テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
レイノアは傷だらけの体で、目を覚ました。
彼女は辺りを探る。
人の気配がしない。
辺りは焼焦げた家。
死んでいる軍の人間に、村の人間。
その他の生き物が、倒れていた。
彼女は思い出していた。
あの森で野営をした後、あの村長の村に向かっていた。
だが、その途中の村で、レイノア≪自分≫達は軍に襲われたのだ。
彼女の傷は塞がっていた。
が、体内の瘴気のせいで、体の能力は人間と同じくらいだった。
そんな中、子供達を守りながら戦うのは不利だった。
戦うのを避け、村から出ようとする。
しかし、出来なかった。
剣を抜き、子供達だけでも先に行かせようとする。
下界人相手なら、仮に苦戦はしても、ここを抜け出せる。
そう、下界人なら……
相手は魔族入りだった。
しかも、実体化しているのも居た。
つまり、この村に居た軍人達は戦場から逃げ出し、魔族と手を組んだのだ。
元々、軍と騎士は互いに争っていた。
特に、軍の上層部の方は騎士と手を組むこと自体が、無理だったのだ。
この軍の隊長は大きく、威厳たっぷりの大男。
その者を中心に、村を破壊していく。
村人達も、次々死んで逝く。
レイノアは、何とか対応する。
が、追いつかない。
秋信も、必死に戦った。
しかし、魔物以外の戦い経験が少なく、不利な状況が続いていた。
とうとうジャックとエルシアが、彼等に捕まる。
彼等を助け出そうとするが、秋信が斬られそうになり、彼女は庇う。
その隙を、魔族達は見逃さない。
彼女は、秋信を突き飛ばす。
その瞬間、彼女の腹と心臓は突き破られた。
後ろで、秋信の顔が青ざめたのが解る。
そのさらに後ろの方で、エルシア達の悲鳴と叫びが聞こえる。
魔族が、レイノアの目の前で、秋信を殺そうとする。
秋信はの彼女の方を見ている。
しかし、彼の目は焦点が合ってない。
彼女は歯を食いしばって、立つ。
魔族を斬り裂き、その状態でエルシア達を救い出そうとする。
『たかが、下界人と魔族に……こいつ等を、殺させはしない!』
と、さらに軍人二人と、魔族を三匹を斬った。
が、そこで膝が付く。
『手を伸ばせば、あの子達に届く。動け……あともう少しなのだ。』
だが、彼女は魔族によって、地面に叩き付けられた。
意識が消えるその時まで、彼女はあの子達の叫ぶ声が、頭の中で響いていた。
――レイノアは、この村全体に眼を通す。
幸い、あの子達の死体らしきものは、ここには無かった。
彼女は、自分の傷を確かめる。
全ての傷が塞がっている。
自分自身に眼をかける。
『ディセンダー能力に、助けられたのか……。しかも、それだけでないようだな。治癒能力が、強いようだ。』
それから、この土地の記憶を詠む。
あれから、どれくらい経ったのかを調べた。
二週間近く、経っていた。
さらに、記憶を詠んで解った。
あの子達はどうやら、軍に連れて行かれたようだ。
『ペンダントを外されているのか……。これでは、あの子達がどこに居るのか……くそ!』
彼女は、体内の瘴気を最優先で浄化する。
体が動くようになったら、急いで世界中に眼を通し、あの子達を見付けた。
小さいが反応を見つけ、急いでそこに向かう。
第十六.五話 秋信目線
僕達は生き残った村人と供に、村から少し離れた森に連れられて来た。
だが、エルシアだけ別々になってしまった。
ジャックとは一緒だが、剣もペンダントも取られた。
これからどうしたら良いのか、悩んでいた。
僕は取り敢えず、目の前の弟を守る事を最優先にした。
そして、隙を見付けてここを逃げよう、と考えていた。
だが、状況ははっきり言って厳しいかった。
特に、ジャックのような子供達やお年寄りだ。
何故なら、軍の者達が運んで来る食事は少ない。
それに、朝と夜しか貰えない。
食事は少なく、働く時間が多い。
このせいで、最初ここに連れられて来た大半の者が死んだ。
ジャックも、かなり痩せてきている。
レイノア≪姉≫との旅で、多少鍛えられている。
が、まだ子供だ。
僕は少ない食事を、ジャックに与える。
それでも、追いつかない。
満腹感が取れない。
そして、大きな疲労……
彼は、自分をいつも攻めていた。
大切な姉に、ずっと守られ続けられ、何も出来ない自分。
大切な妹弟を救えない、自分に。
何度も、何度も……
ここで過ごして、おそらく二週間くらい経っただろうか。
僕は、エルシアをやっと見付けた。
だが、それは酷かった。
エルシアは少しだが、治癒術を使える。
傷を治し、その後、彼女は軍の者に殴られていた。
僕は拳を握りしめる。
近くにあった剣を握り、軍の者に斬り掛かる。
「僕の……僕の妹から、離れろ―――――‼」
僕は、エルシアにくっ付いている軍人の首を斬り落とした。
エルシアを抱きしめる。
「ごめん、エルシア!弱い兄さんで……」
エルシアは泣きながら、彼にしがみ付いた。
後ろから、ジャックの叫び声が聞こえた。
彼とエルシアは、そこに向かう。
どうやら奥の方で、何かが起きたのだ。
軍の者達が、慌てている。
秋信はジャックを見付け、駆けつける。
しかし、ジャックが軍人に斬られた。
そして自分達の目の前にも、二人いる。
彼は、ひとり斬り倒す事に成功した。
が、それと同じく自分の左腕を斬られた。
エルシアが、急いで止血をする。
もう一人を蹴飛ばし、ジャックの元に行く。
エルシアは泣きながら、治癒術を掛ける。
そこに、彼は傷だらけの少女を見た。
剣を振い、一目散に、こちらに向かって来る。
彼は叫んでいた。
「ね…姉さ――――ん‼」
――レイノアは目的の森にやって来た。
次々に敵を、斬り倒していく。
自分がどれだけ傷付こうが、一向に構わない。
眼を使って、子供達を探す。
奥にいる事が解り、敵を斬りながらそれに向かう。
彼らの所に着く。
その目で確かめても、酷い光景だった。
秋信の左腕は切り落とされ、エルシアは心に傷を負い、ジャックは今にも死にそうだ。
だからこそ、彼女は相手に容赦無い。
下界人も、魔族も……
怒りに満ちた声で、彼女は叫ぶ。
「楽に死ねると思うな‼たかが、下界人、魔族の分際で、私の弟妹に手を出した事を後悔させてやる‼」
目の前にいる全ての者を、斬って行く。
それが一通り終わり、彼等の元に掛けて行く。
秋信に、先程見付けた荷物を渡す。
それぞれの首に、ペンダントを掛ける。
レイノアは、彼等に治癒術を掛ける。
秋信の腕の傷は癒えたが、腕は元には戻せない。
そしてジャックは、体内にある瘴気が多過ぎる。
ジャックの中の瘴気を、彼女は自分の中に移す。
それでも、ジャックの中の瘴気は、彼の中で完全に同化しつつある。
秋信が、辺りを気にしている。
おそらく、他の者が気になるのだろう。
「安心しろ……。他の者達は各自、逃げ出している。秋信、よく妹達を守った。」
秋信は安心した後、首を振った。
そしてレイノアにしがみ付いて、
「……僕は、何も出来ないよ。ジャックを助けられなかった……」
「それでも、お前は左腕を犠牲にエルシアを助けた。そこは誇って良い事だ。無論、エルシアもよく耐えてきた。私がもっと早く来ていれば、良かったのだ……」
彼女は、ジャックに浄化の光を当てたまま言った。
エルシアも、ジャックに治癒術を掛けたまま、彼女に聞いた。
「姉様……姉様の傷は、大丈夫なんですか?」
秋信も思い出したように、顔を青くした。
レイノアは彼等を見て、
「大丈夫だ。あの程度では死なない……。いや、死ねない。」
レイノアの最後の言葉は、自分でも凄く小さくて聞き取れなかった。
つまり、本心だ。
今は彼等が安心すればいい。
再び、ジャックに掛ける光を強くしようとした。
が、そこに来客だ。
その気配を感じ取ると、レイノアは舌打ちをした。
剣を握り、立ち上がる。
「エルシア……もう少しだけ、頑張ってくれ。」
エルシアは、必死に治癒術を掛け続ける。
レイノアの前に、精霊が現れた。
宙に浮く四本の腕を持った精霊。
その姿を見た瞬間、その精霊に殺気めいた、それでいて冷たい目で見る。
その精霊が同じように、彼女を見る。
そして口を開く。
「何をしている、世界の守り手≪ディセンダー≫。世界が危ないと言うのに、何を遊んでいる。」
「……そう言う所は変わっていないな、オリジン。忘れたか、私自身は世界など、どうでもいい。」
彼女は、四代目≪レオン≫の時よりも冷たく、それでいて殺気めいた声で言う。
精霊・オリジンも、視線に殺気を含めながら、
「貴様も、相変わらず世界の守り手≪ディセンダー≫とは、思えない言葉だな。やはり、あの監視者では駄目だった、という事だろう。」
「父さん≪クラトス≫の侮辱は許さんぞ。ここで、貴様を殺しても良いんだ。それに前から……いや、さっきから言っているだろう。私自身は、この世界に興味は無い。私の目的は、四代目を殺すだけだ。その結果、この世界がどうなろうと、私には関係ない。助ける義理も、理由も無い。前回は、父さん≪クラトス≫の為に世界を救った……ただ、それだけだ。」
「貴様は、理由が無いと世界を救わないという事か。全く、なぜ貴様のような者が、出来たのか……」
「そんな事は、世界樹に聞け。大体、初代や二代目……強いて言うならば、四代目はこの世界を愛していたようだが……私には、全く理解できん。」
精霊・オリジンは、さらに冷たい声で、彼女に一つ聞いた。
「……故に、世界を見捨てるのか。そこの下界人共の為か、愚かな……。そこの下界人は、もうじき死ぬぞ。」
レイノアは知っている。
この精霊は、世界の為ならなんだってやる。
あの、初代の気持ちすらも考えず、己の考えだけで動く。
その結果、彼が悲しむとも知らずに。
そして、彼の標的は後ろの子供たち。
理や名を教えていないとはいえ、精霊・オリジンに捕まれば、魔族以上に厄介だ。
何より、精霊・オリジンは今の自分がどういう状態か、知っている。
だからこそ、世界の為に子供達を巻き込もうとする。
子供達を守るためには、無関係を通さねばならない。
だが、彼女には、もうそれはできない。
なら、この場から離れるのが得策だ。
「……こいつらは、ただの下界人なのでは無い!私の弟妹だ!貴様に関わっていたら、時間の無駄だ。だから言っておく、私は世界などどうでもいい。父さん≪クラトス≫やこの子達を救う為なら……精霊だろうと、監視者だろうと、世界樹だろうと、関係ない!私は世界を裏切ってまでも、彼らだけを救う!」
レイノアは、ジャックを視る。
『このままでは本当に……いや、まだ……まだ、大丈夫だ。』
レイノアはこの場から、離れようとした時だ。
秋信が目を見張って、震えながら言った。
「ね……姉さんはディセンダー。ごめん……なさい……」
エルシアも、同じ事を想っていたのだろう。
静かに泣いている。
『この子達を奪われたあの村で、私はすでに決めた。私はこの世界よりも、この子達を選んだ。それにより、片羽という呪いを受けた。そして今、私は完全に呪いと言う鎖に縛られた。羽によって、生かされたディセンダー能力……皮肉なものだな。』
今のレイノアに、世界を、世界樹を裏切った罪悪感は無い。
ただあるのは、この子たちに、こんな顔をさせてしまったという罪悪感だけ。
故に、彼女は裏切りの翼を持っても、悔いはない。
レイノアは、精霊・オリジンを睨んだ。
翼を広げて、村長の家に飛んだ。
それは、一種の瞬間移動のように。