とある駒王の幻想殺し   作:4kibou

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四話目だというのに全然話が進んでいません。

進行が遅いのでしょうか……。文字数が少ないのが大部分の理由だと思いますが。


第四話 少年は再度同じ状況に陥る

 授業終了を告げる鐘が鳴る。簡単な授業終了の挨拶を終えると、つい先ほどまで教鞭をとっていた教師はそそくさと教室から出ていった。そうなると、その後は生徒達がそれぞれの行動をする放課後だ。教室内に、たるんだ緩い空気が漂う。誰しもが授業から解放されたその空気に心地よくしていたところを、上条は一人さっさと帰宅準備をして、鞄を肩にかけた。その目は妙に鋭く、確固たる意思があるようである。そこから上条の行動は素早かった。一歩踏み出したかと思えば、突然日常生活では必要ないだろうと思われる速さで走りだし、直ぐ様教室の扉へと直行。ガラリと開けて、そのまま勢いに任せて廊下へと出る。その時にはもう、彼の頭の中に『廊下は走ってはいけない』という事は一握りも存在していなかった。

 

「おっと?」

 

「ッ!!すまん!」

 

 ドン、と教室を出たときに、ふと誰かとぶつかる。見てみれば、金髪のかなり上等な容姿の青年だった。即座に上条は謝って、そしてまたもやダッシュ。呆然とする青年には見向きもせず、そのまま上条の姿は青年の視界から消えてしまった。青年は少しだけ疑問に思ったが、今はそんな時では無いと考えを振り払い、今しがた上条が出た教室へと踏み入る。

 

「上条当麻君はいるかな?」

 

「木場様?すれ違いで出ていったと思いますが……」

 

「え」

 

 なお、数日間上条をこうして放課後に呼び出そうとしている青年なのだが、このように何か見えない力が働いているようにすれ違っているのを、上条は知らない。

 

 ◇◆◇

 

「ふー、良かった良かった。お一人様一個限定の激安卵がきちんと買えるとは、上条さんの不幸もおさまってきてるのかねぇ」

 

 そしてその上条はというと、両手にパンパンになったレジ袋を持ちながら、そんなことをぼやいていた。今日急いで教室を出たのは、五時から始まる近所のスーパーの卵安売りに参加するため。不幸な自分なら流石に無理かもしれないと諦めかけていたのだが、スーパーにつくまでにこれといった不幸は全然起こらず、結果として卵を変えてしまったのだ。そうしてテンションが上がりに上がった上条は、食材売り場で肉を買い、野菜を買い、「今日はすき焼きだぜきゃっほぉう!!」となってしまい、現在こうして大量の食品の入ったレジ袋を持っているわけである。がしかし、そのぼやきがいけなかったのか、不意に上条の足の小指に何かがあたった。

 

「~~~ッ!!」

 

 悶絶しながらも、何とか卵だけは死守しようと耐える上条。端から見てみれば変な事をしているようにしか見えないのだが、本人からしてみれば至って真面目である。数秒たって痛みから解放された上条は、ゆっくりと再度歩みを始める。痛みを受けたためか、上条の思考は先ほどとは違い冷静だ。

 

「……イッセー、生きてたな……」

 

 ふと、その事を思い出した。あの時に彼女であろう女性の不思議な力により腹部を貫かれ、完全に死んでしまうだろうと思っていた。だが、その後に現れたリアス・グレモリーの言葉によりその場を離れ、翌日登校してみれば、イッセーは特に傷が尾を引いている様子もなく学校に来ていた。本当になんとかしてしまったのだろう。最初に上条を見たときになんか変な顔をされて、その次に天野夕麻という子を知っているかと聞いてきたが、普通に元気な体のイッセーだった。ただ、最近顔が暗いのが気になっているが。

 

「……、ん?ここは……」

 

 ふと辺りを見回してみれば、そこは以前イッセーが殺されかけた公園があった。かなり暗くなっているので夕暮れ時、という訳ではないが、公園内にあるひとつの光が辺りを照らし、若干だが見えているので分かる。結局あのあと、リアスからの接触を上条は受けていない。後日説明、と言われたが、いつ説明してもらえるのだろうか。そんな事を思っていたときだった。その公園の中の光が、ブンッと動いた。直後、微かに呻き声のようなものが聞こえる。空耳か?なんて上条は思ったが、どこか無視することが出来ない。光は棒のような形をしており、まるで空中で何かに固定されているかのように若干斜めである。ふと、その光があの時の槍と重なった。自然と足はその公園の中へと赴く。特に用はないが、何故だか引かれるような感じがしたのだ。ザッ、と上条が足を踏み出したとき、不意に聞き慣れない声が聞こえてきた。

 

「痛かろう?光はお前たちにとって猛毒だからな。その身に受ければ大きなダメージとなる。光を弱めで形成した槍で死ぬと思ったのだが……意外と頑丈だ。では、もう一度放とう。それで流石にくたばるだろう」

 

 少し近付けば、その声の主の姿が見えてくる。男だった。スーツを着た男が、背中から黒い翼を生やして、今まさに手に光の槍を生み出そうとしていた。なら、その男の近くにある光は、槍だ。誰かを貫いている。誰だ?とそちらへ目を向けてみれば──。

 

「……なんだか最近、似たような状況を見たな」

 

 上条のクラスメイトで友人の変態である、イッセーが光の槍に貫かれていた。ということは、あの時とほぼ同じ状況。違うのは、槍を刺した人物と、イッセーがまだ倒れていないという事。体に光の槍が刺さっているというのに、イッセーは何とか保っており、それに対して男はもう一度槍を放とうとしている。それをすればイッセーが死にかける、もしくは死ぬと上条は本能的に察した。途端に、持っていた袋は二つとも地に落ち、代わりに上条は拳を握る。既に足は動き始めた。放つための拳も今さっき握った。ならば、後はそれを叩きつけるだけだ。あっという間に接近した上条は、右手を振りかぶって飛びかかる。

 

「む?なんだ貴様は──」

 

「テメェ、何してやがる!!」

 

「──ぐがっ!?」

 

 殴られた男は体勢を崩し、顔面から地面へ激突した。その時に持っていた光の槍は消え、男は倒れて地面へ転がる。上条は確認するかのように掌を握って、開いてを繰り返したあと、後ろにいるイッセーに向かって声をかける。

 

「大丈夫……じゃねぇよな、イッセー。救急車を呼んだ方がいいか?いや、でもこの傷は……」

 

「かみ、じょう?」

 

 イッセーがそう確認するかのように言う。怪我の具合からして、意識を保っているのもやっとのはずだ。上条はそれに対して「ああ」と簡単に答えると、ゆっくりと右手を構える。見れば、先ほど殴り飛ばした男が立ち上がり、上条を睨んでいた。背筋が凍るほどの冷たい視線。明確な殺意を向けてくるその男を、上条は怯える様子も無く睨み返す。

 

「貴様、何者だ。人間のくせに、堕天使に敵うと思っている阿呆か?それとも何も知らない無知な馬鹿か?」

 

「堕天使?なに言ってんだおっさん。その年で中二病は流石にやばくないか?」

 

 その言葉が癇に障ったのか、ピクリと男のこめかみが動く。

 

「だがしかし、見られたからには致し方ない。貴様の事は一切知らないが、死んでもらおう、人間」

 

 そう言って、男は手に槍を作り、それを放った。イッセーを貫いたかなりの速度のその槍が、今度は上条へとその矛先を向ける。普通の人間ならばまず避けれないであろうその速度。見てから動いたのでは間に合わないその攻撃を、しかし上条は防いだ。乱雑に振るわれた右手が光の槍に当たり、パキィン!と槍は粉々に砕け散る。それを見た男の顔は驚愕の表情に染まり、僅かに語気を荒げながら上条へと問う。

 

「──貴様、何故俺の槍を壊せる!?」

 

「……『幻想殺し(イマジンブレイカー)』」

 

 すっと、上条の口からその言葉が漏れた。

 

「触れたものが、例え原爆級の火炎の塊だろうが、戦略級の超電磁砲(レールガン)だろうが、神様の奇跡でさえ、それが“異能の力”であるならば、問答無用で打ち消せる……それが、俺の能力だ」

 

「打ち消す……だと?俺の光の槍を打ち消したというのか?神器(セイクリッド・ギア)?……いや、そんな神器(セイクリッド・ギア)など聞いたことがない!」

 

「……おいおい、何を言ってんのか、その神器(セイクリッド・ギア)ってのが何なのか知らねぇけどよ。俺のこれは天然素材(うまれたときから)で、ただそれだけの能力だ」

 

ぐっと、上条は再度右手の拳を握る。背後で大怪我のイッセーが今にも倒れそうにしているのを見ていると、自分ではどうしようもないのが悔やまれる。そう、幻想殺し(イマジンブレイカー)なんて大層な名前がありながら、自身の能力はそれだけでしかない。例え神様の奇跡だって打ち消せるくせに、目の前で苦しむ友人一人救うことが出来ない。なら、自分が今出来ることは、目の前のイッセーを殺そうとしている男を撃退するか、遠ざけるかだ。

 

「なんていうか、不幸っていうか……ついてねーよな」

 

怒りを堪えるようにして、上条は誰に向かって言ったのかも分からないそれを呟いた。まるでこの世の全てを嘆くようにして、たった一言呟く。

 

オマエ(・・・)本当についてねーよ(・・・・・・・・・)

 

 

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