テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2 で、作ってみた 作:609
そんなこんなで、やっと砂漠を超えた一行は小さな港町に来ていた。
ディセンダーは、初めて見る海に興奮していた。
ミトスとノイッシュと共に、海の底の魚を見ていた。
その間に、ユアンとクラトスは買い物を済ませようと歩いて行った。
クラトス達が戻ると、見ているのに飽きたのか、ミトスとディセンダーは釣りをしていた。
ミトスは帰って来たユアンだけに怒りながら、指を差し怒鳴る。
「遅いよ!僕達、飽きて釣りしていたんだから!」
マーテルは、ユアンに「ごめんなさい」と、苦笑気味に言った。
ユアンも苦笑いをした。
そして落ち着いてから、船に乗って旅立った。
今度の港は浜辺があったので、ディセンダーはダッシュして波打ち際まで行ってしまった。
ミトスとノイッシュも行ってしまったので、今日はここに泊まる事にした。
帰って来たディセンダーとミトスは、びしょ濡れだった。
彼等は、マーテルにこっ酷く叱られた。
途中、何か同じ事を思ったのか、精霊・ウンディーネと精霊・イフリートが姿を現し、ディセンダーに対して一緒に怒り出す。
港を出て、しばらくした時だ。
ディセンダーの様子が、おかしい事に気付く。
様子を見ると、熱がある。
精霊・シルフが、辺りを見に飛んでいく。
帰って来た彼女は、山の奥に「小さな村がある」と言ったので、そこに向かう。
その村はどうやら、エルフの隠れ里のようだった。
我々を見て、露骨に嫌な顔をしている。
クラトスが、村人に声を掛けた。
「いきなりの訪問、すまない。仲間の一人が熱を出してしまった。本当にすまないが一晩でいい、泊めて貰えないだろうか。」
すると、村長らしき者が出て来て、我々を見渡してから言った。
「私達の村に、余所者を受け入れられる所はございません。同じエルフならともかく、人間とハーフエル……、どうかお引き取りを。」
反論しようとクラトスが声を上げようとした時、精霊・シルフが姿を現す。
村長に指を指して怒り出した。
「ちょっと!下界のエルフ無勢が、何ほざいているのよ!これなら、あの髭エルフの爺の方が、まだ良いわよ‼」
「……全く、その通りですね。そう思うと、世界の守り手≪ディセンダー≫は良い村に落ちました。」
「我の力で、ここら一帯を火の海に変えようか……」
精霊達が、口々に言い出す。
精霊・イフリートの言葉は本気だ。
精霊・シルフの言う髭エルフの爺とは、おそらくディセンダーの村の村長の事だろう。
するとディセンダーが、慌てて起き出して来た。
「ちょっと、皆!お願いだから、迷惑だけはやめてよ。本当お願い、僕は大丈夫だから!」
精霊達は、何故か残念そうだ。
そのディセンダーはまたフラッとする。
エルフの村長は目を見張って、驚いていた。
そして、急に態度を変えた。
「せ、精霊⁉まさか、この目に出来るとは!……解りました、すぐに休める場所を作りましょう。」
そう言って、村長は居なくなる。
戻って来た時、何故か嬉しそうだ。
そして案内された部屋に、ディセンダーを休ませる。
その間、クラトス達は話をしていた。
ユアンが不思議そうに切り出した。
「それにしても、さっきの村長の反応は何だったのだ。」
それに、クラトスが静かに答えた。
「帝国では、精霊はマナの象徴のようなものだ。精霊が現れるという事は、その場所はマナが溢れている証拠としているのだ。……昔は気まぐれに、精霊が姿を現し、帝国の民は喜んでいたものだ。だが、マナが枯渇してからは、精霊を見る事は無くなってしまった。だからあの長老は、この村にはマナがあると思ったか、それとも……」
クラトスが続きを言う前に、精霊・ウンディーネが静かに、それでいて不愉快そうに言った。
「我々を捕まえて、マナの動きを見る。もしくは、貴方達をここに閉じ込め、精霊である我々を使って世界樹の加護を手に入れるか、でしょうね。」
それにクラトスは頷き、真剣な顔で言った。
「故に、気を付けていた方が良いだろうな。」
そう言ってから、ミトスが俯きながら、
「……僕のせいだ。ディセンダーを海に長く引き止めたから……」
その問いに、精霊・イフリートが腕を組んで言った。
「それは違うな。あの程度の事で、世界の救世主≪ディセンダー≫が体を壊す事は無い。あ奴は普通の人間とは、創りが違うからな。むしろ、この前のギルガリムとの戦いで、負の想念を浄化したのに力を使い過ぎたからだろう。」
その言葉に、ミトスはひとまずホッとした。
精霊・ウンディーネと精霊・シルフは「あちゃー」と言う顔をしている。
クラトスも表情を硬くした。
が、マーテルとユアンが先に言葉を出した。
「ディセンダー君は、負の想念を浄化出来るのですか⁉……だから、世界樹が呼んでいると!」
「いや、そもそもディセンダーは何者なのだ。ただの神子とは、思えん‼」
精霊・イフリートは、精霊・ウンディーネ達の視線に気付いて無いようで、
「むむ?世界の守り手≪ディセンダー≫は、神子では無いぞ。あれは、世界樹の落し子だからな。そもそも、中身が違う。……お前達は、あ奴から世界の理を聞いたのではないのか?」
さらっと言ってしまった。
精霊・ウンディーネと精霊・シルフは、「完全に、もう駄目だ」という顔をしている。
ユアン・ミトス・マーテルは、完全に声を失っている。
精霊・イフリートは「おや?」という顔をした。
その後、精霊・ウンディーネ達を見て、小さい声で「すまん」と言った。
精霊・ウンディーネは笑顔を出しながら、完全に殺気丸出しで言った。
「イフリート、貴方は何を考えているのです。何も話していない……しかも、あの人間にすらまだ言ってない事があると言うのに……‼」
クラトスは心の中で何度も頷いた。
そして、彼等の怒りが自分に来ない事を願う。
『……おそらくそうだろうとは思ったが、今言ったら、ただでは済まないだろう。』
という直感が働いたので、無言でいた。
その後、彼らを追求しようものなら、「確実に殺される」と思う雰囲気を出している。
なので、この話はここで止める事にした。
ディセンダーは目を覚まし、身を起こす。
来客が来たからだ。
外の部屋では、精霊・イフリートが精霊・ウンディーネと言い争いになっており、クラトス達にある種の危険に襲われているとは、思いもよらないだろう。
ディセンダーの前に現れたのは、猫のような、犬の生き物だ。
そう、精霊・ラタトスクの配下、闇のセンチュリオン・テネブラエ。
センチュリオン・テネブラエはお座りをして頭を一度下げてから、彼を見て言った。
「大丈夫ですか、世界の守り手≪ディセンダー≫様。先日、貴方様の力が多いに使われ、倒れたと聞き、ラタトスク様が、笑っておられましたよ。」
ディセンダーは苦笑いをして、センチュリオン・テネブラエに言った。
「……大丈夫。僕もあんな風に、沢山の負の想念やら魔族の瘴気を、マナに変換したのは初めてだったから。少し、疲れちゃった。……それで、ラタトスクは何て?」
「世界の守り手≪ディセンダー≫様がギルガリムを倒した後、ラタトスク様が門を再度調べました。門には、開いた形跡はありませんとの事です。ラタトスク様は〝おそらく、負の想念が集まった所を中心に、小さな穴を作ったんだろう〟との事です。ああ、それと世界の守り手≪ディセンダー≫様が作り出したマナは、しっかり流したので大丈夫ですよ。」
「そう……。マナの枯渇だけではなく、魔族達もこの世界に入って来たら、終わりだろうね。その小さな穴、多分一つではないだろうし……。なにより、魔族と契約する者が現れる前に何とかしないと。ラタトスクには、魔物達に穴を見付けておいてくれるように言っておいて。」
「その点は大丈夫です。既に魔物達を通し、ラタトスク様が探しております。〝どうせ、あのお人よし世界の守り手≪ディセンダー≫が、探しておいてくれと、言ってくるだろうしな。ククク、むしろあいつが魔族と組まない事を、願っておこう。どうやら、あいつの能力でもあるらしいからな。今からより一層、魔物達に探させておくか〟と、仰りながら命令されておりましたから。」
陽気に言うセンチュリオン・テネブラエだが、ディセンダーは『それは言っちゃダメだろう』と思った。
だが、言わない事にした。
センチュリオン・テネブラエは首を少し傾げて、疑問をぶつけて来た。
「……それにしても、世界の守り手≪ディセンダー≫様の熱は人間でいう熱ではないのでしょう。ラタトスク様も、心配しておりましたよ。」
ディセンダーは膝を抱えながら、悲しそうな声で言った。
「一言で言えば、人間とは違うね……。これは、急激に力を使ったから、その反動のようなものかな。」
ディセンダーは苦笑して、
「不思議そうな顔をしているね。でも、本当だよ。僕ら≪ディセンダー≫は万能じゃない。時には、世界樹を守り切れない事だってある。」
センチュリオン・テネブラエは「そうなんですか」と言った。
と、ディセンダーはふと、思った事をそのまま口に出した。
「それにしても、僕を嫌っているラタトスクが、僕のことを心配しているなんて何か面白いな。」
「おや、知りませんでしたか?ラタトスク様は、世界の守り手≪ディセンダー≫様の事を気に入っていますよ。それこそ、お生まれになった時から。あの方は〝外に出さず、成長するまで世界樹の中に居れば、俺様が面倒を見てやっても良い〟とさえ仰っていましたよ。世界の守り手≪ディセンダー≫様があの村で暮らしている時なんか、しょっちゅう魔物に様子を見に行かせていました。無論、私も行かされましたよ。いやー、あんなに小さかった貴方様が、こんなに大きくなるなんて……泣けちゃいますね。そうそう、最近では“早く世界樹に帰って来い”と、常々言っていますよ。」
それを聞いたディセンダーは目を見開いた後、嬉しそうに「そう……」と言ったのを、センチュリオン・テネブラエは見ていた。
センチュリオン・テネブラエは立ち上がり、静かに言った。
「ラタトスク様もそうですが、私も心配しておりますから。世界を救う前に……いや、救った後にも、貴方様が死んでしまっては、意味が無いですからね。」
「それに付いては大丈夫。僕を殺せるのは、僕と同じ存在か、君の主のような存在。そして、僕を創った世界樹くらいだから。……ああ、でも心臓や脳を貫かれたりしたら、死んじゃうかもしれないね。怖がらなくても良いよ。僕は、この世界が好きだから。それに皆もね。」
センチュリオン・テネブラエは一瞬、ディセンダーの瞳の色が赤く変わり、少し笑みを浮かべた事に気付いた。
そしてそのディセンダーを見て、『何か危ない』と感じた。
だが、それ以上何も言わず、一度だけお辞儀してから姿を消した。
ディセンダーは、センチュリオン・テネブラエが消えた後、自分の掌を見た。
その掌を見て、苦笑してから再びベッドに横になった。
次の日、元気になったディセンダーと共に、村の入り口近くに来ていた。
案の定、村の入り口は塞がれていた。
数人のエルフが武装して立っている。
ディセンダーはミトスとノイッシュ共に、ここでしか咲いていないと言う花を見ていた。
精霊・シルフが小さい声で、クラトス達に言う。
「私達が気を引き付けている内に、この村を出る?」
「恐らく、その辺の事は予想されているだろう。何か、対策が打たれているはずだ。」
ユアンの言葉に、クラトスとマーテルは頷いた。
精霊・ウンディーネが頬に手を当て、森を見ながら言った。
「では、どうしますか?ここ以外に、真面な出入口は見当たらないですし……危険を覚悟で、獣道に行きますか?」
「さすがにそれは止めておいた方が良い。ディセンダー≪あの子≫がいても、魔物との戦闘も、派手になるはずだ。それに、ここの位置も良く分からない以上、遭難の危険もあるぞ。」
と、精霊・イフリートが即時に言う。
精霊・ウンディーネも、「やっぱりそう思います?」と言っている。
マーテルが複雑な顔で言った。
「……やはり、話し合いでしょうか?」
「それが一番難しいだろう。もとより彼等は、余所者の我々を良く思っていない。彼等は精霊が欲しいのだろうから、我々の誰かが死なない程度にして、監禁などもしてくるかもしれん。」
クラトスの言葉に、ユアンも同意した。
そしてユアンが眉を寄せて、
「恐らく、誰かを選ぶのなら、女性のマーテル、子供のミトスか……。しかし二人は魔術が使える。ディセンダーも使えるが、それを彼らは知らない。とすれば、ディセンダーが狙われる可能性が高いが……色んな意味で、それは避けたいな。」
それは、三人同一の思いだった。
ディセンダーに手を出されたら、この精霊達が何をしでかすか分からない。
すると、村長が出て来て、こちらに話をしてきた。
「おや?皆さん、ここで何をしているのですかな。」
「いえ、旅の途中ですので、そろそろここを出ようと思いまして。」
クラトスが前に出て言った。
ユアンは、マーテルを守るように立っている。
「そうですか……。しかし、今日でなくても大丈夫なのではないですかな。お連れさんも、元気になったばかりでは心配でしょう。」
クラトス達は「やはり」と思った。
後ろから、ディセンダー達が来るのに気が付いた。
ミトスに、目で「来るな」と送った。
が、ミトスがディセンダーを止める前に、彼が声を掛けてしまった。
「あ、もしかして村長さんですか?昨日は、ありがとうございました。おかげで、元気になりました。」
村長は、ディセンダーに振り返った。
村長が「そうですか」と言った瞬間、ディセンダー達は囲まれてしまった。
「大人しくして下さい。そうすれば、怪我はしませんゆえ。」
ディセンダーは村人が詠唱をしているのを見た。
そして、クラトス達が緊迫した雰囲気を作っている事も知っていた。
ディセンダーは村長を見ながら、
「これは、どういう事ですか?もしかして僕達、何かここで悪い事しました?」
「いやいや、そう言う訳では無いぞ、少年。ただ、そこの精霊達が欲しいのだ。精霊さえ居れば、この村は世界樹に守って貰える。」
「ああ、成程ね……。でも駄目だよ。彼等は、僕の大切な家族……のような存在だから。」
ディセンダーは笑顔で言った。
精霊達は目に涙を浮かべ、語り始めた。
村長はそれを聞き、納得したように叫んだ。
「成程……では、貴方がいれば他の者は用無しですな。皆!人間とハーフエルフなんぞ、殺してしまえ!」
その瞬間、詠唱を終えていた村人が攻撃してきた。
だが、ディセンダーはミトス達を助け、精霊・ウンディーネ達はクラトス達を助けた。
村長と村人は驚いていた。
「残念だったね。僕は声に出さなくても、僕の能力で精霊と話せるんだ。……僕の大切な仲間に、手を出さないで。僕は、助けて貰った貴方達を殺したくないんだ。」
その最後の言葉には、恐ろしい程のオーラが出ている。
そして村長や村人を見る、ディセンダーの瞳の色が赤い。
村長達は動けなかった。
『動いたら殺される』そう思った。
ディセンダーは村長達に笑い掛け、明るく言った。
「お世話になりました。また会えた時は、仲良くして下さいね。」
そう言って、村を出た。
クラトス達だけではなく、精霊達も村を出てしばらくは、ディセンダーに話し掛けられなかった。
しばらくして、ディセンダーが振り返る。
彼は苦笑交じりな顔で、
「……でも、良かった。僕、どうしようかと思いましたよ。いやー、頑張った甲斐ありました。」
「……そうだな。私達も少し驚いたが、無事だったのだから良いだろう。」
いつものディセンダーに戻った事に安堵しながら、クラトスは言った。
瞳の色も、金色に戻っていた。
ミトスも、マーテルの後ろから出て来て、ディセンダーと話し始めた。
あの村からはしばらく、順調に旅が進んだ。
一向は無事、帝都に着いた。
しかし帝都は、恐ろしい事になっていた。
人間以外の種族が奴隷のようになっていた。
特に子供や年寄り、女性が多い。
クラトスはすぐに、ユアン達がばれないように王のいる城へ向かった。
城まで来たクラトス達は、門番に止められた。
しかし、クラトスの顔を見ると「申し訳ありません」と、姿勢を正した。
何とか、ユアン達がばれずに王城に入れたが、姫に会うまでは油断出来ない。
姫との謁見の間に来る。
その前に立ち、クラトスは扉を開けて中に入る。
「騎士団長、クラトス・アウリオン。只今、戻りました。」
すると、姫が立ち上がり、嬉しそうに声を上げた。
「クラトス‼……良く、戻って来てくれました!体に、大事ありませんね。」
クラトスは、姫に一度頭を深く下げてから答えた。
「姫こそ、ご無事で何よりです。……王の容体はどうでしょうか?」
姫は、その言葉に一度首を振った。
クラトスの周りの者達を見て、静かに言った。
「その者達が、そうなのですね。すぐに人払いと、父との面会を取り付けます。……少し時間を下さい。」
そう言って、姫は謁見の間を出て行った。
クラトス達は、小さな個室に通された。
ユアンは手を組んで、思い出しながら言った。
「あれが、この国の姫君か……。床に伏せている王に代わって、齢十八の少女が政治を行う。あの姫はよく頑張った方だ。この世の政治で、よくこれくらいで済んでいたものだ。」
すると、ミトスが立ち上がって叫んだ。
「これくらい⁉人間以外の種族を奴隷のように扱っている、これが!」
ユアンは静かな声で言った。
「あの姫が、貴族達から異種族達を、形はどうあれ守っているのだ。でなければ、貴族共の言い分で、おそらく処刑されていただろう。」
ミトスは「でも‼」と、涙目になっている。
ディセンダーは外の風景をずっと見ながら、会話を聞いていた。
ミトスが更に反論しようとした時、部屋に兵士が一人、入って来た。
「クラトス様。姫様より、準備が出来たので王の寝室まで来るように、との事です。」
王の部屋の警備兵に、クラトス以外の者は武器を預ける。
そして、王の寝室へと入っていった。
王は大きなベッドの上にいた。
顔色は凄く悪いようだ。
王の横には、先程の姫と年寄りの大臣、陰険顔の宰相がいた。
王は苦しそうに、それでいて威厳ある声で言った。
「クラトス、よく無事に戻った。……其方の者が、お主が言っていた者だな。」
クラトスは王にお辞儀し、ユアンが一歩前へ出て、緊張した声で言った。
「私の名は、ユアンと申します。こちらは我が国の世界樹の神子だった、マーテルとその弟です。」
マーテルは一度お辞儀し、ミトスは彼女の後ろへ下がった。
「早速ですが、帝国王。……我が国はもう、この国を落とす事しか考えていないようです。我が国の王は、正気を失った。まるで、何かに憑りつかれているかのように、人が変わってしまわれた。私はこの戦争を、何とか阻止したいのです。我が国の民の為、そして、かつては良好だった異種族同士の関係を取り戻したいのです。」
「貴殿の申し出は、大いに解った。其方の貴女は、神子と言いましたな。……貴方は、今のご自身の国をどう思いますかな。」
マーテルはユアンの横へ立ち、もう一度、王にお辞儀をしてから答えた。
「私も、陛下は変わられたと思います。……以前は私以外にも、異種族の神子は沢山いました。ですが、陛下が変わられてからは、神子を排除するようになりました。‥今や、世界樹への恩恵も忘れて……」
「そうか……。我が国にも、神子はおった。……しかし、世界のマナが枯渇し始めてからは、世界樹の声を聴ける者も、憑依出来る者も、居なくなってしまった。今や、世界樹の恩恵も、この帝国には無いに等しい。」
王は十分に考えてから、ユアン達を見つめて力強く言った。
「解った。我が国にできる事は、最後までやろう。貴殿の国王も、昔のことを思い出してくれる事を願って。」
「「帝国王の御心に、感謝します。」」
ユアンとマーテルは、声を揃えて言った。
話がひと段落した所で、ディセンダーが王の前に立ち、一礼した。
クラトスは、『もしかしたら、村の事を恨んでいるのか』と思い、王の傍を離れようとした。
が、何かに気が付いた王が止めた。
王は優しい声で、ディセンダーに言った。
「うむ、少年。君は、我が国の者かな。まずは、名を教えてくれ……」
「名を明かす前に、言っておきます。僕は貴方の国の者であって、そうではありません。」
そして王を真っ直ぐ見つめ、
「僕の名前は、ディセンダー。僕の故郷とも呼べる場所は、この国と王都の国の国境にありました。そして帝国王に捨てられた、今は亡き村の者です。師匠≪せんせい≫……いえ、クラトスさんに剣を教えて貰った者。……王に聞きたい事が、あります。」
「我に、何を聞きたいのかな。」
「王は、今のこの国を……いえ、この国に住む異種族を、どう思いますか。」
王は僕から目を逸らさず、真剣に答えた。
「彼等も、我が国に住まいし大事な民だ。今は、我がこんな事になってしまったせいで、異種族の者達には辛い思いをさせてしまっている。多くの者が無罪で連行され、処刑されてしまった。……今では奴隷のように扱われている者も多い。我が不甲斐無いばかりに、多くの村や町を守ってやる事が出来なかった。おそらく君の村も、そう言った所なのだろう。……本当に君にも、そしてその村の者にも、すまない事をした。」
ディセンダーは、王の言葉に涙を流していた。
そして泣きながら、王に言った。
「王、正直に言います。……もし貴方が、己が身だけを心配する者で、異種族に対して何も思っていないようなら……殺そうと思いました。」
「そう思うのは、当たり前だ。こんな頼りない王なのだから。それで、お主はどうするつもりだ?」
涙を拭ったディセンダーは、
「……殺しません。貴方が、良き王である事も解りました。良かった、長老や師匠≪せんせい≫の言う通りの人で……。その言葉で、僕の村の者は救われました。だから、貴方を救います。」
その言葉に、この場にいる全員が驚いた。
姫が、半信半疑で言った。
「救うって……お父様の病が、貴方に解るの?どんな有名な医師にも解らない、この病が本当に?」
ディセンダーは姫にひとつ頷いて、陰険宰相の方を見た。
いや、その奥の何かを見て、冷たい声で言った。
「……僕がこの城に入った時……いや違うかな。この王都中心地に入ってから、気付いたのかな。ずっと、その短剣を握っているよね。隙が出来たら、殺そうとしていたのかな。それにしても、良く気付いたものだよ。魔に連なる者以外は、瘴気に耐えられない。……今の君クラスでも、生き物一つを壊すくらい簡単だもんね。何より、魔物や精霊以外には、このくらい薄い瘴気は視えないし――」
そう言った瞬間、宰相はにディセンダー襲い掛かった。
しかし小刀は、僕の頬をかすめただけで押さえ付けられた。
その瞬間、窓がいきなり割れた。
ディセンダーは割れた窓の外を見て、残念そうに言った。
「あー……ダメだよ、イフリート。こっちじゃなくて、あっちを捕まえないと。」
すると、精霊・イフリートが怒りながら、
「あっちは、シルフが行った。お主も、挑発したからには避けろ!」
そして精霊・ウンディーネも姿を現し、ディセンダーの頬に手を当てて心配した。
その後、怒り出していた。
「イフリートの言う通りです。ああ、こんなに切れて……。捕まえたら、絶対に八つ裂きにしなくては!」
ディセンダーは苦笑いで、精霊・ウンディーネに言った。
「八つ裂きにするのは構わないけど、ちゃんと穴を見つけてからじゃないと……ラタトスクに怒られる。」
そう言って、窓から視線を外した。
姫が精霊を見て、声を出した。
「……ま、まさか、精霊⁉まだ存在していたのですね!……良かった!我が国は……我が国は、まだやり直せる!」
ディセンダーは王に近付き、手をかざした。
すると彼の手からは光輝き始める。
その光が終わった頃、王の様子が変わった。
「……おお!おお‼体が軽くなった!さっきまでとは違う。これは、どう言う事だ?」
「王、貴方は瘴気に蝕まれていたのですよ。……あれは、生き物が触れれば死に至るもの。この人間に、憑りついていたある者が、貴方を苦しめていたのです。」
「……そ、そうか……。ところで、この者は無事なのか?」
そう言って王が、宰相に視線を向けた。
その瞬間、陰険顔の宰相は苦しみ出した。
彼は「助けてくれ」と叫んでいる。
ディセンダーは宰相を見ながら、怒りを込めて言った。
「……貴方は、僕の村の事を覚えていますか?貴方が、隣国に売り渡した村です。今の貴方のように、苦しんでいた村の人を捨て、世界樹の御魂を奪って行った……あの村です!そのせいで、世界樹の加護を失った村は、魔物と王都騎士団に襲われた!」
ディセンダーの言葉に、何か思い至ったのか姫が悲鳴めいた声で言った。
「嘘⁉……宰相……貴方、あれは遺跡で見付けたと言っていたではありませんか!あれは、嘘だったのですね。」
宰相は目を見張り、わなわな震えている。
だが、苦しみが強いようで、最早話を聞けるような状態ではない。
ディセンダーは一度拳を握りしめた後、宰相に手を当て、王と同じ事をした。
元気になった宰相に、王は静かに言った。
「こやつを、牢へ連れて行け!」
「あ、ありがとう。き、君の村には……ひ、酷い事をした。す、すまなかった。ほ、本当に……」
宰相はそう言い続けて、兵士に連れて行かれた。
ディセンダーは小さな声で、
「いまさら謝られても、村は元には戻らない……」
王は「申し訳ない」と言う感じで、ディセンダーに言った。
「……我が国の宰相が、すまない事をした。しかし、君は一体何者だ。精霊を操り、我が病を治した……其方は……」
僕は王に向き直って、苦笑いで答えた。
「申し訳ありません、王様。……これは、御教え出来ません。」
クラトスは、ディセンダーが先程までと、王との接し方が違う事に気が付いた。
精霊・ウンディーネが、クラトスに小さく首を振った。
王は静かに、「そうか」とディセンダーに言った後、大臣に言った。
「今すぐ、全貴族及び、民に伝えよ。〝我の病は治った。直ちに会議を始める〟と。貴族達には、早急に集まるよう伝達せい。」
大臣は、王に一礼した後、急いで出て行った。
王はベッドから起き上がり、ディセンダー達に言った。
「今日は、この城で休まれよ。すぐに、部屋を用意しなさい。」
ディセンダーとミトスは、部屋に通された。
それ以外は、まだ王と話をしている。
ついでに、精霊・ウンディーネも、だ。
ディセンダーは外を見ながら、ミトスに声を掛けた。
「ねぇー、ミトス……」
ミトスはソファーに座った状態で、答えた。
「何?」
「今のこの状況が終ったら、ミトスに教えたい事があるんだ。」
「……教えたい事?」
ディセンダーはミトスの横に移動し、座った。
そして、笑顔で彼に言った。
「……うん。僕の……僕の、もう一つの名前。僕だけの、ね……」
ミトスは『相変わらず、よく解らない言い方を……』と思ったが、笑顔で言った。
「……分かった。楽しみに待っているね。」