とある駒王の幻想殺し   作:4kibou

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第九話 少年達は旧校舎へ赴く

木場の後についていった上条とイッセーが案内されたのは、木々に囲まれた校舎の裏手にある、現在使われていない旧校舎だった。人気がなく、一目で不気味だと感じる佇まい。しかし、外観は木造で古いのだが、設置されている窓ガラスは一枚も割れておらず、壊れている部分もしっかり見ないと確認できないくらいで、そんなに酷いものでは無かった。

 

「ここに部長がいるんだよ」

 

木場の言ったその言葉に、二人は首をかしげた。イッセーは何となくリアスだと理解したらしいが、上条の方はというと頭上に数多のクエスチョンマークが漂っている。けれどもその疑問は解消されないまま、三人は旧校舎の中へと足を進めた。二階建ての木造校舎を進んで、階段を上り、二階の奥まで歩く。中もそんなに汚いという訳では無く、古い建物にありがちな蜘蛛の巣も、積もり積もった埃もない。きちんと掃除をしているからだろうか。そんな風に周りを見ながら進んでいたところ、木場の足がひとつの教室の前で止まった。扉にかけられたプレートには『オカルト研究部』と書かれている。

 

「部長、二人ともつれてきました」

 

「ええ、入ってちょうだい」

 

木場が扉越しにそう言うと、中から声が聞こえた。リアスの声だ。木場が扉を開けると、上条とイッセーの二人も後に続いて入っていった。そうして室内に足を踏み入れた二人なのだが、その中の様子に驚いた。至るところに謎の文字が書かれている。床、壁、天上に至るまで、それこそ見たこともない変な文字がだ。だが、それよりも目立つのは教室の中央にある大きな円陣。魔方陣のようにも見えるそれは、この教室の大半を占めていた。その光景を見たイッセーはというと、

 

「(何やら異質さと不気味さを最大級に感じるぞ)」

 

なんて思い、上条は、

 

「(これを右手で触ったら大変なことになるぞ、と俺の中の何かが囁いている……)」

 

直感的にそう感じた。

ふと室内を再度よく見渡してみれば、ソファーに誰かが座っているのに気付いた。小柄な体型のその女子の名前は塔城小猫。一年生だ。一部の男子からの人気が高く、女子からも可愛いと言われるマスコット的な存在の彼女は、無表情で黙々と羊羹を食べている。ふとこちらに気付いたのか、イッセー達と視線が合った。

 

「こちら、兵藤一誠くんと上条当麻くん」

 

「あ、どうも。兵藤一誠です」

 

「はいはい俺が上条さんですよ」

 

そう言って、イッセーはペコリと頭を下げ、上条はひららと片手を適当に振った。小猫はそれを確認だけすると、再度黙々と羊羹を食べるのを再開した。それを見て、噂通りあまり喋らないのかも、とイッセーが思ったその時だった。部屋の奥から水の流れる音が聞こえる。視線を向ければ、陰影が写っているシャワーカーテン。それを見たイッセーは瞬時にして理解した。女性の肢体、つまり今ここで女の人がシャワーを浴びているのだと。何故部室にシャワーがあるのかは疑問だが、あるのだから仕方ない。

 

「部長、これを」

 

「ありがとう、朱乃」

 

カーテンの奥から、二人の女性の声が聞こえる。一人はリアス、もう一人は違う別の女の人の声だった。カーテンを挟んで、シャワーを浴びていたのであろうリアスは着替えを始める。ふとそれによりイッセーは朝のアレを思い出して、気恥ずかしくなった。

 

「……いやらしい顔」

 

ボソリ、と羊羹を食べている小猫の口から、そんな言葉が漏れた。ハッとしてイッセーはそちらへと視線を送るが、小猫は羊羹を食べるだけである。そんな様子を見た上条はふと、

 

「(変態王子と笑わない猫……だな)」

 

どこから電波を受信したのか、そんな事を思った。

 

しばらくするとカーテンが開き、そこには制服を着込んだリアスの姿がある。まだ少しばかり濡れている紅の髪がなんとも艶っぽい。そんなリアスは、イッセー達の方を向くなり微笑んだ。

 

「ごめんなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊まりして、シャワーを浴びていなかったから、いま汗を流していたの」

 

そう言われて納得する二人だが、どうしても部室にシャワーがあることは不思議でならなかった。ふと、視線はその後方の女性へと移る。もう一人の人物も女性な訳だが、その姿を確認したところで、イッセーは絶句した。綺麗な黒髪をポニーテールにしたその女性は、いつも笑顔を絶やさず、和風感漂う佇まいをした、大和撫子を女子高生の間で体現している駒王学園のアイドルの一人。

リアスと並べて『二大お姉さま』と称されている、男子女子問わず憧れの的の姫島朱乃であった。

 

「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃も申します。どうぞ、以後、お見知りおきを」

 

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」

 

「……」

 

慌てて緊張しながらも、イッセーは挨拶を交わす。だがしかし、その横に立っていた上条は顎に手を当てて考え込むような仕種をしながら、じっと朱乃を見ていた。

 

「……あら?私に何か?」

 

「……あ!い、いえ。ただ、ちょっと幼馴染みと似たモノを感じたというか、何というか……はは。えっと、上条当麻、です」

 

「そうでしたか。うふふ」

 

その様子を見ていたリアスは「うん」と確認するように頷いた。

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん。上条当麻くん」

 

「「はい」」

 

「私たち、オカルト研究部はあなたたちを歓迎するわ」

 

「「え、あ、はい」」

 

「悪魔としてね」

 

「「……えっ?」」

 

どうやら、何かが起こる予感がした上条とイッセーであった。

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