蔓延る闇に立ち向かえ   作:風森斗真

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不意に思いついたので、執筆してみました。
基本的にアニメ準拠です。
安倍一族は転生していますが、晴明は晴明神社に祭られているので転生していません。
なお、もっくんは霊媒(見鬼)にしか見えません。


旧校舎の悪霊
File.1


 世に不思議は多くあれど、人が知り、人が聞き、人が見なければ、それらはないものと同じ。

 人、人、人。

 人こそこの世で最も不思議なものなり。

 されど、その陰には人ならざるものがあるもまた事実。

 彼らは時として人に語り掛け、人に牙をむく。

 それら、害なす不思議(もの)を、古来、人は妖、あるいは悪霊と呼んだ。

 

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 都内にあるとある高校。

 その教室に、四人の少女たちが集まっていた。

 各々の手には照らされた懐中電灯が握られている。

 それで下から顔を照らしながら、少女の一人が話を紡いでいた。

 

 「でね、その女の人はおまわりさんの指示通り、公衆トイレに入って行ったんだって……そしたら……」

 

 少女のうちの一人、やや濃い茶髪の小柄な少女が恐怖をおさえるかのような表情で語り続けていた。

 彼女たちが行っているものは、いわゆる百物語の短縮版。

 一人につき一つ、怪異を語り、灯りを消したのち、数を数えると、そこに"いるはずのないもう一人(幽霊)"が現れるという。

 彼女たちはそれを検証するためなのか、それとも単なる怖いもの見たさなのか、怪談話に興じていたのだ。

 少女が語り終え、灯りを消した。

 すると、もう一人が語り始めた。

 そうして順番に語り、すべての明かりが消え、彼女たちは数を数え始めた。

 

 「一」

 「二」

 「三」

 「四」

 

 怪異を語った順番に番号を唱えていったが、最後に、その場で唱えるはずのない、五の番号が唱えられ、少女たちは恐怖のあまり悲鳴を上げた。

 が、その視線の先にはかなり顔立ちの整ったやや年上の青年が立っていた。

その青年が、ありもしない番号を唱えたことは明白だった。

 

「……あ、あの、いま五って言ったのは、あなたですか?」

「……そうだけど、何かまずかったかな?」

 

 少女の一人、谷山麻衣の問いかけに、青年は無表情で答えた。

 これが、彼女にとって運命的な出会いのきっかけとなる出来事だとは、この時の彼女は知る由もなかった。

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 同日、東京某所の少しばかり大きな神社の敷地内にある屋敷の中に、一人の老人と青年が対面して座っていた。

 

 「……昌浩や。お前の通っている高校の校長から除霊の依頼を受けた」

 「……わかりました。ちょっと行って、パパッと除霊してきます」

 

 老人のその言葉だけで、昌浩と呼ばれた青年は老人が何を言わんとしているか察し、行動に移そうと立ち上がった。

 だが、それを制するように手のひらを昌浩に向け、老人は続けた。

 

 「落ち着きなさい。そうせっかちではいかんぞ?仮にも京都の本家から分かれたとはいえ、わしらはあの稀代の大陰陽師の血を引く一族……そう軽々しく行動に移してどうする?」

 「……はぁ……そうでしたね。そんで、どういう因果か、じい様はいま京都の本家で祀られているご先祖様と同じ名前ですしね」

 

 どういうことなのか察しかねているらしく、昌浩青年は怪訝な瞳を老人に向けた。

 その視線を飄々とかわし、老人は言葉を続けた。

 

 「わしの見立てでは、この学校の旧校舎に霊など存在してはおらん。おそらく、地盤沈下かはたまた建物の老朽化が原因じゃろうて」

 

 霊や妖の仕業、と言われる事象の半数は大体が科学的に説明できる。

 例えば、家鳴り、という現象がある。

 誰もいないはずなのに誰かが歩いているような、床の軋む音が聞こえるというものだ。

 これは、家を建築する際に使われる木材の膨張やちょっとした歪みが原因とされている。

 そういったものは、大抵が害のないものであり、彼らのような陰陽師の出る幕ではないのだ。

 つまり。

 

 「なら、俺にわざわざ代役を頼む必要はないですよね?やっぱり霊以外の何かがあるってことですか?」

 

 昌浩のいうとおり、科学的には説明がつかない現象が起こるからこそ、こうして彼らにお鉢が回ってくるというわけだ。

 

 「うむ……ちと、気になるのでな。ちょっと行って、様子を見てこい」

 「……様子を見るだけ、ですか?まぁ、下手に関わってこっちに害が及ぶのはまっぴらですけど」

 「まぁ、その時は神将を頼れば良い。特に、謄蛇(とうだ)はよくお前について回るのだからな」

 

 人を食ったような笑みを浮かべながら、老人は昌浩にそう告げた。

 昌浩はその様子を見てそっとため息をつき、了承したことを伝えはしたが、胸中では。

 

 ――名前は一番短い呪ってはいうけど、じい様と同じ名前でこの性格なんだからなぁ……紅蓮たちはどう思うのやら……

 

 それこそ、「本物の安倍晴明」の孫としての記憶を持つ自分と、実際に彼らとともに過ごした式神たちは、いま目の前にいるこの人物が、魂は違えど、晴明の性格をそのまま引き継いでいることに、驚きと呆れに近い思いを抱いていた。

 

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 時は平安。

 まだ人と闇に身を潜めるものが共存していた時代。

 時として人に手を差し伸べ、妖ろ呼ばれるものの害悪から人々を守るものたちがいた。

 暦を作成し、星の運行を見守る中で、魔物を祓う力を持つ彼らを、人は「陰陽師」と呼んだ。

 その中でも抜きん出た才能を持つ陰陽師が一人いた。

 彼の名は安倍晴明。人は彼を、稀代の大陰陽師と呼んだ。

 そして、その後継として据えられた少年がいた。

 彼の名は、安倍昌浩。晴明の孫である。

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