北国育ちの私は先が思いやられます。
目的の狩場付近へは日が暮れる前に着いた。日没前に拠点に着いて一安心だった。
「村の人たちや商隊の人たちのためにも、確実に狩りを済ませたいね」
リンの顔つきは真剣そのものだった。さっきまでからかわれて半泣きしていた娘と同一人物とは思えない。
リンが赤い液体の入った小瓶を全て自分のポーチへとしまってしまったのを見てカイトは抗議の声を上げた。
「それ、俺にもくれよ」
そう言うと、リンはポーチの口を押さえてカイトを睨んだ。
「ダメ!これはゼッタイあげないからね!キミは全身モコモコで暖かいけど、ウチはホットドリンクが無いと絶対駄目だから!ウチ、寒いのすごい苦手なんだからさ!」
たしかにリンの装備は、白い太ももが少し覗いていたりなんだりと、自分の防具よりは寒いのかもしれない。しかし、自分だって寒いのは苦手だ。村の中でも寒く感じたのに、これから雪山へと入っていくと思うと今から身震いが起きる。
結局リンに押し切られてしまったカイトは、少しでも寒さを和らげようと袖口をきつく締め、フードを深くかぶり直した。
「よし、そんじゃあ行くか」
「そうだね。ウチも支給品の分しかホットドリンク持っていないし早めに終わらせたいね」
二人は拠点をあとにすると深い雪山へ向かって歩みを進めていった。
◇ ◇ ◇
リンはポーチから支給された地図を取り出すとカイトに説明した。
「洞窟を通過してからエリア6,7,8辺りを捜索しようかな。商隊の人たちもこの辺りで襲われたみたいだし」
通常ギルドの管轄の狩場には、場所ごとに区切ってエリア番号が設定されている。これは、狩りを円滑に進めるためだけでなく、モンスターの目撃情報等をすばやく正確に伝えることに役立っている。
「うっ、やっぱり寒いな……」
洞窟の中はやはりかなり寒かったが、マフモフを着ているおかげで何とか我慢は出来た。そこら中に巨大な氷柱や氷塊があり、見ているだけでも寒くなってくる。
(リンの言っていた通り、この狩りは早く終わらせたいなぁ…)
黙ってって止まっているとますます寒くなってくるので、リンを待たずに更に奥へと入っていった。
洞窟を抜けてエリア6に達すると、全身が白い鱗で覆われた小型の竜がいた。それこそが今回の狩りの目的であるギアノスと呼ばれるモンスターである。ギアノスは鳥竜種に分類されており、つまるところ鳥に近い仲間なのだが、羽や羽毛はなく、代わりに鋭利な爪や、固い鱗を持っている。ランポスと呼ばれる鳥竜種の仲間で、集団で連携して獲物を追い詰めることを得意としている。
(そういえば、いつの間にかリンと離れている。このまま自分一人で狩りをするのは危険だろうな)
カイトはこれが正真正銘初めての狩りとなるので、何も知らない初心者が一人で突っ込むのはまずいだろうと判断し、引き返すことにした。
しかし、ギアノスはカイトの存在に気が付きギャアギャアと鳴き始めた。その声に呼応するように更に二頭のギアノスが現れた。急いで逃げようとするが、雪が深く上手く走れない。深雪に手間取っているカイトの所へ、距離を詰めた一頭が飛びついてきた。
「うわっ!」
とっさに横に飛ぼうとするが、雪に足を取られて転んでしまう。その体スレスレのところにギアノスの爪が食い込む。
そのまま横に転がると、背中からボーンシックルを抜き、ギアノスに向かって構える。そのままギアノスに向かって突進すると横薙ぎに攻撃を入れる。ギアノスを血飛沫を上げて怯んだが、直ぐに体勢を立て直した。足元の不安定な状態で十分な踏み込みが出来ていない上、そもそも、双剣は手数があて初めて真価を発揮する武器であるため、単発では大きなダメージにはならなかった。
「くそッ!」
更に一撃を入れようと構えるが、既にギアノスはその鋭利な爪でカイトを切り裂こうと振り上げていた。カイトは双剣でガードしようとするが、防御に不向きな双剣では防ぎきれず、剣は手から離れ、カイトは尻餅をついてしまった。
ギアノスはそこへ更に追撃を加えようと飛び上がる。
「……っ!」
全身から血の気が引く。頭の中を死の予感がよぎる。
(まずいっ……!)
カイトの目と鼻の先まで来ていたギアノスが、突如、何者かによって切り伏せられた。驚いたカイトが横を見ると、そこにはゴーレムブレイド改を振り下ろしたリンが立っていた。
リンは、カイトの方を見ると声を張り上げた。
「何で勝手に先に行ったのさ!ウチがあと少しでも遅かったらどうなっていたと思ってるの!」
リンの顔を見ると、どうやら本気で怒っているようだ。
「……すまん」
「……はあ、別に今回はいいよそれよりホラ、来るよ!武器を拾って!」
先程のギアノスはリンの一撃で息絶えていたが、残りの二頭が二人を挟むようにして距離をゆっくりと詰めて来ていた。最初に動いたのは向かって右側のギアノスで、その強靭な脚力を使って、一跳びで襲い掛かってきた。リンは振り下ろしたままにしていた剣を飛んできたギアノスに向かってそのまま斬り上げた。間髪いれずに、その後ろからもう一頭が距離を詰めてくる。
「伏せて!」
そう言ってリンはゴーレムブレイド改を180度以上も横に回転させて、カイトのフードを翳めてそのままギアノスを斬り飛ばした。
(すごいな……)
リンは小柄な体にもかかわらず、身の丈ほどもある大剣を軽々と振り回して、確実に目標を沈めている。
その時、先程斬り上げたギアノスが立ち上がリンに襲い掛かった。
「っ!傷が浅かった!?」
リンが必死に回避したその場所に、ボーンシックルを握ったカイトが飛び込んだ。ギアノスの頭に一発叩き込むが、軽く怯むだけで直ぐに反撃へと移ろうとする。
しかし、構わずにカイトは二撃、三撃と加えていく。最後に両方の剣で縦に一閃入れると、ギアノスは真っ白な雪の上に鮮血を撒き散らして倒れた。
「っはぁはぁ……。た、倒せた……」
たった一頭倒しただけで、どっと疲れがたまった。こんな調子ではこの先が思いやられるなとカイトは深く溜息をついた。
「すごいすごい!本当に初めての狩りなの!?今のすごい良かった!」
面と向かって褒められると恥ずかしくて、「そうか?」と適当に返して目を逸らす。確かに自分でも驚くほどよく動けていたとは思う。ただし今のはかなり必死だったことも確かだ。やれと言われてそうなんども出来るような芸当ではなかった。
「よし、じゃあ次いくか。また遅れるなよ」
「なっ、さっきのはウチが遅れたんじゃなくてキミが……!」
はいはい、と適当に流して歩き始める。すると視界の先にギアノスらしき影を見つけた。
「よし、次は一人で狩ってみる」
そう言って行こうとするとリンが「待って!」と叫んだ。
「そんな……、“アレ”がいるなんて情報は入ってない!」
「な、何だ?」
よく見るとそのギアノスは他の固体よりも一回り以上大きく、頭には水色の大きな鶏冠がついている。
「何で……、何でドスギアノスがこんな所に!?」
ドスギアノスは二人に気が付くと大きく啼いた。
◇ ◇ ◇
「ドスギアノスがいるなんて……!」
完全に計算違いの事態だ。ギアノスの群れを殲滅しろということならば問題ないのだが、そのリーダー格であるドスギアノスがいるとなると話は変わってくる。
「カイト!一旦引こう!」
(何度も倒したことはあるけど、あれとやり合うほどの準備はしてきていないし、そもそもカイトがいるから……)
リンは納刀して、引き返そうとする。しかしカイトは、ドスギアノスが一体どれほどのモンスターなのかを知らない。リンがなぜそこまで焦っているのかを理解できず指示にすぐに従えなかった。
「引くって、何でだ!?あんなの少し大きいギアノスだろ?だったら……」
「いいから早く!」
「お、おう!?」
ものすごい剣幕で怒鳴られたカイトは、よく分からないが急いで納刀してその場から退却しようとした。
しかし、その時には既に、すぐ傍まで距離を詰めていたドスギアノスが、カイトへ向かって爪を振り下ろそうとしていた。
「まずいっ!」
体をひねって紙一重で避けた──かと思われたが、通常のギアノスよりも大きな体をしたドスギアノスの爪を避けきる事は出来ていなかった。
「がっ……、あぁっ!?」
爪がカイトの左肩に食い込み、衝撃でそのまま数メートル吹き飛ばされた。激痛がカイトの肩に走った。
「カイトっ!」
リンはカイトの元へ駆け寄ろうとするが、いつの間にか集まってきたギアノスたちに先を阻まれた。
「邪魔っ!」
ゴーレムブレイド改を抜くと横に大きく薙ぎ払い、三頭のギアノスを蹴散らす。左肩を抑えてうずくまるカイトの顔をリンは心配そうに覗き込む。
「カイト!大丈夫!?」
「……ぐ、うう……」
カイトは頭を強くぶつけたらしく、意識が朦朧としている。肩の傷口はかなり深いようで、血が止まる様子は無い。早く処置をしないと危ないと思われる。
(一旦エリア5の方まで戻らないと……!)
しかし、大剣を持ちながら手負いのカイトを運ぶことは困難である。先程蹴散らしたギアノスが体勢を立て直して一斉攻撃の構えに入っている状態でそのような行為は危険極まりない。
洞窟の入り口まではざっと見て100メートル程で、モンスターの攻撃を避けながら人を担いで進むには少々遠い距離である。
(でも、今は逃げるしかない!)
ぐったりとしたカイトに肩を貸して走り出すが、比較的小柄であるリンは、カイトの体を支えることが出来ず上手く進めない。
その背後からギアノスが一頭飛び掛かり、リンの頬と首筋を爪が掠める。
「うぐっ!」
痛みと衝撃で足をもつれさせて転んでしまう。ギアノス達は転んで無防備になったリン達に止めを刺そうと距離を詰める。
(早く、逃げないと……)
しかし失血による目眩で真っ直ぐに歩くことが出来ずに、立ち上がってもすぐに膝を付いてしまう。呼吸が荒くなっていき、視界も定まらなくなっていく。
虚ろな瞳で横に倒れているカイトの方を見て、肩を掴んで揺さぶってどうにか起こそうとする。
「はあ……はあ……カイト、起きて……。ウチが、群れを引き寄せるから……、その間に逃げて。体勢を立て直したら……、戻って来てくれる……かな……?」
リンはぼろぼろの体で、剣を地面に突き立てて杖代わりにして立ち上がる。カイトは顔を上げて制止しようとするが、声が出ない。
リンは目の前にいるギアノスたちの中のリーダーであるドスギアノスに向かって残った力の全てをもって突進し、剣を振り下ろす。しかし、剣は鱗に弾かれてしまい、リンは大きく仰け反った形になってしまう。そこから立て直す余力はリンには残っていない。
ドスギアノスがその口を大きく開けてリンの頭へと喰らい付こうとする。その顎の力をもってすれば、人間の頭を潰すことなど容易いだろう。
(……ウチ、ここで死ぬのかな……)
逃げようとしても体が動かない。目前の死への恐怖に、涙が頬を伝う。
(……いやだ、死になくないよ)
体が小刻みに震えて、涙と血が雪へ落ちる。まさかこんなことになるとは、狩りに出る前までは思ってもいなかった。
(助けて……、誰か助けて……!)
霞んだ視界の先で辛うじて見える。目の前で少女が一人死にそうになっている。まだ知り合ったばかりの少女だ。自分の家族でなければ、特別親しい間柄であるというわけでもない。
もちろん彼女が死んでしまったら少しは悲しむだろう。しかし、それが深い傷となるほど彼女とともに生きてはいない。
しかし、
「……見捨てる理由もない……!」
男が一人、雄叫びを上げながら地を蹴る。
「おおおおおおおっ!!」
リンへ喰らい付こうとしていたドスギアノスの顔へ一太刀を入れる。剣は動脈を丸ごと切り裂き、そこから大粒の血飛沫が舞う。大きく仰け反るドスギアノスを蹴り飛ばし、右方で突然の襲撃に呆然としているギアノスの首元に剣を突き刺す。
ギアノスは悲鳴をあげ、どうにか後ろへ逃げようとする。
「逃がすかっ!」
もう片方の手の剣を放し、ギアノスのクチバシを鷲掴みにして一気に引き寄せる。剣は喉に深く食い込みそれを絶命させた。
一頭、また一頭と仕留めていく。
視界の端にドスギアノスが白銀の鱗を紅く染めながらも反撃の体勢をとっているのが写った。
先ほど手から放した剣を拾い上げ、頭の上で構えて全身の力を腕に集中させる。
「殺すっ!」
跳躍のために頭を下げたその瞬間に一気に距離を詰めた。
斬って、斬って、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬り続ける。
ひたすらに斬り続ける。
腕が千切れたような感覚がする。剣が欠けた音がする。剣を握る手から血が滲む。肩の傷がさらに開く。貧血に視界が歪む。
それでも斬り続ける。
「ああああぁぁ!」
両腕を一気に振り下ろす。決めの一撃の勢いでドスギアノスは後ろに大きく吹き飛ばされた。
しかし、ドスギアノスはまだ余力を残しているようでヨロヨロと立ち上がるとエリア8の方へと逃げていった。
「……っ!待ちやがっ……」
そう叫びかけたところで、貧血と疲労にカイトは次こそ本当に意識が無くなった。
◇ ◇ ◇
(……な、に、今の……)
死を覚悟した次の瞬間、横からカイトがドスギアノスを撃退してくれた。
しかし、その形相は今までに見たことのないものだった。返り血を浴びたその顔には憎悪しか写っていなかった。
恐ろしい、と思ってしまった。目の前の殺戮に恐怖を感じた。自分の狩りとは、何かが違う気がした。
「カ、カイト……?」
恐る恐る声を掛けるが、鬼人化によるスタミナ切れで完全に気を失っている。
(鬼人化なんて、素人は知らないはずなのに……)
ポーチから応急薬を取り出して一口飲む。それからカイトの首筋に手甲を外した手を当て息があることを確認した。
(カイトの記憶が無くなる前って、一体……)
そんなことを考えながら、カイトの口へ残りの応急薬を流し込む。
そしてリンは気が付くいた。
(……あ、あれ?こ、これって……。も、もしかして間接キスというやつなの!?)
自分の行動に頬を赤らめ、そしてブンブンと首を横に振る。
(い、いや変に意識しちゃ駄目だって!別に恋人同士ってわけでもないんだし!……ん、アレ?恋人同士じゃないから意識しちゃうのかな?)
あれ?とリンが混乱している横でカイトが目を覚ます。
「う……。ど、どうなってるんだ……?」
立ち上がろうとするところをリンに制止されれる。傷口からはまだ塞がっているはずもなく、下手に自分だけで歩きまわるべきではない。
「だ、駄目だよまだ立っちゃ!もう少しここで処置してからキャンプへ戻ろうよ。怪我が酷いんだから無理しないで」
「……ドスギアノスは?」
カイトはそう言って辺りを見回している。まるで自分が撃退したのを忘れたかのような様子だ。
(あれ?もしかして覚えてない?)
「あ、うん……。ええっと……エリア8のほうに逃げて行ったよ。このあたりは安全だから今のうちに避難しようよ」
「避難?ドスギアノスはどうするんだ?」
「この傷じゃ無理だよ。ドスギアノスを狩る機会はまたあるだろうし……」
「……機会?機会って何だよ?別に俺は今回、自分の経験のために来たわけじゃないんだぞ。……いや、まあそれも少しはあるけど、一番の理由じゃない。お前と同じで、村のみんなの助けになりたいから来たんだぜ?」
リンはまだ何か言おうとして、口をつぐむと、一つため息をした。
「……そうだね、カイトの言う通りだよ。ドスギアノスが標的を前に逃げたってことは瀕死のサインだから、回復する前に仕留めよう」
「そうだな、それじゃあ急いで……痛っ!?」
今になって自分の怪我の酷さ気が付く。
「す、すぐに動いちゃ駄目だってば!取り敢えず処置をしなくちゃ!」
そう言ってリンはポーチから薬草と包帯を取り出すと、処置を施そうとする。
「え~と、防具脱いでくれないと処置できないかも」
「断る」
応急処置の為に凍死しろというのでは元も子もない。こんな雪原の真ん中で防寒具を脱げるはずがない。
「……う~、仕方がない。動かないでね」
そう言うとリンは、カイトのコートの首の部分から手を入れた。
「っ!?」
手はそのまま這うように伸びて行き肩の傷口に触れる。その手には潰された薬草が握られており、傷口に塗られていく。
「っ痛てて……」
「我慢して……」
しかし、傷口が痛むことよりもさらに困ったことがあった。
(近い……)
小柄なリンでは防具の嵩張りによって肩のほうまで手が届きにくく、体に密着してなるべく奥まで手を伸ばそうとしているのだが、そのためカイトに抱きついているような形になってしまっている。
当の本人は気付いていない様で、包帯を巻きつけ始めている。
「よし、終わった!それじゃあ行こうか!」
「おう……」
(顔に当たってた髪の毛、いい匂いがしたな……)
先に歩いて行ったリンの後を、まだ若干痛む傷口に顔をしかめながらついて行った。しかし、しかめっ面ながらもどこかいい事があったかのような表情をしていた。
◇ ◇ ◇
エリア8に入るとまだそこにドスギアノスはいた。二人が追撃してくることは分かっていたようで、警戒を全く解いていない。
「作戦は覚えている?」
「もちろんだ」
「よし、じゃあいくよ!」
「おう!」
二人は二手に分かれて走り始めた。カイトはそのままドスギアノスに向かって走って行き一撃二撃と入れる。深追いはせず、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
(……まだかっ!?)
カイトはリンのほうを一瞬見るがそれあだとなった。ドスギアノスはその隙を逃さずカイトに氷液を浴びせてきたのだ。
「なっ……!体が凍って!?」
必死に氷を砕こうとするが、両手にも氷液を浴びており、うまく動けない。そこにドスギアノスが飛び掛ってくる。
(くそっ、避けられない!)
必死に避けようとしたカイトの襟首が、突如つかまれて、大きく後ろに放り投げられる。
そして自分を投げ飛ばした人物が横に滑り込んでくる。
「ふう、間一髪だったね」
大剣を扱っていることといい、今のことといい、その小柄な体のどこからその怪力が沸いてくるのか不思議である。
「さあ、来るよ!」
リンのサポートによって攻撃を邪魔されたドスギアノスが一直線に突進してくる。
しかし、二人は回避しない。それどころか、これを待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「よし、ジャスト!」
カイトがドスギアノスを引き付けている間に設置された、携帯シビレ罠にドスギアノスは見事に掛かった。
先ほどリンに投げられて、体に付着した氷は砕けて落ちていた。
「これで……、倒す!」
これがおそらく最後のチャンス。絶対にここで倒さなければならない。
(……何だ?体が……、勝手に……?)
カイトは無意識のうちに鬼人化の構えを取る。そして大きく息を吸い込んだ。
「うおおおおおおおおおお!!」
乱舞──、そう呼ばれる所以は一目見れば解かるであろう。双手に剣を携えて乱れ斬る姿は、まさしく舞のように美しい。
乱舞が終わるとともに、シビレ罠の効力も消えた。
しかしドスギアノスはまだ倒れていない。
「駄目か……!?」
そう思った直後、突如視界の横からそれは振り下ろされた。
「はああああああああ!!」
最大限に溜めて振り下ろされた大剣がドスギアノスの脳天に直撃した。ドスギアノスそのままの勢いで吹き飛ばされ、それから二度と立ち上がることはなかった。
「狩れた、のか……?」
「……うん、ウチ達だけで、倒せたね……」
その事実に、もはや言葉は出なかった。喜び、充実感、さまざまな感情が心を駆けた。
二人はしばらくの間放心状態で、ただただその達成感を噛締めていた。
◇ ◇ ◇
素材を剥ぎ取り下山した二人は、荷車に乗って村へと向かっていた。
「……そういえばカイト、どこで乱舞なんて覚えたの?」
「ん、何だそれは……」
カイトのその顔を見ると本当に知らないようだ。
「あ、いや、ううん、何でもないよ」
「ん……?」
(アレはたまたまだったのかな……。いや、でもやっぱり気になるなぁ。カイトの過去のことと関係ありそうだし……)
それから二人は特に言葉も発することなく、一人は未だに感動に満たされ、もう一人は一つの疑問を抱えながら、ポポが引く荷車に揺られながら村への道を上って行った。
モンハンはDosから始めたのですが、2nd無印での初めてのドスギアノス、ドスランポスと同じだろうと思って舐めてかかって氷液で一落ちしたのを覚えています。