テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
道中、レイノアは魔物を斬り倒していく。
その一匹を掴み上げ、商人に聞く。
「これで良いのか。向うにまだいるが……」
精霊・ラタトスクが、彼女を監視する為に放っている魔物たち。
向こう側にも、沢山潜んでいる。
その気になれば、すぐにでも一掃できる。
だが、彼はそんな事を知らない。
故に、商人はレイノアが斬り倒した魔物を裁きながら、説明する。
「これで十分だよ。損傷も少ないから、毛皮としてはかなり高値で取って貰える。肉は臭みを取れば、食べられるし。」
彼女は、その手順を見る。
単純に、覚えておく事にした。
横には秋信が、同じように見ていた。
エルシアとジャックは木に隠れていた。
流石に、二人には刺激が強すぎるのだろう。
作業が一通り終わり、広い場所で野営を始めた。
商人と共に、彼女は調理を始める。
彼は驚いたように、
「……君は料理出来るのだね。それも本の知識かい?それにしては手付きが良いね。」
「忘れていたが……昔、少しやっていただけだ。私自身、調理自体は何十年……いや、何百年ぶりか。」
と、野菜を上に投げる。
そして、空中で野菜を切る。
その手捌きは、物凄く鮮やかだ。
思えば、クラトスと供に調理をしていた。
が、普通のやり方では駄目だった。
その頃は、剣術を学んでいた。
単なる好奇心で、やってみたのがこれだった。
結果、彼女の調理方法はこうなったのだ。
子供達も、彼女の調理の仕方に目を輝かして見ていた。
――レイノアは、商人と打ち合わせをしていた。
「次の街まで、今のペースであればおよそ四日を掛けて行けそうだな。それが過ぎれば、お前の村も近いだろう。」
「そうだね。この子達もだいぶ疲れているから、できればその街で一泊はした方が良いよ。特に、ジャック君には辛いだろう。」
「そんなに疲れているのか?あの子達は……」
彼は気付いていた。
彼女が、子供達の事を〝この子供達〟ではなく、〝あの子達〟に変わっている事を。
彼女自身まだ、それに気付いていない。
だからこそ、彼は苦笑いをしながら、
「そうだね。彼らはまだ子供だ。長旅は、慣れていないはずだよ。」
「……そう、だな。街に着いたら少し落ち着くか。今日の魔物の毛皮と、この前のお金で足りるか、五人分?」
「え?僕はいいよ。四人分にすれば、お金も余る。」
彼はそう言った。
が、子供達の事と生活面において、彼には世話になっている。
つまり、彼女からしてみれば、下界人に借りを作っていることになる。
それは彼女としては良しとしない。
ので、頑固となく譲らなかった。
その日も、レイノアは火の番をしていた。
横に寝ていた秋信が、不安そうに起きた。
そして、彼女の服の裾を掴む。
レイノアは、彼の頭を撫でながら聞く。
「……どうした。何か、怖い夢でも見たのか。」
世界の守り手≪ディセンダー≫は夢を見ない。
いや、見る事もある。
が、彼女の場合は少し違う。
彼女の見る夢は、先代達の記憶。
故に、彼女は寝ない。
感情を消しても、夢を見れば彼らの感情が入り込んでくる。
それは、今の彼女にとっては関係ない。
だが、今の自分は彼ら≪子供達≫と出会い、捨てた感情が復活してきたとも言える。
だからこそ、彼女は決して寝ようとはしない。
秋信は不安そうに言う。
「僕、今日もそうだけど、何の役にも立てない。僕、父さんみたいな騎士になりたかったんだ。強くて、優して……カッコイイお父さん。……姉さん、僕ね、決めた事があるんだ。僕、二人の前では絶対泣かない。だけど……姉さんの前では、泣いても良い?」
「……お前は、自分が思っている程弱くはない。あの広場で、弟妹を守っただろう。相手は年上で人数もいた。でもお前は、自分の意見を、お前の大切な人の事を侮辱した相手にぶつけた。それも一種の強さだ。だが、想いほど強く、脆いものは無い。だから……泣きたい時は付き合ってやろう、秋信。」
彼は顔を上げた。
その顔は驚いている。
彼女自身も、不思議だと思う。
自分でも、彼に言った言葉に驚いたのだ。
なにより、彼女は初めてこの子の名を言った。
名を知っていても、呼んでやる事は一度も無かった。
「……初めて僕の名前言ってくれた!嬉しいな!姉さん、僕もっと強くなれるようになるね!それでね、姉さんにお願いがあるんだ……」
レイノアは彼の言葉を待つ。
彼は照れながら、
「姉さん……僕に、剣と文字の読み書きを教えて欲しい。少しでも、姉さんの役に立ちたいんだ!」
レイノアはジッと彼の目を見る。
彼も、彼女の瞳を見ている。
『本気だな。だが、文字はともかく、剣には覚悟がいる。身を守る程度にしておけば、良いか……』
レイノアは一呼吸置き、
「解った。文字は教えてやる。だが、剣については、身を守る程度しか今は教えられない。それでも良いか?」
「……今は駄目でも、もう少し大きくなったらまた聞いてみて良い?それとね、二人にも名前で呼んであげて。その方が嬉しいから。」
秋信は笑顔でそう言った。
レイノアは、横で寝ている二人を見る。
そして、もう一度秋信を見る。
「……そう言うものなのか?」
「うん。大切な人に、名前を呼んで貰えるとね……とっても幸せな事だって、母さんが言っていたもん!」
「そうか……。なら、そうしよう。」
その時の彼女は、少しだが笑っていた。
それを知っていたのは、彼女の顔を見ていた彼だけだった。
彼女自身ですら、気付いていなかったのだ。
彼は、そのまま彼女の膝に頭を乗せ、朝まで寝る。
秋信が完全に眠ると、
「今日の事は黙っていろよ。」
「すまない……」
向かいに寝ている商人に静かに言う。
そして、彼女はそれを追求する気はない。
起きているのが、彼女だけになる。
彼女は空を見上げ、
『……そう言えば、何故こんな私に、彼ら≪子供達≫は離れようとしなかったのだろうか。下界人とは、不思議なものだ……』
――朝、眠たそうにエルシアは声を変える。
「姉様、おはようございます。兄様とおじ様も、おはようございます。」
レイノア以外の者は、エルシアに挨拶した。
ここまでは、いつもと同じ朝の風景。
しかし、今日は違う。
「……エルシア、おはよう。」
真面な挨拶と言うのを、レイノアは久しぶりにした。
しかも、挨拶などクラトス以外にはした事が無かった。
その挨拶で、彼女は目が覚めた。
嬉しそうにレイノア抱き付く。
彼女は、エルシアの頭を撫でて落ち着かせる。
そのまま、彼女はジャックを起こす。
「……ジャック、起きろ。朝だ。」
ジャックは寝返りを打った。
彼女は、もう一度同じ事をする。
すると、彼はガバッと起き出す。
そんなやり取りを、商人と秋信は嬉しそうに見ていた。
道中、彼女は約束通り、秋信に文字の読み書きを教えた。
途中、興味を持った二人も加わる。
だが、剣は秋信だけだった。
彼等の熱心な想いもあり、覚えが早かった。
ジャックは、まだ不安そうだが。
街に入り、公園で落ち着いていた。
レイノアはベンチから、立ち上がった。
商人は驚き、彼女を見る。
それを、彼女は無視した。
その彼女は剣を抜き、走る。
人々にとっては、何十年か前に見た魔物が出現したと思うだろう。
彼女の見る先には、人型や獣型の魔族。
その周りからは、黒い煙が出てくる。
『まさか、ここで魔族と出くわすとは……!あの子達が直撃される‼』
眼を通して、その場の魔族の数を瞬時に把握する。
数は十体、うち人型は八体もいる。
彼女は、ジャックがこけたのが視える。
そのジャックに、人型の魔族が切り掛かろうとしている。
レイノアは、ジャックの前に飛び出した。
彼を右手で守る。
そして、左手で持っている剣で横から斬り掛かる獣型の魔族を斬り裂いた。
そのまま、人型の魔族の腕を斬り落とす。
攻撃が一瞬、止まる。
その隙をついて、ジャックを抱えて後退する。
彼を降ろし、怪我がない事を確認する。
その場に、軍が緊迫した雰囲気で広場にやって来た。
『……本物の強さを持った奴らか。だが、あれでは死ぬな。』
レイノアは立ち上がる。
が、商人が彼女の肩を掴んで止める。
それは、彼女の腕からは魔族に切られ、血が出ていた。
それは、普通の者では痛覚では耐えられない程だ。
「そんな怪我で戦っては駄目だ!まずは手当を――」
だが、それを押し返す。
腕を切られた魔族が、彼女たちの方に突っ込んで来る。
すぐに、剣を構えて迎え撃つ。
その魔族を真二つにした。
レイノアは自身に治癒術を掛ける。
それは、商人に邪魔をされない為だ。
傷を塞がったのを彼に素早く見せ、子供達を預ける。
レイノアは、軍が苦労している魔族達を容赦なく斬っていく。
彼女の中では、すでに軍は役に立たないと把握しているからだ。
少し手間取ったが、この場に居た魔族を一掃した。
剣の浄化をするついでに、街を浄化する。
それを終え、彼等の元に戻る。
と、軍の隊長らしき者に声を掛けられた。
「君、待ちたまえ。君のおかげで、先程の魔物は倒せた。どうだろう、君は軍には入らないかい。君の腕なら隊長クラスも簡単だろう。」
「軍には興味が無い。無論、騎士もだ。……新しい者を入れる前に、軍の内部を正すべきだ。大体、あれが出てからの対処が遅すぎる。これでは、腕があっても邪魔なだけだ。」
その軍の者に対し、冷たい視線を向ける。
だが、人間にしては珍しい。
その者の目は真っ直ぐだった。
「確かに、君の言う通りだ。軍内部は今荒れている。だが、それも今に改善される。その為には、君のような真に強い者の力も必要なのだ。家族が心配なら、こちらでも何かしら手を尽くそう。」
レイノアは子供達を見た。
彼ら両親は、魔族に憑つかれていた軍人と正規の軍人に殺された。
それを思い出したのか、怯えている。
「どっちにしろ、断る。私が、下界人に手を貸す事はしない。」
レイノアは、ジャックを抱き上る。
商人がエルシアを抱き上げ、先に歩き始める。
レイノアは秋信を見て、
「背負ってやろうか?」
彼は首を振って、彼女の手を握る。
レイノアはあの軍の者を無視して、歩く。
適当に宿を見付け、そこで今日は休む。
子供達は宿に着いた途端、眠ってしまった。
商人は、隣の部屋で休んでいる。
部屋の窓を開ける。
涼しい風が入って来る。
と、ドアを叩いた音が聞こえる。
彼女の眼がそこを見ると、それが隣の部屋の商人だと解る。
ドアを開け、商人を中に入れる。
「……何だ?お前も、休めば良いものを。」
彼は苦笑いをしていた。
薬箱を机の上に置き、
「宿に来ても、君は休まないのかい?それより、先程の傷を見せてごらん。表面上だけの治りでは、後遺症が出て来るかもしれない。」
レイノアは彼を見た。
彼は薬を確かめて、必要な薬を出し始めている。
「怪我は、もう大丈夫だ。人間の体より丈夫に出来ている。それは、お前の村の為に集めたものだ。取っておけ。」
彼は不安そうに見ている。
だが、彼女に押し負けた。
彼は薬をしまいながら、
「本当に大丈夫なのかい?それなら、本当に良いのだけど……。」
そして、商人は一呼吸置いて、
「それにしても、君は初めて会った時よりも、随分と雰囲気が変わったね。前は、僕にも興味が無かっただろう。こうして面と向かって、話す事もしなかったし。それだけじゃない、先程の軍人。君なら、無視して立ち去ると思っていたよ。」
レイノアは、彼をしばらく見つめた。
それは、これまでの自分の行動を振り返ったからだ。
「……全くもって、そうだな。ここまで下界人に世話をやったのは、こうなる前以来だな。それと、軍の者に対しては本当に気まぐれだ。」
そう言って、外を眺める。
商人は追求してこなかった。
『ずっと思ったが、この下界人は変わっているな。人間にしては、異種族に対しても感情が安定している。まぁー、それが本来の事なのだが……』
レイノアは、街の外に魔族を見付けた。
そこを重点的に視る。
『ここから、遠いな……いや、私一人なら朝までには帰って来られる。この子達の事は、この下界人に任せておくか。最近は、この下界人にも懐いているしな。』
彼女は、魔族退治は後回しでもよかった。
だが、今日の街の事を考えると、早めに対処しておいて損はないと考えたからだ。
彼女は商人に振り返り、子供達が寝ている事を確認する。
「少し、急用ができた。朝までには戻る。この子達を頼めるか?」
商人は黙って頷いた。
ただ静かに一言、
「気を付けて、行っておいで。」
彼女は面倒なので、窓からそのまま外に出る。
ちなみに、ここは三階だ。
飛び降りた時、彼が慌てていた。
が、構っている暇はない。
着地と同時に、彼女は走り出す。