まとめ回です。ずっと会話と説明です。
自分でも驚くほどわかりにくい文章になってしまいました。
わからない点などの質問は随時お答えします。
カイトたちがポッケ村に帰還して一番、リンからの鉄拳をお見舞いされた。なぜ黙って狩りに出たのか、と。
カイトは黙って狩りに出たことを謝りながら何とかリンをなだめた。
しばらく姿を見せていなかったガウとも集会所で顔を合わせることができた。カイトと一緒にポッケ村入りしたレイラとダフネはガウと顔を合わせると神妙な顔で何か言葉を交わしていた。
ラインハルトを含めた四人で狩りをしてきたという彼らだ。積もる話もあるのだろう。
しかし、今回の話題はそれだけではなかった。
そのあとガウ達四人に呼び出されたカイトは、村外れの空き家へと向かった。
◇ ◇ ◇
定住者のいない空き家ではあるが定期的に使われているようで、掃除をしているのかあまり埃っぽくはなかった。
カイトがその空き家を訪れた時にはすでに、居間にある長机にガウ、レイラ、ダフネ、ラインハルトの三人が席についていた。
カイトも椅子の一つを引いて座り、三人と視線を合わせた。
「あー、話すことは色いろあるんだがな……。そうだなまずは──カイト、お前記憶が戻ったらしいな」
カイトにとってはメインとなる話題に、ガウはいきなり斬りこんできた。
しかし、それはすでに質問ではなく確認であるということは理解している。特に否定をする理由が見当たらない回との返答は決まっていた。
「……ああ、余すこと無く全部思い出した」
「そう、か」
そこで二人は少しだけ考えた。ガウはそのことを喜ぶべきなのかどうか、カイトはガウが“どこまで知っているのか”ということを。
しかし今となっては、カイトにとってガウが“知っているか知っていないか”は問題ではない。この事は自分の口から語らねばならないと思っているからだ。
この事を語った後も、ガウやリンたちと今まで通りの関係が続くとは思わない。
いや、本来ならばこの数カ月の関係など成り立つはずもなかったのだ。
全て話そう、そう決めてカイトが口を開きかけた時、新たに二人の男が空き家に現れた。
「……オヤジか」
「そう睨まないでくれガウくん。バルドゥスも君たちと大事な話をするために来たんだ」
バルドゥスを睨むガウをブルックがなだめた。それからブルックは布で包まれた細長いものをカイトに手渡した。
「君を雪山で発見した時の持ち物だ。いつ返すべきかと思っていたが、それは今のようだね」
カイトが慎重に布の中から取り出したのは、蒼と碧の対になった双剣『マスターセーバー』だった。
マスターセーバーとはホーリーセーバー派生の水属性の双剣で、高い属性値・切れ味を誇る業物だ。また、素材にはG級ハンターからのみ、加工のオーダーを受けることができる貴重な鉱石を含んでいる。
そして何より、このホーリーセーバー系統の双剣は“ギルドナイトの正装”の一つである。
「……レイラからすでに聞いたかもしれないが、俺の本職はギルドナイトだ」
この場にいる人間には今更隠すことではない。バルドゥスとブルックの二人もマスターセーバーを保管していたということとはずっと自分の正体を知っていたということだ。
唯一、ラインハルトだけは少しだけ動揺していた。
自分の後輩だと思っていたハンターが実は自分よりもはるかに実力があるとわかったのだから当然といえば当然である。
「っていうことはあれか?ハンターとしてのランクも……」
「まあ、G級だな」
マジかよ、とラインハルトは頭を抱えた。この場にいるハンター中でG級ではないのは自分とガウだけだ。しかし、ガウの実力は申し分ないほど高く、近々昇格するという噂もある。
周りが優秀すぎるだけなのだが、ラインハルト心に少し焦りが出た。
「それよりお前は大丈夫なのか、怪我の方は」
カイトが一人で狩りに出て行くまではベッドの上だったラインハルトが、今ここにいることは大丈夫なのだろうか。フローラが簡単に外出を許可するとは思えない。
ちなみに髪型は怪我の以前のようにドスタワーに整えられている。
「ああ、狩りに出向くようなことは無理だけどな少し歩く程度なら平気だ。怪我してからずいぶんと日も経ったからな。それより、お前こそドドブランゴに酷くやられたって聞いたけど平気なのか」
はたして、その話題を出したのはモンメかレイラかは分からないが、今日帰還した狩りのことはすでに耳に入っているらしい。
「大怪我はしていなけど数日は安静にするつもりだ」
「まあ、平気ならいいか」
カイトとラインハルトは歳が近いせいか、こういった友達感覚の会話がよく進む。思えば記憶を無くす前は同世代の友人というものはいなかった。
そんな二人の会話が一区切りついたのを見て、ガウが次の話を切り出した。
「カイトが記憶を無くす前はハンターだったんじゃねえかってのは薄々感づいていたからな、そこまで驚きはしなかった。ギルドナイトってのは予想外だったが……。それで今回来てもらったのはそのことの確認と、もう一つ話しておくことがある」
もう一つ、と言ったがおそらく次が本題だ。
ここ最近定期的に姿を見せていなかったことに関係しているのだろう。
「ここのところ、本部から出張ったっていうギルドナイトと村長やオヤジ、ブルックさんやギルドマネージャーが集まって協議をしていたことがあるんだが……」
ガウはそこで一旦言葉を区切ってからこう言った。
「ポッケ村のギルド支部の全権がこれから派遣されるギルドナイトのものとなることが決定した」
「……」
カイトはやっぱりか、と溜息をついた。
“あいつはまだそんなことを続けているのか”、と。
「本格的にギルドナイツが配属されるのはまだ少し先だが、すでにここ一帯の狩場の統治権はあのジジイ──ジャン・マーカットとかいうギルドナイトに移ったと言ってもいい」
「一ついいか?そのジャンとかいう野郎にギルド支部の主権が移るとなにが不味いんだ?まさか狩猟依頼が発行されないなんてことになったりはしないだろうし」
ラインハルトの疑問も当然で、ハンターにとってはギルド支部の主権が誰のもとにあっても関係が無いのだ。言ってしまえばハンターとは発行されたクエストをこなすだけの仕事であって、その上で行われる事務処理には全く関わる必要がないのだ。
しかしガウの口から飛び出たのは信じられない言葉だった。
「いや、“その可能性もある”っていうのが不味いんだ」
「なっ、どういうことだよ!」
「そのままの意味だ。“例え商隊のキャラバンがモンスターに襲われたとしても、村の近辺にモンスターが出現したとしても、その依頼を出さないことができる”、それが今のやつにある権限だ」
「……んなこと許されるわけねえだろ!」
ラインハルトが怒りのあまり机に拳を叩きつけた。身体の怪我の具合のことを考えるとするべきではない行動だが、感情が理性を超えて彼の身体を怒りで掻き立てた。
「落ち着けラインハルト。体に障るぞ」
そう言ってラインハルトを諌めたのは銀髪の剣士レイラだった。凛として芯のある声がラインハルトに冷静さを取り戻させた。
「す、すまん……」
「謝るな、貴様の気持ちは大いにわかる。ただし感情では問題の解決には至らない。まず考えるべきは奴がそんなことをするメリットだ。目的がわかれば自ずとこちらの指針も定まる」
レイラの言うとおりで、ジャンというギルドナイトがわざわざ辺境のギルド支部の実権を握った理由を考えるのが先決である。ギルドナイトであるだけで多大な報奨が約束されているため、田舎のたかが一支部を統治した程度で舞い込むお金など興味はないだろう。
そうなるとやはりここ一帯の狩場をコントロールすることが目的となるはずだ。
問題はそれによって何をしようとしているか、だ。
「さて、ここで貴様に聞くぞ。貴様はなにか知っているのではないか?」
レイラがラインハルトから視線を移した先にはカイトがいた。
「私も自分が普通よりも早く腕を上げ出世してきた狩人であるという自覚はある。ギルドからの勧誘もしょっちゅう受けてきた。今のところは興味が無いから全て断ってきたがな。そんな中で貴様の噂も度々聞いていた。私と負けず劣らずの腕を持った若手ハンターがいると」
レイラやカイトは数十年に一度と言われる速度で狩りの腕を上達させていった稀代のハンターだった。しかし、レイラが表の世界で有名になっていく一方で、カイトは早いうちにその価値を見出されギルドへと勧誘されたまま、表にその名を轟かせることはなかった。“無名の実力者”というものがギルドにとって必要になる場面があるのだ。
「私への勧誘はしつこくてね。よく茶菓子だけ頂いて失礼していたんだが、そんな中で貴様にも会ったことがあったし、あのジャンというギルドナイトの姿を見たこともある。同じドンドルマのギルドナイトだ、何か知っていることぐらいあるのではないかと思ってね」
レイラはそのまつげの長い目をスッと細めてカイトを見た。何か知っていることぐらいあるのではないか、ではなく、知っているはずだ話せ、と目が語っていた。
「……ああ、大体の予想はついている」
そして、ジャンのその目的のために犠牲になった人のことをカイトは知っていた。
「ハンターズギルドポッケ村支部現支部長、ジャン・マーカットの目的は“未知のモンスター発見”だ」
未知のモンスター、という言葉に王立書士隊隊員の息子であるラインハルトはピクリと反応した。
「それは未確認の古龍がこの辺にいるってことか?」
「いや、一定数の個体が確認されている古龍とは比べ物にならない程特殊なケースだ」
「古龍よりも特殊、だと……?」
古龍でさえ天災と呼ばれながらも遭遇ケースはめったにあるもので無く、一生目にすること無く終わることもあるような存在だ。その古龍をも凌ぐ特殊なケースとは一体何なのだろうか。
「ラインハルトは、『アカムトルム』って聞いたことあるか?」
「……火山帯の奥地に存在するって言われてる飛竜の祖先、だな。通称覇竜、資料では見たことがあるが、目撃記録や交戦記録だけなら近年でも一定数あるが討伐記録までは見たことがないな」
「そのアカムトルムと同列のモンスターがこのフラヒヤ山脈のどこかにいる、って言われてるんだ」
「なっ……」
その場にいた全員が驚きを隠すことが出来なかった。冷静沈着なダフネですらも目を大きく見開いた。
そして何か思い当たるフシがあったのか、バルドゥスが、もしや、と呟いた。
「……『白き神』、か……?」
その言葉にポッケ村出身であるガウとブルックも反応した。
白き神とはフラヒヤ山脈周辺に伝わる伝説の竜のことで、白き神の襲撃を受けた村は詳細な被害状況がわからないほどの壊滅を迎えたという。
そして、白き神、をポッケ村の古い言葉で呼ぶとこうなる。
「『ウカムルバス』、──崩竜と呼ばれるアカムトルム同様の“古龍級生物”だ。そいつがジャンの目標だと思う」
「そんな伝説みたいな奴を探して、奴は何をしようってんだ」
「簡単な話だ、あいつは権力が欲しいんだ」
「権力、だと……?」
「ああ、伝説とされるモンスターの詳しい生態の記録、そしてそのモンスターを捕獲までしたらギルドにとっての貢献度は計り知れないものになる。そうなればあいつは二階級特進なっていう小さな昇格じゃない、ハンターズギルドの幹の部分まで自分のポジションを食い込ませることができるだろうな」
「権力か、くだらないな」
レイラはそう吐き捨てた。彼女がこの世で最も興味のないものの一つが権力だ。彼女は権力ではなく、実力のみを頼りに今まで生きてきた人間だからだ。
出世を否定しているのではない。高みを目指すのと権力にしがみついて他を切り捨てていくのとは違う、と彼女はよく言っていた。
◇ ◇ ◇
「次は俺から質問をいいか」
話に区切りがついたところで次はカイトからガウやバルドゥスに向けて質問が投げかけられた。
「ジャンを中心とするギルドナイトにポッケ村のギルド支部の実権を握られたって話だが、個々の実権はギルドマネージャーにあったはずだ。どういう理由でその権利が移ったんだ?とてもあの
各ギルド支部の最高責任者は竜人族が務めることが多い。それは永い寿命のために得られている多くの経験と知識がギルド支部の運営には求められるからである。
その権利をやすやすと譲渡することは自他共に簡単に認められるはずはない。
そこにはなにか特別な理由があると考えるのが普通だ。
「やはりそのことであるか……」
バルドゥスはそのことについて聞かれることを予想していたのかすぐに説明を始めた。
「今回やつにギルド支部の実権を譲渡せざるを得なくなった理由はギルド支部におけるある制約のせいだ」
「ある制約、ってのは……?」
「一つ目に、『いかに小規模であってもギルド支部には最低一人は上位以上の専属ハンターの登録が必要となっている』、というものだ」
それを聞いてラインハルトが「あれ?」と疑問を口にした。
「ザンガガ村に専属ハンターとして登録されているのはフローラだけだけど、あいつはまだ下位ハンターなんだが……」
「うむ、そういった村々には『準支部』が置かれる。これは狩場を共有する他の支部の更に傘下として扱われることになる」
「……なるほど」
そこでカイトが「だが」といった所でブルックが声を重ねて続けた。
「だがポッケ村にはガウという上位ハンターがいる、か。確かにガウは最近所属をドンドルマからこのポッケ村支部に移した。しかしここでもう一つの制約がネックとなる」
「……なるほど、『所属支部の変更は手続き後一年で有効になる』、というあれか」
レイラは納得したようで、やれやれと溜息をついた。
バルドゥスも溜息を付いて補足説明を始めた。
「支部の専属ハンターになると、その支部での活動に限りハンターにとって有益な特典がある。ギルド傘下の店や宿の値引きなどが一般的なものだ。そもそもこの制度は、地方の村にもハンターが専属として長く居ついてもらうための制度だ。特典を受けるためにホイホイと支部の登録変更をして転々とされては元も子もない。だから、一年という制限が設けられている」
「……つまり、いまこのポッケ村には専属の上位以上のハンターがいないってことになるのか」
「そうだ。そして条件を満たさなくなった支部の取る選択は二つだ。一つ目は準支部への降格。ほとんどはこっちのケースになんだが、この村ではそうはいかない」
「……なるほど。この山脈地帯にポッケ村より東をカバーする支部は無い。それに加えてポッケ村はフラヒヤ山脈を経由する商隊にとって必須のオアシス。支部としてしっかりと機能してもらわなきゃ困るってことか」
カイトはようやく全体像がつかめてきた。ジャンは支部として機能せねばらないポッケ村が、機能できない状況にあることにつけ込んできたのだ。
「そう、そこでもう一つの対応策を取ったってことだ。支部のある村にギルドナイト商隊を駐屯させるとその制限が消えることになっているのだ」
「ただおかしくないか。今更すぎるじゃねえか」
しかしラインハルトの指摘する通り今更すぎる。カイトがこの村に来るまではしばらく専属ハンターは下位のリン一人だったはずだ。それをなぜ最近になって急に指摘してきたのだろうか。
「……俺の生存が確認されたから、か」
「まあそれが一番妥当な考えであるな。そもそも今言った制約は特に言及されない限り黙認されている、甘い扱いのものだ。人手不足はどこでも起きる。そういったところにおいては見て見ぬふりをされるのが普通でこの村もそうだった。乗っ取るチャンスであるから、遅かれ早かれ行動には移していたのであろうが、特にギルドが介入してくる様子はなかった。……半年前まではな」
しかし、この半年で急にポッケ村に介入をしてきたことを考えると、“半年前にこの村に来た人物が関係していること”を疑うの容易なことだ。
「ギルドナイトであるカイトがポッケ村にいるとなると話は変わってくる。記憶をなくしているようだがあろうことかポッケ村の専属ハンターとして登録をしてしまったからな。何かの拍子で記憶が戻れはそこにいるのはG級ハンターだ。新規ハンターの登録は期間制限無しにできているから、登録証をちらつかせればいくらでも支部としての権利の主張ができる。まあ屁理屈ではあるがな。奴はそれを恐れ行動に移した」
なるほどそういうことか、とすべての歯車がカッチリと合わさったカイトの、その黒い瞳には怒りと悲しみの色が浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
「……さて、ここまで整理できたら、俺からも話すことがある」
この十年あまり、ポッケ村やカイトの身の回りで起きていた一連の出来事は、全て一つの思惑の上でつながっていたのだ。
これから話すことをガウたちが聞けば、彼らとの関係は今まで通りにはならないだろう。
そういった言い方よりも適切な言葉を選ぶとすれば、これからカイトから語られる事実を彼らが知っていればこの奇跡のような半年間はあり得なかった、ということだ。
ただ、このことは話さねばならない。カイトはもう逃げるわけには行かないのだ。
「……さっき言ったとおり、俺はドンドルマのギルドでギルドナイトとして活動していた。ギルドナイトと言ってもその根幹はハンターであり、通常は狩場に赴く事が多い。必然としてギルドナイトの内外と固定パーティを組んでいく人が多かった」
ギルドナイトではないハンターとの行動は情報機密のリスクが有るという理由でであまり奨励はされてないが、昔からのパーティとして外部のハンターと組んでいるギルドナイトは多くいた。
「ただ俺は昔から一人でギルドナイトのメンバーとして育ち、己のポテンシャルを最大限に引き出すために一人で狩りに行かされることが多かったし、俺自身もそのほうが気が楽でいいと思っていた。そんな風に育っていったからなにか勘違いしたんだろうな。自分が“集団の狩りが嫌いだと思うようになっていた”。ハンターとして成熟した後、他の隊員から狩りの誘いを受けることも多くあったが、それを俺は頑なに拒んで一人孤立していた」
そんなある日、カイトの前に現れた人物がカイトにとって大きな転機をもたらすことになった。
「あの日俺の前に現れたのは、任務帰りだという“コルト・シルヴェールという名のギルドナイト”だった」
「コルト・シルヴェール、だと……!?それはリンの親父さんの名前じゃねえか……!」
ガウはカイトの言葉に大きく目を見開いた。リンの父親がギルドナイトだったなどという話は聞いたこともない。
コルト・シルヴェールはその当時大陸に名前を馳せたハンターの一人だ。ギルドナイトになる実力は申し分無いほど備わっている。しかし、そんな気配も噂も一度も耳にしたことはなかった。
当時コルトと行動を共にしていたバルドゥスとブルックは知っていたようで特に驚いたリアクションはなかった。むしろカイトの言葉に補足するようにしてガウに説明をした。
「ここまで隠すこともないから話す。……我輩の妻でありお前の母親であったローザもギルドナイトの一員だった。我輩を含めた他三人にも誘いはきていたが我輩達は興味がなくてな。あの二人は我輩たちと狩りをする傍らギルドナイトの仕事もこなしていたのだ」
「な……、んだと……」
ガウはまさに絶句、であった。
家族同然の少女の父親だけでなく、自分の母親までもがギルドナイトという一大組織の構成員だったとは全く知らなかった。
何も教えてくれなかったことに怒りと悲しみを覚え、それ以上に何も知れなかった自分が惨めに思えた。
「……いずれは話そうと思っていた。それが今だったということだ」
そう告げたバルドゥスを、ガウは睨むだけでそれ以上は何も言わなかった。
話をいったん中断していたカイトだが二人が黙るの見て再び口を開いた。
「おそらくその任務っていうのは、『例の対轟竜戦』のことだと思う。思う、と言うよりは確信している。その後コルトが長期で姿を見せないようなことはなかったからな」
カイトの言葉はつまり、やはりコルトは対轟竜戦では逃げ延び、その後ドンドルマに向かったということがわかる。ポッケ村に向かわなかったのはその『任務』というのが関係しているのだろう。
カイトは初めてコルトと会った時に事をはっきりと覚えている。
彼の目は死人の目だった。生気が感じられず表情は後悔か何か、後ろめたい感情に縛られているように見えた。
そんな彼がカイトを視界に捉えると一変、表情に少しの色が戻った気がした。
彼は初対面であるカイトにこう言った。
「ああ、君が」と。
「……その後なんだかんだと世話を焼いてきたんだ。最初のうちは無視していたんだけどな、ついに根負けして一緒に狩りに行くまでになっていた」
なぜコルトがそこまでカイトに執着していたのか、その理由が今ならわかるが、そのことをここで話すつもりはなかった。
「二人でいろいろな狩りに行った。始めのうちはなれない連携での狩りに戸惑ったけど、向こうのレベルが高いこともあってすぐに狩りの効率は上がっていった」
「……ただ、」
ただし、
「そんな日々も長くは続かなかった」
そう言ってカイトはブルックがカイトの双剣と一緒に持ってきていたペンダントを受け取った。ブルックとバルドゥスはその先でカイトが言おうとしていることはわかっているような目をしていた。
それを見てガウも薄々と『嫌な予感』が当たりつつあることを感じていた。
カイトが手にしたペンダントはコルトが身につけていたものだった。
コルトはそのペンダントをとても大事にしていた。
というのも、そのペンダントは実はロケット式のもので、中には妻と娘と一緒に取った写真が入っているものだったからだ。
そんな大事なものを、コルトは死ぬ間際にカイトに渡した。
小屋に迫る足音が二つ。
カイトはそれに気づいていた。
しかし、気づいていたからこそカイトは続けた。
「……俺が、」
「カイト、やめろ……!」
ガウもまた、その足音に気づいており、カイトを止めようとした。
「俺がこの手で」
「言うなッ!!」
丁度その時小屋の扉が開かれ、二人の女性が姿を現した。
「あの日、俺がこの手で、この双剣でコルト・シルヴェールを殺した」
「…………え?」
小屋の扉を開けたリンの、何を言っているのかわからない、という間抜けた言葉が聞こえてからすぐ、ガウの拳がカイトの顔面へと叩き込まれた。
わかりにくかったですね……、すいません。
簡単にまとめると、
ジャンはウカムルバスの調査を集中的に行いたい
↓
フラヒヤ山脈一帯の管理権限が必要
↓
「ギルド支部に一人以上は上位ハンターがいなければならない」「支部への専属ハンター登録は一年の期間がいる」という制限からポッケ村支部の実権を手に入れた。
ということです。
「ギルド支部に一人以上は上位ハンターがいなければならない」「支部への専属ハンター登録は一年の期間がいる」という設定はこの作品での創作です。
アカム・ウカムが飛竜の祖先というのはティガレックスなどをの姿形と比べると納得ですよね。ティガレックスも飛竜の中では古い個体のようですし。
ウカムルバス伝説についてはまだ触れていないところもありますが、それはまた後ほどです。