対象を足に絞って斬り付けていく。溢れ出る紅い血がフルフルの白い皮を染め上げていく。

 カイトの乱舞に悲鳴を上げたフルフルが最後の足掻きと言わんばかりに放電攻撃のモーションに入る。しかし乱舞を続けるカイトの手は止まらない。

「うおらぁっ!」

 渾身の力を込めて双剣を振るう。そして放電体勢に入っていたフルフルが転倒する。

 しかしカイトは転倒したフルフルに攻撃することなく、ランポスクロウズを納刀してフルフルから離れる。そしてタル爆弾の前に立ってフルフルを睨む。

「……」

 両者の間に沈黙が流れる。そして最初に動いたのは──フルフルだ。

 フルフルは全身に電気を帯びてカイトへと飛び掛る。カイトはそれを横に避けることはせず、逆に前へと突っ込んだ。

 カイトとフルフルの身体が交差する刹那、カイトは前転をしてその下をくぐる。そしてフルフルの着地先には大タル爆弾があった。

 フルフルの電気で引火したタル爆弾が爆音と共にフルフルの身体を業火で包む。そしてその爆風はカイトのいる所まで達する。

(避けられねえ……!)

 カイトが頭だけでも守ろうと頭を抱え込む。

 しかし、いつまで経ってもカイトに炎が届くことはなかった。

 恐る恐る後ろを振り返ると、そこには大剣をガード姿勢で構えているリンと、動かなくなったフルフルが見えた。

「ふぅ……、危なかったね~」

 リンがゴーレムブレイド改を地面に突き刺してもたれかかる。その横にカイトも座り込む。

「結局最後も助けられちまったな」

「あはは……、ギリギリだったけどね」

 笑いあう二人のところにフローラが歩いてくる。

「最後は見事でしたね」

「フローラ、体の方は大丈夫なのか?」

「私のフルフルシリーズは対雷属性に優れていますので、重症は避けられたみたいです。まだ若干背中が痛いですけれど」

 そう言いながらフローラも二人の近くに座り込む。

「逆にリンちゃんのザザミシリーズは雷属性への耐性が著しく低いので心配していましたが、大丈夫だったみたいですね」

「あはは、なんとかね」

 そういえば今回の狩りでリンだけはほぼ無傷だ。やはりハンターとしての天性の才能なのだろうか。

「おっとそうだ、とっとと剥ぎ取って村に向かわなくちゃな」

「そうだね、急がなくちゃ」

 カイト達はいち早く村に戻ってラインハルトの安否の確認と、場合によっては救助隊の編成をしなければならない。一瞬今から自分達で捜索をすることも考えたが、吹雪はだんだんと酷くなっており、更にホットドリンクも残りが少ない。

 カイト達はは立ち上がるとフルフル亡骸の元へ寄って行き、ナイフで剥ぎ取りを開始する。

「そういえばフローラ、村でラインハルトとフルフル防具のこと言われて嫌がっていたけど何でだ?」

 カイトが何気なく質問しただけだったのだが、リンとフローラは固まってしまう。

「な、何でって……、ほら、あれでしょ?」

「み、見れば解るでしょう!」

 フローラがフルフルを指差す。カイトはフルフルを見るが「?」と全く解ったようではない。

「……見れば解るって、何が?」

「だ、だから……。って、私に何言わせようとしてるんですか!やっぱり男なんて最低です!」

 突然怒られて訳のわからない様子のカイトにフローラがリンに負けずとも劣らずの強烈な平手打ちの喰らわせる。

「ぶほっ!?」

 倒れこむカイトにリンが冷たい視線を送る。

「カイト、サイテーだね……」

「だから何だっていうんだよ!?」

 カイトは起き上がって叫ぶが二人は無視する。

「ホント何なんだよ……。はあ、剥ぎ取り終わったし行くぞ……」

 そう言って立ち上がったその時、

「っ!?」

 気配を感じて振り返る。そこには──

 

「──ティ、ティガレックス……!」

 

「「……!」」

 その言葉に反応したリンとフローラも振り返る。

 そのティガレックスは全身が傷だらけでおまけに尻尾もなかった。左目には大分古い切り傷があり視力は奪われているようだ。

 その口元は血のようなもので染まり真っ赤になっている。しかし、ティガレックスの身体には古傷ばかりで真新しい傷は見当たらない。つまりそれは轟竜自身の血ではないという事だ。

 『何か』を捕食した後で満腹なのだろうか。轟竜はカイト達に目もくれずその場を去っていく。

「は、はぁ~。助かった……」

「今襲われたら無事ではいられなかったでしょうね……」

「これは急いで下山した方が良さそうだね、カイト」

 リンがカイトの方を見る。しかし彼は全く反応しないでボーっとしている。

「……カイト?」

 

(……あのティガレックス、『あの時』俺を襲った……!)

 頭の中で何かが引っかかる。

(……俺は、その前に……。クソッ、思い出せねえ!)

 あと少しで思い出せそうな気がする。もっと前のことが。自分の事が。

 

 一時の幸せな日常が揺らぎ始めていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

──ポッケ村のとある一室で──

「……」 

 カイトに部屋を貸した男ブルックは、小さなペンダントを部屋の奥の戸棚にしまうと鍵をかけてた。

「……コルト、俺は……」

 そのブルックに後ろから声がかかる。

「ブルック、あんたは何を知っているんだ」

 フェイブルが振り返ると、部屋の入り口には、ガウが立っていた。

「ガウ、お前も“気が付いていたのか”」

「気絶したあいつを運んだ時にな……。だがあんたは、まだ何か知っているんだろう?」

「……ああ、そうだな」

「さっきのペンダントは……。まあ、大体解った気がするな」

 ガウはそう呟くと部屋を出て行った。

「なあ、コルト……。こんな時俺はどうすればいい……?」

 その問いに答える者は、もういない。




 さて、無事フルフルも討伐できたわけですが、ここからどうなるんでしょうかね。ラインハルトは無事なんでしょうかね。よく知らないですが頑張ってほしいです。

 ちなみに忘れた人もいると思うので注釈を。
 最後に出てきたブルックは、カイトに部屋を貸してくれたおっさんですね。2ndのポッケ村で自室を出て少し下にいるあの人です(名前は小説オリジナルですが)。
 ガウは村の教官の息子の、赤髪のキャラクターです。イャンクック戦に一緒に出撃しましたね。強いです。
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