Deadline Delivers   作:銀匙

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第14話

 

まもなく昼を迎える頃。

 

武蔵達5人とミシェル達は互いの健闘を称えあっていた。

「そうか。周辺海域の部隊が協力してくれたのか。良かったな!」

「ハイ。局員全員ヲ殲滅シ、研究局モ山ゴト粉砕出来マシタ。皆様モ、ヨクゴ無事デ」

「いや、それがな・・」

そこに。

「あのー、少しお話しても良いかなぁ?」

一同が振り向くと、そこには金剛達ソロル鎮守府腐敗対策班攻撃隊と龍田が立っていた。

武蔵が応ずる。

「先程支援攻撃をしてくれたのは貴方達か?」

「そうよー」

「まずは礼を言う。で、本作戦は極めて特殊なんだ。その・・あ!この2体は協力者の深海棲艦で、ええと」

龍田はくすっと笑うと

「大丈夫よー。テッドさんから今回のお話は全部聞いてますから」

武蔵は龍田の言葉を聞いてホッと溜息をついた。

「そ、そうか。どこから説明してよいやらと途方に暮れていたのだ」

龍田はかつて鎮守府だった崖を眺めて言った。

「鎮守府は・・跡形も無いですねぇ」

「う・・そ、そうだな。だがこれはやむを得ずで」

「上がる場所も無いし、立ち話もなんですから、うちの鎮守府にお越しくださいな」

「し、しかし、そちらの司令官殿は承知してるのか?」

「勿論よ」

武蔵は神通を、ついでミシェルを見た。

神通が頷いた。

「いずれにしても、我々は軍に事と次第を説明しなくてはなりません」

ミシェルがポンと武蔵の肩を叩いた。

「サァサァ、突ッ立ッテテモショウガナイワ。行キマショ」

武蔵はふと、その仕草に亡き姉の面影が重なった。

「貴方は・・まさか・・」

その言葉は龍田の声で塞がれた。

「じゃあ皆さん、周囲は金剛さん達が警護しますから、ついてきてくださいねー」

 

 

ソロル鎮守府で出迎えた提督達に向かって、神通はピシリと敬礼しながら言った。

「この度の支援攻撃に対し、まずは厚く御礼申し上げます」

「うん。皆それぞれ損傷があるね。話は後だ。まずは工廠で修復を。バケツを使いなさい」

「えっ?そんな、貴重な物資を・・」

「大丈夫。長門、工廠に案内してやってくれ」

提督の傍らに控えていた長門は頷くと、

「うむ、艦娘の皆さんはこちらへ」

そう言って5人を工廠へと連れて行った。

ミシェルとサマンサが微笑んで見送っていると、提督は続けた。

「ところで、お二人の損傷は?」

サマンサは一瞬、何を言われてるのかが解らなかった。

「・・ハイ?」

ミシェルはおうむ返しに程度を答えた。

「ア・・アノ・・小破程度デスガ・・」

提督はにっこり笑うと、傍らに控えていた東雲に言った。

「じゃあ一緒に直してくると良い。東雲、頼んだよ」

「解った」

「ヘ?」

ミシェルはぽかんとして、足元に寄って来た東雲を見つめた。

この子は・・妖精?でも鎮守府の妖精よね?

「さぁ、こっち来て」

ぐいと手を引っ張られ、ミシェルはよろめきながらもついていった。

「エッ?私、アノ、深海棲艦デ」

「解ってる。見えてる」

サマンサも事態を理解出来ていなかった。

「エッ?ココ、鎮守府デショ?エッ?」

 

 

「おかげ様で全員修復と補給が終わりました。重ねて厚く御礼申し上げます」

神通に続き、人の姿に化けたミシェル達が照れた笑いをしながら言った。

「えーと、あの、私達まで対応して頂けるとは思って無かったです」

武蔵達がぎょっとした顔でミシェルを見た。

「ええっ!?深海棲艦も直せるの!?」

ミシェルも戸惑いながら頷いた。

「そうなんです。なんか普通にバケツ使って直してもらいました」

「バケツ万能すぎる!」

「とりあえずそこまでよー」

提督の隣でパンパンと手を打ちながら、龍田が口を開いた。

「先に遂行結果についてまとめるから、間違ってたら言ってねー」

だが、山城は懐からドローンを取り出して言った。

「この4機のドローンが戦域上空で全てを記録していたわ。良かったら使って」

提督は手を顎にやった。

「へー、ドローンを記録用に戦闘海域上空に放っておくか。良いアイデアだねぇ」

「べっ、別に・・普通よ」

「じゃあデータをコピーさせてもらおうか。夕張に報告内容の比較と合わせて頼んでくれないか」

「はーい、じゃあ渡してきますね。えっと、攻撃隊の皆もお疲れ様ー」

「ワーオ、コングラチュレイショーン!」

金剛達攻撃隊の面々はガタガタと席を立ち、武蔵達に労いの言葉をかけて部屋を出て行った。

 

パタン。

 

榛名が外から静かにドアを閉めると、提督室には提督と長門、神通達5人、そしてミシェル達が残った。

提督がにこりと笑って頷いた時、神通はきゅっと覚悟を決めた眼差しになった。

そして提督が口を開く前に口を開いた。

「本件の責任は全て私が取ります。どうか、他の方達には寛大なるご処置をお願いします!」

武蔵が気色ばんだ。

「馬鹿を言うな!無理矢理連れ出したのは私だ!私が責任を取る!」

「艦隊旗艦として!秘書艦として!私が!」

「いーやダメだ!」

長門が静止しようとするのを、提督は手で抑えつつ、頬杖を突いて言った。

「本当に全然変わってないね、お二人さん」

すっかり興奮していた武蔵と神通はギッと提督をにらみつけた。

「何の事だ!」

「ほら、もう何年も前になるけど・・君んとこの潮と羽黒が他の鎮守府の遠征艦隊と衝突事故を起こしてさ」

「・・・?」

「話を聞きに行った時も、開口一番そうやって二人で自分のせいだって言ってさ」

「・・」

「ただの事情聴取だよって言ってるのにどちらが腹を切るだの切らないだので口論を始めたからさ」

「あ・・」

「ちょっと静かにしてもらったでしょ?」

一足先に気付いた神通は、蒼白になってカタカタと震え出した。

武蔵はそんな神通を二度見したが、その途端に思い出した。

恐る恐る武蔵は提督を見た。

うん?いや、あの時の・・でも、奴はスーツ姿の事務官だったはずだ・・

 

 

 


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