Deadline Delivers   作:銀匙

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S.06話

12月27日昼頃、ファッゾの家では。

 

ファッゾがミストレルを見ながら肩をすくめていた。

「まぁ、うちに国籍は無いようなもんだからな」

対するミストレルは眉を顰めている。

「にしたってよぉ・・」

ナタリアがふふっと笑った。

「みっちゃんがおせちにこだわるタイプだとは思わなかったわねぇ」

「別におせち100%じゃなくても良いんだけどさ・・日本の正月って奴がさ・・」

ベレーがぽえんとした顔で袋を指差した。

「こっちの包みはお肉、豆腐、長ネギ、お餅です。すき焼き楽しみです」

フィーナが別の包みを指差した。

「こっちはカニ、白菜、厚揚げ、きのこ、タラ、そして昆布とポン酢。カニ鍋の準備は万全よ」

フローラが持っていた包みを持ち上げた。

「3日目のカレーの具材一式、ちゃんとゲットしてきました!」

ミストレルは縋るような目でミレーナを見た。

「な、なぁせめてお前くらいは・・」

「冷凍の本マグロ、鯛、イカ、甘エビの刺身、後は大根です!元旦はお刺身尽くしです!」

「近いけど・・・違う・・・ほら、伊達巻とかさぁ」

ナタリアが首を傾げた。

「そんなにみっちゃんおせち食べたいの?」

「せめて朝だけでもさぁ・・」

「でも私、今までおせちって食べた事も作った事もないわよ?」

「えっ?」

「鎮守府では訓練かねて1年中レーションばっかりだったし」

「マジかよ」

「だから美味しいとか以前に知らないのよね」

ミストレルは立ち上がった。

「なら姉御に腹一杯食わせてやる!アタシが雑煮作る!」

「作れるのみっちゃん?正月からお腹壊したくないわよ?」

「出来るよそれくらい!」

ファッゾは肩をすくめた。

「まぁ買ってきたのは全部夕食用だから、朝と昼兼ねておせちと雑煮でも構わないぞ」

「サンキュー!じゃあファッゾ、おせち本体頼む」

「俺は作り方知らんぞ?」

「へっマジ?」

「ああ」

「え、だって今までおせち・・」

「買ってきてたからな。市場で」

ミストレルは車のキーを掴んだ。

「よし。じゃあアタシが買ってくる」

「いってこい。あぁ、小さいのにしろよ?大きいの買っても飽きるから」

「解ってる!あと、雑煮の具も買ってくる!ファッゾお金!」

「はいはい・・じゃあ2万コインで頑張れ」

「よっし!」

ミストレルが出て行った後、フィーナがそっと訊ねた。

「あの、おせちって意外と高いんですね」

「まぁ大きいのだと4~5万位するからなあ」

「カニ鍋セット一式で7000コインくらいですよ?」

「まぁすき焼きも似たようなもんだよな」

「カレーなんて2000コインもかかってないですよ?」

「お刺身は1万コイン近く行ったかな」

「まぁおせちは数回分あるとはいえ、ちょっと高いのは事実だな」

ナタリアはファッゾを覗き込んだ。

「ねぇ、もしかして今年意図的に外したの?」

「いや、誰か食べたいなら買ってくれば良いと思って特に言わなかっただけだ」

「・・予算大丈夫?」

「年を越せるくらいの金は貯めてあるよ」

「さすがファッゾお父さんよね」

「ナタリアお母さんも来年からは出来る節制はしてくれよ」

「例えば?」

「真夜中に港でモヒート11本も飲んで寝込むとか」

「ごめんなさいもうしません」

 

 

その夜。

 

「うん、なんとなくこの展開は読めてた」

「だってー」

 

そう。

資材庫に着いたビットは整理しようという意気込みはあった。

しかし箱を1つ、また1つと開けていくと

「あーこれ、懐かしいわねぇ。今となっては手に入らない部品だもんねー」

と、回顧モードが作動してしまった。

そしてそのまま夜になって様子を見に来たアイウィに見つかったのである。

「もう、あの2本のコンテナの中身は捨てる?」

「ま、待って!大事な部品もあるし!」

「じゃー資材庫の中身を捨てる?」

「こ、こっちもいつか使える部品が沢山・・あって・・」

「じゃーどうするの?」

「・・島ちゃん。お願いがあるんだけど」

「うん」

「晩御飯、ここで食べられて、ちょっと美味しい奴を買ってきてくれないかなぁ」

てっきりコンテナ2本貸してくれというのかと思っていたアイウィは目をぱちくりさせた。

「え?」

「サンドイッチとかで良いから。ねっ?」

「どうするの?」

「明日の0830時までにはきっちり整理するから。ね、お願い」

アイウィは目頭が熱くなるのを感じた。

ようやくビットが本気になってくれたのか。

「そうだね。こんな時冷えたレーションじゃ元気出ないもんね。じゃあちょっと隣町のスーパーで買ってくる!」

「ごめんね、日が暮れてから頼んじゃって」

「良いよ良いよ、夜食も買ってくるね!」

「・・終わらないって言いたい?」

「終わったら二人の朝ごはんにすればいいし!じゃあね!」

「いってらっしゃーい」

車の方に走っていくアイウィの後姿を見送ると、ビットはふんすと鼻から息を吐いた。

「よっし!片付け開始!」

 

 

 




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