「「あ」」
ばったり、という言葉が似合う形で、上条とイッセーは通学路にて出会った。それは本当に偶然で、何の意図もないのだろう。だがしかし、如何せんその出会った状況が混乱を起こすのに容易であった。上条の方は体はボロボロ、見える位置にも傷があるし、かなりの箇所を包帯などが巻かれていた。イッセーの方は特に怪我は無く、少しだけ元気がないくらいである。それは普通に見ればおかしな事ではないのだろうが、イッセーが貫かれているのを昨日見ていた上条は不思議に思った。そしてイッセーはというと、昨日の出来事が夢ではないと分かり、更には男の二度目の槍から上条が救ってくれんだっけ、との記憶も思い出し、そうなると芋づる方式で上条の怪我がその男にやられたものだと考えた。
「……イッセー、お前、怪我は……」
「あー……その、何だか治ってた。上条こそ、その怪我はアイツに……」
「いや、大したことねぇよ。イッセーが受けてた傷に比べれば、こんなの」
そんな会話をする上条とイッセーであったが、そこに居るのはその二人だけではなかった。イッセーの方には駒王学園に通う生徒なら知らない方が少ない程の有名人、学園のアイドルことリアス・グレモリー。一方上条には同じくかなりの有名人でありながら、学園では上条との恋仲の噂が絶えない人物である神裂火織。だがそれを知っているのはあくまで周りの生徒であり、当事者の二人は全くもって、そんな噂を一ミリも知りはしない。
「あら?神裂さん。おはよう」
「おはようございます。リアス・グレモリー。兵藤と一緒に登校、ですか」
「ええ。そちらはいつも通り、上条くんとなのね」
女性陣ではこういった何ともない会話が繰り広げられているのだが、男性陣はというとそうでもなかった。昨日の事で気まずい空気が流れているのだ。イッセーからしてみれば、上条が偶然通りかかったとはいえ、自分があの男と上条を戦わせたようなものなのだ。その傷の具合から見ても酷い戦いだったことは想像がつく。罪悪感がつのるイッセーだが、上条はその空気をぶち壊すようにして、ストレートにイッセーへと問い掛けた。
「イッセー、お前って悪魔だったのか?」
「──ッ!?」
「…………は?」
その言葉に反応したのはイッセーではなく、リアスの方だった。実を言えば、リアスは昨日の上条と堕天使との戦いを、公園の部分だけとはいえ見ている。ただの、それこそ何の力も持たない筈の上条が、右手を振っただけで光の槍を破壊し、堕天使を殴り飛ばしたのを。それからどうなったのかはリアスも気になっていたことだが、まさか悪魔について告げられているとは思ってもいなかったのだろう。上条の言う通り、イッセーは確かに悪魔となっている。だがしかし、まだ自覚をしていない。だから、その質問にイッセーがそう言った反応を示したのは当然だろう。
「──上条くん、よね」
「え、あ、はい──ってリアス・グレモリー先輩!?」
「その話は、以前の説明も含めて今日の放課後。それでいいかしら?」
「───はい。それでいいです」
上条とリアスはそう言うと、また何時もの雰囲気に戻った。自分が関係しているというのに何が何だか分かっていないイッセーなのだが、この数分後に周りから非難の視線を浴びせられたのは言うまでもない。
◇◆◇
「やぁ。どうも。兵藤一誠くんと上条当麻くんはいるかな?というか居て貰わなければそろそろ困るんだけど」
放課後、上条とイッセーのいる教室に、金髪の青年──木場祐斗は顔を出した。連日放課後に探されているのにその全てをスルーしていた上条は、自分の名前が呼ばれた事に頭をあげ、イッセーはまるで親の敵を見るかのように鋭い視線を向けていた。それも仕方がない。木場祐斗は、この学園でもトップに立つイケメンである。爽やかなイケメンスマイルで女子のハートをキャッチして離さない、クラスは違うが同じ学年の男子であった。
「俺が上条だけど……」
「……何のようだよ」
上条は至って普通に対応し、イッセーは呪詛でも呟くかの如く殺気の籠った声を放つ。
「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」
二人には、その一言で十分だった。今まで少しぼんやりとしていた上条は雰囲気を変え、イッセーもその殺気を抑え込んで、それならば仕方がないと言った態度に変えた。
「……OKOK。で?俺達はどうすればいい?」
「僕についてきてほしい」
イヤァァァアア!!と声をあげたのは女子だった。悲鳴のような、歓喜のような、そんな色々な感情が混ざった叫び声が、教室にいた他の生徒の耳に突き刺さる。
「そんな!上条くんはいいけれど、兵藤まで!!」
「汚れてしまうわ!木場くんっ」
「木場くん×兵藤のカップリングなんて断固反対だ!」
「いや、違う。木場くん×上条くん×兵藤という恋のトライアングル……愚腐腐腐腐腐腐。今年の夏は筆が走るぜぇーっ!!」
「三角関係だと……そ、そんな美味しい展開ご褒美ですありがとうございましたーっ!!」
「ちょ、ここら一帯鼻血の池が出来てんだけど……」
多数貧血の者が出るという事案が発生したが、それを特に気にする様子も無く、イッセーはうぜえという感じで、木場は苦笑いをしながら、上条は叫び声と同時にこけて余計な傷を作ったことを嘆いていた。
「あー、分かった」
「うう……いてぇ。不幸だ……ちくしょー」
「あはは……」
次回、ついにリアスたちと邂逅です。
長かった……ここまで長かった。一巻の内容が終わるのはいつになるのか。