テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
ーー次の朝。
ミトスは起き上がり、部屋に姉が居ないのに気が付いた。
とりあえず、居間に向かった。
居間からは、美味しそうなパンの匂いがした。
ミトスは入ろうとしたら、姉がユアンと共にこっちに来たのを見た。
それが気に食わなかった。
入る前に、ユアンの足を思いっきり踏んでから、居間へ勢いよく中に入って行った。
中にはクラトスと長老が座っていて、奥ではディセンダーが、朝食の準備をしている。
奥から姉が、ユアンに心配そうな顔で、声を掛けている。
ユアンは「大丈夫」と言うように手を挙げてから、二人一緒に入ってくる。
それも気に食わないので、急いで席に着く。
それからユアン達も座り、ディセンダーの準備が終って座る。
食事を食べ始めると、長老はパンを千切りながら、
「昨夜はゆっくり休められましたかな?」
頷いたのを見て、長老は嬉しそうに言った。
「ふぉほほ、それは良かった。今日はどうしますかな。」
マーテルは自重しながら、長老に言った。
「もし、村長様にお時間があれば昨日の話について、もう少し詳しくお話したいのですが……」
長老は「大丈夫」と言うように頷いた。
マーテルはミトスを見ながら、言った。
「ミトス。私達は、村長様達と話したい事があるから、今日は外で遊んでいてくれる?出来れば貴方が、相手をしてくれると、助かるのだけれど……」
と、ディセンダーの方を見る。
ディセンダーは笑顔で、それに応じた。
マーテルはもう一度、ミトスの方を見た。
ミトスは頬を膨らませていた。
マーテルは苦笑いで、優しく言った。
「ミトス、貴方も良いわね。ディセンダー君と仲良く待っていて。」
ミトスはしばし唸っていたが、マーテルがじっと見ているので、観念したように言った。
「……分かったよ。姉様がそう言うなら、あいつと遊んでいるよ。僕が居ない間に、姉様に手を出したら……許さないぞ!」
と言って、ユアンを指さす。
ユアンは微妙な顔をしながら、お茶を啜った。
食事を終え、外に出たディセンダーとミトス。
ディセンダーはミトスを見ながら、明るく言った。
「向こうに池があるんだ。そこに行こうか。」
と、ミトスは不機嫌顔で、「早く連れて行け」と言う顔だった。
ディセンダーはやや複雑だった。
だが彼は笑顔で、
「じゃあ、行こうか。」
と言って、歩き出した。
彼らと共に、ノイッシュも同行する。
池に着くと、ミトスの不機嫌だった顔が、パッと明るくなった。
そして、珍しそうに池の中を見ていた。
この池は、日の光が良い感じに池に反射して、とても綺麗なのだ。
池の中にも、綺麗な鱗を持った魚や石がある。
ここは、ディセンダーのお気に入りの場所だ。
ミトスの表情をを見ていたディセンダーも、微笑んでいた。
ミトスがそれに気が付いて、ディセンダーを見て顔を赤くした。
彼は、ディセンダーを指刺し、怒りながら言った。
「お前、年はいくつだ‼」
ディセンダーは少し驚きながらも、ハーフエルフだから年上だったのか、と思いながら、
「僕は……十四かな、一応……」
するとミトスは、ディセンダーを上から下まで見た。
そして腕を組んで、しばらく考えているようだった。
そして、おもむろに口を開いた。
「僕と同い年か……。その割にはお前、小さいな。」
ディセンダーは『君には言われたくない!』と、心の底から思った。
確かにディセンダーは、同世代の人間に比べれば小さい方だ。
いや、それよりもかなり小さい。
ある意味、自分の気にしている事を言われたディセンダー《世界の救世主》。
ディセンダーは何かを言おうと思った。
が、その前にミトスが口を開く。
「同い年で、クラトスに認められているからと言って、良い気になるなよ‼僕だって……後もう少しすれば、役に立てるんだからな‼」
と、怒っている。
その眼には闘志がみなぎっている。
ディセンダーは、目の前の少年が怒っている理由について、自分なり考えた。
『彼は、師匠≪せんせい≫が僕を認めていると、言っていたけど……頭を撫でられたり、料理や身のこなしを褒めて貰ったりしだけで、むしろ子供扱いされた気がするけど……。ああ!成程……』
僕はここまで考え、思い至った。
そしてお腹を押えながら、大笑いした。
ミトスは、そんなディセンダーを見て、より一層怒った顔で怒鳴って来た。
「何、笑っているだ‼僕を、バカにしているのか!」
ディセンダーは笑うのを止めて、ミトスを見た。
彼は微笑を受けべて、落ち着いた声で言う。
「違うよ。つまり君は、僕が師匠≪クラトスさん≫を取ってしまったから、拗ねているんだろう。」
と、ミトスは図星を衝かれたように、目を見張った後、顔を真っ赤にした。
ディセンダーは苦笑しながら、
「僕も、多分そうなるだろうなぁー……。僕にとって師匠≪せんせい≫は、兄や父のような存在だから。だから僕は、君が羨ましいな。あんなに優しそうなお姉さんがいるし、ユアンさんのような気を許せる人や、師匠≪せんせい≫とも旅しているし。」
するとミトスは、ディセンダーの顔をじっと見た。
そう言う彼の目には、淋しさを感じる。
ミトスはこの淋しさが、解る気がした。
彼には肉親は居ないと言う。
ミトスには、姉がいるから淋しくはない。
が、目の前の少年は一人なのだ。
俯き、そう思うと、ミトスはあまりにも自分が子供に思えた。
すると、ディセンダーが手を出してきた。
ミトスは彼を見上げた。
彼は笑顔で、
「改めまして……僕の名前は、ディセンダー。僕の友達になって下さい。」
ミトスは、その手をしばらく見つめて、ディセンダーの手を握った。
その顔は照れているようだ。
「フン!僕の名前は、ミトス・ユグドラシルだ。まぁー、友達くらいになら……なってやるよ。」
そんな二人を、ずっと見守っていたノイッシュは、嬉しそうに一鳴きした。
その後、二人と一匹は、暗くなるまで話し込むのだった。
長老の家に帰る頃には、すっかり仲良くなったディセンダーとミトス。
長老の家の前では、緑髪の女性が嬉しそうに立っていた。
ミトスは、その女性の所に笑顔で駆けて行った。
「姉様、ただいま。」
そう言って、マーテルに抱き付いた。
マーテルは、そんな弟の頭を撫でてやってから、二人に言った。
「お帰りなさい、ミトス。それにディセンダー君。二人共、とても仲良くなったみたいね。」
ディセンダーも、ミトスも、笑顔で頷いた。
すると、ディセンダーの横からノイッシュが、「僕も」と言うように鳴いた。
マーテルは笑顔で、ノイッシュに言った。
「ごめんなさい。ノイッシュも、二人と仲良しよね。さぁ、お家の中に入りましょう。クラトスとユアンが、夕飯を作って待っているわ。」
三人は、家の中に入って行った。
夕食の席で、今日あった事を、二人は皆に教える。
そんな二人の会話を、嬉しそうに黙って、大人達は聞いていた。
ディセンダーは夕飯を終えて、今日は自分の自宅に帰って来ていた。
久ぶりに同世代の子供と話せたのが嬉しいのか、ミトスと友達になれたのが嬉しいのか、彼はベッドの上で嬉しそうに微笑んでいた。
すると、玄関から「コンコン」と音がした。
誰だろうと思いながら、玄関を開ける。
玄関には、一枚の手紙が落ちていた。
そして地面には、魔物の足跡がある。
ディセンダーは、その手紙を拾う。
何も書かれていない封筒の口を開けて、中身を見る。
その中にあった手紙の文を見て、ディセンダーは一気に顔を青くなった。
手紙には短く、〝最早、時間はない。〟と書かれていた。
『この手紙の主は、あいつか……。世界樹の限界が近いのか、それともあいつ等自身の待つ、と言う事の限界か。どちらにしても、村の結界を強くしておかないと……』
朝早く、ミトスは居間に向かった。
もしかしたら、ディセンダーが来ているかもしれないと思ったからだ。
しかし、彼は来ていなかった。
朝食を食べながら、ミトスは少し残念な顔付きで、外を何度も見ていた。
長老が、そんなミトスを見て「ふぉほほ」と言いながら、髭を撫でて言った。
「ミトス殿は、ディセンダーが気に入ったようですな。では今日は、ディセンダーの家に行ってみてはどうですかな。それからディセンダーに、村を案内して貰うと良い。ワシは今日用事があるので、皆さんも行って来て下され。」
三人も頷いた。
するとミトスの顔が、パッと明るくなった。
しかしミトスは、困った顔をして、村長に言った。
「でも僕、あいつの家の場所……解らないよ。」
すると、クラトスが茶を飲んでから、ミトスに向かって言った。
「それならば、私が知っているから問題ない。」
それを聞いたミトスは、急いで朝食を食べた。
四人は、ディセンダーの家に向かった。
クラトスがドアをノックする。
しかし反応がない。
どうやら留守のようだ。
ミトスが、肩をガクッと落とす。
クラトスが『どうしたものか』と思った時、後ろから聞きなれた声がした。
「あれ?皆さん、おはようございます。今日は、どうしたんですか?」
するとミトスは、バッと顔を上げて言った。
「今日はディセンダーに、村を案内して貰おうと思って来たんだ!ダメ?」
ディセンダーは少しだけ考えて、頷いてからミトスに言った。
「大丈夫だよ。何所から見たい?」
彼は嬉しそうに、
「何所からでもいいよ!」
と言って、ディセンダーの手を引っ張た。
三人は苦笑を浮かべながら、二人の後に付いて行った。
一通り村を案内し終わり、大きな木の下に居た。
と、一人の人間の老人がやって来た。
ディセンダーは、老人に挨拶する。
老人は彼に気付いて、嬉しそうに話してきた。
「おお。ディセンダー、元気にしておったかい。ワシは散歩をしておたんだが、迷ってしまったわい。全く、歳は取りたくないものよのぉー……。おや?そっちの方々は、この間来たと言う旅人さんかい?」
ディセンダーは老人に近付き、優しく言った。
「そうだよ、ドイットおじさん。……大丈夫、僕が家まで案内するよ。」
彼は、後ろを振り向いた。
四人は「大丈夫」というように頷いた。
そして、老人の家に向かう事となった。
しかし、クラトスは一人考えていた。
『この老人が迷うのも無理ない。私が知る村の地形が、少し変わっている。これはまるで、誰かがあえて解かりづらくするようにした、と言う感じだ。まさか、エントが……?』
老人の家に着くと、息子らしき男性がこちらに声を掛けてきた。
「ああ、父さん。心配したぞ。朝食に来ないから、部屋を見に行ったのに居ないのだから。」
ディセンダーは老人が散歩に出て、道に迷っていた事を教えた。
男性は安心したように、彼に言った。
「そうか、ディセンダー。父さんを連れて来てくれて、ありがとうな。俺らがこうして居られるのも、お前のおかげだ。」
ディセンダーは苦笑しながら、男性に言った。
「そんなこと無いですよ。僕一人居た所で、まだまだですよ。」
男性が首を振って、僕に言った。
「そんな事は無い。お前さんが、世界樹に祈りを捧げてくれたから、加護が復活したのだから……。そうでなければ、この村は崩壊していたよ。」
ディセンダーはその言葉に、少し戸惑いながらも、苦笑を浮かべるだけにした。
隣の老人も、「そうだ、そうだ」と頷いている。
だが、後ろから以外な言葉が飛んできた。
「……この村を包んでいる結界は、世界樹の加護ではないわ。村を覆っている結界は、世界樹に似ているけど……少し波動が違うもの。」
その言葉に、ディセンダーはマーテルに振り向き、目を見開いた。
男性は「何を言っているのだ」と言う顔をしている。
変わって老人の方は、少し焦ったような顔をしている。
男性は老人を見て、優しく言った。
「さぁ、父さん。家に帰りましょう。」
と言って、家の方へ向かって行く。
ディセンダーはそれを見送った後、
「……池に行きましょう。」
と、言って歩き出した。
池に着くとディセンダーは、マーテルに振り向く。
緊張した声で、彼女に聞いた。
おそらく自分の顔は、どこか青いだろう。
「マーテルさん、さっきのこと……どうして、そう思ったんですか?」
彼女は空を眺めた。
その眼には、結界の波動を詠んでいるようだった。
そして、ディセンダーを視て言った。
「やっぱり……あれは、貴方の波動ね。貴方の力は凄いわね。この村を包みこんでしまうのですもの。それとも、貴方と共にいる……その精霊に、力を貸して貰ったのかしら?」
ディセンダーは驚いた。
そして、静かに言った。
「マーテルさん……貴女はもしかして、世界樹の神子ですか。」
彼女は頷く。
するとディセンダーは、悲しそうな顔で彼女を見ていた。
ディセンダーは何か言おうとして、言葉にならない。
マーテルが何か言おうとした時、どこからか声がした。
〝あーあ。なんか変な女だとは思ったけど、やっぱり神子とはね。〟
子供のような甲高い声だ。
すると、ディセンダーの後ろから二人現れた。
いや、精霊だ。
二人とも耳が、エルフやハーフエルフのように耳が咎っている。
おそらく声を出したであろう子供姿の精霊は、薄い緑髪に花のコサージュを付けている。
活発的な雰囲気を纏っている。
背中には、薄く透ける羽が生え、宙に浮いている。
対して隣の精霊は、大人に近い姿をしていた。
水色の髪で、瞳は閉じられている。
大人しそうなお姉さんや、お母さんと言うタイプだ。
こちらは地面に立っている。
子供姿の精霊はこちらに近づき、マーテルに言い放った。
「全く!この子が、村人を安心させる為に作っている結界は、世界樹の加護として置いているんだから、黙っときなさいよ!ホント、どいつもこいつも、この子の気持ちも知らないで‼︎」
すると、ディセンダーの横からもう一人の精霊が、ため息交じりに言った。
「シルフ。いくら神子と言えど、世界の守り手≪ディセンダー≫の事を知っている訳ではありません。それに、村人に対しても、そうですよ。彼らは、何も知らない下界人ですから。」
子供精霊は今ので、風の精霊シルフと解る。
すると精霊・シルフは、子供の用に頬を膨らませ、腕を組んで怒りながら言った。
「だからじゃない!ウンディーネ、アンタはもう少し、下界人に対して怒るべきよ。無論、エント≪ディセンダー≫、アンタも!」
もう片方の精霊は、水の精霊ウンディーネと解った。
ディセンダーは苦笑いで、精霊・シルフを見上げた。
精霊・ウンディーネは、やれやれと首を振った。
ディセンダーはマーテル達を見て、彼等の説明をした。
「えっと、何だか……ごめんなさい。シルフはその、悪気があった訳じゃ無いんだ。」
マーテルは彼に、「分かっています」と言う顔で頷いた。
そして精霊・シルフと精霊・ウンディーネを見て、慎重に言った。
「貴女方は、〝水の精霊・ウンディーネ〟と〝風の精霊・シルフ〟ですね。」
その言葉に、精霊・シルフは「フン」とそっぽを向き、精霊・ウンディーネは頷いて、数歩前に出た。
「貴女は最初から、私達が視えたのよね。ここに来てから、我々をずっと視ていましたし……。それに、神子の力かしら?結界も気付けたのは。エルフである村長は、この子が言うまで気付かなかったもの。世界樹の加護ではなく、この子の力と言うのを。」
「私に解ったのは、存在だけです。何の精霊までかは、はっきりとは解りませんでした。そして結界に関しては、私は世界樹の神子として、隣国に仕えていましたから……。それに結界は、ここに入った時に、波動が違うのに気付けました。」
精霊・ウンディーネは手を頬にあてながら、冷たく言った。
「そう。私はてっきり、其方の人間が、我々の事を話したのかと思いました。」
そう言って、クラトスを冷たい視線を送った。
以前、クラトスがこの村にいた時に、ディセンダー《エント》は精霊の存在を伝えていた。
そして、この事は秘密として処理されていたのだ。
マーテルは、精霊・ウンディーネが殺気めいたものを出しているのに気付き、慌てて言った。
「彼からは、何も聞いていません。この村の村長に、私達の旅で集めた情報を話してみないか、と言われたので来たのです。本当に彼からは、精霊やディセンダー君の力については、何一つ教えて貰えていません。」
するとマーテルの横で、ユアンが怒り気味に言った。
「もし知っていれば、貴女方に直接話を出来るように取り繕っていた。クラトスが、早く言ってくれれば。」
最後の語句に怒りが、半分入っていた。
が、精霊・ウンディーネは気にせず、明るく言った。
「そうですか……それは良かった。もし貴殿が、この子との約束を破っていたら、この場で殺していたかもしれませんね。」
と、笑顔であった。
ディセンダーは顔を青ざめて、精霊・ウンディーネを凝視し、精霊・シルフは残念と言う顔をしている。
無論、マーテル達も息を飲んだ。
精霊・ウンディーネは、ディセンダーに笑顔で言った。
「フフ。無論、冗談ですよ。……半分本気でしたけど。」
最後の言葉は、マーテル達の方を見て、小さい声で囁いた。
ので、ディセンダーには聞こえ無かったようだが、マーテル達の顔は物凄く引きつった。
そこで精霊・シルフが、陽気な声で言った。
「でぇー、アンタ達は、私とウンディーネに何の用よ。」
マーテルは顔を引き締めて、落ち着いて言った。
「これは村長様にも言ったのですが、私達はここに来る前に精霊と会いました。その精霊が、この世界のマナが枯渇しているのは、世界に種族が多く居すぎるため。世界樹がそれに伴う、負の想念の処理が遅れている為だと。それと、世界樹がディセンダー君を呼んでいると……」
この言葉にディセンダーは、目を見開いて唇を噛んだ。
それを精霊達は横目で見ていた。
精霊・ウンディーネは閉られた目から、冷たい視線を出し、冷たく言った。
「貴方達も、所詮は一緒ね。まぁー、その精霊が誰とは聞かないけど……この子を、この村から出せないわ。」
ユアンは怒り気味に、精霊に聞いた。
「何故だ⁉世界樹が、彼を呼んでいるのだろう。理由は良くは解らんが、それでこの世界が少なからず、良くなるはずだろう。」
精霊・ウンディーネはより一層深く冷たい視線をし、先程よりも冷たい声で言った。
「その精霊が言ったのかしら。それとも、そこの神子が世界樹の声を聴いたから、かしら?どっちにしても、この子がこの村を出れば、ここの結界は壊れる。この子は、まだ力を上手く留める事は出来ないから……」
ユアンは、ディセンダーを見た。
彼は拳を力強く、握りしめている。
それを精霊・シルフが、なだめているようだった。
ユアンは、彼の気持ちを汲んでやりたかった。
が、あえて冷たく言い放った。
「それでも、世界とこの村とでは……図る天秤は解りきっている。村人を捨てきれないのであれば、どこか安全な場所に置いて置けば良いのだからな。」
その言葉に、ディセンダーは静かに、それでいて怒りめいた声で言った。
「この村は……村人は僕にとって大切なんだ。見捨てる事何て、出来ない‼」
「では、お前は世界樹を裏切り、世界よりこの村を選ぶという事だな。」
その言葉に、ディセンダーは涙を流した。
それに気付き、ユアン達に背を向ける。
精霊・シルフは、ユアンに殺気めいた目を向ける。
精霊・ウンディーネは攻撃しようとした瞬間、笑い声が聞こえた。
その笑い声に、ディセンダーは泣くのを止めた。
剣に手を掛け、辺りを見渡した。
精霊達も、周囲を警戒していた。
四人は何事かと思った。
だが、彼等の行動と雰囲気で、それぞれ身構える。
空から一人の男が、森から出て来た。
クラトスは、その男性を見るディセンダーの瞳には見た事のない殺気と怒りを感じる。
男は何か蔑みにも似た目で、ディセンダーを見ながら冷たく言った。
「そこのハーフエルフの言う通り、この村を見捨てる事だな。そして世界樹の言う通りにすれば良い。貴様は所詮、"その為の存在"だろう。それとも、そこのハーフエルフの言うように、世界樹を裏切るか。いや……裏切り続けるか、哀れな世界の守り手≪ディセンダー≫よ。」
その言葉に、精霊・シルフは怒りながら言い放った。
「黙りなさい、ダオス!アンタなんかに、この子≪ディセンダー≫の気持ちは解らないわよ‼︎」
ダオスは精霊・シルフに鼻で笑い、冷たい声で言った。
「笑止。そもそも、世界の守り手≪ディセンダー≫は世界樹の道具にすぎん。その道具に感情など要らん。感情があるから、こんな事になるのだ。そして災厄の場合、世界を壊すのだ。」
最後の言葉には、怒りにも似た声で言った。
精霊・ウンディーネは冷たい声で、彼に言った。
「それでも、この子≪ディセンダー≫は悩んでいる。それに何故、貴方はここに入れたのです‼結界を強固したとゆうのに!」
「あんな弱い結界なんぞ、潰すのは簡単だ。」
そう言って、ダオスはディセンダーに〝ダオスレーザー〟を打った。
ディセンダーは剣で、それを防いだ。
しかし、防いだ時には彼に、首を絞められていた。
一瞬の出来事に、全員が息を飲んだのが解る。
ダオスがディセンダーの首を絞めたまま、彼にしか聞こえない声の大きさで、
「弱いな、私の知る世界の守り手≪ディセンダー≫は強かった。それこそ、世界を壊すほどに……」
彼は、なおもディセンダーの耳元で冷たく言った。
「何故、そんなに弱いか……私が教えてやろう。この村の結界に力を使い過ぎ、この村を満たすマナを己が命で生み出した。何より、力の源とも呼べる世界樹とのリンクを切っているからだ。」
ディセンダーは顔を引きつった。
首を絞める力が強く、何も言い返せない。
精霊・シルフと精霊・ウンディーネもまた、ディセンダーがダオスの手中にいる事で、攻撃が出来ない。
クラトスとユアンは、隙を見つけようとするが、見つけられず額に汗が浮かぶ。
ミトスはただ、現状を見ているだけしか出来ない。
マーテルは何かを決心したかのように一度集中し、前に出た。
その瞬間、ディセンダーと精霊達は表情を変えた。
そしてダオスを見て、マーテルは口を開く。
「彼を殺す事は、私が許しません。お願いです、ダオス……その手を放して下さい。」
「下界の神子無勢が、私に指図するな。」
と言って、マーテルに攻撃しようとする。
ユアンとクラトスは、マーテルに近付こうとする。
が、間に合いそうにない。
ミトスは「姉様‼」と叫んだ。
だが攻撃が当たる前に、精霊達がそれを防いだのだ。
その瞬間、ディセンダーはダオスの手から離れて、急いでマーテルを背で庇うように、剣を構えた。
ディセンダーは、彼女を一度視てから、ダオスに言った。
「ダオス、マーテルさんを……いや、世界樹を傷付ける事は、許さない。」
その言葉にダオスは「何⁉」と言う顔する。
そしてマーテルが、纏っている波動を感じ取り、
「まさか、憑依しているのか……。下界の神子無勢が⁉馬鹿な……」
しかし、彼はしばらくマーテルを見た後、背を向けて去って行った。
クラトスとユアンは、ホッとして剣をしまう。
ミトスがマーテルに近付くのをクラトスが止め、ディセンダー達を見る。
ディセンダーは剣をしまいながら、マーテル振り返る。
そして膝を付いた。
精霊達は、ディセンダーの後ろに行き、それを見守る。
するとマーテルが……いや、世界樹が優しい声で彼に言った。
「大きくなりましたね、世界の守り手≪ディセンダー≫。貴方に、大事無くて良かった。この神子に感謝せねば……」
ディセンダーは地面を見つめたまま、辛そうに声を出した。
「世界樹……何故、僕を助けたのですか。僕は、あなたを裏切っているのに……」
すると世界樹(マーテル)は膝を折って、彼の顔に触れた。
ディセンダーは一度、ビクっと震えた。
「世界の守り手≪ディセンダー≫、顔を御上げなさい。貴方が、この村の者達を大切にしている事は知っています。だから貴方の心が決まるまで、待って居てあげたかった。けれど、もう私だけではそう長くは持たないのです。だから、世界の守り手≪ディセンダー≫――」
と、何かを言い掛ける世界樹(マーテル)が、言葉を途絶えて倒れこんだ。
ディセンダーはマーテルを抱き抱え、焦った。
「せ、世界樹……、マーテルさん、しっかり‼︎」
クラトスとユアンが、マーテルを見て「大丈夫」と言うように頷いた。
マーテルをユアンに預け、ディセンダーが立つ。
と、ミトスが静かに言った。
「姉様は、神子の中でもかなり強く、世界樹と協調出来る。だから時々、あんな風に世界樹を憑依させる事が出来るんだ。……でも、そんなに長くは持たないし、凄く力を使うみたいで、すぐ倒れてしまうんだ。でも、ディセンダーも神子だったんだね。だって、憑依したのを瞬時に判断出来るのは、同じ神子くらいだから。」
ディセンダーは、それに頷く事は出来なかった。
彼は一度、世界樹のある方を向き、マーテルを見て、
「マーテルさんを休ませましょう。……ここからなら、長老の家に行くのが早い。僕は、長老に頼みに行って来ます。」
そう言って、駆け出して行った。
その後ろを精霊・シルフが追って行く。
精霊・ウンディーネは、クラトス達を見てから姿を消した。
クラトス達が長老の家に着き、マーテルを休ませた。
マーテルは二・三日眠り続け、目を覚ました。
ミトスは泣きながら、マーテル≪姉≫に抱き付いた。
「良かった、姉様。どこか辛い所はない?」
マーテルはミトスに微笑み、頷いて「大丈夫」と言った。
ミトスとマーテルが居間に行くと、ユアンとクラトスがホッとしたように腰を浮かせ、また座った。
長老は、嬉しそうにマーテルに言った。
「マーテル殿、良かった。元気になったようですな。」
マーテルは長老に深くお辞儀をしてから、感謝を述べた。
「村長様には、ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。」
長老は「ふぉほほ」と笑いながら、髭を擦り明るく言った。
「いやいや。こちらこそ、ディセンダーがマーテル殿に助けて貰ったとか。感謝致しますじゃ。」
それを聞き、部屋を見渡したマーテルは、ディセンダーを探した。
でも、この部屋の中には居ないようだった。
「あの村長様……ディセンダー君は?」
長老は一度「うーん」と唸った後、悲しそうに答えた。
「あの子はここ最近、ここには来ておりませんじゃ。風の精霊が、貴女の事を聴きに来るだけで。もしかしたら、貴女に会い辛いのかも知れませんな。」
マーテルは「そうですか」と小さく言った。
そこでクラトスが、静かに言った。
「マーテル、我々はそろそろ、ここを旅経つ事にした。お前が眠っている間に、あいつには共に来て欲しい、と言ってある。返事は貰えなかったが、いつまでもここに留まる訳にはいかんからな。」
マーテルは小さく頷いた。
すると長老は、髭を撫でながら、彼等に言った。
「うむ。では、マーテル殿が目を覚めた事を、ディセンダーに教えなければなりませんなぁ。」
その言葉にミトスが、手挙げて言った。
「じゃ、じゃあ、僕とクラトスで行くよ。良いよね、クラトス?」
クラトスは頷いて、立ち上がった。
ユアンはマーテルを見て、言った。
「マーテル、君はどうする。私は、村長殿と共に村の広場に行くが……」
「私も共に行って良いのならば、同行させて下さい。」
おそらくディセンダーの話を村人にするのだろうと、マーテルは思った。
こうしてミトス・クラトスは、ディセンダーの元へ。
長老・マーテル・ユアンは、広場へ行く事になった。