とても励みになります。
一応ですが、今のところイッセーハーレムを崩す予定はありません。一応ですが……(大事な事なのでry)
とりあえず、ダブル主人公的になればいいかなぁ……?
イッセーに美少女彼女出来ちゃった事件から数日後の夕刻。傾いて沈み行く太陽が辺りを赤く染め上げる、そんな時間帯に、上条当麻は一人ぶらぶらとあてもなく彷徨っていた。確か今日は、そのイッセーが彼女との初デートの日だと、うるさくしていたのを思い出す。二十四時間三百六十五日欲情しているようなあのイッセーだが、デートプランについては前から練っていた物を実行すると言っていた。本当に幸せなのだろう。ここ最近のイッセーのテンションは異様なほどに高い。松田、元浜はそれを見ては嫉妬の炎を燃やし、叫び、怒り狂っているが。
「彼女、ねぇ……」
ポツリと、上条は一人呟く。
イッセーの彼女──天野夕麻。一見すると普通の少女に見える。ただ、上条には何かが引っ掛かったような感触があった。それが何かは、上条には分からない。ただそんな根拠も何もない『何か』が引っ掛かったのだ。清楚そうに見えたし、紹介されたときも良い子なんだと思った。何がそんなに引っ掛かるのか。上条は思考を巡らせるが、ただ時間が過ぎるだけであった。一旦その考えを放棄して、上条は辺りを見回す。家にいては暇だからと外に出てきたというのに、外に出ても暇である。こんな時に持ち前の不幸が発動するかと思えば、今日一日そんな事がなかった。確かに平常時の当たり前な不幸は数回ほど起きていたのだが、これといって叫びたくなるような不幸が起こっていない。嵐の前の静けさという奴だろうか、それが逆に不気味に思える。
ふと歩いていると、公園の近くに来ていた。夕焼けに公園。なんとも初々しい学生カップルがいそうだと思いながらも上条はそこへ視線を向けた。
「(……はッ!?)」
思わず、目を疑った。
天野夕麻と名乗った少女の背中から黒い翼が生えているのだ。取って付けたような玩具のようには見えない。それは生々しくあり、まさに生物の一部であると主張するように、ごく自然とその光景に溶け込んでいた。普通ならあり得ない事が、通常なら信じられないことが、当たり前のように目の前に存在している。上条は呆然とその姿を見つめていたが、ふと近くに何かがあることに気付いた。
それは、見たことのある顔をしていた。
それは、大量の血を流していた。
それは、虚ろな目で倒れ伏していた。
「……、あ……?」
まず最初に出てきた感情は、戸惑いだった。
つい先日まで元気に馬鹿やっていた友人が、血溜まりの中虚ろな目をして倒れている。そんな簡単な状況把握にすら時間がかかる。顔は倒れているといってもあげられているので、こちらから確認できた。遠目からでも分かる。イッセーの体を中心として広がる赤い液体。口の端にもそれはあり、ケチャップか?なんて思って、笑おうとする。声帯を震わせ、頬肉を吊り上げれば、それで笑える。そうしようとして、作り出した笑みは引き攣っていた。笑おうとしたけど、笑えない。そんな事が出来る筈も無い。何故なら、遠目からでも分かってしまったから。イッセーの腹部は、まるで切り取られたようにぽっかりと穴が開いていた。何が起きたか詳細には分からない。けれども、上条がその光景を目にした瞬間、既に考えるより先に足が動いていた。向かう先は意識があるのかさえ分からない倒れたイッセー。上条は日頃の逃走劇から鍛えられた足を必死に動かし、彼の元へと駆け寄った。
「イッセー!!おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
どうする、と上条は考える。どれだけ上条が不幸な生活をしてきたと言っても、こんなイレギュラーな状況に鉢合わせたのは初めてだった。何の特殊な力もない、人間離れした何かを持っている訳でも無い、不幸な事だけが特徴である上条当麻に、この現状をどうにかする力は備わっていない。ならば当たり前のように行動しよう、とポケットに手を突っ込み携帯電話を探すが、途中でふと部屋に忘れて来たのだと思い出す。こんな時まで持ち前の不幸を発揮するとは、と上条は歯噛みした。
「くそ、くそっ!!何だよ、一体何なんだよこれは!?ふざけやがって、一体どこのどいつにやられたんだ、イッセー!!」
「矮小な人間ごときが煩いわね。私が殺したのよ」
「……あ?」
今までその存在を忘れていた、否、突然の連続した驚愕の展開により忘れてしまっていた、翼を生やしたイッセーの彼女が、そう言って上条へと声を掛けた。以前会ったときとは雰囲気が違う。あの時のような良い子な感じではなく、まさしく人間を見下しているような表情だった。
「……テメェが、イッセーを殺した、だと?」
「ええ、そうだけど?」
そう上条が問い掛けると、天野夕麻は悪びれをせずにそれを肯定した。一瞬、何を言っているのか分からなかった。殺した、などという事をさも当たり前のように言う目の前の存在が、上条には信じられなかった。自然、彼女を見る目が鋭くなる。嫌でも理解される友人の体を見て、冗談を言っているようには思えない。こんな非日常を、この世界に生きる上条当麻は一切体験したことが無かった。普通ならば話についていけずに、その場で固まってしまってもおかしくない状況。だというのに、上条はその拳を握り締めながら、彼女を睨むように立ち上がった。何が何だか、彼自身理解すら出来ていないだろう。もともとは、駒王学園に入学することすら出来ないお馬鹿さんなのだ。そんな彼に、こんな状況で理解しろと言われても普通なら無理である。
「……ッ。なに?文句でもあるのかしら?」
「……、」
天野夕麻は一瞬、立ち上がった上条へと嫌なものを見るような視線を送った。上条自身はそれに気付いておらず、ただゆっくりと体を持ち上げる。握った拳に力が入る。爪が食い込んで、今にも血が出そうな程痛い。けれども、今の上条にとってはどうでもいい事だった。殆どか分からなくても、たった一つ分かった事がある。それは、彼の友人である兵藤一誠が、目の前の女の所為で死にかけているという事。ならば、理由は十分だった。
「テメェ、イッセーの彼女じゃ無かったのかよ」
「そんなもの決まってるじゃない。演技よ。まぁ、とはいえ十分楽しかったけど」
「……なんで、イッセーを殺した」
「ふん。人間ごときに教える義理は無いのだけれど、冥土の土産に教えてあげるわ。彼が
「……せいくりっど・ぎあ……?」
意味が分からない。それが何なのかも知らないが、何故それを宿しているだけでイッセーが殺される理由になるのか説明すらない。それで理解しろという方が難しく、また上条にとっては普通よりも頭は悪い方だ。思わずアホみたいにそう聞き返していた。
「知らなくて結構、話は終わりよ。何故だか貴方を見ていると嫌悪感を抱くもの。そこに寝ているイッセーくんと同じように、死になさいっ!」
上条の聞き返した言葉に答えず、天野夕麻は虚空に手をかざした。ブゥン、という重たい音が鳴る。耳鳴りにも似た音をたてながら、かざした彼女の手に光の発する槍が現れた。恐らく、それでイッセーを突き刺したのだろう。傷口の大きさからしても、十分にあり得る。ただ、あり得ないのは、彼女が何もないところから槍を生み出したという点であった。天野夕麻は躊躇なくその槍を上条へと振るう。それを見た上条は、反射的に己の右手を前にかざした。その時だった。
パッキィン、という硝子の砕けるような音が、辺りへと響き渡る。
光の槍が、上条の放った掌に触れた瞬間、跡形もなく砕かれたのだ。端から見れば、作り物の脆い槍が壊れたように見えたかも知れない。けれども、そんな事は無いと当事者の二人は理解していた。槍を作り出した天野夕麻は、人間に槍を壊されるなど思ってすらいなかったのだろう。驚愕の表情を浮かべ、上条を見ていた。さて上条はというと、不思議な感覚に陥っていた。知らない筈の情報が、まるで知っているかのように頭の中へと流れてくる。この自分の右手の特性がどういったモノなのか。それが何故だか理解できる。槍が消えるという不可思議な現象だが、これが当たり前なのだと上条はどこかで理解していた。
「な……なんで!どうしてたかが人間ごときに槍を!!」
「うるせぇよ」
叫ぶ天野夕麻を、上条は一言に切り捨てる。
「はっきり言って、テメェが何を言っているのかさっぱり分かんねえ」
「このっ!!人間風情が!!」
再度、天野夕麻は槍を作り上げ、上条へと振るった。腹部を貫く光の槍。人間がそれを受ければ、致命傷は避けられないだろうそれを、上条は右手で薙いだ。バキン、という音と共に、槍は砕かれ消えていった。
「そ、そんな馬鹿な……!?」
「けどな、はっきりと分かるのは、テメェがクソ野郎だって事だ」
「な、なんなのよ貴方!!ただの人間じゃないの!?」
「ただの人間だよ。不幸なだけの、ただの人間だ!!」
そう言って、上条は右手を振りかぶり、拳を握る。細かな事は一切理解していない。けれども、どんな理由があれこの女が自分の友人を傷付けたのだと、そう分かっているのなら、上条にとっては十分だった。踏み込んだ足が地面を割る勢いで地につく。今まで幾度となく喧嘩をして、殴り合いをした事はあった。けれども上条は、そのどの時よりも強い拳を、天野夕麻へと向ける。
「おぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
「──がっ!?」
ごしゃり、と天野夕麻の顔面に上条の拳がめり込んだ。全身全霊を注いだ、一切の容赦のない本気のパンチ。それを受けた天野夕麻の体は、まるで竹トンボのように宙を舞い、草木が生い茂っている場所へと飛んでいった。全力で殴ったからか、上条の息は少しあがっている。余りにもあり得ないあの状況で怒ることが出来た自分は褒めてやりたい。ちょっと本気出しすぎたかなー?なんて思った上条であったが、その思考は後ろから聞こえてきた声によって中断された。
「これは……そう。あなたね、私を呼んだのは」
ふとそちらへ顔を向けると、見たことのある人物がイッセーの側へと立っていた。目を見張るほどの体型に、美しすぎる容姿。そして極めつけは鮮やかな赤……否、紅い髪。駒王学園の中で知らない生徒はいないという程に、イッセーとは逆に良い意味で有名な人物。
リアス・グレモリー。
三年で、上条やイッセーより先輩である彼女が、紅い髪を揺らしながらそこに居た。
「とりあえずはこの子だけど……死にそうね。傷は……へぇ、おもしろいことになっているじゃないの。そう、あなたがねぇ……。本当、おもしろいわ」
「……?」
クスクスと興味ありそうな含み笑いをしながら、リアスはイッセーを見る。何がそんなにおもしろいのか、もしかしてこの人は、死体を見て興奮する変態だったりするのだろうか。なんて上条が馬鹿な事を考えていると、今までイッセーへと向けられていた視線が、不意に上条へと移る。
「……あなたは……」
「えっと、一応同じ学校の、そいつの友人といいますか……」
「名前、聞かせてもらえるかしら?」
「かっ、上条当麻です!」
「そう……ここは私が何とかするから。後日説明はするわ。とりあえず、他言無用でお願いね」
「はい!分かりました!」
と、外面的に元気よく返事をしている上条だが、内心はというと。
(きゃーっ!きゃーっ!学園のあの超有名人のお姉さまと話してる!?なんですかこれは!!上条さん的には日頃の不幸が吹き飛ぶぐらいに幸運な気がするのでせうが──!?)
めちゃくちゃテンパっていた。
一応、原作でインデックスさんを血塗れで上条さんは発見してるという。
パンチの威力については、うん、多分大丈夫なはず……