テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた   作:609

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マイソロ2 五代目ディセンダー 第三十話 母親

レイノアは、いつものように屋根の上に居た。

そして、空を見ているのだ。

空と言うのは、滅多な事では変わらない。

だが、空も毎日同じと言う訳ではない。

雲が多い時、雲が無い時、色が変化する時、星が見える時と色々だ。

彼女が初めて見た空は、瘴気に覆われた空。

だからこそ、こう言った変化は嫌いではない。

と、大量の洗濯物を持った、ナツナッツ族のパニールが居た。

普段なら、クレアやナナリー達が手伝っている。

だが、今この船に乗っているのは、レイノアとパニールだけだった。

他の者は、依頼や町に出ていないのである。

レイノアはそれをジッと見た後、屋根から降りる。

隣まで行き、珍しくパニールを手伝った。

 

「あら?ありがとう。手伝ってくれるのね。」

 

と、言って、笑顔を向けて来る。

レイノアは不思議だった。

何故なら……

 

ーーそう、これはレイノアがこの船に来てから、三日が経ったある日の事だ。

レイノアは壁にもたれ、ロイドとクラトスの様子を見ていた。

そこには、カノンノとレイも居る。

彼女は単に、ロイドとクラトスが今現在は、どのように互いに接しあっているのかを理解する為でもある。

それによって、自分は彼等との接し方を考えなくてはいけない。

関わり過ぎれば、変に彼らの関係を壊しかねないからだ。

と、そこにパニールが、嬉しそうにやって来たのである。

 

「あ、パニール!どうしたの?」

「ふふ、歓迎会をしようと思って。前に、ゲーテさんも喜んでいたから。貴女も、そうだと良いわ♪」

 

パニールが、レイノアを見て言った。

レイノアは体勢を変えず、パニールに言った。

 

「……あれが、喜んでいたか。お前の頭は、能天気だな。」

 

ゲーテがこの船に来た時、レイやカノンノの手によって、無理やり仲間に入れられたあげく、戸惑う間もなく、歓迎会。

まぁ、本人は当初は怒っていたが、次第に喜んでいた。

いわゆる、ツンデレと言うやつだ。

 

「あら?知っているの?でも、嬉しそうではあったわよ。」

 

ゲーテはともかく、自分をこの船の仲間にされては迷惑でしかない。

と、彼女は考える。

なので、レイノアは彼女に冷たく言い放つ。

 

「はぁー、まあいい。だが、はっきり言っておく。私は、この船には乗ってはいるが、仲間になった覚えはない。やるなら、私抜きでやれ。」

「それでは、意味が無いわ。貴女の歓迎会なのだから。」

「なおさら、私を巻き込むな。あえて言うならば、関わるな!」

 

そう言いて、甲板の方へ向かった。

と、言った事があったのだ。

にも関わらず、パニールは何一つ態度を変えない。

こういう所は、レイノアに取って、思い出したくない女性を思い出す。

思い出した所で、話をできる相手は限られる。

なおかつ、話した所で、彼らに悲しい思いをさせるだけだ。

レイノアは、黙って洗濯物を干していく。

その手付きを見て、

 

「あらあら、とても上手ね。誰かから、教わったのかしら?」

 

レイノアは、横目でパニールを見た。

普段なら絶対に、こう言った事は話さないだろう。

だが、不思議と彼女は作業をしながら口に出していた。

 

「……こう言った、一般的知識は母親に教わった。」

「それは世界樹?」

「いや、人間の母親だ。私にとって、世界樹は母では無い。と言うより、興味が無いな。」

 

パニールは、少し困ったお顔になった。

が、すぐに明るい顔になって、“母親”と言うのに食いついた。

 

「貴女にも、そう言った人が人がいたのね。その方は、とても優しく、聡明な方だったのかしら。だって貴女は、とても優しい方だもの。」

 

レイノアは、自分が優しいと言う事に若干抵抗があった。

が、彼女との会話は本当に、当時の事を思い出す。

 

「ああ……確かに、そんな感じだ。だがあれは、馬鹿だった。なんと言うか、お前に何処となく雰囲気が似ていたな……」

 

パニールは、それが過去形になっている事に気が付いていた。

最後の洗濯物を干し終ると同時に、レイノアは屋根の上に戻った。

その理由は、簡単だ。

何故なら、明るい声がすぐに聞こえて来る。

 

「パニール、手伝うよ。……て、あれ?凄いね、パニール。これ一人でやったの⁉︎」

 

と、言って、カノンノとレイがやって来た。

パニールは手を頬に当て、嬉しそうに言った。

 

「ふふ、一人では無いわ。手伝ってくれた人がいたもの。」

「え?そうなの……え⁉あの人が⁉」

 

と、騒いでいる。

レイノアは、その会話を空を見ながら聞いていた。

 

『……うるさい奴だ。』

 

この船に来てからというもの、本当に毎日うるさくてたまらない。

子供達やあの家で暮らしていた以上の騒ぎが、彼女の耳に届く。

彼女は、仲間を持ったことは無い。

だから、こういう時に思い出すのは、仲間を持っていた先代達だ。

彼等も、旅をしている間は時間さえ忘れるくらい長く、短い旅をしていた。

いや、長く、短い旅なら彼女も同じようなものだ。

ディセンダー《自分》と彼ら≪下界人≫の時間は、流れる時の流れが違う。

だが、供に居る間は、それすら忘れてしまう。

 

レイノアは、このギルドに関わってから大分経つ。

そんなある日の午後。

レイノアはロイドに引っ張られ、食堂に来ていた。

彼女が入ると同時に、「パッパーン」と言う音が一斉に鳴る。

周りは、アドリビトムの者達が全員ここに集まっていて、机には料理やお菓子が沢山載っている。

レイノアの髪に、紙が乗っかる。

それを無表情で払う。

そして背を向け、彼女は食堂から出ようとする。

 

「て、ちょっと待ってよ⁉︎今からアンタの歓迎会をするんだから!当人が居ないと、意味が無いだろう‼︎」

 

ロイドが、レイノアの腕を掴んで止める。

 

『こういう所は、アンナそっくりだな。だが……』

 

レイノアは、ロイドに無表情の中に解りやすく伝える。

眉を寄せ、否定の意思を。

つまり、面倒だと言っているのだ。

だが、ロイドは引き下がらなかった。

 

「ちょっとだけでも良いから!ここに居るだけで、良いから!」

 

ここまでロイドに、お願いされては仕方がない。

レイノアは渋々、椅子に座った。

彼らは大いに、騒ぎ始めた。

レイノアは机に肘を付き、無表情でそれを見ていた。

彼女の隣には、クラトスが居る。

向かいにはロイドだ。

ハッキリ言って、早くこういう場所は出て行きたいと、彼女は思っていた。

それが表に出ていたのか、クラトスが反応する。

彼は、レイノアだけに聞こえるよう小さい声で言った。

 

「……お前は、賑やかな所が苦手だったか?」

 

レイノアは目線だけそちらに向け、クラトスにだけ聞こえる声で、

 

「いや、ただこうやって誰かと食事というのは、大切な物を思い出してしまう。それに何と言うか、この雰囲気はあれを思い出す……」

 

クラトスは、彼女が言うあれとは、アンナの事だと解っている。

それ故に、レイノアは彼に聞く。

 

「……何も聞かないんだな。あの時の事を。」

 

クラトスは、優しく言った。

 

「お前が話せる時でいい。待つのには、慣れているからな……」

 

レイノアは無言だった。

本当は知りたいはずだ。

自分の妻が、どのように亡くなったのか。

ロイドを、預けなくてはならない状況になった時の事を。

レイノアは、このわずかに残っている感情を、どのようにすればいいのか解らない。

だから、彼に何と言えばいいのかさえ、解らずにいる。

しばらくして、レイノアはそろそろ、ここを抜け出そうと思った。

だがその時、パニールがお菓子を持って話し掛けて来た。

 

「あら、ここに居たのね。はい、これ♪」

 

と、言って、お菓子を渡して来る。

レイノアはそれを受け取らず、冷たい声で言った。

 

「いらん。私は、ここに居るだけで良いと言われたから、居るだけだ。」

「うーん……でもここに来てから、貴女が食事を取っている所を、見ていないから心配なのよ。だから、遠慮せずに沢山食べて。」

 

レイノアは、ため息を付いた。

そして、面倒だと言う顔で言った。

 

「この際だから言っておくが、世界の守り手≪ディセンダー≫は食事を取らなくても、生きていける。」

「でも、レイさんは食事を取っているでしょ。」

「あれは、お前達を見て、そうするものと学習したからだ。だから、構うな。」

「……でも、食べられない訳では無いのでしょ?だったら、食べないと損よ。それにその方が、絶対楽しいわ!」

 

レイノアは目を見張った。

元々彼女の中で、パニールはアンナのようだとは思っていた。

故に彼女は、拳を握りしめていた。

 

『似ているとは思ってはいたが、ここまで似ているとは。……母親と言う生き物は、こうも似るものなのだろうか。アンナ……』

 

残った感情が、彼女の中でこみあげて来る。

これがどういう感情までかは、自分では解らない。

彼女は、自分でも気付かずに手を振り上げていた。

そして、パニールの持っていたお菓子は地面に落ちて、壊れた。

レイノアも、動きを止めていた。

これにすぐに反応し、怒ったのがカノンノだ。

 

「パニールが折角、貴女の為に作ったのに……酷いよ!」

「……私は構うな、と言っていた。それに関わって来たのは、そっちだ。」

 

レイノアは冷たく言った。

だが、その視線の先は、壊れたお菓子に向いていた。

がそれでも、顔を上げて、はっきりカノンノに言ったのだ。

カノンノは、レイノアを叩こうとした。

が、その前にクラトスが、レイノアの頬を叩いたのだ。

レイノアに痛みは感じない。

が、クラトスにそうさせてしまった自分に、何処か敗北感があった。

 

「……お前が、こういう事に疎いのは解っている。だが、こう言った行為を、自分の失態で壊したのなら、言う事があるはずだ。」

 

レイノアは、パニールの落としたお菓子に手を当てる。

それを元の姿に戻し、机に置く。

そして、食堂から出て行こうとする。

出るその瞬間に、背中越しに小さく呟いた。

 

「………すまなかった。」

 

レイノアはその後、食堂に行く事は無かった。

外に出て、甲板の屋根に上がる。

そして空を見上げながら、

 

『……私は何をしているのだろうか。クラトスに……父さんに、あんなことをさせてしまった。いや、下界人に対し、あそこまで感情的になる事が、ある意味でおかしいのだ。何故、捨てたはずの……いや、壊したはずの感情が自分の中にあるのだろうか。』

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