テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
――クラトス・アウリオンは、森の中を走っていた。
時には、自分に襲い掛かる魔族を斬り倒していく。
傍には青い髪の騎士、緑色の髪の神子、そして金髪の少年と一匹の動物。
彼らは、彼の仲間であり、供に世界を見守り、手助けをする監視者である。
クラトスは辺りを確かめる。
『まさか……こんなに早く、世界を瘴気が覆うとは。これでは、あいつのした事が無駄になってしまう。』
世界が瘴気に包まれた理由は、魔族による侵攻だ。
しかし、魔族がこの世界に入る為には条件がある。
精霊・ラタトスクが治める門を通るか、世界の守り手≪ディセンダー≫と同等の力を持つ者に、穴を使って呼び出されるか。
それは、この世界の初代ディセンダーが魔族王と契約をし、入れなくしているからだ。
では何故か……
それは四代目ディセンダー……世界の守り手自身が、世界を壊す為に魔族をこの世界に入れたからだ。
四代目世界の守り手≪ディセンダー≫は許せなかったのだ。
大切な仲間と、愛する恋人を失った……この世界を。
何よりも、ディセンダー≪世界の救世主≫であったのに救う事の出来なかった……自分自身を。
そうクラトスは、四代目世界の守り手≪ディセンダー≫の事を思い出していた。
と、隣に居た緑色の髪の神子が緊迫した声で言った。
「……世界樹が新たな世界の守り手≪ディセンダー≫を創る事に成功したそうです!」
「本当か、マーテル⁉それならこの世界は、まだ正す事ができる!」
向かいに立つ青い髪の騎士が、嬉しそうに叫ぶ。
彼以外にも金髪の少年も、嬉しそうに言う。
「やったね、姉様!」
だが、クラトスは素直に喜ぶ事が出来ない。
そう彼の直感が言っていた。
金髪の少年が、彼女に問う。
「それで、今度の世界の守り手≪ディセンダー≫はいつ頃生まれそうなの?」
彼の問いに、緑色の髪の神子こと、マーテル・ユグドラシルが複雑そうな表情を浮かべる。
その表情でクラトスの直感は案の定、当たっていた。
彼女は持っていた杖を握りしめ、
「ミトス……それにユアン、喜ぶのはまだ早いわ。今回の世界の守り手≪ディセンダー≫は、四代目の影響もあってかなり危ないそうなの……。だから、かなり幼い状態で生まれるそうよ。力もちゃんと使えるかどうか……」
「それは……初代のように、赤子の状態で生まれるという事か?」
マーテルは小さく首を振る。
彼女は空を見上げてから、
「赤子ではないわ。……おそらく、十歳前後くらいで生まれると思うの。でも、その世界の守り手≪ディセンダー≫を狙ってくる可能性があるそうなの。仮に、力がなくても世界の守り手≪ディセンダー≫だから……」
「魔族が、こちら側に来る数を増やせると言う事だな。……その為に、世界の守り手≪ディセンダー≫を狙って来ると言うことか……」
青い髪の騎士こと、ユアン・カーフェイが厳しい口調で言った。
その言葉に、一同は静かになる。
彼は考える。
『マーテルでは、魔族が来た場合の対抗は出来ないだろう。ミトスもおそらく同じ。そうなると、私かユアンだが……この件には、精霊が絶対に絡んでくるだろう。そうなれば、ユアンでは押し負ける可能性があるな。』
腕を組み、考えをさらにまとめる。
そして決まった結論を彼らに告げた。
「その役、私が引き受けよう。もし仮に、世界の守り手≪ディセンダー≫を狙って来るのであれば、戦える物の方が適任だろう。」
「それなら、私でもやれるだろう?」
と、気の抜けた声でユアンは言った。
クラトスはため息を付いて、ユアンに呆れたように告げる。
「お前では、オリジン辺りが来たら押し負けするだろう。」
「ああ、確かに!ユアンじゃ、ダメだね。」
と、金髪の少年こと、ミトス・ユグドラシルは肩をすくめて言う。
当の本人、ユアンも納得したようだ。
ここで仲間と別れ、世界樹の森へと彼は急いだ。
森に着き、思ったのは外と違い、空気が綺麗であったことだ。
しかし、それでも所々脆くなっている。
彼はここに留まる準備を始めた。
それからどれくらい経っただろうか……
ついに世界樹から小さな光が生まれた。
が、本来は柱となるのだが……
今回は柱になりきれず、消滅してしまった。
彼は焦った。
『もしや、失敗したのか⁉」
彼は、世界樹の幹の元へ行こうと駆け出そうとした。
そうすようとしたのだが、小さなものがこちらに転がって来た。
それが途中で止まった。
それは、小さな少女であった。
その小さな少女は、仰向けになって空を見ていた。
だが、そのまま動こうとしない。
クラトスは彼女の元へ駆けて行く。
そして、少女をよく見た。
深い青い髪に、瞳の色は明るい紫色だった。
小さな少女はジっと、彼を見続けていた。
その間も、小さな少女は黙り込んでいるのだった。
彼は心配になり、手を差し伸べる。
「……大丈夫か?起き上げれるか?」
小さな少女は、その手を掴んで起き上げる。
服には土汚れが付いていた。
クラトスは膝を着き、彼女のそれを落としてやる。
彼女はクラトスをずっと、見続けている。
クラトスは心配になった。
『それにしても……これはまずいのではないのだろうか。声一つ出さないと、不安になるな……。そもそも、喋れるのだろうか。だが、この姿は昔の初代を思い出す。性格は正反対な気がするが……』
クラトスはそれが口にも出ていた。
「困ったな……。幼くても大丈夫だと思ったが、無理だったのだろうか……」
そして、それには気付いてハッとする。
仕方がないと思いつつ、彼女をジッと見て、
「お前は、自分の名を解るか?」
この問いに、小さな少女は大きく首を振る。
それに、クラトスはさらに困る。
だが、やっと彼女が声を発した。
「……私の名前…ディセンダー。でも、私自身の名前……まだ無い。」
小さな少女はクラトスを指差し、
「……名前、何?」
クラトスは小さく微笑んだ。
彼女の瞳を見て、彼は名乗る。
「私の名は、クラトス。“クラトス・アウリオン”だ。……お前にもいずれ、名が付くだろう。」
と、小さな少女の頭を優しく撫でてやった。
彼女は嬉しそうにしている。
だが、その表情が暗くなる。
そして、クラトスを見つめて、
「私の名前……いま欲しい。クラトスに、付けて欲しい……」
クラトスは困った。
世界の守り手≪ディセンダー≫に名を付けるという事は、初代世界の守り手≪ディセンダー≫で経験積みだ。
後で、精霊達に何と言われるかが、目に見えてくる。
『どうしたものか……。このまま名付けないのも可哀想な気がするが、精霊たちが黙っていないだろう。初代の時と同じになってしまう可能性が……』
しかし、目の前の小さな少女はジッと寂しそうに、それでいて力強くこちらを見続けている。
クラトスは頭を抑えた。
『何より、諦めては貰えなさそうだな……』
根負けしたクラトスはため息を付き、目の前の小さな少女を見る。
彼女の頭を撫で、
「はぁー……、また彼らに嫌味を言われるかもしれん。が、仕方ないな。……そうだな、うむ。では、お前の名は〝レイノア……光を知る者〟、でどうだ?」
目の前の小さな少女は、何かを考え込んでいた。
クラトスは名付けた名が気に入って貰えなかったのか。
と、不安になっていたのだが……
小さな少女がこちらに顔を向け笑顔で言った。
「レイノア、私の名……嬉しい、気に入った。ありがとう、クラトス。」
どうやら気に入って貰えたようで、クラトスは安心していた。
それが顔に出たのか、彼は微笑んでいた。
『それにしても、この子は不思議な子だな。ん?今度は辺りを気にしているのが……まさか魔族⁉』
クラトスは辺りを警戒する。
だが、それらしき気配は感じない。
『いや、違うな。大方、ラタトスクか、その辺だろう。なら、また世界の守り手≪ディセンダー≫に名を付けた事を責められるな。』
と、彼は胃が痛くなるのを感じたのだった。
それからしばらく、この小さな少女レイノアにずっと彼は傍に居た。
その成果もあり、彼は最近少しずつだが、彼女の感情や仕草が分かるようになっていた。
クラトスはいつものように、食事の支度を始めた。
すると、今日はレイノアが手伝いを始めた。
クラトスは彼女に野菜を渡し、様子を見ながら調理していく。
彼女の切った野菜は、かなりボロボロだった。
クラトスはふと、ある光景を思い出していた。
『そう言えば……あいつとも、こうやって共に調理したのだったな。あいつも、最初はこんな感じだった。』
と、クラトスは彼女の切った野菜を受け取る。
そして少女の頭を撫でて褒める。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
カレーが出来上がり、クラトスはレイノアに渡してやる。
彼女は手渡されたカレーを見つめ、
「これ、カレー……と言うものだった?」
すると、いつもは黙って食べる彼女が呟いた。
彼女はクラトスを見上げ、
「……違うか?」
クラトスは一つ頷き、
「そうだ、これはカレーだ。他にも、分かるものはあるか?」
「ジャガイモ、ニンジン、タマネギ……鶏肉。」
そしてレイノアは、辺りを少し見渡す。
クラトスの荷物の方を指さし、
「……本!」
クラトスは小さく微笑んだ。
彼は、レイノアは少しぐらいの知識は持っている。
いや、少しずつ思い出している、と判断した。
食事の後片付けを済ませ、先程レイノアが指さした本を持っていく。
レイノアはそれを受け取り、中を開いて見ている。
が、彼女は固まっているように思えた。
クラトスは彼女の顔を見て聞いた。
「レイノア、読めるか?……それとも、難しかったか?」
レイノアは首を振る。
彼女は本に書かれている文字を示しながら、
「読めない。でも、これは知ってる。」
「そうか……。では、これから私が教えてやろう。まずは、自分の名前からだな。」
と、彼女の頭を撫でた。
レイノアの名を、地面に書いてやる。
それを、彼女は横に書いては消しを繰り返していった。
そうして、文字を理解していったのだった。
レイノアは物覚えが早く、三日で文字を理解した。
だが、意味はあまり理解していないようだ。
よくクラトスに聞きに来た。
それを、クラトスは分かりやすく教えてやる。
理解した彼女は、また読むのを繰り返していた。
しばらくして、頃合いを見てレイノアに剣を教える事にした。
クラトスは、彼女に勉強や剣術を教えるのが日課になっていた。
そんなある時、レイノアはいつものように本を読んでいた。
だが、その彼女が唐突に言い出した。
「クラトス、この“家族”と言うものは……血縁関係と言うものを指すのであろう。なら、血縁関係かどうかは解らないが、私にとっての母親と言うのは、世界樹と言う事になるのか?だが、ここには“それ以外の家族”についてと言うものも書かれている。と、言うことはだ……私の父親と言うものは、クラトスという事になるのか?」
と、若干声が嬉しそうに思える。
しかし、クラトスは固まった。
彼は聞き間違い……いや、思い違いだろうと思い、
「……レイノア、どうしてそう思ったのだ?」
「そう思ったから……。嫌だったか?」
レイノアは悲しそうな表情をしていた。
クラトスは考え込む。
『……父親。そうか、レイノアはそう思っていたのか。この子には可哀想な事をしてしまった。私は、この子の監視をしているのだ。それを、この子が知ればきっと悲しむだろう……。』
彼女はまだ悲しそうな顔をしている。
クラトスは彼女の頭を撫で、
「……好きにしろ。」
彼女の悲しそうな表情が、パッと明るくなった。
その日から、レイノアはクラトスの事を“父さん”と呼ぶようになったのだった。