テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
マイソロ2 初代編 第四十話 世界の始まり
レイノアは一人空を見上げていた。
そして潮風が彼女の髪や頬を撫でていく。
彼女は一人思い出していた。
彼女が知るこの世界の最初の世界の守り手《ディセンダー》を……
ーーこれはまだ、この世界「グラニデ」に生きる人々が多種族と平和に暮らし、世界樹に祈りを捧げ、恩恵に感謝していた。
そして世界樹を中心に、大陸が繋がっていた頃の時代のお話……
世界樹が世界に色々な種族を生み出してから、数百年が経った。
世界樹は、自分の造り出した世界をより広く見る為、自分の分身体であり、自分の子である「ディセンダー」をこの世界に生み出すことを決める。
そして、この世界についても知りたい世界樹は、人々と同じ赤子として、世界の守り手≪ディセンダー≫をこの世界に産み落とすのであった。
ーーある村の祈りの場。
そこには人間・エルフ・ハーフエルフと多種族の者達が、祈りを捧げていた。
彼等は世界樹の幹の近くで暮らしていた。
土地を追い出された者、国に見捨てられた多種族でできた村の者達だ。
そんな彼等は今日も、世界樹に祈りを捧げていた。
だが、この日は違った。
彼等は世界樹から、光の柱が出たのを見た。
それを見たのは彼らだけではない。
世界中の全ての者だ。
そして村の者達はその光が気になりそこに行ってみる。
何故なら、その光の元は祈りを捧げていたすぐ近くだったからだ。
彼らは驚いた。
彼らの見る先には、世界樹の幹の下には一人の光輝く赤子がいた。
人々はその赤子を、世界樹の子として育てることにした。
名を、〝ディセンダー……光まとう者〟と。
赤子は元気に成長していった。
村人達から愛情を受け、大切にされた。
小さな男の子が空を見上げていた。
彼は、多くの種族で暮らしているこの小さな村が好きだった。
自分はこの村の人々に拾われ、愛情いっぱいに育てられた。
皆が好きだった。
そして、いつも自分と話をしてくれる…この優しい声のする世界樹も。
自分にとって母のような大切な存在だった。
何も知らなければ、ずっとそう想えただろう。
しかし、自分は思い出してしまった。
自分がどういう存在かを……
外の世界は次第に変わっていく。
小さなヒビが大きな溝へと変わる。
世界に生きる人々は、自分とは違う種族を受け入れる事ができなくなっていた。
それが彼にとってはとても悲しい事であった。
しかし、今の自分では何もできない。
ただ、聴くことしか……
彼はいつもの日課である、村の手伝いをしていました。
ふと、彼は村の外れから、声が聞こえたような気がした。
そこに行ってみると、一人の帝国騎士が倒れていました。
彼はすぐに長老を呼び、手当の手伝いをしました。
――傷がだいぶ癒え、目が覚めた騎士。
彼は、自分の置かれている現状について考えていた。
『傷口が手当てされている……体も自由だ。捕虜にはなっている訳ではないようだな……』
彼が身を起こすと、
「あ、目が覚めたんですね。良かった、気分はどうですか?」
そこに、明るい子供の声が響く。
騎士は声のする方へ顔を向けた。
そこには、短い銀髪で金色の瞳を持った十代前くらいの歳の子供が、心配そうな顔をして、こちらを見ていた。
騎士はまたしても、しばらく考えた。
『ここは敵陣の近くか、もしくは外れか……』
そして騎士は警戒しつつも、子供に聞いた。
「ここはどこだ?」
「ここは僕の家ですよ。貴方は村の外れで、倒れていたんです。」
子供は嬉しそうに笑顔で言いながら、水を渡してくる。
騎士は小さく「そうか」と言い、それを受け取る。
少し間を置き、一口飲む。
彼はしばらく、コップの中の水を眺めていた。
そこには自分の顔が映っている。
『あの時、森で敵に見つかり、交戦したのは覚えている。剣を交えながら、何とか逃げられた……と言うことか。なら、この近くに敵がいるだろう。そうなれば、この子供は私の事をばらすだろうな。その前に、ここを離れなくては……』
そう思い、立ち上がろうとした。
か、思いのほか傷が痛む。
傷を押え、再び立ち上がろうとする。
それを見た子供が、慌てたように止める。
「あわわ⁈まだ立っちゃダメですよ!傷がまだ完全に治ってないんですから。」
騎士は傷を押え、コップを子供に手渡し、手短に答える。
「助けてくれた事には、感謝している。だが、私はすぐにここを離れなければ……」
そう言って動き出す騎士に、子供は抱き付いて止める。
子どもは騎士を見上げ、何かを理解したように言った。
「安心して下さい。この土地は世界樹の幹の下で、外からは見つかりにくい所にあります。それに何より、この村には世界樹の加護……御魂(みたま)があって守られていますから。だから安心して下さい。」
子どもの声は冷静で、とても十代前とは思えないほど大人びていた。
騎士は動くのを止め、思案した。
『世界樹の加護……確か、世界樹の御魂という一種の結界。世界樹の力が込められており、世界樹の力で守られる。だが御魂は、昔は多く存在していたが、今はほとんど無いに等しいはずだが……』
騎士は、子供を見下ろし、
「……世界樹の加護か。まだそのようなものが存在していたとは……」
騎士の言葉に、騎士から離れる。
そして、子供は不思議そうな顔をしながら言った。
「外の世界には、世界樹の加護≪御霊≫が少なくなってきているんですか?」
その問いに騎士は静かに言った。
「そうだ。今、この世界は異種族同士の争いが続いている。争いが多くなるにつれて、世界樹の加護は失われていった。簡単にいえば、御魂の奪い合いが起こったのだ。それを境に、世界樹から生み出されるマナも少なくなってきている。」
そう言いながら、騎士は少し表情を落として続きを言った。
「もしかしたら、世界樹はこの世界を見捨ててきているのかもしれないな。争いを始めてから、多くの種族が土地の奪い合いや差別化が始まった。もはや、この世界の戦争は止まる事はないのかもしれん。」
そう言ってから、騎士はふと思った。
『私は……こんな十代いくか、いかないかの子供に何を言っているのか……』
それから、改めて子供の顔を見る。
子供は真剣な顔付きで、しかし小さな微笑を浮かべ、騎士を見上げて言った。
「……世界樹が世界を見捨てる事はないと思いますよ。だって世界樹は、この世界も、この世界の住人も、大好きですから。……でなければ僕にーー」
最後の言葉は聞き取れなかった。
が、騎士は「そうだな」と言いながら、子供の頭を撫でてやった。
すると、子供は気恥ずかしいように、だが、笑顔をいっぱいの顔をして言った。
「今、食事を持ってきますね。少し待って下さいね。」
騎士をベッドに座らせ、子どもは台所に向かう。
騎士は、さっと部屋を見渡した。
台所では、少年が嬉しそうにスープを皿に入れているのが見える。
この家どうやら一軒家のようで、さほど大きくはない。
窓の外を見るとだいぶ暗い。
自分が敵と対峙していたのが、昼中。
つまり、自分はかなり眠っていたのだ。
そして、騎士はある疑問を思っていた。
子供は、スープを片手に小さなテーブルをこっちに引きずって来た。
時折、運んでくる机が、もう一人持っているのではないかと思うような動きをしている。
が、きっと気のせいだろうと騎士は思った。
この家には今、自分とこの子供しか居ないのだ。
騎士は子供からスープを受け取り、子供の目を見て言った。
「それはそうと、お前の両親はどうした。外はかなり暗いようだが……まさか外に出たのではあるまいな。」
子供は騎士に向けられた目をそらさずに、
「この家には……僕、一人で暮らしています。僕には両親、しいて言うならば、兄弟もいません。残念ながら、両親の顔も知りません。」
子供は、最後は騎士に微笑だ。
騎士は「やはりそうか‥」と思いながら、子供に謝った。
「そうか、すまない。」
今の時代、親を亡くし、兄弟が居ないのも、よくある話だ。
それこそ、家族を知らない子供も多い。
だが、大抵そう言った場合は、下町やこう言った村に居る事はまず無いと言ってもいい。
親の顔も知らない小さな少年が、小さいなりにも家を与えられている。
憐れみを受けているのか、大切にされているのか、どちらかだろう。
だが、そうなると疑問が浮かぶ。
『しかし、だったら何故この子供は自分のような余所者を、一人で居るこの家に招き入れたのだろうか。思い過ごしか……いや、こんな小さな子だけの家なら、周りの村人が近くに居るか、この家の中に一人くらいは居てもいいはずだ。……この子は髪や瞳の色は変わっているが、人間。だとすると、この村は人間以外の者が治めているのか……』
騎士が考え込んでいる事に気が付いたのだろう。
子どもは騎士を見て、
「この村の人達は良い人達ですよ。……村長はエルフで、村は多種族で出来ています。でも、僕を拾ってくれて……皆、家族同然に愛してくれています。」
嬉しそうに微笑む。
が、身をすくませ、
「あ、後……その……スープ、温かいうちに飲んで下さいね。」
子供は照れながら、騎士に言ってくる。
「ああ、そうだな。」
騎士はつくづく思う。
『それにしても、この子供は不思議だ。時々、年齢にあわない言葉遣いをする。それとも、最近の子供と言うのはこう言うものなのか?』
騎士はスープを一口飲む。
すると子供が少し照れたように、それでいて少しおどおどした感じで言ってくる。
「あ、あの、お口に合いますか?僕……その……料理は得意な方じゃないから……。それに普段は、僕一人分しか作ったことなくて……それで、その……」
と言って、こちらをチラチラ見てくる。
よく見ると、手には傷があった。
騎士は微笑を浮かべて、子供に言う。
「いや、良く出来ている。」
子供はとても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
騎士はあたりを見て、
「……それより、すまないな。私がベッドを占領してしまっていたようだ。」
子どもはすぐにとんでもないと言う風に、手を横に振りながら、
「い、いえ!貴方をここに運んで欲しい、とお願いしたのは僕なので、気にしないで下さい!」
「そうなのか?でも、何故だ。」
子供はまた照れたように、目を左右に動かしながら、手を無意識に動かしている。
「貴方をここに運んだのは……何と言うか、お話してみたかったと言う気持ちがありまして……。外の話とか色々、聞きたくて……ご、ご迷惑でしたよね。すいません……」
と言いながら、シュンとなって小さく肩を落とす。
騎士は少し考えた後、子供の方をしっかりと見て言った。
「私は、お前の歳くらいの子供とあまり話した事が無い。故に、簡単な話はしてやれんかもしれないが、それでも良いなら、ここにしばらく置いてはくれないか。」
俯いていた子供は、ガバっと顔を上げる。
その顔は、笑顔だった。
「はい!喜んで‼︎ええっと……」
「ああ、まだ名乗っていなかったな。私の名は〝クラトス・アウリオン〟だ。」
「クラトスさんですね。僕は……〝ディセンダー〟です。」
と言って、握手をする。
騎士か子供の名を聞き、
『ディセンダー……〝光まとうもの〟か。確かに、この子供の笑顔は光のようだ。さっき言っていた通り、村人達に良く育てられたのだろう。』
数日後のある日。
クラトスが目を覚めると、ディセンダーの姿がなかった。
だいぶ良くなり、歩いても痛みがなくなった傷を確かめながら、ディセンダーを探す。
ディセンダーは、この村の世界樹の幹があり、その下に何かの模様がある所に立って、何か一人言を言っていた。
「……うん。クラトスさんも、もう歩いても傷は痛まなくなってきたみたいだよ。」
どが、その様子を見る限り、一人言ではない。
まるで誰かと話しているようだった。
『……ディセンダーは誰と話しているのだ。どう見ても一人のようだが……』
クラトスが声を掛けようとした時、
「……うん。世界樹が力を少し、僕に貸してくれたからだよ。」
その名を聞き、クラトスは身を隠し、息をひそめる。
『世界樹⁉ディセンダーは世界樹と話しているのか?それに力を借りた……ディセンダーは、世界樹の力も使えるのか。だとすると、ディセンダーはこの村の神子なのか‥…』
クラトスはディセンダーの様子をしばらく観察する。
彼は空を見上げて微笑む。
「だからありがとう。」
彼は相づちを打ちながら、
「……うん、したよ。クラトスさんから教えてらった。外の世界の事……ねぇ、世界樹。どうして皆、仲良く出来ないのかな?」
彼は悲しそうに眉を寄せる。
だが、それが今度は渋くなり、
「……う〜、またこれに関しては何も答えてくれないんだね。」
彼はまた表情を変え、
「……自分で考えなさいって、解らないから聞いているのに。」
彼は肩を落とし、
「……はぁー、わかったよ。ちゃんと考えるから。」
顔を上げ、再び笑顔に戻る。
「……うん。じゃあ、僕行くね。クラトスさんも起きる頃だと思うから。また来るね、世界樹。」
と言って、こちらに振り向いた。
このやり取りを見ていたクラトスは、隠れてやり過ごすことも出来た。
が、彼はディセンダーの前へ出ていた。
ディセンダーもクラトスを見て、驚いた顔をしている。
だが、ディセンダーはいつもの笑顔で、クラトスに話し掛ける。
「クラトスさん、おはようございます。今日は早いんですね。今、朝食の準備をしますね。」
こちらに歩いて、通り過ぎようとするディセンダーの腕を掴みむ。
ディセンダーを、クラトスは無言で見つめていた。
彼の顔には?マークが浮かんでいた。
それから腕を掴んだまま、クラトスはこう言った。
「ディセンダー、お前は世界樹と話したり、その力を使えたりするのか?」
この質問にディセンダーは少し困った顔をして、俯いてしまった。
だが、クラトスはそれを止める事は出来ない。
そう、確かめなくてはいけないのだ。
「答えろ。……私は、誰かにこの事を言うつもりはない。だから安心していい。」
しばらく沈黙が続き、諦めようと思ったクラトスは手を離した。
クラトスが口を開こうとした時、ディセンダーが先に口を開く。
「クラトスさん、確かに僕は世界樹と会話したり、その力を借りたりできます。でも、本当に誰にも……この村の人達にも言いませんか?」
ディセンダーは悲しそうに眉を寄せる。
クラトスは瞳閉じ、
『……村人も知らないのか。そうだろな……。知っていればきっと、帝都に連れて行かれていただろう。』
そう思ってから、瞳を開く。
ディセンダーの顔をしっかり見つめて、
「ああ、本当だ。恩を仇で返すことはしない。」
ディセンダーは彼の目をじっと見つめて、静かに口を開いた。
「僕が、この村で拾われた事は言いましたよね。」
と、クラトスは頷く。
それを見て、ディセンダーは空を、世界樹を眺めながら、続きをポツリと言い始めた。
「僕は世界樹の幹の下……つまり、ここで拾われたんです。村の人は、世界樹から光の柱が出た日に僕が居たと……」
クラトスは思い出す。
昔、一度だけ世界樹から光の柱が生まれたことを。
『光の柱……そういえばそのような事が昔、一度だけあったな。何が原因なのかも、神子達にも解らなかったと……』
ディセンダーは瞳を揺らし、
「僕は最初、あの声が世界樹の声だとは思いませんでした。もしかしたら自分の知らない親の声かも、と……。でも、物心がついた頃には、この声が世界樹だと分かりました。理由は簡単です。僕が自分で聞いたんですから……〝あなたは誰?〟と。そしたら、〝世界樹です〟って。僕、最初この事を長老に話したんです。でも長老は〝内緒にしておきなさい〟って。」
そこまで話してから、ディセンダーはクラトスに顔を見る。
するとクラトスは同意したように頷いて、
「村長殿は、お前を守りたいのだろう。普通の人間の子として。」
ディセンダーは不思議そうな顔で、微笑を浮かべていた。
クラトスは何度か会ったこの村の村長を思い出しながら、
「私は村長殿と話をして、あのご老体は良い村長だと思えた。お前を実の子、いや孫か。まぁ、そんな感じでお前と接していた。他の村人が、お前を大切にしている事は、ここ数日でよく解ったからな。」
そしてここ数日のことを思い出す。
『何せ、毎日食材を貰っては、気にかけられていたからな。手伝いをしていると言っても、皆、過保護だった……』
しかし、それと同時に思うことはあった。
クラトスはそれを口にする。
「だが、どこか村人は……いや、特に一部の大人達と村長は、お前をどこか違う感じで見ていた。」
すると、ディセンダーは驚いていた。
クラトスはやはりと思っていた。
「クラトスさんは凄いですね。でも、僕は村の皆が大好きですよ。」
と、笑顔を向けてくる。
それにクラトスは頷きかける。
「それで長老の言う通りに、皆には内緒にしています。でも、一人だけ……」
最後の言葉に、クラトスは疑問に思った。
が、気にしない事にした。
ディセンダーは続る。
「力については皆、僕の能力だと思っています。だから、世界樹に力借りているとは思ってないんです。この事は、長老にも話していません。これで良いですか?」
「ああ。話してくれた事、感謝する。約束通り、他言はしない。」
ディセンダーは嬉しそうに、クラトスを見ている。
「じゃあ、家に帰りましょう。僕、お腹空いちゃいました。」
そう言って、歩き出す。
クラトスは前を歩くディセンダーに、
「そうだな。……そうだ、今日の朝食は私が作ろう。」
そう言ったクラトスを、ディセンダーは嬉しそうに振り返る。
そしてとびっきりの笑顔で、
「本当ですか⁉︎僕の家で誰かが料理する姿を見るのは、久しぶりだなぁ〜。うん、後で世界樹に話そう。」
と、嬉しそうに歩いている。
家に着き、ご飯の支度をしているクラトスの姿を嬉しそうに見ているディセンダー。
『こうも見られると、照れるな……。だが、こいつも、幼いなりに苦労をしているのだな。いつも笑っているが、それも地なのか、考えているのか……』
と、考えながら調理を終えて、テーブルに置く。
メニューは簡単な物なのだが、ディセンダーは嬉しそうに食べる。
「わぁーい‼︎いただき、まーす‼︎」
クラトスも久しぶりに調理をしたが、まあまあな味であった。
ご飯を食べながらも、ディセンダーと話すのだった。
「ごちそう様でしたー。クラトスさん、料理上手ですね。」
「そうでもない。自然に身に着いただけだ。」
「そっかー……クラトスさん、僕に料理教えて下さい。ダメですか?」
「フッ…、良かろう。だが、教えるからには甘くはないぞ。」
「はい、先生!今日のお昼から、お願いします‼︎」
などと会話をしながら、片付けをした。
片付けが終わり、ディセンダーはクラトスに聞く。
「クラトスさん、この後どうしますか?僕、この後何もないので、用事とかあればやりますよ。」
クラトスは少し考え、自分の剣を見た。
「今日は剣の稽古をするつもりだ。ここ最近、振っていなかったのでな。鈍ってしまわないように。」
クラトス自身、ここをまだ出ないにしても、運動不足なのは確かだ。何があるかは分からない以上、やっといて損はない。
そうクラトスが考えていると、ディセンダーが少しためらいながら聞いてきた。
「あの……クラトスさん、僕に剣を教えて貰えませんか。」
と、クラトスをじっと見る。
クラトスはしばし考え、厳しい口調で聞く。
「何故、剣を教わりたい?軽い気持ちなら、教える訳にはいかない。」
ディセンダーは一度開きかけた口を閉じ、下を向いてガバっと顔を上げた。
「僕、いつも一緒に稽古している奴がいるんです。この村は月に一度町に行き、食料を調達したり、売りに行ったりするんです。でもあいつは、僕より歳が上で、強くて、村の為にいつも魔物を大人と一緒に戦っているんです!」
と、強く言ってくる。
その眼には涙を溜めている。
クラトスは黙って聞いていた。
そして、ディセンダーは続きを話し始めた。
「僕は……いつもあいつには勝てない。いつも見ているだけで、村を守る事が出来ない。だから僕、少しでも強くなりたいんです!村を守れるように‼︎」
それを聞いて、クラトスはしばらく考える。
彼は決意を決め、しっかり頷き、ディセンダーに言った。
「わかった。お前に剣を教えよう。だが忘れるな、剣を扱い、その力を使う事は、覚悟が必要になる時があるだろう。それでもなお、お前が剣を教えて欲しいと思うなら、料理以上に厳しくなるぞ。」
ディセンダーは嬉しそうに笑った後、真剣な顔にる。
そして力強く頷いて、クラトスに言った。
「はい。師匠≪せんせい≫、お願いします。」
そう言って、元気よく外へ出て行く。
そんなディセンダーを見ながら、自身の剣を取る。
『この私が、誰かにこんな風に接するなんて、いつ振りだろうな。あ奴がこれを見たら、驚くだろう。』
と、とあるハーフエルフの騎士の姿を思い出す。
そしてクラトスは拳を西握りしめ、
『そして、早く城に戻らなくては。敵軍がどこまで来ているか、解らんしな。』
その後、みっちり指導を受けたディセンダーは、へとへとになりながら、今度はクラトスに料理を教わるのであった。
そして昼食を食べ終わり、また剣の稽古をし、夕飯を作る。
これを毎日やっていったのである。
ーーある晩。
クラトスが目を覚めると、また、ディセンダーが居ない。
『こんな夜遅くに何所に行ったのか……。もしかしたら、あそこかもしれんな。』
そう思い、クラトスはディセンダーが世界樹といつも話をしている所に行ってみる。
だが、そこにはいなかった。
もしかしたら家に戻ったのかもしれないと思い、戻ってみる。
ふと、その途中、小さな湖に寄ってみる。
そこには月夜に反射する銀髪の子供が、湖を眺めていた。
「……僕は……」
パキッと小枝を踏む音がして、子供が茂みを見て警戒する。
「だ、誰?」
「……私だ。」
茂みからクラトスが出てくると、ホッとするディセンダー。
「師匠≪せんせい≫、すみません。心配して、探してくれていたんですか?」
と、微笑を浮かべるディセンダー。
クラトスは少し困り顔をして言う。
「こんな夜遅くに居なかったら、嫌でも探すに決まっている。お前とも、何だかんだ言って結構長い付き合いになったしな。それだけではない。私は、お前の師匠≪せんせい≫にもなったからな。」
すると、ディセンダーは悲しそうな笑顔をクラトスに向ける。
「そうですか……」
いつもの彼らしくない。
そんなディセンダーを見て、クラトスは静かに言った。
「……私でよければ、悩みを聞いてやるぞ。」
ディセンダーはそれを聞いて、クラトスに背を向ける。
彼は月を眺めていた。
そして、しばらくそうした後、もう一度クラトスを真っ直ぐ見る。
ディセンダーは微笑を浮かべ、語りだした。
「師匠≪せんせい≫……僕、自分が解らないんです。僕は、ディセンダーだけど、それは僕自身であって、僕≪ディセンダー≫じゃない。」
泣きそうな顔で、ディセンダーはそう言った。
「自分が解らないのは皆そうだと、私は思う。が、少なくとも私は、お前をディセンダーと言う一人の人間だと思っている。」
ディセンダーは泣きそうなままの顔で、クラトスを見たまま言った。
「そう‥‥確かに僕は、この世界の最初の世界の守り手≪ディセンダー≫……。でも僕は、いつかこの大好きな村から……皆の前から去らなきゃいけなくなる。世界樹の……いや、この世界の為とはいえ、僕はーー」
ディセンダーは拳を握りしめる。
が、それを解き、俯く。
「いや、その前に師匠≪せんせい≫は、この村からいつか居なくなっちゃうんですよね?」
クラトスは疑問に思った事がいくつかあった。
だが、それより先にディセンダーを見ながら思う。
『こんなにも、子供らしいこいつを見るのは初めてだ。……いや、いつもそうであった。ただ、周りにそう見せないようにしていただけで……。こいつはもしかしたら、この姿に似合わず大きな問題を抱えているのかもしれんな。世界樹や世界と言っているようだし……』
だからこそ、クラトスははっきりと言う。
「確かに私は、ここをいつかは離れて、元居た都市に帰る。だが、世界や私の事より……お前はどうしたいのだ。」
「え?僕自身?」
これにはディセンダーは困惑した。
クラトスはもう一度言う。
「そうだ。お前自身だ。どうしたい。」
ディセンダーは、俯いて黙った。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
「僕は……僕は、今のこの師匠≪せんせい≫との暮らしや、村での暮らしを辞めたくないです。」
彼は先程とは違い、はっきりしている。
クラトスは小さく微笑み、
「なら、今はそれでいいではないか。私も、しばらくはまだここに滞在する。」
「……そう……ですよね。いつか来る事より、今を大切に、ですよね……」
そう言ったディセンダーは、何かを決意した。
彼はさっきまでの泣きそうな顔ではない。
真剣の顔で、なおかつ十代の子供とは思えない顔で、クラトスに質問した。
「師匠≪せんせい≫……いえ、クラトス・アウリオン。貴方は世界の理を、受け入れますか?」
クラトスは何かの直感が働いた。
〝これに答えたら、おそらく自分は何かに抗えなくなる〟と……
だが、クラトスは何故かこの時、それでも良いと思ったのである。
この目の前にいるこの小さな子供の姿をした何者かに……いや、この数週間共に過ごしたディセンダーだからこそ、良いと思ったのかもしれない。
だから、クラトスはゆっくり、それでいてはっきりと頷いて、ディセンダーに答えた。
「ああ。今のお前の気持ちが楽になるなら、受け入れてやろう、ディセンダー。」
クラトスのその想いに、ディセンダーは言い掛けた言葉を飲み込み、語り出す。
そう、世界の理を……
「この世界の理とは、世界樹がこの世界を作り出す前……そう、世界の最初の者達が、終わりゆく己が世界の最後に願いを未来に託した時から始まりました。世界最初の世界樹は、消えつつある自分の力で初めて自分の分身体であり、己が子を創りました。それはなにより、世界を……いや、世界樹を守る為に創り出した世界の救世主。その者を、“ディセンダー……光まとうもの”と名付けました。」
クラトスは驚愕した。
この子供は、世界の一体何を知っているのか。
それと同時に、悲しくなった。
『世界を知っている……この小さな子供は、なんと重い物を背負っているのか‥』
そんなクラトスの表情を微笑しながら、ディセンダーは続きを話す。
それはまるで、一つの悲しい物語を話しているような……
悲しく辛そうな、それでいて懐かしむように……
「世界の守り手≪ディセンダー≫は世界樹の願いを聞き、世界を救う為、人々の前へ進み出ました。人々に今ある世界樹の力が、終わりにある事、世界の終わり……つまりは寿命が来た事を。人々は長年の争いを止め、今後の世界が終るその事について話し合う事にしました。ある者は違う世界へ。またある者は世界が終るその時まで、生まれた土地に居続けると。でも、それでも受け入れない人々がいた。彼等は、ディセンダー≪僕≫が嘘を付いている、と。でも、大地の一部が崩壊を始めた頃には、皆恐怖し、世界が終る前に自らの命を絶つ者まで出て来てしまいました。だからディセンダー≪僕≫は、皆に〝諦めないでくれ〟、〝希望を忘れないで〟と言い続けました。そんな人々の出した答えは、一人の少女に世界樹の母体になって貰い、新しい世界を創ること。そして、未来と希望を託す事にしました。その後、世界樹は種を世界に飛ばしました。そして新たな世界が生まれ、また寿命が来て終わり、また新たな種を飛ばす。そうして世界の遺伝子を絶やさず、新たな世界へ未来を、希望を託し続けた。そうやって、この世界も、前の世界の遺伝子を元にできています。だからこの世界には、色々な種族が暮らしている。」
クラトスは黙って話を聞き続けた。
ただ、彼は思わずにはいられなかった。
『こいつはずっと、世界ができてはその終わりをずっと、世界樹と共に見てきたのだろう。それも、何百年も、何百回も……。その度に、世界の始まりを喜び、世界の悲しみを見てきた。何より、何回も終わる事のない人々の争いを……世界樹と共に、永遠と……』
ディセンダーはクラトスから視線を外し、
「この世界以外にも、僕達が今居る世界に似ている世界があります。世界樹のきょうだいが……僕と同じ世界の守り手≪ディセンダー≫が……」
そう言って、ディセンダーは夜空を見上げる。
月光で、片方の目から涙を流したのだ見えた。
まるで、前の世界の守り手≪ディセンダー≫の感情を思い出したかのように……
クラトスは静かに問うた。
「つまり、お前が居るという事は、この世界が終わりに近付いているからか……」
その問いに、ディセンダーはクラトスを見ながら、首を振った。
「この世界は確かに、多種族同士の戦争が続いている。でも、まだこの世界は生まれたばかりです。」
「では何故、お前はそんなに辛そうなのだ。戦争が、そうしているのか。」
「確かにこの戦争は、早く終わりにしなくてはいけない。世界樹もそう言いながら、悲しんでいる。僕も本来なら、こうやって表にはあまり出てきてはいけないんです。本当の意味では、この世界の戦争はまだ危なくないから……」
ディセンダーは視線を落とした。
クラトスは、世界樹がこの戦争に対して悲しんでいると言う事が、頭の中で繰り返し響いていた。
世界樹にとっては、我が子達が互いに戦争をし、差別し、死んで逝っていると言う事を……
ディセンダーは続ける。
「……僕≪ディセンダー≫はずっと前の世界で、世界樹の中からずっと見ていた。生命が産まれれば、世界樹と共に喜び、死んでしまったら、共に悲しんだ。世界樹も、僕≪ディセンダー≫も、一瞬のような日々……。僕は世界樹にお願いして、外に出た。僕自身の目で、世界を見てみたくなって……。」
ディセンダーは拳を握りしめる。
「外に出てからの僕は、それまでとは違ってとても楽しかった。一日一日が、僕自身に刻まれていくようで……。でも、みんな僕より先に居なくなる。でも僕は、そこに居続け、見守っていた。何時しか僕≪ディセンダー≫は忘れいた。人々は恐怖という感情がある事を……」
そう言ったディセンダーは、再びクラトスに背を向け俯いた。
ほんの数秒の間の後、語る。
「その頃、世界は負の塊である巨大なモンスター達が暴れていた。無論、僕はそれらを倒しに行った。だって、皆を守りたかったんだ。僕は一人で、何匹ものモンスターを倒した。皆、戦う勇気すら失われていた。それまでにも、あいつらは強かった。僕が全て倒した頃には、皆の顔には笑顔が戻っていて、僕は嬉しかった。でも、しばらく経って、皆の僕≪ディセンダー≫を見る目が変わった。……僕≪ディセンダー≫の力を恐れたんです。このままでは僕≪ディセンダー≫と言う存在で、新たな争いが生まれる。僕≪ディセンダー≫は、世界樹の中に帰る事にした。でも、もう一度だけ自分の目で、町を見てから帰ろうと思った。そしたら、子供が木の上に居て落ち、僕≪ディセンダー≫は走り出した。あの子は何とか大怪我する事はなかった。あの子がお礼を言ってくれた。けど……母親は、僕≪ディセンダー≫があの子に手を出したと思い込んだんです。それをきっかけに皆は、僕≪ディセンダー≫を、世界樹を、殺そうとしたんだ。僕≪ディセンダー≫が、世界樹の元に駆け付けた時には、世界樹は切り倒されていて……。僕≪ディセンダー≫は許せなかった。世界樹を守る事ができず、人々に新たな争いを生み出した自分自身を……。その瞬間、僕≪ディセンダー≫は世界を壊していた。当たり前ですよね。世界を救うだけの力があれば、壊す事だって出来る。」
クラトスはただ、ディセンダーの背中を見続けていた。
子供の肩が小刻みに震えている。
世界樹を、世界を、守る事が出来ず……
そして、自分で壊してしまった世界の事を想い……
「次の世界は、僕≪ディセンダー≫が壊した世界の記憶を持っていた。世界を守る為に現れた僕≪ディセンダー≫に、人々は〝世界樹からディセンダー≪怪物≫が現れた!世界が終る‼〟と……。僕≪ディセンダー≫は解らなくなった。世界を救う事は、ディセンダー≪僕≫の使命。でも、ディセンダー≪僕≫を良く思わない人々の為に、ディセンダー≪僕≫は世界を救う意味があるのか、と……。でも僕≪ディセンダー≫は、世界を救う事にした。世界樹がそうするように言ったから……。今度はすぐに世界樹の中に帰り、そして外部との関わりを捨てた。世界樹が目を覚ますように言った時、世界の寿命が来た。僕≪ディセンダー≫はただ茫然と見ていただけ……。次に目を覚まして、世界に降り立った時、人々は僕≪ディセンダー≫に〝世界樹が世界の救世主≪ディセンダー≫を生み出して下さった。これで世界は救われる‼〟と……。涙を流しながら、ディセンダー≪僕≫に言った。ディセンダー≪僕≫は思い出した。〝そうだ、僕は誰かの笑顔を守りたかったのだ!〟と。ディセンダー≪僕≫はそれを続けていた。それで良かった。でも……‼︎」
そこまで言って、ディセンダーはこちらに振り向いた。
その片方の眼にはまた涙が流れていた。
「できる事なら、一人の……この村の人間として、生きていきたかった。」
「ならば、世界を救った後、この村に帰ればいい。お前で新たな争いが生まれるなら、その時に去れば良かろう。」
ディセンダーは小さな笑顔を作り、首を振った。
「本当なら、世界樹もそうできるように僕を赤子として、この世界に生み出した。記憶もない真っ白な僕を、一人の人間として。」
そこでクラトスは気付いた。
夜空の月を一度見てから、ディセンダーを見て言った。
「つまり、前の世界の世界の救世主≪ディセンダー≫の記憶を思い出したから、世界樹の中に居るべきだ……と。」
ディセンダーは小さく頷いた。
自分の胸に手を当て、世界樹の方を見ながら言った。
「世界樹も驚いていたよ。僕に、前の世界の世界の守り手≪ディセンダー≫達の記憶があること。僕が、僕でなくなること……」
クラトスは気づいていた……
前の世界の守り手≪ディセンダー≫の話をしている時、ディセンダーがまるで別人のようだと。
だからこそ、クラトスは自信を持ってこれだけは言える。
「私には、前の世界のお前≪ディセンダー≫を知らない。私の知るディセンダーは、お前だけだ。無論、この村のな。」
と、小さく笑いながら言った。
そして、真剣な顔で言う。
「お前が世界の救世主≪ディセンダー≫でいるのが嫌なら、自分自身に名を付けて、この世界に留まればいい。」
ディセンダーは目を見開いて、クラトスを見た。
そして不意に、笑い出した。
「あはは、それは考えたこと無かったなぁー。じゃあ……師匠≪せんせい≫が、僕に名前を付けて下さい。」
「何⁈私が名付けるのか⁉」
驚くクラトスの姿に、ディセンダーはまた笑う。
それから、クラトスに笑いながら言うのであった。
「当たり前ですよ。言い出しは、師匠≪せんせい≫ですから。」
クラトスは、仕方がないと言う顔で、しばらく考えた。
夜空を眺めながら……
それからひとつ頷いて、言った。
「で、では、お前の名は〝エント‥‥創世の者〟と言うので、どうだろうか。」
ディセンダーは、その名を何度も嬉しそうに呟いた。
そして、とびっきりの笑顔で、クラトスに言った。
「じゃあ、これからは二人の時には僕のこと……そう呼んで下さいね。いつか来る、その日の為に……」
「ああ、そうだな。では、もうじき夜が明ける。お前の……〝エントの家〟に帰ろうか。」
「はい。師匠≪せんせい≫。」
そう言って、歩き出す二人。
ディセンダーは……いや、エントは世界樹に振り返る。
小さな笑顔を向け、世界樹に小さく呟いた。
「世界樹、僕にも名前が出来たよ。僕だけの……」
「エント、どうした?置いて行くぞ。」
それを聞き、エントはクラトスの元に走り出す。
「待って下さい、師匠≪せんせい≫。」
追いついてからエントは、クラトスに言った。
「師匠≪せんせい≫、ごめんなさい。師匠≪せんせい≫に、世界の理を教えた事で縛ってしまう事になってしまいました。」
するとクラトスは、エントの頭を撫でながら、
「いや、構わん。私は直感では解っていた。解っていて、受け入れたのだから、お前が誤る必要はない。」
「ありがとうございます、師匠≪せんせい≫。」
泣きながら、笑顔を向ける。
それから、エントの見た世界について話すのであった。
世界樹のある世界、無い世界、人間だけの世界など、色々話すのであった。