Deadline Delivers   作:銀匙

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第39話

商工会議所での打ち合わせから1週間後。

 

「やぁ、曳航ありがとうナタリア。随分綺麗な島だねぇ」

「コレグライ簡単ヨ」

ワルキューレが護衛し、ナタリアが曳航する小船でファッゾ達5人はその島に辿り着いた。

ナタリア達が人の姿に戻った時、島の建物から龍田達が出てきた。

「お待ちしておりました」

町長が近寄る。

「龍田様、この度はお世話になります」

「町長さん達が今回のお話の方だとは思いませんでした~」

「今後とも、我が町を何卒よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。末永く」

テッドは龍田がちらりと見た視線に気づいた。

「あぁ龍田・・その、所長は元気かよ?」

「ええ。この処置も受けてますます元気ですよ」

「えっ、所長も艦娘化処置受けたのかよ?」

「不老長寿化処置、です。艦にはなれませんよー?」

「まぁどっちでも良いじゃねぇか。するってぇと所長も長生きするって事か」

「テッドさんを海軍に呼び戻すチャンスが増えるって喜んでましたよー」

「げっ」

「いっそ、かけもちとかどうですかー?」

「止めてくれマジで止めてくれ。それ所長に言うなよ?絶対言うなよ!」

「あらぁ、フラグですね~」

「違~う!」

その時、ライネスが準備を済ませて出てきた睦月に訊ねた。

「えっと、今日の処置をしてくれる方ですか?」

「そうですにゃーん」

「ちょっと図々しい頼みかもしれないんだが、若返るって出来るかな?」

「大幅には無理ですけど、シワを取るとか痩せる程度ならオプションで簡単に出来ますにゃーん」

「じゃあ10歳分くらい頼めないかな。あちこちガタが来ててな」

「体調を整えるって事ですか?」

「そうなるかな。老眼とか10年前には無かったからなぁ・・」

「解りました~!お任せくださいにゃーん!」

「ありがとう」

がやがやとした雰囲気になったので、文月がパンパンと手を叩いた。

「あまり時間も無いので、早速始めたいと思います。ではライネスさんからどうぞ」

ライネスはニッと笑ってファッゾ達に手を差し出した。

「じゃ、実験台になってくるさ」

「ちゃんと帰ってこないとルフィアが泣くぞ?」

「解ってる」

ぐっと握手をした後、ライネスは煤で汚れた「工廠」と書かれた建物に入っていった。

15分後、ライネスの注文通り若返った姿で出てきたのだが、龍田はそれを知らなかったので

「あ、あら・・あらあらあら・・若くなっちゃいましたか~?」

と、驚いた様子だった。

程なくオプションの話を聞いた残る面々も幾つか希望した。

それは体脂肪、血圧、尿酸値、肝機能、薄毛、老眼等の改善と切実なリクエストだったのであるが、

「ふぅん、そういう事の改善に価値を見出すんですね、なるほど、なるほどぉ・・」

と、龍田は興味津々の様子でメモを取っていたという。

こうして2時間足らずで全員の処置が済み、再びワルキューレの護衛の下で帰っていった。

 

港町で迎えたルフィアはライネスを見てキャアキャア言いながら飛びついた。

「あなたー!ステキ!カッコイイ!」

「そうか?これでずっと一緒だぞ~」

「そうね!ずっと一緒に居られるわね!」

「クーちゃんは?」

「お店でお祝いの支度してるわ!さぁ早く帰りましょ!」

そう言って手を引くルフィアに引っ張られながらも、

「ファッゾ、ナタリア。改めてお礼に行くから。じゃあな!」

といって去っていった。

そして波止場に止めていた自分の車の傍で、テッドに近寄る珍しい姿があった。

「あれ?なんだ武蔵、迎えに来てくれたのか?」

「ちょっと用事があったからな。ついでだ。つ・い・で!」

「まー何でも良いや、迎えてくれて嬉しいぜ!」

「んっ・・ど、どういたしまして。で、どこも変調はきたしてないのだな?」

「そうだな・・ああ、心配ないぜ!」

「あと・・少し痩せたか?」

「おっ、気づいたか。どうだ、格好良くなっただろ?なんてな!」

「・・あぁ」

「えっ?」

「なっ、何でもない!何をきょとんとした顔で見てるんだ!」

一方。

「じゃあわし達はこれで」

「帰る前に町長とサシで一杯引っ掛けようって事になってな」

そう言って町長と署長も帰っていったので、埠頭にはワルキューレとファッゾだけが残った。

「・・・」

ファッゾを後ろから見るナタリアの様子を見て、フィーナ達は頷くと

「あーボス、私達は先に戻って、ミストレルちゃん達に伝えてきます」

「バイクじゃないんで歩いて行きますね~」

「ごゆっくり~」

そう言って立ち去ったのである。

「え?あー・・余計な事を・・」

カリカリとファッゾは頭を掻いて振り向くと、ナタリアが俯き加減にポロポロと涙をこぼしていた。

「えっ?ナ、ナタリア?」

「ずっと、ずっと心配してたのよ・・」

「ナタリア・・」

「私が余計な事を考えたせいであなたが居なくなったら、私・・」

「だ、大丈夫だよナタリア、ええと・・」

ファッゾはそっと、ナタリアの両手を両手で包んだ。

「ほら、俺はここに居る。生きてるし、どこも痛くない。ナタリアのおかげで奇跡が起きたんだ」

「・・・」

「これからはずっと一緒の時間を歩めるんだ。共に祝おうよ。な?」

「・・ずっと?」

「あぁ。ずっと一緒だ。その為に俺は不老長寿になったんだ」

ナタリアが泣きながらファッゾに抱きつき、ファッゾはナタリアの頭を優しく撫でた。

 

「・・超、出て行き辛ぇ」

少し離れた倉庫の影で、ミストレルはカリカリと頭を掻きながら言った。

フィーナが頷きながら言った。

「呼びに行こうとしたらばったり会っちゃいました、なんて都合が良過ぎるしね」

フローラが耳にヘッドホンを押し当てながら相槌を打つ。

「本当の事なんだけどなぁ・・でも録音はする」

ミレーナがびしっとフローラに突っ込んだ。

「なんで持って来てんのよ!」

その時、ベレーが微笑んで言った。

「ファッゾさん、ナタリアさん、お二人ともすっごく嬉しそう」

ミストレルが頷いた。

「あぁ、姉御があんなに泣いてるの初めて見たぜ」

「私に親切にしてくれた人が、ちょっとずつでも幸せになれば、良いなって、思ってたから、良かったです」

フィーナは思った。

この子は普段はこんなにか細い感じの可憐な美少女なのよねぇ。

ファッゾのご飯とビーネンシュティッヒへの執着はすさまじいけど。

ぽん。

置かれた手に気づいて振り向いたフィーナに、フローラとミレーナがニッと笑っていた。

「ボス、嬉しそうだよね」

「ええ」

「ずっとアタシ達優先で手を尽くしてきたボスだから、一番幸せになって欲しかった」

「そうね。ファッゾさんも私達と同じ時を歩めるようになったし」

「結構良い感じでまとまったんじゃない?」

「後は会社が傾かないように、今まで以上に頑張るだけね」

「えっ?」

「そこはさ、上手にこうやりくりしてさ、もうちょっと余暇を作るって方向でさぁ」

「だってフローラに余暇あげたら年がら年中出歯亀しそうじゃない?」

「私そんな変態じゃないよ?」

「今手に持ってるものが何か言ってみなさいよ」

「ガンマイクのMKH816よ?」

「説得力0じゃない!」

「フィーナだってこの前一緒に聞いてた仲じゃな~い」

「いっ!?あ、あれは」

その時。

 

 「いつ、何を聞いてたのかしら?フィーナ、フローラ」

 

声の方をそっと振り向いた先には、まず苦笑するファッゾが見えた。

そしてその隣には冷たい微笑をたたえたナタリアが腕組みして仁王立ちし、

 

 「ゆっくり、お話聞かせてもらおうかしら?」

 

そう、低い声で伝えたのでフィーナ達は心底震えたという。

 

 

 

 

 

 




第4章、終了です。

ナタリア達ワルキューレの面々がどうして不動の地位を築き、そしてこの町がどうして深海棲艦の安住の地となったのか。
その辺を絡めてお伝えしました。
これでこの町の生い立ち部分はあらかた表現出来たかと思います。

1章並の長さは短編とは言い辛くなりましたが、ファッゾの制御装置取り外し前後の心の違いや町の設立経緯に関わる中でのナタリア達の変化といった物を1度は書いておきたかったのです。

さて、毎日更新を続けておりましたが、そろそろネタ切れのお時間となりました。
まずはこれにて本年の営業を終了させて頂きます。
そして、次を始めるかを少し迷っております。
オチを固められてないのと、年初からシリアスで良いのかしら、と。
続編希望のコメントとか、平均評価が9越えるとか、まさかの推薦とか頂けたら頑張ります。
明日は大晦日だし、ご覧になっている方も少ないでしょうけどね…
え、ええ、書いたからにはお約束しますよ。


では、ご挨拶に入りたいと思います。

本作を高く評価して頂いた皆様。
何度もコメントを残してくださった皆様。
始めにおかえりと声をかけてくださった皆様。
なにより、マニアックな設定にお付き合い頂いた皆様。

皆様が居てくださったからこそ、今日までほぼ毎日筆を運ぶ事が出来ました。

ゲームを原作としながらどこまではみ出しても皆様と世界観を共有出来るかという点でとても実験的で、だからこそ前作以上に温かいコメントや高い評価といった皆様からの直接のアクションを頂けるのが何よりの楽しみであり、書く励みとなりました。
おかげさまで前作並みの☆9つ近い評価を頂くまでになりました。

この場を持ちまして厚く御礼申し上げたいと思います。
今まで支えて頂き、本当にありがとうございました。

それでは、皆様。
どうぞ良いお年をお迎えください。

ありがとうございました。






と言ったのが昨日の事でしたね、ええ。

あれですよ。
久しぶりにフラグ立てたので色々忘れてました。
沢山の続行希望コメント、評価9越え、推薦、さらには美味しいネタまで頂いて。
1年の最後の日に、とても温かい気持ちを沢山頂けました。
楽しみにして頂けるって、嬉しいですね。
どうもありがとうございます。

ええ、年内営業終了を返上して書いておりますよ。
明日の朝には第1話を公開出来るよう、話を整えております。
それでは、元旦の午前6時にお会いしましょう。
紅白見る余裕あるかなぁ(汗)
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