テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
村長夫妻は家の前で、〝ドサリ〟と言う音を聞いて飛び出す。
彼らにとっては、見知った子供達だった。
「君達、大丈夫か⁉」
彼は、妻に薬を用意させる。
レイノアは、彼に怒鳴りながら、
「ジャックが危ないんだ。頼む、力を貸してくれ!」
彼は頷く。
ジャックが目を開け、必死に声を出す。
「お姉ちゃん、ごめんなさい……。お姉ちゃんが、本物の世界の救世主≪ディセンダー≫だったなんて……。でもね、そうじゃなくても……お姉ちゃんは、僕達のディセンダー≪救世主≫だよ。今は顔も思い出せないけど、お父さん達の言ったように、本で読んだ通りの……。お姉ちゃんは、この世界が嫌いかもしれないけど……僕は好きだよ。だって、お姉ちゃんやお兄ちゃんに会えたもん。だから僕は、この世界大好き……」
ジャックが手を伸ばす。
レイノアはその手を握る。
その間も、浄化の光はジャックを包んでいる。
レイノアは泣いていた。
「お姉ちゃん、泣いているの?……お姉ちゃんも、泣くん……だね。」
「泣く?では、今のこの感情は、お前達が私に教えたのだ。……なら教えよう、私の名≪真名≫を。」
少し間を取って、彼女は言う。
「〝レイノア、光を知る者〟だ。」
「……お姉ちゃんの名前、知れて良かった。」
そして、ジャックは微笑む。
「レイノア……お姉ちゃん……」
そう言って、握っていた彼の手の力が弱くなる。
そのすぐだった、彼のその手が地面に落ちた。
レイノアは、心の底から声にならない声で叫んだ。
二人も泣いていた。
夫妻は、その状況で理解した。
抱き合って、泣いている。
この村で一番高い丘に、ジャックを埋めた。
ジャックが眠る墓の前で、彼女は膝を着いて拳を握りしめる。
『今回の件で、ジャックを失った。秋信は左腕も失った。エルシアは心の底に、癒えない傷をも負った。あの子は、兄と村長以外の男性に恐怖している。これから辛いだろう、実の弟を失ったのだから。私は許さない。誰よりも、自分を。だからこそ、彼らを守れなかった自分への罪として、この翼を背負う。』
レイノアは、ジャックの墓を撫で、
『だってそうだろ?大切な弟妹を、何度も傷付けたのだから……』
――夜が明け、秋信とエルシアが起きて来た。
夫婦は優しい声で彼らに挨拶する。
二人も挨拶した後、この場にレイノアがいない事に気付く。
「あの、おじさん、姉さんはまだ……」
村長は、二人を椅子に座らせる。
彼らにココアを渡しながら、苦笑して言った。
「ああ、あの場所にいるよ。君達も良くここまで、頑張ったね。」
と、頭を撫でた。
エルシアはココアを一口飲んで、机に置こうとして零してしまった。
怯えながら、ココアに手を伸ばす。
「ご……御免なさい……」
それを、村長は優しく止める。
彼に触れられた時、エルシアは悲鳴を上げた。
彼は理由を知っている。
だから、妻に彼女を預け、床にこぼれたココアを拭く。
新しいココアを渡しながら、
「ここは大丈夫。落ち着いたら、飲むと良い。」
エルシアは相手が判れば、彼に触れられても大丈夫だ。
だが、背後や気が動転している時は、今のようになる。
三日経った今でも、彼女は兄と村長以外の男性には恐怖し、傍に寄る事も無い。
夫婦は、二人が追った心の傷を、ゆっくりでいいから供に克服し、受け入れようと決意していた。
そんな二人の姉は、あれからずっと丘にいる。
彼女もまた、心の傷を負っていた。
――村長宅に来て、一週間が経った。
村長は気晴らしも含め、秋信とエルシアを外に連れ出す。
秋信は、腰に剣を下げていた。
エルシアは、兄の服の裾を掴んで歩いている。
外に対する警戒心は、二人が受けた心の傷を伺える。
村長は二人に優しく、
「この後、ジャック君の所にも寄ろうか。無理そうなら、君達が行きたい時にするけど……」
二人は首を振った。
「いつまでも、ジャックを一人には出来ない。」
「それに会いたいから。」
丘を目指して歩き出した。
だが、丘に行く前に、大きな爆発音が響く。
村に、軍が魔族を引き連れて襲って来たのだ。
村長は急いで、村の皆を避難させる。
彼らの前に、魔族が襲い掛かる。
秋信が、急いでエルシアを庇う。
村長が二人を助ける前に、一人の少女が二人を助けた。
レイノアは、後ろの二人を視る。
怪我はしていない。
彼らを村長に預ける。
彼女を見た魔族が口を開く。
「くく、こんな所で世界の守り手≪ディセンダー≫に会えるとは……」
その言葉で、村長は彼女の人並み外れた行動を理解した。
今の時代にも、世界の救世主≪ディセンダー≫の伝説は色濃く残っている。
存在しているのも、知っていた。
レイノアは、この村に居る魔族にも、眼を向ける。
上級魔族も多い。
なにより、この場には魔族王がいる。
レイノアは、狙いを魔族王に定める。
だが、彼女が近付く前に、他の魔族に囲まれる。
一瞬の隙ができ、彼女は地面に叩き付けられた。
後ろで、悲鳴が聞こえる。
『これ以上、悲しませる訳にはいかない。私は、あの子達に従う……』
すぐに治癒術を掛け、立ち上がる。
レイノアは、魔族を無視して二人を見た。
「お前達は、この世界が好きか?お前達の家族を奪い、辛い想いだけをするこの世界で、お前達は生きたいか?」
二人は頷き合って、彼女を見つめる。
「この世界には、両親が、弟が眠っている。僕たちはずっと姉さんに伝えたかった。僕も、ジャックと同じで、姉さんと供に旅をしたこの世界が好きだ。」
「私も、姉様や兄様に会えたこの世界が好きです。良い事ばかりではないけど、全てが辛い訳では無いのを知っているから……だからこれは、私達の我侭です。私達は、姉様と供に居たい!だって姉様は、私達の姉様ですもの‼」
レイノアは目を見開いた。
今までにない以上の笑顔で、そして涙目で、
「そうか……」
そして、彼女は瞳を閉じ、開く。
「なら私は、お前達の姉として、お前達のディセンダー≪救世主≫として、二人が生きるこの世界を、ジャックが眠るこの世界を、守りぬこう。」
レイノアは空に手を掲げる。
彼女は光輝き始める。
翼を広げ、叫ぶ。
「時空を超え、我が力になりて、光の器となれ!我が元へ来たれ、レディアント‼」
空から光輝く剣が、出て来る。
『私は、レディアントを手に入れる事は出来なかった。それは一度、レディアントを持って、初代の時代に行っているからだ。今の私ではないが、それによって私は既にレディアントを所有していた。翼を手に入れ、記憶の夢を見てそれが解ったのだから、本当に情けない。』
それを左手で握り、魔族たちに振り返りながら叫ぶ。
「レディアント完全解放‼」
魔族王を見ながら、そしてここには居ない初代に向けて、
「魔族王、貴様はやり過ぎた。四代目が原因を作ったとはいえ、初代との契約を忘れた訳では無いだろう。初代、これは貴様の甘さが生んだ!貴様の落ち度は、自分自身で責任を取れ!」
翼で己の身を包む。
再び彼女が翼を広げる。
だが、そこにはレイノアでは無く、少年だった。
綺麗な銀色の髪の……
その少年は、顔を二人に向けて優しく見る。
「ごめんね。君達のお姉さんを、少し借りる。君達のおかげで、この子の心は守られ、救われた。お礼を言うよ、ありがとう。」
そして彼は、魔族を見上げる。
魔族王は面白そうに、
「こちら側に来られるとは、予想もしませんでした。」
「僕は、偽りの姿で居る状態だ。魔族王、君を取り逃がしたのは、僕の落ち度だ。」
「では、どうするのですか?今の貴方では、私を使役できませんよ。」
彼は笑顔だった。
それを合図に、魔族は彼を襲う。
だが、魔族は吹き飛ぶ。
まるで、見えない壁にぶつかるように。
彼は空に向かって、叫ぶ。
「精霊・ラタトスクよ、世界の守り手≪ディセンダー≫の名において命ずる。門を開門せよ‼」
そう叫んだ瞬間、空にとても大きな門が現れる。
「確かに、今の僕には君達を使役できない。でも、僕はこの世界の初代世界の守り手≪ディセンダー≫だ。魔族達よ、この世界から出て行って貰う‼」
門が開き、魔族は吸い込まれていく。
「こんな方法で、我々をこの世界から追い出すとは!」
全ての魔族が、この村から消えた。
門も閉り、消えた。
「安心して、この世界にいた魔族は……黒い魔物は居なくなった。これからの世界をどうするかは、君達次第だ。」
彼は翼に包まれる。
翼が広がると、レイノアに戻る。
残る軍人に、レイノアは冷たい声で言う。
「お前達は魔族と手を組み、その契約者になった。本来なら貴様らを助けるのだろうが……生憎、私は他の世界の救世主≪ディセンダー≫と違って、大切な物を踏みにじられてまで救ってやる程、甘くはない!故に私は、世界の救世主≪ディセンダー≫では無く、あの子達の姉として、貴様らに剣を向ける‼」
彼女は彼等に突っ込む。
次々、軍人を斬っていく。
彼等が慌てて、逃げ出し始める。
「逃がすと思うか!光の裁き、ジャッジメント‼」
光魔術を使用する彼女。
光が辺りを覆い、全てを消滅させた。
レイノアは翼を大きく広げ、羽根を散らす。
この土地を覆っていた黒い煙を浄化する。
レイノアは二人の所に行き、村長に聞く。
「あの時の言葉は、今でも聞いて貰えるか。」
彼は頷いた。
彼女を見つめたまま、
「二人の心の傷も考え、僕達は二人を正式に息子と娘にしようと思っている。無論、ジャック君も。」
「そうか……」
レイノアは、二人の前に膝を付き、抱き寄せる。
「私は、ここを離れる。だから、彼らと供に居ろ。」
二人は泣きながら、彼女にしがみ付いた。
「僕達が役に立てないから置いてくの?」「姉様、置いて行かないで‼」
彼女は二人を離し、
「お前達が大切だからこそ、信用できる者に預けるのだ。」
レイノアは腰に会った剣を鞘ごと抜く。
そして二人に、クラトス≪父さん≫から貰った剣を渡す。
「秋信、エルシア、父さんから貰った大切な剣を、お前達に預ける。迎えに来るまで、二人で預かっていてくれ。」
二人は剣を大切に抱え込む。
頷き合って、
「「迎えに来てくれるまで、ずっと待ってる。」」
レイノアは笑顔で、二人の頭を撫でた。
立ち上がり、村長に頭を下げる。
「この子達を迎えに来るその時まで、この子達の事をお願いする。それとこれは、ジャックに渡していたお守りだ。強くしていおいたから、村の中央にでも置くと良い。そうすれば、村は結界で守られる。」
村長にペンダントを渡す。
彼は頷き、
「大切な貴女の弟さん、ジャック君のお守り、大切に祀らせて貰います。二人の事も安心して下さい!頑張って、父親業をしますよ‼」
彼はガッツポーズを取る。
レイノアは苦笑した。
最後にもう一度、「頼む」と言って、彼女は翼を広げて飛立った。
それを秋信達は、ずっと見ていた。
秋信は村長に言った。
「おじさんのこと、お父さんって呼べるように努力する。」
村長は彼らの頭を撫でながら、優しく言った。
「君達が、そう呼びたくなってからで良いよ。さて、祠を作ろうか。」
村長は速やかに、祠を建てた。
秋信とエルシアは、自分達のペンダントを外す。
それを村長に渡した。
「僕達のこのお守も、一緒にして下さい。」
「ジャック一人だと、寂しいだろうから。」
彼はそれを受け取り、三つのペンダントを祠に祀った。
それからしばらくして、世界樹の森がある方で、光の柱が上がった。
世界は光に包まれ、浄化された。
再び、世界にマナが戻った。
彼等は待ち続けた。
大切な姉が、迎えに来るその時を。
いつまでも、いつまでも、この村で……