モンスターハンター 【紅い双剣】   作:海藤 北

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どうもどうも、大体これぐらいのペースでの投稿を“目標に”頑張っていきたいと思います。とはいっても、まだ改訂前とほとんど内容が同じなので、割とハイペースでいけるとは思うのですが……。


第二話 双剣

「それで、具体的には何をやっていけばいい思う?」

 

 カイトはリンと二人、集会所の長椅子に座っていた。早朝ということもあり集会所には二人と受付嬢ぐらいしかいない。

 ハンターになるとは言ったものの、何をどうしていけばいいのかサッパリわからなく、結局何もせずに数日が過ぎてしまった。その数日で村の暮らしにもだいぶ慣れてきたので、いい加減動き始めねばとリンに相談を持ちかけたのだ。

 

「カイトは全くハンターの経験がないんだよね?」

「いや、確証があるわけじゃないんだが、持ち物にはそういった類のものがなかったってブルックさんが言ってたからさ」

 

 リンとは歳も近いので、村長たちと話すときとは違って言葉遣いに一々気を使わなくていいので楽だ。

 

「シビレ罠の調合も下手糞だったもんね~」

 

 実は先程、罠の調合をすることになったのだが、経験があるかもわからないのでリンに手伝ってもらうことになった。「罠の調合も出来ないんだから、きっとカイトはハンターではなかったんだろうね」と笑われたが、調合ミスの原因はほとんどリンの方であり、カイトはそれなりに上手くいっていた。リンは調合のような細かい作業は苦手らしい。

 

「うーん、ウチもまだ初心者だから教えるような立場には立てないし、やっぱり教官のおっちゃんに鍛えてもらうのが一番じゃないかな」

 

 リンによると、この村にはハンターのための訓練所があるらしい。

 

(しかし、肝心の教える相手が全然いないのに、訓練所だけがあってどうするんだ)

 

 そんな下らない事を考えていると、リンが「じゃあ、ついておいで」と言って、さっさと集会所を出て行ってしまったので慌ててその後を追った。

 

「ここが訓練所……」

 

 訓練所は集会所からさほど離れておらず、すぐに到着した。

 

「ウチは教官を呼んでくるからここで少し待っててね」

 

 そういうとリンは建物の中に消えていった。

 

(しかし、よくもまあこんな施設を作れたものだ)

 

 眼前にある施設は、木造二階建ての建物だけでとてもハンターの訓練ができる場所には見えない。 そんな考え事をしているところにリンの声がかかった。

 

「ほら、こっちこっち。紹介するね、これが四日前に引っ越してきたカイトだよ」

 

 『これ』とはなんだ。俺だって一応人間だ。そんな文句を押し殺して、リンが連れてきた人物を見た。

 

「……ほぉ、貴様がカイトか」

「ど、どうも……」

 

 現れたのはクロオビSシリーズに身を包んだ四十代ぐらいの体躯の良い男で、眉間に掘られた深いシワ、鼻の下と顎にヒゲを蓄えたその顔は威厳と威圧を感じさせた。

 

「今日から吾輩が貴様の教官だ!ビシビシ扱いてやるから覚悟せい!」

 

 有無を言わさずそのまま襟首を掴まれ、カイトはズルズルと建物の中に引きずられていった。

 

「まず始めに貴様が使う武器の種類を決めないといけないな」

 

 そう言って教官は目の前に様々な種類の武器を並べた。どれにも太陽を模ったクロオビの紋章が刻まれており、どうやら教官の私物であるようだ。

 

「あれ?双剣はないのか?」

「うむ、双剣は癖が強い武器だからな。吾輩は使わないからあまり持っていないのだよ」

「えー、使わないじゃなくて使えないの間違いじゃないのー?」

「ち、ちがうもん!オジサンだって双剣ぐらい使えるもん!あんまり馬鹿にしないでよねっ!」

 

 いい年をして十代であろう女のに可愛い子ぶる中年男を見て、カイトはこの人物がどのような人間なのか大体理解をしたのだった。

 カイトは並べられた武器を全て手に持ってみるが、いまいち手に馴染むものがない。

 

「どんなのでもいいので、双剣を見せてもらえますか。一応手に持ってみたいんですが」

「む……、そうか。わかった、ここで少々待っておれ」

 

 そうして、「さて何処にあったか」と言いながら教官はどこかへ行ってしまった。

 

「……あんなおっちゃんでもね、昔は名の知れた凄腕のハンターだったんだよ」

「昔……?今はもう引退しているのか?」

 

 そこで村長との話を思い出した。きっとあのおっさんが昔この村で専属ハンターをしていた人の内の一人だ。

 

「そうなんだよねー。本当はまだ現役でも十分やっていける歳なんだけれども……」

 

 そういってリンは目を逸らした。いつも元気なリンが珍しく、何か悲しいような目をして黙ってしまった。

 急に場の空気が重くなったので慌ててこの話題を打ち切ろうとした、その矢先のことだった。

 

「貴様ァ!何をした!!」

 

 そんな雄叫びとともにカイトの横っ腹に教官の強烈なドロップキックが入いる。

 

「ぐほっ?!」

 

 カイトはそのまま地面を転がり、訓練所の壁と衝突した。

 

「いってぇ!なにすんっ……」

 

 容赦のない不意打ちに抗議の声をあげようとすると、胸倉を掴まれて持ち上げられた。

 

「貴様!ウチのリンを泣かせたなッ!許せんっ!!」

 

 真っ赤に充血させた目を見開いて睨みつけてくる。リンとこの教官の関係は詳しくは分からないが、おそらく保護者に当たる人物なのだろう。カイトがリンを泣かしてしまったと勘違いをしてすっ飛んできたのだと思われる。

 

「え、え~と、大丈夫だよ?おっちゃん、ウチ別になんにもされてない──」

 

 リンが必死に弁明してくれるが、教官は全く聞く耳を持たない。

 それから十数分経ってようやく、誤解だとわかった教官はその手を緩めた。

 

「……ヌ、ヌハハハハッ。も、もちろん吾輩は貴様がそんなことやあんなことをする様な男では断じてないと信じていたぞ!」

「本当にそう思っていたなら早く開放して欲しかった……」

 

 教官が思いっきり背中をバシバシと叩くものだから、先程蹴られた腹のあたりが非常に痛む。

 

「そうだ、倉庫の奥から双剣を探し出してきたぞ」

 

 そう言うと教官はカイトに剣を手渡した。ボーンシックルと呼ばれるその双剣は、数種類の獣の骨を巧妙に組み合わせて作られたものだ。如何に骨だけで出来てるとはいえ、よほど相手の肉質が固くない限りその肉を切り裂くことなど容易い。

 カイトの手には、不思議と双剣が一番馴染んだ。むしろ昔から使っているような錯覚を覚えた。

 

「……そうだな、とりあえず双剣を使うことにするかな」

 

 そう言ってカイトはボーンシックルを高く掲げた。これ以外は考えられない、そんなふうに思うえるほど双剣という武器は手によく馴染んだ。

 

「む、そうか。しかし困ったな……。生憎吾輩は双剣を使わないからな、貴様の指導係になってやることは出来ん。もちろん狩りの基礎はここで教えてやるが、実戦的な部分は実際に狩りの場に赴いてもらうことになるかもしれん」

 

 「それでも構わないか?」と言われたが、別に構わないと返したところ、「そうか」とだけ返された。それから、狩りの心得や道具の扱い、モンスターの基礎知識などに関する講習が始まった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 今日の講習はそろそろ終わろうとしていたところに村の人が慌てて駆け込んできた。

 

「大変だ!村を出て行った商団が、雪山でギアノスの群れに襲われて引き返してきたみたいだ!幸い死者はいないが、皆重軽傷を負ったそうだ。安全ルートの確保のためにギアノスを討伐して欲しいと村長から依頼が出ている」

「うんわかった。すぐに行くよ!」

 

 リンはいつもと違い非常に真剣な顔をしていた。ハンターへの依頼の達成有無は人の命にも関わってくる大事なことだ。真剣になるのも当然のことだ。

 

「依頼の受諾は村長からしてください。それではよろしく頼みます」

 

 そういってその村人は訓練所を出て行った。

 

「それじゃあ、おっちゃん、行ってくるね!」

 

 そう言って出ていこうとした教官はリンの肩を掴んだ。「何?」とリンが振り向くと。

 

「今回の狩りにはカイトも連れて行くんだ」

 

 え、とカイトとリンが驚く。今の今まで武器なんて手にとったことがない(と思われる)カイトがいきなり実戦に行っても平気なのだろうか。

 

「お、おっちゃん……。そんないきなり実戦なんて……、大丈夫なの?」

「ギアノス程度なら別に問題もないだろう。それにさっきも言ったとおり、結局実戦に関しては我輩の指導はできない。今回はちょうどいい機会だろう」

 

 リンは「まあ、それもそうかなあ……」と納得してカイトのことを呼んだ。リンはギアノス程度ならば何度も一人で狩猟しているというので、カイトもそれならばとついて行くことにした。

 

「それじゃあ準備しようか!」

 

 カイトはリンに半ば強引に手を引かれて訓練所を飛び出した。二人の背後から「今日の講習で使用したアイテムとその双剣は貴様にくれてやろう!」という教官の声が聞こえた。ほとんど文無しのカイトにとってはありがたいことだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「フン、あんな光景も懐かしいな……。なぁブルック?」

「……バルドゥス、俺は……」

 

 ブルックと呼ばれた男は顔に陰りを見せた。ブルックはカイトに部屋を貸し出してくれた人物だが、いつものような陽気な顔はしていない。

 

「そんな顔するな。別にそういう意味で言ったんじゃない。……ただ単純に、昔を思い出しただけだ」

「…………」

「だから、そんな顔するなって言っているだろう」

「しかし……」

 

 今は教官をやっているバルドゥスというこの男は、手甲を外すと煙管を取り出して、苦笑いし煙管を「ふぅ」とふかした。煙はそのまま留まる事はなく風に攫われて消えていった。

 人の心に立ち込めた煙はそんな風に簡単には晴れてはしない。十年の時が経っても消えることが無かったように、これからも決して晴れることは無い。

 

「……もう、起きてしまったことはしょうが無いんだ」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「じゃあちょっと持ち物を揃えてくるからからここで待っててくれ」

「あ、うん、わかった」

 

 カイトが駆け足で自室に戻っていく後ろ姿を見送ってからリンは近くにあった石に腰掛けた。それから思わず笑みがこぼれてしまった。

 

(そういえば、同世代の人と話すのなんて久しぶりだな~。ちょうど同世代の子が少なくて上にも下にも歳がみんな離れているんだよね。そのせいで友達って呼べる人は一人もいないし……)

 

 足をぶらぶらさせ、鼻歌を歌いながらカイトを待った。

 

「あ、でもカイトが初めての友だちになるのかな……」

「そうなのか?」

「わっ!?」

 

 いつの間にか準備を終えたカイトが後ろに立っていた。

 

「お前、友達いないのかよ」

 

 ちょっと意地悪っぽく、ニヤニヤしながら言ったところ、リンは顔を真っ赤にして言った。

 

「なっ!わ、悪いか!ウ、ウチだってね……!」

 

 リンは目尻に涙を浮かべ顔を逸した。少し怒っているようだ。

 まさかここまでの反応をされるとは思わなかったカイトは慌てて言葉を継いだ。

 

「い、いやまあ俺だって友達はいないからなっ、お互い初めての友達ってことだな!うん、そうだよなっ!」 

 

 リンは目元の涙を手で拭いて、カイトを見た。

 

「……ほ、ほんと?ウチら友達……?」

「あ、ああ、友達だよ。だからそんなすぐ怒んなって、な?」

 

 どうすれば良いのかわからないのでとりあえず、頭を撫でながら慰めてやる。すると後ろの方から修羅のごとき形相で迫る影があった。

 

「貴様ァ!何をした!」

 

 怒れる教官が再びカイトに向かって走ってきているのが見えた。

 

「うわやべえっ、早く逃げるぞ!」

「え?あ、わあっ!」

 

 今度はカイトがリンの手を握って走り出した。二人はポポに繋いである荷車に乗り込むと急いで走らせた。

 村を出てしばらくの間も教官は後ろをダッシュで追いかけてきているのだった。

 

「あ、危なかった……」

「なんか怒ってたねー」

「……な、なんでだろうな?……ホント、何で現役じゃないんだよあのオッサン……」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 村を出て数十分。流石に共感の姿が見えなくなったころ、荷車の上でカイトは手綱を握っているリンにこんな質問をした。

 

「そういやさ、リンって今何歳なんだ?」

「ウチ?ウチは今ね~……えっと、十八歳だよ」

「え、なんだって?じゅう……はち?」

「うん、十八」

「い、いやいや!十八には見えないぞ?」

「え、なになに?もっとオトナの女性に見えるって?」

「逆だ!十五、六歳だと思ってたから!」

「な、なにそれ!失礼だよ!」

「え、いや。むしろ歳食ってるように見えるって言ったほうが失礼だと思うんだけど」

「ウチは子供っぽいっていわれるのが嫌いなの!」

「そ、そうか。そりゃあ悪かった」

「ふん、わかればよろしい」

(ふう、女の子の相手ってのは難しいな……)

 

 これから二人で狩りをすることを思うと、少し不安になった。連携など上手く取れるのだろうか。なにせまだ出会って数日の仲だ。

 

「そうだ、ここから狩猟場にはどれぐらいで着くんだ?」

「うーん、何事も無ければ日没前には着くかな?とはいってもベースキャンプから先は徒歩だから、実際に狩りをするのは夜かもしれないけどね」

「なるほどな、思ったよりもかからないんだな」

「そう?」

「いや、だってさ、狩猟場ってことは危険なモンスターが生息しているんだろ?もっと村から離れたところにあるものだと思っていたからさ」

「まあそれが本来ならありがたいんだけどね。あくまでウチらは自然と共生しているんだから、危険とだって隣り合わせなもの。絶対な安全地帯なんて生きていくうえでは存在しないんじゃないかな」

「共生、か」

「そう、共生。ウチらハンターはなにも娯楽やお金目的でやってる仕事じゃないからね。もちろんお金は必要だから大事だけど、それと同じぐらいに自然と人間とのバランスを保つことを目的とした職業なんだよ」

「そのために管理組織、ハンターズギルドがある、か」

「お~、ちゃんと講義内容覚えられたみたいだね」

「あれ位は当然だろ」

「……ウチ、初回から補習くらいまくったんだけどね」

「…………」

 

 その光景が容易に想像できたが、カイトはそのことは口に出さなかった。

 

「え~と、今回の狩猟対象はギアノス、だっけ?」

「そうだよ。鋭利な爪が危険だけど、厄介な相手ではないと思うよ」

「そうか、まあ俺は初めてだから頼りにするよ」

「うん、ウチにまっかせて!」

 

 そんな会話をしているうちに、日は西へと傾き始めていたのだった。




主人公は双剣使いとなったわけですが、自分は、ラオやミラ三姉妹以外ではあまり使いません。
メイン武器とかはあんまり無くて全部使う派なんですが、大抵双剣使いはパーティーにいますからね。武器は他人とかぶせたくなくてつい別の武器を選んじゃうんですよ。
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