Deadline Delivers   作:銀匙

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第11話

ポーッ!

 

少し遠くで船の汽笛が聞こえる、薄明かりが差し込む海沿いの倉庫。

ルフィアはうきうきとはやる心を押さえつつ、北欧の地上組と最後の事務手続きを進めていた。

終わりを告げようとしている北欧の夏は、それはそれは過ごしやすい神の気候だった。

暑くもなく寒くもなく、湿度は低く日差しは温かい。

日本のように深海棲艦を追い回す公安も881研も居ない。

この取引が終われば往路用の予備日が2日間そのまま残っている。

クーと昨晩相談し、明日明後日で町を散策する事に決めていた。

市内を歩くだけだが、本物の北欧の町であり、旅行気分は十分味わえる。

名所も1~2箇所は回れるだろう。

おじさまへの土産もここで買おう。

何を買っていったら喜んでくれるだろう?

そうだ、たまにはテッドにもお土産買っていこうかしら?

サルミアッキとか。

 

しかし。

 

外で地響きがしたかと思うと、突然倉庫のシャッターを装甲車が突き破って来たのである。

あまりの出来事に呆然とする面々に、装甲車のスピーカーから声が響き渡った。

 

「全員その場を動くな!機動警察麻薬取締班だ!」

 

その声を合図に、四方から完全武装した集団が突入してきた。

外には赤色灯の瞬きも見える。

本物だと確信したルフィアは咄嗟に叫んだ。

 

「全員手を挙げて!抵抗しちゃダメ!」

 

 

翌日。

 

「・・・」

「じゃあ君は日本からここに書いてある物を届け、持ち帰る荷物を仕分けしていた、それだけだと言うんだね?」

「その通りです。何度もご説明しています」

「ふぅむ・・」

机を挟んでルフィアと対峙している警察官は、ガリガリと頭を掻いた。

何一つ、疑いの余地も無い。

他の部屋で取り調べている関係者の調書も全て一致していた。

日本から来た少女がこの国の友人に荷物や土産の品を持参した。

そして日本に居る友人にこの国から荷物を持って帰る約束もしていた。

だから荷物を取り違えないよう、皆であの倉庫で確認していた。

総合するとそういう話だったのである。

 

機動警察が突入してきた時、ルフィア達は全員人間の姿だった。

ゆえに少女と若い女性が数名、荷物の隣で突入してきた自分達を見てぽかんとしていた。

そんな構図だったので、突入当初から機動警察の面々は嫌な予感がしていた。

無論、機動警察はマニュアルに従って全ての荷を開封し、涙目のクーを前にしても毅然とした態度で調べを進めた。

携行型X線探知機もくまなく使った。

しかし荷物はおろか、床下からも、壁からも、什器の中からも、麻薬のまの字も出なかった。

さんま蒲焼の缶詰にはさんまの蒲焼しか入っていなかった。

麻薬犬は最後に開缶されたシュールストレミングの臭いに半狂乱となり5ブロック先まで逃げていった。

完全にシロだったのである。

 

空振りや誤認逮捕というのは、警察にとって大変恥ずかしい出来事である。

特殊部隊が装甲車で強行突入したとあっては尚更である。

どうしても疑いを捨て切れなかった機動警察は署に全員連行したものの、そこは人権がしっかりしている北欧。

(外見は)未成年の少女相手に証拠もなく取調べをしていると聞きつけた各種団体や弁護士が即座にすっ飛んできた。

新たな証拠も出ず、彼らの猛抗議もあって夕方には取調べが終わった。

全容が解明されていないとして留置場に一泊となったが、食事を与えられ、睡眠も取ったうえで今朝を迎えていた。

しかし。

痛くも無い腹を探られたルフィアは静かに深く怒っていた。

この地に無関係の荷物は下ろしてなかったので無事だったが、ここでの取引分は全部パアだ。

送り主には自分達が謝らねばならないし、配送事故ゆえに約定で送料の半額を返さねばならない。

保険のかかっている品は保険会社と山のような事務処理をしなくてはならない。

よりにもよって、一番燃料代の高い北欧ルート。半額貰おうと大赤字である。

警察官を睨むルフィアの瞼がピクピクと動いた。

この阿呆共は何を根拠に私達の取引を邪魔したのだ!

話題は繰り返しになり、ルフィアには睨みつけられ、警察官が少し引いた時、部屋のドアがノックされた。

「はい・・えっ・・あ、あぁ・・・・解りました」

入ってきた警察官と言葉を交わした後、取調べを行っていた警察官は決まりが悪そうにルフィアの方を向いた。

 

「その・・通報者の悪戯だったという事が判明した。君達の嫌疑は晴れた。釈放だ」

 

だがルフィアはジト目で見たまま身じろぎ1つしなかった。

その凄まじい無言の抗議を察した警察官は何度か咳払いした後、

「えー、ご・・誤認逮捕をお詫びする」

と言ったが、ルフィアは一歩も譲らず見続けた。

「・・荷の、事、かな?」

ルフィアはゆっくりと頷いた。

折角運んできた荷も、受け取る筈だった荷も、倉庫の床にバラバラにぶちまけられた。

おまけに取引所として北欧地上組が管理する倉庫もメチャクチャだ。

巧妙に隠されている事が常の麻薬捜査では徹底的な調査は最も肝心ゆえに決して違法行為では無いが・・

 

 知 っ た 事 か

 

警察官はついにルフィアから目を逸らした。

「そっ、それについては追って賠償請求、もしくは裁判を通じて補償額が確定されるだろう」

「私達は遠路はるばる日本からこの地まで、数多の苦労を乗り越えて物を運んできたんです」

「うっ・・」

「日々治安を維持されている事は敬意に値します。ですから我々にも尊敬出来る対応をお願いします」

「ぐっ・・」

「さぁ!」

警察官は溜息をつくと

「荷を台無しにした事を詫びる。後、予定が許すなら留置場でフイにしてしまった一晩の代わりを用意しよう」

「・・具体的には?」

「市内で一番見晴らしの良いホテルを手配するというのはどうかな。あとはその・・ええと」

「台無しにされた物の代わりにお土産を買いたいんですけど」

「それならホテルに併設されたショッピングモールがある。市内で一番大きい。何でも揃うだろう」

ルフィアはにこりと笑うと立ち上がった。

「ありがとうございます。賠償は別にして、早速宿にご案内頂けますか?疲れてしまいました」

自分も怒りの気力が切れたらどっと疲れるだろうし、きっとクーも限界だ。

ルフィアはそう考えていたのである。

 

 

 




ご指摘感謝。寝とぼけ過ぎですね…
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