蔓延る闇に立ち向かえ   作:風森斗真

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なかなか、昌浩を活躍させてあげられないぃ……(白目


File.5

礼美と少し遊んだあと、麻衣はベースに戻り、ナルに先ほどのことを伝えた。

当然、その場にいた昌浩と法生、綾子も話を聞いていた。

そのため、全てを聞き終わった綾子は開口一番、疲れたようなため息をつきながら文句を言い出した。

 

「もぅ、何なのよこの家!あれなの?!近所じゃ有名な幽霊屋敷とかってオチなの?!」

「というより、こりゃミニーに何かあるんじゃないか?」

「ミニーが連れてきたって言ってたんだよね?その見えないお友達って」

「は、はい」

 

法生の言葉を受けてか、昌浩は麻衣にそう問いかけた。

麻衣はまさか自分に話が振られるとは思わなかったらしく、慌てた様子でうなずいた。

その返答を聞いて、昌浩と法生は何か閃いたらしい。

 

「もしかして、ミニーはあくまで器で、元凶はミニーに取り付いてる何か?」

「ミニーに憑依してミニーのふりしてるってことか?ナルちゃん、どー思うよ?」

 

落とす、とはいわゆる憑き物落としのことだろう。

人や物に憑依してしまった霊や怨念を祓うことを総称してそう呼び、心霊特番などで人に憑依した霊を除霊する場面がまれにみられるものだ。

なお、西洋では悪魔落としとも呼ばれており、これはカトリックの司祭の中でも特殊な訓練を受けたエクソシストでなければ行うことができない、とされている。

 

「……案外、その線かもしれないな……坊さん、落としてみるか?」

 

ナルもその可能性があると考えたのか、法生に憑き物落としを試してみるように指示してきた。

頼られたことを純粋にうれしく思っているのか、それともようやく自分の出番が来たことを喜んでいるのか、法生はいつになくやる気を見せていた。

 

「昌浩、式は使えるか?」

「昼間は使えないです。俺の場合、式じゃなくて『使鬼(しき)』なので。それに、彼は屋内での護衛には向きません」

 

式、あるいは使鬼とは、使い魔のようなものだ。

魔女や魔法使いが使役する使い魔が、生きている猫やフクロウ、トカゲなどの動物であるのに対し、陰陽師などの東洋の術者が従えている使い魔は『式』あるいは『使鬼』と呼び、妖や精霊などの霊的存在となる。

修験者として有名な役小角が従えた二体の鬼、『後鬼』と『前鬼』が有名どころだろう。

 

昌浩には、千年前に使鬼に下した牛車の妖『車之輔』が今も仕えている。

千年も存在を保ち続けられるほど強い力を持っているが、妖であることに変わりはないため、昌浩としてはできるだけ、昼間に無理をさせたくはないのだ。

まして、車之輔は牛車だ。

とてもではないが家の中には入れることはできない。

だが、昌浩に力を貸してくれているのは何も使鬼だけではない。

 

「その代わり、爺様から預かった式神が二人ほど」

 

式神とは、文字通り、式として契約を交わしている神のことだ。

有名どころで言えば、安倍晴明が従えた『式占』と呼ばれる占術に用いる道具『六壬式盤』に記された十二柱の神、十二神将だろう。

むろん、昌浩が預かっていると告げた十二神将は、千年前から安倍晴明に仕えてきた『本物』の神性である。

 

「なら、その二人を礼美ちゃんと典子さんの護衛につけることは?」

「典子さんになら可能です。礼美ちゃんのような幼い子は、式神のほうが気を使って距離を置きそうですから」

「……多少、距離が離れてても構わない。礼美ちゃんのほうにつけてくれ」

「わかりました。指示しておきます」

 

ナルからの頼みに、昌浩は視線を背後に向けた。

隠形して姿どころか気配も隠しているが、そこには常に傍らにいる物の怪と同様、十二神将最強の一角を担う勾陳がいる。

 

《わかった。何かあれば騰蛇に知らせよう》

 

視線だけで昌浩の意図を察したのか、勾陳は水を通したようなくぐもった声でそう返し、その場を離れていった。

だが、勾陳だけでは対処しきれないこともあるだろうから、と綾子も礼美のもとへ向かった。

その後も、調査や計測を続け、一行は再び夜を迎えた。

 

--------------

 

「ナウマクサンマンダ、バサラダン、センダマカロシャダ、ソハタヤ、ウン、タラタ、カンマン」

 

除霊のために用意した別室で、法生はミニーを前に不動明王の真言を唱えていた。

その様子は、当然、モニターされている。

ベースのモニター越しに、法生の様子を見ていた麻衣は礼美が心配でたまらなかった。

一応、昌浩が式神をつけてくれているし、綾子がいるから大丈夫だとは思うが、今までの綾子の実績を見るに、あまり頼りにならないというのが正直なところだ。

何かあれば昌浩がフォローすることになるのだろうが、昌浩の実力も、実のところまったく知らないため、これもこれで不安要素しかない。

 

――というか、そもそも、先輩は見習いだけど陰陽師だって言ってるけど、実際のところ、どうなんだろ?

 

昌浩のことを知ったのはつい最近ということもあるし、そもそも、昌浩とはあまり接点がなかった麻衣はそんなことを考えていると、突然、典子の悲鳴が聞こえてきた。

声のした方へ向かうと、そこには、倒れている典子がいた。

お祓いを終えたのか、それとも突然の悲鳴に駆け付けたのか、法生と昌浩もその場にいた。

 

「の、典子さん?!どうしたの?!」

「……あ、足……」

 

どうやら、足首を痛めたらしい。

法生が脱臼していると判断し、応急処置を施す一方で、昌浩は救急車を呼ぶため、電話のある場所までむかっていった。

 

「だ、誰かが、すごい力で足を引っ張って……」

 

そう話す典子の足首にあった跡に、麻衣は目を見開いた。

典子の足首には、誰かがつかんだような手の跡があった。

大きさからして、おそらく子供のものだろう。

麻衣は昼間、礼美と話していたときに、ミニーが連れてきた見えないお友達のことを思い出し、まさかそのお友達がやったのではないか、と疑い始めていた。

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