テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
レイノアがここに居座ってから、数か月が経った。
彼女は、全く変わらなかった。
そんなレイノアの態度に、彼女は慣れていた。
そんなある日、レイノアはいつものように村に向かおうとした。
が、行くのを躊躇っていた。
レイノアは、拳を握りしめていた。
そんな彼女の姿を見た、クラトスが聞いた。
「……どうかしたのか。もしかして、奴が現れたのか?」
レイノアは首を振った。
そして、クラトスを見て聞く。
「クラトス、こういう時、下界人ならどうするものなのだ……。あの子の、あの子の命が尽きようとしている。私が会いに行っても、良いものなのか。迎えに行くと、約束しておいて……ずっと無視していた。私の事を恨んでは、いないだろうか。いや、その前にあの子達は……私の事を、覚えていてくれているだろうか。」
クラトスは、誰の事を言っているのかはすぐに解った。
本来ならば、彼女に会いに行く事を進めるだろう。
しかし、彼女の姿は当時から何一つ変わっていない。
それを、ただの下界人が見たら恐れられるのではないだろうか。
だが、アンナが彼女のその問いに答えた。
「私には、理由は解らないわ。でも、会えなくなるのであれば、後悔しない為にも会いに行くべきよ。だって、その人には会えなくなるのよ。だったら、行くべきよ。」
レイノアは、アンナを見ていた。
そして、小さく呟いた。
「……そうか、そう言うもの……だよな。」
そう言って、レイノアは翼を広げた。
これには、クラトスも驚いていた。
そして、彼女は光と供に消えた。
あの子の元へ飛んだのだ。
――秋信はベッドの上で、謝っていた。
最早、ベッドから起き上がる事も出来ない。
「御免なさい、姉さん。僕、姉さんが来るまで……待てそうにないや。」
そう言った時、秋信は光輝く羽根が部屋いっぱいに広がったのを見た。
その光の中には、一人少女が居る。
長く青い髪、輝く光る翼を持って現れた。
秋信はかすれた声で、一筋の涙を流しながら言った。
「……姉さん、来てくれたんだね。ごめんなさい……これじゃあ僕は、姉さんと旅には行けないや。」
レイノアは翼をしまう。
秋信のベッドに近付き、腰を降ろした。
そして優しく、秋信の顔に手を添える。
彼の頬は、こけ細っている。
弱く、本当に弱くなっている。
彼女は、下界人の寿命が短いのを知っている。
中でも、人間の寿命が短い。
知っていても、何もできない自分が悔しい。
いくら世界の守り手≪ディセンダー≫でも、他者の命を蘇らせる事も、与える事もできない。
その気になれば、やれるだろう。
だが、それをすれば、彼には自由は無い。
消える事のない命、それをずっと抱えながら、その魂は縛られる。
それは、初代の仲間を知っているからだろうか。
だからこそ、レイノアとしては嫌なのだ。
人としての寿命を全うした方が、この子の為なのだと彼女は思う。
「……遅くなってすまない、秋信。それにまだ、私の事を姉と呼んでくれるのか。こんなに遅くなって、しまったと言うのに……。本来なら、目覚めた時に……お前達に会いに行くべきだったなのに。」
秋信は弱弱しく首を、小さく振った。
そして、彼女の手を握った。
彼女の手を握る彼の手は、本当に弱い。
下界人はあまりにも弱く、もろ過ぎる。
「姉さんが、ここ最近この村に毎日来ていたのは知っているよ。だって、ジャックのお墓に毎日、花が添えられていた。それだけじゃない……姉さんが、見守ってくれているのも知っているよ。」
「そうか……。もっと早く目覚めていれば、良かったのに。人間の寿命が短いのを知っていた。なのに私は、こんなに遅くなってしまった。大切な弟と、まだ行ってみたい場所、合わせたい人が、いたのに……」
これは本心だ。
最初の頃の彼女なら、世界に興味はない。
だが、彼らと旅をし、自身の目で見聞きし、彼らの喜ぶ顔を見た時、私の中では変化があった。
それを認めるのが、怖かった。
知ってしまえば、レイノアは彼らを失えない。
そう思っていた。
だが、ジャックを失い、今は秋信を失おうとしている。
彼女はこの子達に、何も返せていない。
何もしてあげていない。
捨てた感情を、今は望んでいたのかもしれない。
もし、感情を持って彼らに会っていたら、何かしら変化はあったのかもしれない。
もしかしたら、この子達を……いや、違う。
きっと感情があっても、彼女は変わらなかっただろう。
下界人に興味がなく、その命さえも、どうでも良かったのだから。
そんな風に、彼女は考えていた。
それが解ったかのように、秋信は笑顔で彼女に答える。
「姉さんが、言っていた……姉さんのお父さんの事だね。それは、エルシアに託す事にするよ‥。」
託す……下界人は限りある命を誰かに託し、繋げていく。
そうやって、自身の想いを、自身の存在を残していく。
今なら解る気がする。
初代達が下界人を大切に想う気持ちが。
だが、それでも彼女のこの想いは限られている。
その点を考えれば、彼らとは本当の意味で違うのだろう。
彼は話す。
「姉さん……実は僕、家族が出来たんだ。姉さんとエルシア以外の。今では孫まで出来たよ。今に、ひ孫も生まれる。でも僕は、その子を見る事は出来ないと思う。気掛かりなのは、エルシアが一人になること。心配だったけど……皆、エルシアを大切にしてくれる。僕には勿体ない家族だよ。」
そして、レイノアを見つめる。
彼は自身の決意を明かした。
「姉さん、僕は決めたんだ。僕はね、死んだらジャックの所に行こうと思っているんだ。ジャックはずっと一人で居たから、僕が傍に居てあげようと思って。だから心配しないで……ジャックは、僕が何とかするから。」
レイノアは、涙を流していた。
下界人は人生は、あまりにも短い。
だが、それ以上に成長は早い。
子供だった彼が、弱いと言って嘆いていた彼が、こんなにも大きく成長している。
レイノアは、その成長を見てみたかった。
彼等の成長を、営みを、想いを、その身で見ていたかった。
だが、今はもう遅い。
しかし、これからの彼の想いを継いだ者達を見守る事はできる。
エルシアもまだ見守れる。
だからこそ、笑顔で彼に言う。
「そうか、私が居ない間に成長したのだな。なら私は全力で守ろう、この世界を。エルシアも、まだこの世界に居る。なりより、お前の残してくれた子孫の為にも……」
彼女はもう一度、彼の痩せこけた頬を撫でる。
と、下の方からエルシアが慌てた様子で、この部屋に近付いて来るのが解る。
レイノアは立ち上がり、翼を広げる。
彼が、悲しそうに言った。
「……姉さん、エルシアには会って行かないの?」
レイノアは彼に振り返り、優しく言った。
「今、私があの子に会えば、あの子は選ばなくてはいけなくなる。お前の残した家族か、私か。あの子は優しいから、選べられないだろう。だからこそ、私は遠くからあの子を見守る事にする。」
「そう……そうだね。姉さんを一人にして、ごめんね。」
「気にするな、今は手の掛かる者達と、一緒だ。お前達のおかげで、私も下界人の事を知る事が出来たからな。秋信、またお前の魂に会いに行くよ。」
と、レイノアはある事を想い出す。
秋信に苦笑して、
「そうだ、秋信……お前の言った通りだったよ。大切な者に、名を呼ばれるのは嬉しい事だな。」
そう言って、彼女は消えた。
秋信は笑っていた。
そして小さく、
「そうでしょ、レイノア姉さん……」
それからすぐに、エルシアと家族が入って来る。
秋信は別れの言葉を話し、静かに息を引き取った。
それと同時だった。
別室では、新しい家族が増えた。
レイノアは眼を通して、全てを視ていた。
彼女は翼を広げる。
彼女の羽根は風に乗り、村へと散っていく。
エルシアは、生まれた赤子を抱き外にいた。
今日亡くなった兄・秋信を埋葬する為だ。
兄≪秋信≫は弟・ジャックの隣に眠る。
全てが終わり、エルシアは家に入ろうとした時だ。
空から光る羽根が、舞って来た。
彼女は、この羽根を知っている。
彼女は赤子を優しく抱きしめる。
「会いに来てくれていたのですね、姉様。兄様の最後と、兄様の新しい家族を、見届けてくれたのですね。それに私達の事を覚えていてくれて、ありがとうございます……レイノア姉様。」
光る羽根が地面に着くと、辺りは花畑になった。
色鮮やかなとても綺麗な花畑。
それは姉弟妹≪きょうだい≫で見たどこかの花畑……