蔓延る闇に立ち向かえ   作:風森斗真

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『旧校舎の悪霊』編のエピローグです
麻衣側と昌浩側、二つの視点でお楽しみください……昌浩のところは、若干、力業感が否めませんが(汗

とりあえず、次回から『人形の家』編をお送りする予定です
なお、『人形の家』編から、地の文での一也の呼称を「ナル」に変更します


File.10

 一也が撤退を指示し、機材の撤収を終わらせてから数分後。

 麻衣は授業を受けながら呆然と窓のほうを見ていた。

 終わったということはわかっているのだが、麻衣の心には一抹の寂しさのようなものがあった。

 確かに、怖い思いもした。苛立つこともあった。

 だが、確かに楽しかったのだ。

 昌浩や法生や巫女、ジョン、真砂子、リンそしてナルと一緒に調査していたあの時間が。

 

 ――みんな、今頃どうしてるのかな……

 

 旧校舎に視線を向けながらそう考えていると、麻衣の脳裏に何かが走った。

 麻衣は思わず立ち上がり、窓の向こうにある旧校舎へと視線を向けた。

 授業中であるため、教師からお叱りの声が聞こえているが、その声が遠い。

 何かが起きる。そんな予感がしたその時だった。

 

 旧校舎が突然、大きな音を立てて倒壊し始めた。

 突然のことに、教室中は大騒ぎになり、クラスにいた生徒全員だけでなく、教師さえも旧校舎にくぎ付けになった。

 麻衣は思わず教室から飛び出し、旧校舎のほうへとむかった。

 倒壊の音を聞きつけてか、周囲は生徒や教師だけでなく近隣に住む人々も混ざって人混みができていた。

 その中には、法生や巫女さん、ジョン、真砂子の姿もあった。

 だが、一也とリンの姿も、彼らが機材を運ぶために乗ってきたワゴン車の姿も、そこにはなかった。

 

------------ 

 

 それから数日後。

 麻衣のクラスメイトたちは黒川に旧校舎のことについて色々と質問するようになっていた。

 当然といえば当然だ。旧校舎には悪霊がいる、と豪語していたのはほかならぬ黒川であり、旧校舎の建っている場所が地盤沈下を起こしているなど、誰も知るはずがない。

 となれば、必然的に悪霊の仕業、ということになり、黒川に注目が集まるのは必然だった。

 

 あれから、一也からは一切の連絡がない。

 一也が所長を務める『渋谷サイキックリサーチ』なる事務所は、電話帳にも登録されておらず、住所も電話番号もわからないため、連絡のしようがない。

 クラスメイトからも連絡先くらい聞いておけばよかったのに、とさんざん言われていたが、連絡先も聞かずにいたのは一也がさっさと撤収してしまい、連絡先を聞けずじまいだったのだ。

 

 校長ならば連絡先も知っているだろうが、腹が立っているため、余計に聞きたくなかった。

 そんな問答をしていると、校内放送で麻衣に呼び出しがかかった。

 麻衣はその呼び出しに応じて事務室に行くと、麻衣宛てに電話が来ていたらしい。

 受話器を受け取り、電話を替わったことを伝えると、麻衣に耳に一也の声が飛び込んできた。

 

 内容は助手としての給料の支払いについてだった。

 口座番号がわからないため、現金書留で自宅に郵送してもらうことにして、住所を伝えると、思いもよらない言葉が飛び込んできた。

 

 《お前の学校、バイトは禁止か?》

 「別に~?」

 《そうか。なら、うちの事務所でバイトをしないか?事務なんだが、この間までいた子が辞めてしまって人手が足りないんだ》

 「や、やる!!やるやる!!」

 

 ほぼ即答だった。

 その後、一度事務所に来てほしいといわれ、所在地を伝えられた。

 事務員からメモを受け取り、その住所を書きとり、土曜日に向かうことを伝えた。

 

 《あぁ、それと。この間は助かった、ありがとう》

 

 出てくるとは思わなかった一也からのお礼の言葉に、麻衣は少しばかり感激を覚えた。

 そのまま、土曜日に会う約束をとりつけ、麻衣は電話を切った。

 

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 放課後。

 昌浩が帰宅すると、玄関に見慣れない革靴が置かれていることに気付いた。

 来客だろうか、と思いつつ、居間のほうへ行くと、そこにはリンの姿があった。

 

 「え?リンさん??!!」

 「御無沙汰しています、昌浩さん」

 「ご、ご無沙汰してます……って、なんでうちに?」

 「少し、用事がありまして」

 「……昌浩、お前もこちらに座りなさい」

 

 リンの向かいに座っている祖父にそう命じられた、昌浩は制服姿のまま、晴明の隣の椅子に腰かけた。

 

 「まず、昌浩さん。先日はご協力いただき、ありがとうございました」

 「いえ、俺……私は私で、好きにやっていただけなので」

 「ですが、谷山さんだけであの機材を運ぶのは大変でしたでしょうし、お礼を言わせていただきます」

 

 そういってリンは頭を下げた。

 昌浩は自分で言った通り、好きにやっていただけなので御礼を言われる筋合いはないのだが、ひとまず、それを受け取ることにした。

 リンが頭を上げると、本題に入った。

 

 「もしよければ今後、昌浩さんにもご協力をいただければと思うのです。ナル――所長も原さんとお知り合いなら実力は確かだろう、ということなので」

 「儂は構わんと思うのだが、この御仁が一度お前の意思を確かめたいと言ってきかなくてな。どうする?昌浩や」

 

 どうやら、今後も何かあれば協力してほしい、ということのようだ。

 晴明のほうは修行にもなるから一向にかまわない、と思っているらしく、許可はしたようだが、リンは昌浩の意思も確かめたかったらしい。

 

 

 「……わかりました。何かあれば、協力させていただきます」

 

 その一言に、リンは再び御礼を言いながら頭を下げた。

 こうして、昌浩は渋谷一也率いる心霊調査所『渋谷サイキックリサーチ』の協力者となるのだった。

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