テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
――あれから二か月、世界は大きく変わった。
何十年か前に起きた世界のありさまと、同じになったのだ。
秋信達はよくは知らない。
が、大人達から聞いていたようだ。
世界に、またしても魔族が溢れだす。
世界は再び、瘴気に飲まれた。
これにより、下界人達は軍と騎士で手を組む。
この世界を救う為、動き出したのだ。
それでも、下界人は圧倒的不利を強いられていた。
彼女は眼を通して、この世界全体を視ていた。
『まさか、ここまで広がっているとは……。あれが、今まで大人しくしていた事自体が、珍しい事だったのだろう。本気になっている、と言う事か……。災厄の場合は、この子達やクラトス≪父さん≫を連れて、別の世界に……いや、クラトスはこの世界を選ぶ。初代を置いては行けないだろう。どうするかな……』
彼女は子供達を守りながら、ある所に向かっていた。
後ろを振り返る。
「この地を抜ければ、あの村長の村がある。そこまで、もう少し我慢しろ。」
子供達は頷いた。
だが、この子達も限界が近い。
何しろ、休憩は入れているが、ここ数週間は歩きっぱなしだ。
自分≪レイノア≫はともかく、この子達は辛いだろう。
と、言っている傍から魔族が現れる。
彼女は、この数なら押し切れると判断する。
後ろの秋信に、
「秋信、先に行け。これを片付けたら、すぐに追い付く。」
秋信は頷き、妹達を守るように進んで行く。
彼女は、魔族達を斬り掛かる。
魔族を躊躇なく斬っていく。
中級相手に時間を取られる訳にはいかない。
魔族を片付けた後、眼で彼等の場所を確かめる。
『大分、進んでいるな。さて、戻るか……!四代目‼』
彼女は急いで、そこに向かう。
秋信は、後ろの妹弟を一所懸命守っていた。
彼女の稽古の成果もあり、魔物を倒していく。
一通り倒し終ると、ジャックが不安そうに、
「……お兄ちゃん。お姉ちゃんは、大丈夫かな?」
秋信は肩で息をしながら、ジャックを見る。
エルシアも言葉には出さないが、不安そうにしている。
秋信は優しく、二人に言った。
「大丈夫さ。僕達の姉さんは、強いよ。だから、先に進もう。」
だが、秋信は油断した。
魔物を全部倒したと判断したのだ。
そして、二人を安心させる為に、自分自身の不安を隠したいからだ。
故に、背後から来ていた魔物に気が付かなかった。
秋信が気づいた時には、間に合わない。
なら、せめて≪レイノア≫姉が来るまで妹弟を守ろうとしたのだろう、彼らを背で庇う。
剣だけはちゃんと、敵に向けていた。
秋信は心の中で、必死にレイノア≪姉≫を呼ぶ。
だが、それを助けたのはレイノア≪姉≫では無い。
彼を助けたのは、彼らも見た事のある少年だった。
そして魔物は、一つの銃声と短剣で斬られた。
少年は黒髪、長い髪を後ろで一つ縛り。
彼は黒服に身を包んでいる。
少年は振り返り、秋信に笑顔で言った。
「駄目だよ、こんな所で油断しちゃ。あの子は、そんな事も教えてくれなかったのかい?」
秋信は一度警戒したが、素直にお礼と謝罪した。
「ご、ごめんなさい……。それに助けてくれて、ありがとうございました。」
「素直なのは、とても良いものだよ。あ、君達も大丈夫そうだね。」
と、それぞれの頭を撫でていく。
だがそこに、剣を振ったレイノア≪姉≫が現れる。
少年は、それを余裕で避ける。
「おいおい。いきなり、斬り掛かる事は無いだろう。俺は、君の弟妹を守ってあげたのだから。お礼は言われても、殺される事はしてないよ。」
レイノアは、凄まじい程の殺気を出している自覚はある。
現に、三人は震えていた。
エルシアとジャックは、必死に秋信へしがみついている。
それを見たレオンは、ため息を付く。
そして彼女に言った。
「おいおい、良いのかい?……君の弟妹、震え上がっているけど。」
眼を通して、彼らを視た。
想像以上に震えている。
だが、ここは引き下がる事は出来ない。
彼女は彼を見て、
「ここで、何をしている!世界を壊そうとしているくせに……今更、人助けか、四代目?」
彼女は剣を構え直す。
対して、彼は笑顔で短剣の方の手を、腰に手を当てたまま、
「俺は気まぐれだよ。それに俺は、君が大切にしているあの子達だから、助けただけ。あの子達に関わって、大分良くなったと思ったけど……そうでもないのかな?ま、良いや。君は、これから――」
と、彼が話している間に、彼女は剣を振る。
前回は剣のみで戦った。
だからこそ、今回は魔術も駆使して戦う。
しばらく、剣が交じり合う音と銃声が森に響く。
レイノアは押され気味だった。
それは、彼等が心配なのだ。
どうしても、集中しきれない。
彼女は剣に力を込める。
秋信は眼を逸らさず、二人の戦いを見続ける。
と、そこに黒い獣のような生き物が現れる。
黒い煙を出しながら、秋信に向かって来る。
彼は、剣を構えようとして出来なかった。
恐怖が強過ぎて、体が思うように動けないのだ。
だが、そんな彼の前に……いや、秋信達を包むように、レイノアが三人を庇う。
彼女は、背を深く斬り刻まれた。
が、気にせず剣を振る。
一匹倒し、さらにもう二匹がやって来る。
彼女は一匹を腕で対応し、一匹を確実に倒す。
そして、噛みついたままの獣を、斬り倒した。
彼女は子供達を見る。
どうやら、怪我は無い。
彼女は、そのままレオンに斬り掛かる。
彼は短剣で、それを受け止める。
さらに彼女の傷を少し視てから、
「いやー、感情だけでなく……痛覚まで無いのは便利だけど…その分、対処に遅れるね。」
そう言って、彼は銃を連発する。
片腕が使えないが、彼女は応戦する。
だが、動かない事に気が付いた。
『馬鹿な……。例え怪我をしていても、動くはずだ。瘴気が、強過ぎたのか?……いや、違う。これは……‼』
レオンの散弾を避けられるだけ、避ける。
しかしそこに、彼が短剣で斬り掛かる。
攻撃の第二派は、防げられなかった。
彼女は木に叩き付けられた。
立とうとする。
が、そこに彼が銃口を向け、
「やれ、やれ……大人しく寝ててね。」
彼女に止めを刺した。
と、言っても、気絶だけだが。
彼女が、気絶したのを確かめると、子供達に笑顔で、
「怖かったでしょ。もう大丈夫。ああ、安心して、この子は生きているから。」
彼らは彼女の元に、掛けて行った。
エルシアが、必死に治癒術を掛ける。
その姿を視た彼は、
「多分、そんなに焦らなくても大丈夫だよ。この程度じゃ、この子は死なないから。」
と、優しく言う。
秋信が剣を構えた。
その手は震えている。
それを見て、彼は納得した。
「成程。君、魔物相手はかなりやり込んだみたいだけど、人間とかにはまだなんだ。駄目だよ。それじゃあもしもの時、守れるものも、守れなくなる。君、彼女に鍛えられただけあって、かなり腕は良いのだから。」
と、秋信の頭を撫でる。
そこにまたしても、あの黒い魔物のようなものが現れた。
今度は獣型でなく、人型だ。
それが、秋信達に寄って来る。
ジャックは泣き出しそうな顔で、レイノア≪姉≫にしがみ付く。
魔物が、秋信達に近付く。
が、彼らの前に、レオンが冷たい視線と声で止めた。
「駄目だよ。この子達を、いま殺しては。で?何か収穫はあったの?」
その黒い魔物は、動くのを止めた。
そしてゴワゴワした声で、
「我らの王が、貴方をお待ちです。初代の監視下を、抜けられたようです。」
「そう……。良いよ、行ってあげる。もう少ししたら、行くよ。彼に、そう言っておいて。」
と、黒い魔物は何所かに飛んで行った。
レオンは森を視て、笑っていた。
魔物が一匹、牙を向けて彼に襲い掛かる。
彼はそれを撃った後、短剣で斬り倒した。
まだ少し息のある魔物を、冷たく見下ろす。
先程よりも、冷たい声で言った。
「……ラタトスク、まだ視ているんでしょ。どう?初代が守って来ている、この世界が壊れかかっているのは。俺は、絶対にこの世界を許さない。俺の大切な物を奪い続ける……この世界を!」
そして、魔物の息の根を止めた。
彼は、子供達に振り返る。
彼は笑顔で、秋信達を見ていた。
秋信は、恐怖と緊張した声で聞いた。
「あ、貴方は、誰なんですか……。どうして姉さんは、貴方を……」
「殺そうとしている、か?理由は簡単。……俺は、この世界を壊そうとしているから。その子は、俺の妹にしておこうかな。その方が君達には、解りやすいだろうし。それと、俺の名前はレオン、宜しく。ちなみにね、君達の身に着けているそのペンダント……大切にした方が良いよ。かなり強い結界で、守られているから。じゃあ、俺は行くよ。」
と、言って、彼らの頭を撫でた後、森の中に消えて行った。
しばらくして、レイノアは目を覚ました。
エルシアが嬉しそうに、
「姉様、良かった!御免なさい……私、まだ上手く治癒術使えなくて。」
レイノアは傷を確かめる。
それと同時に、眼で辺りを伺う。
レオン≪四代目≫の姿は、何所にも無かった。
まだ動けそうに無いが、左腕は動く。
握っていた剣を離し、エルシアの頭を撫でた。
ジャックが泣き出しそうなので、彼の頭を撫でながら、
「はぁー……、安心しろ。この程度では、私は死なない。」
と言って、ここら一帯のマナを集めた。
そのマナで傷を癒し、起き上がろうとする。
が、すぐに膝を付いた。
秋信が支える。
彼は泣きそうな声で、
「ごめんなさい……姉さん。僕……僕、何も出来なかった。姉さんに、剣も教わっていたのに。」
レイノアは、木にもたれるように座る。
そして秋信に、厳しくも優しく言った。
「そうだな。お前は、戦いに慣れていない。恐怖に負けても、おかしくはない。だが、お前はそれでも妹弟を守ろうとしていた。偉かったぞ、秋信。……それに、お前達は何も自分を責めることは無い。お前達は、私が守ろう。何があっても、大切な……私の弟妹なのだから。」
三人は泣いた。
嬉しさと悲しさが、一緒になって出てきたみたいだ。
彼女は、そんな彼等をしばらく見守った。
その後、秋信に頼む。
秋信が、野営する準備をする。
彼等は、ぐっすり眠っていた。
『一晩では、この体に入った瘴気を全て浄化はできないか……。取り敢えず、あの村まで持てばいい。あの男に、この子達を預け……必ず、あいつを殺す!』
レイノアは、真っ黒に染まった空を見上げる。
動く左手で、顔を隠す。
そして、彼女は泣いていた。
この子達が無事だった事に……安心したのだ。