フルフル倒してないのにダイミョウザザミ狩るとか、そもそもキークエストじゃないとか、そういうのは気にしないでいきましょう。しないでください^^;
──テロス密林へ向かう竜車の上で──
「わあ……、今気がついたんだけど、それってリオレイアの防具でしょ?」
「ん、まあな」
ラインハルトの防具はあのリオレイアの素材を用いた防具だった。武具は通常、そのレア度が高くなればなるほど製作に素材を沢山消費するのだという。ランクの高い防具の素材となるアイテムは加工がし難く、多量に素材を用意しても使えるのがその内極一部であるためだそうだ。
(俺のクックシリーズはイャンクックを一頭狩るだけで全部作れたが……。レイアシリーズ一式そろえるなんてどれだけ時間が掛かるんだ……)
自分にとっては途方もない話に思われ、カイトは思わず溜息をつく。
(しかし何だろう……。ラインハルトのレイアシリーズ、『狩りに生きる』で見たのと少し違うような……)
「フローラもフルフルシリーズなんてすごいね!ウチなんて以前一度遭遇したことがあるんけどさ……、思わず逃げ出しちゃったよ」
リンは「あははっ」と頭を掻く。
「しかしフローラもわざわざフルフルを狩るなんて、お前もへんた──ぐはぁ!」
「私だって好きで狩ったワケじゃないです!」
「ラインハルトさん、あんまりフローラいじめたら駄目ですよ~」
三人がああだこうだと言い合っているが、カイトは一体何の話かわからないで頭の上に?マークを浮かべる。
(フローラは何であんなに嫌がってるんだ?そんなにあの防具のデザイン変か?)
フローラの着ているフルフルシリーズは、リンのランポスシリーズ等とは異なり、鱗のようなものが無く、白色のつるっとした防具だ。飾り気の無い防具だが、体にフィットするため、フローラの体のラインを浮かび上がらせている。
(別にデザインに問題と思うんだけどな)
フルフルの姿を見たことが無いカイトは、三人が何故そんなにも言い合っているのかがわからなかった。
ちなみに頭防具はつけておらず、スキルは装飾品でカバーしている。本人曰く、「フルフルシリーズのガンナーの頭防具は、視界を狭めるから嫌いなんです。ガンナーは攻撃を喰らわなければいいので、防御力はあまり気にしないですね」だそうだ。
「よし、それじゃあ作戦会議だ」
カイトを除く三人はしばらくアレだコレだと騒いでいたが、しばらくすると話も収まった(フローラがラインハルトを撃沈したため)。相変わらずのアイアンボディーのラインハルトは直ぐに復活すると今回狩りについて話を移した。
「ダイミョウザザミの生態については後でコレを呼んで確認しておいてくれ」
ラインハルトは三人に甲殻種のモンスターリストを渡すと話を続ける。
「基本的には二人一組で行動してもらう。……そうだな、武器的に考えると、フローラとリンちゃん、俺とカイトで組んだ方がいいか。目標を発見しだい必ずペイントボールでマークすること。きつかったら離脱してもう一グループの到着を待つこと。これは厳守だ」
「了解」
「おっけ~!」
「わかってます」
自分、リン、フローラの順で返事をした。すでに目的地も近くなってきたので各々の準備を始めた。
◇ ◇ ◇
カイトとラインハルトはリン達と別れると海沿いに捜索を開始した。
「ダイミョウザザミの甲殻はイャンクックとは比べ物にならないぐらい硬いからな。鬼人化を有効活用しろよ」
「そうは言っても、アレ、あんまり連発できないんだよ。スタミナもそうだけど、肉体的にかなり負荷が掛かるからな……」
「もちろん、狙える時はの話だ。ダイミョウザザミは腹の部分が比較的柔らかいから通常時はそこを狙うといいだろう」
「なるほどな」
こういった上級者の話をよく聞くことが何事においても大切だ。
カイトとラインハルトが話しながらエリア4を進んでいくと、目の前に二頭のランポスが現れた。
「どうする、狩るか?」
「……いや、ダイミョウザザミがこのエリアまで来ることは無いだろうから狩っておく必要は無いだろう。必要以上に狩るのは俺のポリーシーに反するしな」
「なるほど、解った。じゃあとっととここを抜けようか」
モンスターだからといって、無闇やたらに狩ってしまえばいいのではない。カイトはラインハルトの考えに少しばかり感心した。
二人がエリア3に達すると、『ヤツ』を発見する。
(いたぞ……、ダイミョウザザミだ)
(先に罠を張っておいてから、ペイントでマーキングするぞ)
そう言うとラインハルトは岩陰に隠した荷車からシビレ罠を取り出した。ダイミョウザザミに見つからないように身を屈めながらに移動して、平らなところにそれを設置する。
カイトは腰のポーチからペイントボールを取り出してダイミョウザザミに投擲する。
ペイントボールが体に付着したことにより、ダイミョウザザミがカイト達の存在に気が付く。
ダイミョウザザミは大きなはさみを上に振り上げ威嚇モーションをとると、振り返ることなくラインハルトに向かって突進をする。
「っと、危ねえな!」
ラインハルトは急いでダイミョウザザミと逆方向にダイブして突進を避ける。
ダイミョウザザミはラインハルトを狙っていたため当然彼の仕掛けていた罠を踏む。
シビレ罠から麻痺成分が分泌しダイミョウザザミの自由を奪った。
「よし、掛かった!」
カイトはランポスクロウズを構えて鬼人化をすると、ダイミョウザザミに乱舞を叩き込む。
(くっ……!全然刃が通らない……!)
ダイミョウザザミの堅固な甲殻に、カイトの攻撃はほとんど弾かれてしまう。双剣を握るカイトの手は、弾かれた衝撃で徐々に力が入らなくなり剣を落としそうになる。
(イャンクックの甲殻なんかとは比べ物にならないな。全てを弾かれてしまう……。これじゃあ、まともなダメージが与えられないぞ……!)
「ふははっ!そこをどけぇっ!」
「なっ!?」
カイトが後ろを振り返ると、ハンマー『グレートノヴァ』を大きく振りかぶったラインハルトが目の前まで来ていた。
「おらぁぁっ!」
カイトが横に避けると同時に、ラインハルトは大きく踏み込み、その豪快な一撃をダイミョウザザミの殻に叩き込む。打撃と同時に、グレートノヴァの属性である雷が発生し、ダイミョウザザミの体を駆ける。殻の破片が粉々に砕け飛び、地が揺れる。
「……な、なんつー威力だ……。じゃなくてオイ!危ねえだろ!?」
「はっはっはっ!悪い悪い」
「悪い悪い、……じゃねえよ!当たったらどうするんだ!死ぬぞ!?」
「まてまて、言い合いをしている時間は無いようだぞ。罠の効力が切れる」
「ああクソッ!……よし、受け取れラインハルト!」
カイトは岩陰の荷車まで戻ると、ラインハルトの方へ大タル爆弾を転がした。
「……オイ、待て待て待て!それはマズイ!」
転がってくる大タル爆弾を避けてラインハルトは大きく前に飛び越す。
その瞬間シビレ罠の効力が切れてダイミョウザザミに自由が戻る。ダイミョウザザミの足元に大タル爆弾が到達すると同時に、カイトが石ころを投げて起爆した。
大爆音と共に大タル爆弾が爆発し、ダイミョウザザミを炎が包む。
「は、ははは……、俺を殺す気か!?」
「ふははっ、悪い悪い」
「この野郎……」
その後も相手に当てんとばかりのギリギリのところで武器を振り回したりと、ダイミョウザザミなど二の次であるかのように互いに闘争心をぶつけ合う。もちろんその全ての攻撃をお互いに避けており、ダイミョウザザミにはちゃっかりしっかり全部当たっているのだが。
カイトとラインハルトは互いに睨みあう。
「……お前とは気が合いそうにないな」
「……同じくだ」
睨みあう二人に向かってダイミョウザザミが突進を仕掛ける。
「「引っ込んでろ!!」」
カイトは両方の剣を縦に同時に振り下ろし、ラインハルトは渾身の一撃を叩き込む。
二人の本気の攻撃をモロに受けたダイミョウザザミは大きく仰け反って怯み、未だに二人が言い合いをしている隙に地面へ潜って逃走した。
◇ ◇ ◇
──数分前
リンとフローラはエリア1を抜けてエリア9の探索をしていた。
「単刀直入に効くけど、フローラってラインハルトの事好きなんでしょ?」
「なっ!?」
突然のリンの爆弾発言にフローラの声が思わず裏返る。
「な、何のこ、事でしょうか?何をワケの解らないことを……」
「ふふ~ん、ウチには隠しても無駄だよ。本当はラインハルトが帰って来てくれて嬉しかったんでしょ?」
「そ、そんなことは……」
フローラは若干顔を赤らめてうつむく。
「でも、照れ隠しのはずが……、ああやってやりすぎてしまったと」
「……うん。……でも、アイツのああいう所は普通に嫌なんですけどね!」
「あはは、ああいう所ね」
ラインハルトのセクハラ行為を思い出してリンは苦笑いする。
「まあそれでも、好きなんでしょ?」
「うん……、って何言わせてるんですかっ!そういうリンちゃんこそどうなんですか、彼とは!」
フローラは照れ隠しにリンへ質問し返す。
「あはは、ウチとカイトはそういう仲じゃないよ。ウチ達は、大切な大切な仲間……ううん、友達だから」
リンはニコッと笑う。
同時にあることに気が付く。
「ペイントの臭気だ!」
「え……、あっ、本当です!」
リンは目を閉じて嗅覚を集中させる。
「……そんなに遠くじゃないね。方角は北の方」
「ここから北というと、エリア3ですね」
「行きましょう」とフローラが言いかけたところで爆音が二人の耳に届く。
「大タル爆弾の音ですね」
「……ペイントの臭気が近付いてくるよ!気をつけて!」
その直後ダイミョウザザミが二人の目の前に土の中から現れた。
「はあっ!」
リンは素早くダイミョウザザミに近付き、大剣を振り下ろす。
リンのゴーレムブレード改はダイミョウザザミの硬い爪に弾かれること無く、逆にそれに亀裂を入れる。
「どうやらあっちの二人が大分ダメージを与えてくれたみたいだね」
「ラインハルトの使うハンマーは、甲殻種の弱点である打撃武器ですからね」
フローラはライトボウガンのグレネードボウガンに徹甲榴弾Lv.1を装填して発射する。グレネードボウガンは徹甲榴弾LV.1を速射できるため、三発の徹甲榴弾がリンの壊した逆の爪に次々と刺さり、連鎖的に爆発を起こして爪を破壊する。
「おお~すごい!射撃が正確だね!」
「いえいえ、たまたまですよ。精密射撃のスキルが発動してますから」
「いやいや、これなら大分有利に進められそうだね!」
振り返ることも無くフローラと会話をしながら、リンは徹甲榴弾でダウンしているダイミョウザザミに連続して攻撃を加えていく。思い切り振り下ろし、薙ぎ払い、切り上げ、また薙ぎ払い……、リンの豪快な攻撃が次々と叩き込まれる。
ダイミョウザザミが立ち上がると、リンは武器をしまって一旦距離をとる。
ダイミョウザザミは口から白い泡をブクブクと吹きながら威嚇をする。
「リンちゃん気をつけて!怒り状態の合図だよ!」
怒り状態の手強さは前回のイャンクック戦で嫌と言うほど身に染みたので、リンは全神経を尖らせてダイミョウザザミに対峙する。
そんなリンを避けてかどうか、ダイミョウザザミは突然フローラのほうを見ると、鋏を頭の前でクロスさせながら泡を溜めて、それからフローラ目掛けて泡ブレスを放つ。
「フローラ!」
「大丈夫です、この距離なら当たらない」
その言葉の通り、泡ブレスはそこまでリーチが無いようで、フローラの目の前で霧散して消えている。
フローラは貫通弾Lv.2を素早くセットし、次々と打ち込む。
弾は亀裂の入っている甲殻をぶち破り、貫通弾がダイミョウザザミの体を紫色の体液と一緒に突き抜ける。
フローラの連続攻撃に何とか耐えたダイミョウザザミはフローラに向かって一直線に突進をする。
「どっちを向いているのかな!」
リンは足に向かって横薙ぎに大剣を振るってダイミョウザザミを転倒させる。
チャンスとばかりに、リンは大剣を振るい、フローラは貫通弾を次々とリロードしながら確実に打ち込んでいく。もちろん、接近して戦っているリンに当たらないようにしながらである。
ようやくダイミョウザザミが立ち上がろうとした瞬間、リンは大きく後ろにステップする。
そこに間髪入れずにフローラが拡散弾Lv.2を打ち込む。
(……フローラは射撃が精密なだけじゃない。状況に合わせて素早く弾の種類を変えているんだ……!)
拡散弾をモロに食らったダイミョウザザミは大きく仰け反る。
「フローラ、見て!口の泡の色が紫色だ!」
ダイミョウザザミは怒り時に吐く白色の泡ではなく、紫色の泡を口から吐いている。
「どうやら瀕死のようです!おそらくどこかで休憩を取って体力回復を狙うはずなので、出来ればこのエリアで仕留めたいです!」
それを聞いてか否か、ダイミョウザザミは急いで地面に潜って逃げようとする。
「って言ってるそばから逃げられちゃいましたね……。仕方がありません、まだペイントの効果も切れないでしょうし、目標を追いかけましょう」
そう言ってフローラがグレネードボウガンをしまおうとしたその時、
「……!フローラ、危ない!」
フローラの足元の地面が揺れている。そう、ダイミョウザザミは逃げたのではなく、単に攻撃のタイミングを見計らうために地面に潜っただけだったのだ。
(えっ、避けられ……ない……!)
フローラはぎゅっと目を瞑って、身体をこわばらせて下からの衝撃を覚悟したその時、なぜかフローラは横からの力で突き飛ばされる。
驚いたフローラが目を開けるとそこには──
「はっはっは、危なかったな!」
フローラを庇う様にして倒れているラインハルトと、ダイミョウザザミに剣を抜いて対峙しているカイトがいた。
「油断大敵だぞ~フローラ。……さて、それじゃあとっとと止めを刺してしまおうじゃないか!」
◇ ◇ ◇
(みんなの攻撃で、ダイミョウザザミの甲殻にヒビが入っている……。これならいける!)
紫色の泡を吹きながら威嚇するダイミョウザザミに、カイトは鬼人化をすると乱舞を叩き込む。
狩りの序盤では弾かれていたカイトの剣も、ボロボロになった甲殻に対してならば十分にダメージを与えられている。
乱舞を続けるカイトに対してダイミョウザザミは大きく両鋏を開いてから、両側から挟むように攻撃する。
それをカイトはダイミョウザザミの足下をくぐることで回避する。
(やっぱり大型モンスターの攻撃は足元では殆ど当たらないみたいだな)
ダイミョウザザミの側面に回ったカイトは後ろ足に5撃連続で斬りつける。
完全にカイトに意識がいったダイミョウザザミが反転しようとして瞬間、リンがゴーレムブレイド改の抜刀斬りを、大鋏を両断するかのような勢いで叩き込む。
「お二人とも離れてください!」
体勢を立て直したフローラがグレネードボウガンを構える。カイトとリンがダイミョウザザミから離れると、フローラは拡散弾Lv.1を発射する。
そして、爆炎に包まれるダイミョウザザミにラインハルトがグレートノヴァを構えながら突進する。
しかしその煙の中には、ダイミョウザザミの姿は無かった。
「む、これは……!」
「危ない!上だ!」
空中の『ソレ』に気が付いたカイトが声を上げる。
ラインハルトの真上には、数メートルも飛び上がったダイミョウザザミの姿があった。そしていま、その巨体がラインハルトに向かって落下しようとしていた。
(あんなのくらったらタダじゃすまないぞ!)
場の空気が凍りつく。
しかし、ただ一人、ラインハルトだけは冷静だった。
そしてその先の光景に、三人は目を疑った。
ラインハルトは落ちてくるダイミョウザザミを一瞥もせずに、その場で片足を軸に急ターンする。そして、掠めるか、掠めないかのギリギリのラインに落ちたダイミョウザザミに向かって軸足をそのままに、振り向いた時にハンマーに掛かった遠心力を利用して、更に半回転してダイミョウザザミに叩き込んだ。
その勢いは止まらずに、ラインハルトは両足を軸にハンマーの遠心力で更に数回転しながらダイミョウザザミに攻撃を加える。そして最後に片方の足で急ブレーキをかけて、グレートノヴァを下から上へフルスイングする。
一切の無駄の無い、まるで最初からわかっていたかのような一連の攻撃に三人は唖然とする。
(これが……、リオレイアをも討伐するハンターの実力か……!)
(す、すごい……。ウチ達とは格が違う……!)
(しばらく会わない内にまた強くなってる……)
言葉が出なくなっている三人にラインハルトは高らかに笑う。
「はっはっは、終わったぞ!」
腰に手を当てて笑っているラインハルトの後ろのダイミョウザザミは、既に動かなくなっていた。
──ポッケ村のとある家の一室──
「──と、いう訳でお前にはザンガガ村に向かってもらいたいんだが、いいか?」
「ふ、お安い御用ですよ。友の頼みとあれば、断る理由が無いですから」
「それは助かる」
「しかし、この辺りはどうも嫌な感じがしますね。気を付けてくださいね、ガウ」
「ああ。お前も道中気を付けろ、ダフネ」
そういうと、ダフネと呼ばれた男は立ち上がって玄関へ向かう。
「もう行くのか?」
「ええ、ドンドンルマ方面に行くっていう商隊の荷車に乗せてもらいますから」
「そうか、じゃあ頼んだぜ」
「ええ、任せてください」
部屋を出て行く男に一瞥だけすると、ガウはコーヒーを啜った。
「嫌な予感なんて、とっくの前からしているんだよ」
次の話もできているので、また後日投下します。