次回はエピローグとなります
「わた、し……?わ、わたしが原因だっていうの?!」
一也の実験により、一連の事件は地盤沈下だけでなくポルターガイストも含まれていたことが明らかになった。
そして、一也が言うには、今回のポルターガイストは人間が原因であるらしい。
たまったストレスが強い自己顕示欲によって無意識に爆発してしまった現象、ということのようで、その該当者は、霊が見える、と豪語している黒川以外、考えられなかった。
「君には最初から引っ掛かりを覚えていた」
興奮し、わめく黒川に対して、一也は冷酷に淡々とした口調で説明を始めた。
黒川は当初、旧校舎で戦時中や看護婦の霊を見た、と話していたが、このあたりが空襲にあったという記録も、旧校舎が病院だったあるいはこの土地に病院が建っていたという記録はない。
そうなると、黒川の見間違いや勘違い、あるいは故意の噓を疑わざるを得なかった。
「噓なんかじゃない!!」
「最初はただの霊感ごっこかと思っていた。正直、ポルターガイストとしか思えない現象が起きたときは困ったよ。機械類の測定も、原さんの判断も『霊はいない』ということを示していたにも拘わらず、だ」
そうなれば、残る原因は人間、というのが一也の判断だった。
「たいていはローティーンの子どもだが、霊感の強い女性というケースもある。極端にストレスをため込んだ者が無意識でやってしまうんだ。その根底には、見てほしい、構ってほしいという欲求がある」
一也のその言葉は、たしかに、これまでの黒川の言動と一致する。
思い返せば、黒川は霊感ごっこというよりも、霊感があることを実証したい、という想いの方が強かったからこその行動だったのだろう。
そして、その欲求を満たすために、旧校舎には悪霊の存在が不可欠だった。いや、いなければならなかった。
そのために、無意識に念動力を使ってしまい、ポルターガイストを発生させた。
これが、一也の見解だった。
なお、調査中に巫女さんが閉じ込められたり、真砂子が階段から転げ落ちたり、調査中にビデオが切れたりしたのだそうだが、それらはすべて黒川の仕業であったことは言うまでもない。
幼いころから霊や人ならざるものを見てきた昌浩と比古にすれば、もっと他にやりようはあるだろうに、と思うところだが、それは二人が普通の人々とは一線を画した力を持っているからそう思うのであって、本当は誰だって特別でありたいと思うし、誰かに認めてもらいたいと思うものだ。
黒川の場合、それがたまたま霊能力という特殊なものであったというだけだ。
「……で、渋谷さん。校長にはどう報告を?」
「校長には、旧校舎には戦時中のに亡くなった方々の霊が憑いていたので除霊した、工事をしても構わない、と報告するつもりだ……それで構いませんね?黒川さん」
一也のその言葉に、黒川は静かに頷いて返した。
黒川の現在の環境を考えれば、たしかにそれがベストだろう。
この場にいた全員がそう納得したのだが、真砂子は納得はしても、やはり不安が残るようで、本当のことを校長に伝えた方がいいのではないか、と言ってきた。
「彼女は十分抑圧されている。これ以上、追い詰める必要はないと思うが」
一也から帰ってきたその言葉に、真砂子はそれ以上何も返すことはなかった。
が、麻衣がここでさらにもう一つの問題に気づいてしまった。
「……ところで、誰が除霊したことになるの?」
その言葉に、その場にいた全員が固まった。
実際、昌浩は何もしていないし、真砂子は霊視をしただけ。実際に除霊を行ったのは巫女さんと法生、そしてジョンの三人だけだ。もっとも、そもそも祓うべき霊がいないため、成功も失敗もないのだが。
「……仕方ない。この場にいる全員で協力して除霊した。そういうことにしておこう。麻衣、この件は他言無用だ。昌浩と……君は?」
「あ、俺は八神っていいます。昌浩の幼なじみです」
「そうですか……なら、あなたも他言無用でお願いします」
「わかってるって」
「わかってますよ」
「えぇ、もちろん」
念を押すように一也は昌浩と麻衣、そして比古にそう伝えたが、三人とも理解しているため、二つ返事で返していた。
「ふうん?ナルって意外にフェミニストなのね?ねぇ、彼女いるの?」
「……質問の趣旨をはかりかねますが?」
「あたし、我慢してあげてもいいわよ?年下でも」
「お言葉はありがたいですが、残念です。僕は鏡を見慣れているので」
巫女さんが一也を誘惑したが、それをするりと、そのついでに一刺しして回避した光景に、麻衣と法生は同時に噴き出し、昌浩と比古は苦笑いを浮かべていた。
あまりに華麗なその手際に、巫女さんはぽかんとしていたが、一也はそんな巫女さんをよそに、撤収を始めた。
それを皮切りに、その場にいた霊能者たちは撤退を開始し、旧校舎を取り巻く事件は幕を閉じた。